盲ろう者とは      

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身体障害者手帳に視覚と聴覚の両方の障害が記載されている人

 目が不自由な上に、耳も不自由な人たちのことを「盲ろう者」と呼んでいます。あの有名なヘレン・ケラーのような人、と言えばお分かりでしょうか。日本にも、このような人たちが約1万4千人いると推定されています。
 このような人たちは、家にいても、家族と会話することもできず、テレビやラジオを楽しむこともできません。点字を知らない人は、本を読むことさえできないのです。このため、「私たちにとっては、1日は24時間ではありません。40時間も50時間にも思えるつらい毎日なのです」と言っている人もいます。

 現在、東京大学先端科学技術研究センターの教授として活躍されている福島智さんは、生まれてから少しずつ目が見えなくなり、筑波大学附属盲学校高等部2年生の時には耳もまったく聞こえなくなってしまった全盲ろうの方です。大変なハンディを背負いながら、日本で初めて大学進学を果たしました。

 この福島さんの快挙に多くの盲ろう者や支援者が励まされ、1991年(平成3年)に社会福祉法人全国盲ろう者協会が設立されました。そして、この協会の支援によって全国各地域に、「盲ろう者友の会」が設立されてきました。その結果、今まで家の中に閉じこもり、家族とさえほとんど話をすることもなく孤独な生活を強いられていた多くの盲ろう者が、世の中へ出て、まわりの人々と会話を楽しむことができるようになったのです。

 日本では、社会的にも法的にもまだ「盲ろう者」の定義が確立していません。身体障害の種類と等級を規定している現行の「身体障害者福祉法」では、「視覚障害」および「聴覚障害」はそれぞれ別個に規定されていますが、両方の障害をあわせた「盲ろう」に関する規定はありません。

「盲ろう」の定義は、障害の状態や時期によって異なります

 一口に「盲ろう」といっても、その見え方や聞こえ方の程度によって、大きく分けると、(1)全盲ろう、(2)弱視ろう、(3)盲難聴、(4)弱視難聴の四つのタイプがありますが、当協会では、身体障害者手帳の視覚・聴覚の障害が併せて1~2級の盲ろう者を、特に「重度盲ろう者」とよんでいます。

  聞こえない 聞こえにくい
見えない 全盲ろう 盲難聴
見えにくい 弱視ろう 弱視難聴


 また、障害の発生の順などによって次のような類別がなされます。
(1)先天性の盲ろう者
 生まれつき目と耳の両方に障害のある方。
(2)「盲ベース」の盲ろう者
 はじめは盲で、点字の読み書きにも習熟していたが、のちに耳も悪くなった方。
(3)「ろうベース」の盲ろう者
 はじめはろうで、手話を使ってコミュニケーションをしていたが、目も悪くなった方。
(4)上記のいずれでもない盲ろう者
 「健常者」から視覚と聴覚に障害を生じた方。
 ※盲ろう者の中には、知的障害や運動障害を併せ持っている人などもいます。

    聴覚障害の受障時期
    先天的~
乳幼児期
~成年 ~老年期
視覚障害の
受障時期
 
先天的

乳幼児期
全盲ろう 盲難聴
~成年 弱視ろう 弱視難聴
~老年期


コミュニケーション方法の種類と通訳

 盲ろう者のコミュニケーション方法は、視覚及び聴覚の障害の程度や生育歴、他の障害との重複のしかた等によって、実に様々です。欧米ではおおむね手話や指文字を原型としたものが多いのですが、日本では点字を応用したものも使うなど、特に種類が多いという特徴があります。従って、通訳・介助員を養成する場合も、個々の盲ろう者に合ったコミュニケーション手段で通訳ができるよう、様々なタイプの通訳・介助員を養成する必要があります。
 コミュニケーションには、盲ろう者が直接他者と会話を交わす場合と、通訳・介助員を介して会話を交わす場合とがあります。直接会話を交わす場合は、双方が共に理解できるコミュニケーション手段を用いることになります。しかし、多くの場合は、通訳・介助員を介しての会話であるため、守秘義務を始めとする通訳・介助員のマナーが大きく問われてきます。
 たとえば、通訳・介助員のマナーの一つとして、「状況説明」があります。これは、単に会話や会議の内容を通訳するだけでなく、周囲の状況の変化、人の出入り、発言者の表情や容姿など、逐一説明を加えることで、盲ろう者が迷わず身を処せるという効果をもたらします。こうした盲ろう者への気配りも、通訳・介助員に求められる大切な要素です。
 以下に、具体的なコミュニケーション方法をご紹介します。

手書き文字

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 盲ろう者の手のひらに文字を書いて伝える方法で、「手のひら書き」とも言います。この手書き文字は、初心者でも比較的簡単にできるという長所がある反面、時間がかかるために、あまり多くの情報を伝えられないという短所もあります。


音声

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 盲ろう者に少し聴力が残っている場合、その盲ろう者が聞こえやすいように耳元や補聴器のマイク(集音器)などに向かって話す方法です。盲ろう者の聞こえの状態によって、声の高低、強弱、速さ等に十分な配慮が必要です。


筆談

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 盲ろう者に視力が残っている場合、通訳者が紙などに文字を書いて、盲ろう者に伝える方法です。その盲ろう者の見やすい大きさ、太さ、間隔の文字を書いて伝えます。手書き文字と同様、初心者でも比較的簡単にできるのが長所ですが、時間がかかるのが短所です。


手話

 手話を読み取れる盲ろう者は、主に次の二つの方法を使ってコミュニケーションを交わしたり、通訳を受けたりします。いずれの場合も、できるだけゆっくり、はっきりとした表現を心がける必要があります。
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触手話(触読手話)
 全盲ろう者の場合は、相手の手話が見えませんから、手話の形を手で触って読み取ります。

弱視手話(接近手話)
 弱視ろう者の場合は、その盲ろう者の見え方に合わせて、少し離れて手話を読み取ったり、逆に接近して手話を読み取ったりします。通訳者は、その盲ろう者の見える範囲内で手話を表わす必要があります。

点字

 点字の読み書きができる盲ろう者は、主に次の二つの方法を使ってコミュニケーションを交わしたり、通訳を受けたりします。
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ブリスタ
 ドイツ製の速記用点字タイプライターで、点字を使用する盲ろう者の間では広く使われています。キーをたたくと幅13ミリの紙テープに点字が打ち出されてきます。音が静かな上に、たびたび紙を取り替える必要がないので、会議や講演会などの通訳に適しています。


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指点字
 点字タイプライターのキーの代わりに、通訳者が盲ろう者の指を直接たたく方法です。特別な道具は必要なく、日本で開発された独特の会話方法で、正確に迅速に伝えられます。


指文字

 大きく次の二つに分けられます。
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日本語式(50音式)指文字
 聴覚障害者の間で一般的に使われている日本語式指文字を、盲ろう者に見せたり触らせたりして伝えます。日本語式指文字だけを用いて通訳を受ける盲ろう者もいますが、実際には、手話と一緒に補助的に使われることが多いようです。

ローマ字式指文字
 アメリカ式アルファベット指文字をローマ字表記で表わし、盲ろう者の片方の手のひらに触らせて伝えます。この方法は、手の動きが小さく、少ない数の文字で表現できる利点があります。また、ローマ字の母音と子音の組合せは、点字の構成に共通する部分が多く、点字学習の導入として応用できることから、盲ろう児の教育に多く使われています。

パソコン

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 通訳者がパソコンを用いて入力し、その画面を盲ろう者が読む方法です。講演会などでスクリーンに映し出されたパソコンの文字を全員で読む場合や、通訳者のパソコンと盲ろう者のパソコンを1対1でつないで、盲ろう者が読みやすい文字の大きさや色、背景の色を設定して読む場合とがあります。近年、利用しやすいソフトウェアの普及に伴って、急激にそのニーズが増えているコミュニケーション方法です。


その他

 ろう学校で口話教育を補助するために作られた「キュード・スピーチ」などがあります。また、コミュニケーション手段を十分に獲得していない、先天性盲ろう児・盲ろう者とのコミュニケーションには、親や特定の指導者との間で、物や身振りサインなどを使った、さまざまな合図が用いられています。