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2023年02月の記事は以下のとおりです。

福島智理事の『2023年度「全国盲ろう者大会」の中止にあたり思うこと』を掲載しました

2023年度「全国盲ろう者大会」中止にあたり思うこと

社会福祉法人 全国盲ろう者協会
理事 福島 智

 全国の盲ろう者のみなさん、盲ろう者に日々寄り添ってくださっている多くのみなさん、お元気でお過ごしでしょうか。
 コロナ禍の日々もかれこれ3年になろうとしています。新型コロナウイルス感染症のまん延という思いもしなかった状況により、私たちのこれまでの生活に大きな影響がありました。マスク着用を初めとして、あらゆる場面で様々な制限を受けています。こうした日々の中で、うんざりするとともに、「コロナウイルスよ、早く消えてなくなってくれ」という思いでいっぱいです。
 そんなおり、国のコロナウイルスに関連した「方針転換」という報道がありました。これは希望の持てるニュースです。私が今、自力で簡単に読めるのはNHKのネットニュースでしたので、さっそく関連する記事を探しました。以下、かなり長文になりますが、私が調べた記事の一部の紹介と、それに対する私の意見・感想です。

 まず、NHKのネットニュースの一つ目の記事です。(2023年1月27日 20時37分配信)

「新型コロナの感染症法上の位置づけについて、政府は、ことし5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ『5類』に移行する方針を正式に決めました」

 うんうん、何かよくは分かりませんが、「5類」というのは、季節性インフルエンザなどと同等になったということでしょうね。しかし、記事は続きます。

 「対策にあたってきた専門家は『季節性インフルエンザと同様の対応が可能な病気になるにはもうしばらく時間がかかる』として、『5類』になっても引き続き感染対策が求められるとしています」

 そして、ぶっそうな話が出てきます。

 「感染した人のうち、亡くなる人の割合『致死率』は最初に感染が拡大した2020年春ごろの第1波では5%を超えていました。その後、治療法の進歩やワクチン接種の進展もあり、去年(2022年)秋以降から現在に至るまでの第8波では0.20%と下がってきています。
 一方で、感染がより広がりやすいオミクロン株になったことで感染者数が桁違いに増加し、亡くなった人は去年12月からの2か月ほどで約1万7000人(1月26日時点)と、これまでに亡くなった人のうちのおよそ4人に1人を占めています」
 
 え? つまり、この2カ月でコロナにより亡くなった人は、この3年間にコロナで亡くなった人の4分の1に相当するということなのか? この数字について、各メディアはあまりきちんと報道していませんね。
 それから「コロナの季節性」と、ウイルスの「変異のペース」についても述べられます。
 「専門家は毎年冬に流行するインフルエンザと異なり、季節を問わず感染が広がり流行の規模や時期が予測できないため、対応が難しいとしています。さらに、新型コロナは変異が起きるペースがインフルエンザに比べて速く、新しい変異ウイルスが出現するおそれがあるとしています」

 たしかにインフルエンザは冬によく流行しますが、コロナは冬以外の季節でも感染拡大が起きているということですね。そして、次のような記述もあります。

 「政府分科会の尾身茂会長は1月24日、NHKの番組の中で『5類に移行すれば自動的に感染者数や死亡者数が減るということはなく、コロナ診療に参加する医療機関の数が増えるということでもない』」
 それならどうして、「5類」に変更するのでしょうか。次のように記事は続きます。少し長くなります。
 「『社会・経済・教育をなるべく普通に戻す』、そうした中でも『必要な医療を提供できること』が非常に重要で、この2つの目的を実現するために、準備期間をおいて段階的にやっていく必要がある」と述べました。
 また、感染を受け入れる社会になっていくのかと問われたのに対し「『感染を許容する』というのは『一定の死亡者を許容するかどうか』という議論とつながる。諸外国の例を見ても、対策を急激に緩和してしまうと死亡者が急激に発生することがわかっている。医学の領域を超えて価値観の問題で、医療関係者か経済の人なのか、高齢者か若い人なのかでも見る景色が違ってくる」
 つまり、社会・経済面での活動の活発化などが今回の方針転換の背景にあるということですね。考えてみると、「5類」に移行しても、新型コロナウイルスの感染力や病原性が変わるわけではないというのは、あたりまえのことですね。

 同じ日に、NHKで、もう一つの記事が配信されています(2023年1月27日 22時32分配信)
 政府分科会の尾身茂会長が、「コロナは変化し続けていて、慎重さが必要」と述べたとする記事です。

 「病原性が大きく強まる変異が起きたり、同じオミクロン株であってもどんなに頑張っても医療ひっ迫が起きてしまう事態が起きてしまったりした場合は、対応を見直すことは当然必要になると思う」と尾身会長は指摘しました。

 では、国民はどうすれば良いのでしょうか。尾身会長の発言です。

 「いままでは国や自治体からの一律の要請に応える形だったが、これからは個人や集団がリスクに応じて主体的に選択することになる。(中略)たとえば、グループの中に重症化しやすい人がいる場合といつも一緒にいる人だけの場合ではリスクが異なる」

 このように見てきますと、今回の「方針転換」とは、次のようなことのようです。

 ・新型コロナウイルスの感染がおさまったわけではない。
 ・感染者は依然として高い水準にあり、死亡者はむしろ増大している。
 ・しかし、いつまでも今のようにしていては、社会・経済・教育などの活動が停滞し、行き詰まってしまう。
 ・したがって、国や自治体からの感染防止についての一律の制限要請はやめて、それぞれの個人やグループで判断してもらうことにする。
 ・ただし、状況がさらに悪くなれば、再び「方針転換」するかもしれない。

 この他、政治家の中には、「外国ではマスクをしていない。日本だけだ」という趣旨の発言をしている人もいます。しかし、記事中にもあったとおり、対策を急激に緩和すると、死亡者が急激に発生する例があるとされています。
 たとえば、1月28日のNHKのネット記事では、中国の状況を以下のように伝えています。

 「中国では、12月7日に感染対策が大幅に緩和されたあと各地で感染の拡大が続いています。これで12月8日から1月26日までの1か月余りの死者数は、合わせて7万8960人となりましたが、自宅で死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘も出ています」(2023年1月28日 20時32分配信)

 さて、では私たち盲ろう者やその身近な人たちはどのように考えれば良いのでしょうか。ご承知のとおり、昨年半ばごろからは行動制限もなくなり、また今年に入ってからは、前述のように、感染症法上の位置づけも、(5月8日から)見直される方針となりました。
 マスク着用に関しても見直しが検討されるなど、これは社会を通常の生活に戻していくという動きであり、その意味では喜ばしいことです。しかし、盲ろう者が大勢集まり、直接交流を持つという私たちの全国大会が今年の夏、安全に開催できるのかと考えると、さまざまな懸念や不安が浮かびます。
 私たちは直接触れ合ったり、近接しないとコミュニケーションをとったり、通訳を受けることができません。記事中にもありましたように、同じく複数の人が集まると言っても、「グループの中に重症化しやすい人がいる場合といつも一緒にいる人だけの場合ではリスクが異なる」ということです。
 全国大会は「グループ」などと言えないほど、多数の人が集まる場です。しかも私たちは、「密着」しての直接的接触ということになり、普通のイベントとは単純に比較できません。
 盲ろう者の中には高齢の人も多くおられますし、そうでなくても、合併症や基礎疾患を持っていて、免疫力が高くない人もおられるでしょう。いったんコロナの感染者が出ますと、「全国大会の会場」という特殊な環境を考慮すれば、どれだけ感染が広がるか予想ができません。また、コロナウイルスが「季節性ウイルス」とは言えないということも忘れてはなりません。つまり、インフルエンザと異なり、冬だけでなく、夏でも感染拡大が多く見られるということです。
 もし盲ろう者が感染した場合、どうなるでしょうか。万が一ある程度以上重い症状であれば、入院が必要でしょう。そうなれば、たとえ条件付きで付き添いの人が入れるといっても、たいへんな不自由と困難を経験することになると思います。そして、幸い軽い症状で回復した場合でも、いろいろな後遺症が出る危険性もあります。
 私が個人的に思う盲ろう者にとって最もつらい後遺症の一つは、嗅覚障害です。別の原因でかつて、断続的な嗅覚障害になったことがあります。嗅覚が低下すると、食べ物の味も分かりません。つまり、嗅覚障害になれば、事実上、味覚障害になったのも同じで、何を食べても味が分からないのです。つまり、嗅覚障害となった盲ろう者は、視覚と聴覚の2重障害ではなく、触覚以外の4感覚を失った「4重障害」の状態になってしまうということです。

 全国盲ろう者協会では、全国盲ろう者団体連絡協議会と共に、今年の夏の大会開催について、これまで議論を重ねてきました。大会を待ち望んでおられる盲ろう者の声も多く聞いていますので、なんとか開催できないものかと検討しました。全国の仲間が年に一度集う大会は、仲間との再会や出会いを通して、われわれ盲ろう者が直接コミュニケーションを交わすことのできる唯一の機会です。この大会を通じて、「また1年頑張ろう、また1年後に再会しよう」というように、それぞれの生きがいの原動力になっていると言っても過言ではありません。
 一方で、密接なコミュニケーションを必要とするのが盲ろう者であることも事実です。これにより、もし一人でも感染者がいた場合、それに伴い感染のリスクは高くなると言わざるを得ません。また、感染後の病状によっては、入院等も出てくるかもしれません。私もコロナではありませんが、かつて入院した経験があります。一人になる時間が多く、コミュニケーションが遮断されるという状況は、もう味わいたくない経験です。
 こうしたさまざまな面を考えますと、今回の政府の「方針転換」の発表により、直ちに「今年から全国大会が開催できる」とは、とても言えないと思います。
 もう少しだけ、このコロナの行方を見守りましょう。元気でいれば、必ず再会できます。
 互いに笑顔で語り合える機会が早く訪れますよう、心から願っています。もう少しの我慢です。

2023年1月30日


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2023年度「全国盲ろう者大会」の中止について

このお知らせは、2月13日に全国の盲ろう者友の会、通訳・介助員派遣事務所に対し、郵送にてご案内いたしました。


全盲ろう発第2022117号
2023年2月13日


盲ろう者友の会等地域団体
派遣事務所 代表者
関係者 各位

社会福祉法人 全国盲ろう者協会
理事長  真砂 靖

 平素より、盲ろう者福祉の向上のためにご支援ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、当協会では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、2020年度から3年にわたり、全国盲ろう者大会を中止としてきました。2023年度においても、昨夏の第7波、今冬の第8波の流行に鑑み、大変残念ではありますが、全国盲ろう者大会を中止することといたしました。
 昨年より緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限は撤廃され、大勢の人が集まる各種イベント等も開催されるようになってきました。また、本年5月8日より新型コロナウイルス感染症について、感染症法上における位置づけを2類から季節性インフルエンザと同様の5類へ移行するという方針が、国から発表されました。このようにウィズ・コロナという考え方のもと、国においても、医療体制の見直しを含め、コロナ対策としても徐々に変わってくるものと思われます。
 しかしながら、第7波・第8波での感染者数の増加、医療へのアクセスが困難であること、また第8波における感染に伴う死者数の増加等を見ておりますと、まだまだ油断すべきではないと考えています。国の方針転換による、これまでのような通常の生活に戻していくという方向性は歓迎するところですが、今後のコロナウイルスの感染状況の変化、ウイルス自体の感染力や悪性度の高い性質への変異などの状況によっては、再び従来の対応の維持という方針への転換も否定できないことから、もうしばらくは状況を見定めたいと考えております。
 また、全国各地から盲ろう者、通訳・介助員等が一堂に会し、そこで万一盲ろう者がコロナに感染した場合、感染症法上の5類では隔離措置は撤廃されますが、病状悪化の場合は入院ということも考えられます。昨秋、国からは医療機関に対して、コミュニケーション支援を必要とする障害者がコロナ感染で入院した場合、病院への家族や支援者の受入れを検討するようにという通知も出されてはいますが、盲ろう者が入院した場合の対応がどうなっていくかというところも、医療機関の対応状況を見定める必要があるだろうと考えています。
 以上のような点を踏まえた上で、大会の開催には慎重を期さざるを得ないと判断しました。現段階においては、今夏の状況を予測することも極めて難しいことから、まずは、これまで同様盲ろうの皆様が新型コロナウイルスに感染しないことを優先するといった観点で、全国盲ろう者団体連絡協議会にもご意見を伺った上での苦渋の決断であります。  全国の仲間と集える大会の開催を待ちわびているという声も寄せられており、そのご期待にお答えしたいという思いはある一方で、大会開催地において万一盲ろうの皆様がコロナに感染した場合のことを考えますと、それによって盲ろうの皆様が困難な状況に置かれ、苦しい思いをされることは避けたいと考えている次第です。皆様におかれましては諸般の事情をご賢察の上、なにとぞご了承いただきますようお願い申し上げます。
 各団体様におかれましては、貴会関係の皆様にご周知いただきますよう、併せてお願い申し上げます。

 なお、今後の全国盲ろう者大会につきましては、今後の新型コロナウイルス感染症の状況、国等の対応状況を踏まえた上で、安心・安全に大会が開催できる見通しがついた時点で開催できるよう、引き続き会場確保等含めて準備をしていく予定です。
 また、2023年度におきましては、全国盲ろう者大会に変わるオンラインによるイベントを開催する方向で検討しておりますことを申し添えます。オンラインイベントにつきましては、助成金の見通し等が立った時点で、改めてお知らせするとともに、盲ろう者友の会等地域団体の皆様には、本イベントへのご協力をお願いしたいと存じますので、併せてお願い申し上げます。

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