平成29年度 全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会報告書 平成29年10月14日(土)〜10月15日(日) クロス・ウェーブ幕張 主催 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会R〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 目次 1概要 1 1-1.全体概要 1 1-2.カリキュラム 2 1-3.カリキュラム別概要 3 2カリキュラム別報告 5 2-1.全体会1 5 2-2.グループ討議 11 2-3.グループ発表 19 2-4.全体会2 23 3総括 29 4参考資料 33 4-1.全体会1 33 4-2.グループ討議 44 4-3.講評 45 4-4.全体会2 51 4-5.事前課題集計結果 55 4-6.事後アンケート集計結果 59 平成29年度全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会 1概要 1-1.全体概要 平成29年10月14日(土)〜15日(日)の2日間、クロス・ウェーブ幕張にて平成29年度全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会を開催した。 本研修会は盲ろう者のリーダーを育成し、盲ろう者地域団体の運営力向上に繋がる知識と技術を身につけることで、地域の盲ろう者福祉の充実を目指すと共に、団体の活性化を図ることを目的とする。本年度は全国各地から11名の盲ろう者が受講し、以下のとおり実施した。 【日程】 平成29年10月14日(土)〜15日(日) 2日間 【会場】 クロス・ウェーブ幕張 ホール・中研修室 (千葉県千葉市美浜区中瀬1-3) TEL:043−298−1161 1-2.カリキュラム 【平成29年10月14日(土)】 12:30 受付開始 13:00 開講式 13:15 全体会1 『盲ろう者は友の会で何をするか』 1.講義 「友の会の目的と機能」 2.スピーチ 「私にとっての友の会」 15:00 休憩 15:15 グループ討議 『友の会活動でのリーダーの役割』 17:15 休憩 18:00 意見交換会 20:00 終了 【平成29年10月15日(日)】 9:00 グループ討議(リハーサル) 10:30 休憩 10:45 グループ発表・講評 12:00 昼食・休憩 13:00 全体会2 『盲ろう者福祉〜過去・現在・未来〜』 15:00 閉講式 15:30 終了 1-3.カリキュラム別概要 @全体会1 『盲ろう者は友の会で何をするか』  鳥取県盲ろう者支援センター職員の世川桃子(せがわ ももこ)氏の司会のもと、全国盲ろう者団体連絡協議会会長の高橋信行(たかはし のぶゆき)氏が「友の会の目的と機能」について講演した。  その後、奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」役員の川口智子(かわぐち ともこ)氏、愛知盲ろう者友の会事務局の小林功治(こばやし こうじ)氏、広島盲ろう者友の会会長の大杉勝則(おおすぎ かつのり)氏が友の会活動で成長できたこと、大切に思っていることを自身の経験をもとに語った。 Aグループ討議・グループ発表・講評 『友の会活動でのリーダーの役割』  3つのグループに分かれ、川口氏、小林氏、大杉氏の司会のもと、友の会が抱えている課題、その課題の解決のためにリーダーがするべきことは何かについて討議が行われた。そして、話し合った内容をもとに、全体でのグループ発表に向けて練習を行った。  その後、世川氏の司会のもと、3つのグループの代表による発表が行われ、最後に、高橋氏が講評をし、さらに「友の会活動のバロメーター」についての講演を行なった。 B意見交換会  世川氏の司会のもと、受講者と講師が所属する友の会活動や盲ろう者福祉等について意見交換を行った。 C全体会2 『盲ろう者福祉〜過去・現在・未来〜』  大杉氏の司会のもと、東京大学先端科学技術研究センター教授の福島智(ふくしま さとし)氏より、これまでの日本の盲ろう者福祉の流れをふまえて「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」の現状と課題について説明があった。そして、今後の派遣事業のあり方について解説した上で、平成30年度より開始予定の「盲ろう者向け同行援護事業」(仮称)についての説明があった。続いて、大杉氏より、広島盲ろう者友の会が盲ろう者向け同行援護事業(仮称)を開始するにあたり、NPO法人格の取得準備を進めていること、事業を始めるために必要なこと等についての報告があった。その後、質疑応答を行った。 2カリキュラム別報告 2-1.全体会1『盲ろう者は友の会で何をするか』 講師:高橋信行 司会:世川桃子 (1)講義「友の会の目的と機能」  全国で友の会が設立し始めた背景や、友の会の目的と機能を学ぶ上で、具体的な事例・体験を交え7つのポイントでわかりやすく講義を行った。 @盲ろう者を認め、盲ろう者に活躍の場を与える  講師の高橋氏は盲導犬ユーザーである。盲導犬は活躍して褒められたときに大きな喜びを感じると言われるが、人も同様で、役割を与えられ、一生懸命やったことが評価されると嬉しく思う。しかし、盲ろう者が一般社会で活躍する機会は極めて少ない。友の会には盲ろう者の仕事や活躍する場と機会があり、そこで一生懸命やったことが認められると意欲が湧き、気持ちも変わり生き生きと生活ができるようになる。 A盲ろう者の受け皿になる  盲ろう者は全国に約1万4000人いるとされ、年齢別では80歳代を中心に高齢者が多い。生まれつきの盲ろう児や、幼少期からの盲ろう者はごく僅かで、大多数の人は後から盲ろうになっている。友の会は、新しい盲ろう者を引き受ける受け皿になっている。 Bコミュニケーション方法を学び、獲得する場  盲ろう者に「現在使っているコミュニケーションはどこで学んだか」と質問すると、多くの人は「友の会」と答える。友の会の中で盲ろう者同士が出会い、話をして、多種多様なコミュニケーション手段を知る。その中で自分に最適な方法を選び、練習して習得する。友の会は盲ろう者が自分自身で情報の受信・発信を可能にするために、コミュニケーション方法を学ぶ重要な学習の場となる。 C障害の受容の場  中途で盲ろうになれば非常に大きなショックを受けるが、友の会には仲間がいて活躍できる場があることが分かると、それを機に前向きに考えることができるようになる。また、友の会に出かけて仲間を見つけ、盲ろう者は自分一人ではないということを確認できる。そして自分が皆のために働くという経験を通して、自分を盲ろう者と認められるようになる。 D派遣事業の主導権を持つ  現在、派遣事業を受託している友の会は全体の約3分の1。それ以外の受託団体は、視覚障害者、あるいは聴覚障害者向けの派遣事業の方法を、盲ろう者向けの派遣事業に持ち込み、利用盲ろう者が困惑するケースも出ている。来年度から、盲ろう者向け同行援護事業(仮称)が開始される予定。派遣業務は盲ろう者を理解している友の会で行うのがベストだが、それが難しい地域では担当する事業所に友の会から要望を出していくことが必要になる。その際、全国の盲ろう者向け派遣事業の実態を参考にしながら理論的に説明し要望につなげることが大切。 E社会啓発  友の会でイベントを開催する。また、メディア等を大いに活用し、盲ろう者の存在やニーズを訴える機会を作る。盲ろう者と支援者がいきいきと魅力的な活動をしている様子を積極的に発信する事で、盲ろう者の掘り起しや友の会の会員増につなげる。 F全国盲ろう者団体連絡協議会の一員として活動する  盲ろう者の当事者団体として2006年に「全国盲ろう者団体連絡協議会」が発足し10年が経つ。全国盲ろう者協会と共に盲ろう者福祉の推進に力を注いでいる。盲ろう者の意見を取りまとめ、各方面に要望、働きかけをしている。 (2)スピーチ「私にとっての友の会」 〜友の会活動で成長できたこと、大切に思っていること〜 スピーチ1 川口智子 障害の程度:弱視ろう コミュニケーション方法 受信:弱視手話 発信:手話  中学3年の時、初めて参加した交流会では、様々なコミュニケーションが飛び交っていて驚いた。  これまで「ろう」と「盲ろう」の両方で活動をし、行事等に参加してきたが、自分には「盲ろう」が合っている。  盲ろうの世界は、年齢に関係なく子供から年配の方まで交流ができる。コミュニケーションも違えば考え方も違い刺激を受ける。先輩方との交流が学びの場となり、将来の備えになっているようで不思議と将来に不安はない。  大切なことは一人ひとりの声を聞き、積み重ね、よりよい友の会を作っていくこと。 スピーチ2 小林功治 障害の程度:弱視難聴 コミュニケーション方法 受信:音声、接近手話 発信:音声、手話  あいち聴覚障害者センターでは盲ろう者の派遣・養成・現任研修会を担当、友の会では事務局を担当。 大切なことは以下の3つ。 @わかりやすく話す  盲ろう者はそれぞれの生い立ち、コミュニケーション方法、理解度が違う。語彙の少ない盲ろう者に合わせ、時間をかけてゆっくりと同じ認識で進む。相手に合わせて話すことが大切。「盲ろうタイム」を実践。 A自分だけで作業しない  自分だけで仕事を抱えず周囲を巻き込んで周りの人にも役割を振り分け、仕事を任せる。「ありがとう」と声を掛けることで自信と意欲に繋げる。 B自分自身が楽しむ  中途で視覚・聴覚の2つの障害を持つ事は非常に苦しい。さらに皆の為に活動すればエネルギーとストレスがかかる。だからこそ自分自身が楽しむことが大切。苦しい時は休み、リラックスできる環境と趣味を持つこと。リーダーが笑顔でいたらみんなが楽しく活動できる。笑顔でいるためにも自分の時間を大切に。 スピーチ3 大杉勝則 障害の程度:全盲ろう コミュニケーション方法 発信:基本的に手話 受信:基本的に触手話。相手によって、手書き、指点字  広島盲ろう者友の会の立ち上げから友の会に関わり、23年間会長をしている。  聴者の中で自分だけが聞こえなかった時、手話を覚えるが次第に手話が見えなくなり話が通じなくなった時、その度に大きな孤独感に苛まれた。しかし地域に他にも盲ろう者がいると分かり、自分以外に苦しむ人を支援することに「使命感」を感じ活動を続けている。  全国大会は第5回から参加している。会場で孤立している盲ろう者を見つけると、声を掛け、必ず握手をする。  分からない事はそのままにしないで、自分で調べたり、人に聞いたりする。 「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」 質疑応答 Q1.(大杉氏へ)新会長は育成中か、又その方法は。 A1.役員会で経験を積んでもらい、助言しながら育てている。 Q2.(川口氏へ)現在友の会で活動中の5名は役員か、会員か。 A2.全員役員である。但し全員が揃って活動できるわけではない。 <考察>  講義では、パワーポイントを活用した調査データの表示、講師自身の体験談等を交えながら、友の会が担う7つのポイントが分かりやすく説明された。平易な言葉と、はっきりとした口調で、とても聞きやすく、受講者のうなずきや、涙を拭う様子などからも、十分に内容が伝わり、共感を得られたことが推察される。また、特に音声通訳を受ける受講者にとっては、受信する際の負担軽減にも繋がったと思う。受講者が講義に集中でき円滑に進行できるよう、機器等の動作確認は事前に時間を設け、開始時間に影響が出ないようにスムーズに行う必要があると感じた。  文責:世川桃子 2-2.グループ討議 グループ1 司会:川口智子 <要旨>  リーダーとしての役割とは何かというテーマを中心に、2日間にわたりグループ討議を行った。1日目は、4人の受講者が友の会活動で困っていることを出し合い、その上でリーダーとしてどのように解決していくのかをまとめた。2日目は、1日目でまとめた内容を確認したあと、受講者の中から発表者を決めた。  友の会活動の中で共通する大きな問題は、盲ろう者の掘り起こしである。高齢者が多く、なかなか若い盲ろう者が現れない。役所へ訪問し、広報等へ友の会の案内を記載してもらうこと、ラジオ局など公共の電波を利用し啓発すること、相談員を設置することなど、盲ろう者を増やす方法を話し合った。  そして、盲ろう者を増やすためには盲ろう者がリーダーシップを発揮する必要があるとの結論に至った。  そこで、盲ろう者に求めるリーダーの役割とは何か、以下のようにリーダーの役割をまとめた。 ・都道府県、区市町村、他の障害者団体、大学へ盲ろうという障害を理解してもらうために、きちんと説明すること。 ・盲ろう者と支援者との良好な関係を作り、一人ひとりの意見を引き出し、うまく意見をまとめること。 ・盲ベースの盲ろう者とろうベースの盲ろう者が共に協力していけるように、一人ひとりのコミュニケーション方法を理解すること。 <考察> ・よかった点  受講者自身が友の会での活動を積極的に語ったため、リーダーの役割についてスムーズにまとめられた。  どの地域も盲ろう者が少なく、掘り起こしが重要な課題となっているが、受講者自身の体験に基づき、どうやったら盲ろう者を増やしていけるのか、意見を出し合えた事は非常によかった。また、それぞれの意見を引き出しまとめた上で、リーダーの役割について明確に示せた。受講者自身が討議を通じて、リーダーの役割を果たせたと思う。 ・反省点  本来のグループ討議は、受講者同士が議論し合う場であるが、司会が一方的に質問し、それに答えるだけの部分が多々あった。そのため、深く議論する余裕がなかった。  「リーダーの役割」というのはよくあるテーマではあるが、盲ろう者にとって友の会の運営を考えたときに最も深いテーマである。受講者同士で議論する余裕があれば、さらにたくさんの友の会の活動での問題点を提示し、様々な角度からリーダーの役割について考えられたと思われる。  文責:川口智子 グループ2 司会:小林功治 <要旨> 討議1  全体会1での講義、スピーチを踏まえて、参加者の地域で課題になっていることを話し合った。出された意見は以下のとおりである。 ・新聞で盲ろう者友の会を立ち上げるということを知った。一緒に活動することにより引きこもり生活から脱出できた。友の会があるということを広く周知することが大切である。 ・ろうあ協会の行事に盲ろう者が参加している。過去に、ろうあ協会の協力を得て、ひきこもりの盲ろう者の掘り起こしをした経験がある。 ・聴覚障害者情報提供施設の働きかけで、ろうベースの盲ろう者は多くいるが、盲ベースの盲ろう者の数が少ないため、掘り起こしに力を入れている。  また、盲ベースの盲ろう者と、ろうベースの盲ろう者との直接のコミュニケーションがうまくいかないが、他の地域でどのようにしているのかという質問がでた。地域によっては、コミュニケーション学習会を開いたり、盲ろう者同士で話をするときには、わかったときにする合図(手の甲を軽くたたくなど)を決めておくことが大切との回答があった。 討議2  討議1の話し合いの中から、以下の3つの課題が浮かび上がった。 1.友の会の存在を社会に知らせる 2.他の障害者団体等の協力を得る 3.ろうベースの盲ろう者と、盲ベースの盲ろう者のコミュニケーションを円滑にする 課題1「友の会の存在を社会に知らせる」  行政の広報等の配布物に、友の会の紹介や活動を載せてもらえるよう積極的に友の会がアピールしていくこと。また、実際に友の会のリーダーが、家に引きこもっている盲ろう者に会いに行き、直接話をし、同時にピアカウンセリングをする。当事者同士で気持ちを共有することが重要になってくるとの意見がでた。 課題2「他の障害者団体等の協力を得る」  リーダーが他の障害者団体をはじめ、手話サークルや音訳・点訳ボランティアサークル、行政、盲・ろう学校の関係者、または養成講習会の受講者などに働きかけるのはどうか。働きかける際にはリーダー自身が出向くことが大事である。ただ話に行くのではなく、チラシを作ってわかりやすく説明することも大事。チラシの内容は、友の会の事業について、通訳・介助員派遣制度について、養成講習会の紹介等を載せるなどの意見がでた。 課題3「ろうベースの盲ろう者と盲ベースの盲ろう者のコミュニケーションを円滑にする」  盲ろう者のためのコミュニケーションの学習の場を設けること、合図を使うことの提案があった。また、盲ろう者のコミュニケーションに合った通訳・介助方法を把握し、必要であればリーダー自身がコーディネートを担うなどの意見がでた。 <考察>  受講者はすでに、地元の友の会で役員活動をしている方ばかりで、積極的に地元の課題を発言していた。  ある受講者から、地元で抱えている課題があるが他県ではどのように対応しているか、といった他受講者への質問もあり、課題の解決に対し意欲がうかがえた。また質問に対し、全ての受講者が回答し、質問者の参考になるものとなった。  2日間を通し、活発な意見が多く、発言の絶えない討議となったが、討議2の話し合いが2日目にも続き、結果的にリハーサルの時間が短くなったので、全体として時間が足りなかった。  文責:小林功治 グループ3 司会:大杉勝則 <要旨>  はじめに、3名の受講者に、盲ろうになった時期、現在の見え方や聞こえ方、コミュニケーション手段などの自己紹介をしてもらった。  次に、友の会での取り組み(啓発活動)などを中心に以下の意見が出された。 ・突然盲ろうになった時は家族みんなで泣いた。 ・入会当初は友の会の活動を軽く考えて気にもとめていなかったが、関わるうちにもっとみんなのことを考えなければと考え方が変わった。 ・友の会に新しく入会してきた人を大歓迎し、自分のことも話したい。 ・友の会のみんなともっと話をしたい。 ・盲ろう者向け通訳・介助員の養成講習会を平日に開催したら、受講者が昨年の半分以下になってしまった。 ・派遣事業は聴覚障害者センターが実施している。担当が新人のため不手際もあり、相談しにくい。 ・通訳・介助員を増やすためにはどうすればよいか、考えていきたい。 ・通訳・介助員の派遣利用時間が、人によって制限があったり無かったりして不公平。 ・派遣事業も友の会でやりたい。 ・NPO法人格を取得するための準備を進めている。 ・新たな盲ろうの会員がなかなか増えないが、盲ろう者支援センターでは掘り起こしをすすめている。 ・県との意見交換会を年1回実施している。 ・友の会の会員をもっと増やしたい。 ・新しい盲ろう者に、友の会のことを説明し、交流会に誘っている。 ・友の会のパンフレットやDVDなどを行政の窓口に配布している。 ・盲ろう者向け通訳・介助員の養成講座を修了した受講者にも友の会の会員になってもらえるよう、呼びかけている。 ・イオンショッピングセンターの黄色い幸せのレシートキャンペーン活動に参加し、友の会や盲ろう者の実態などをPRしている。 以上の内容をまとめ、3名の受講者から1名の発表者を決めた。 <考察>  グループ討議は、受講者の人数が少なく家庭的な雰囲気の中、コミュニケーションも滞りなく進み、会話のキャッチボールが円滑にできた。  特に、盲ろう者の掘り起こしや会員への呼びかけの必要性を重点的に話し合った。  参加者同士の貴重な情報交換の場にもなり、有意義なグループ討議となった。  文責:大杉勝則 <グループ討議全体の考察>  グループによっては、討議中、受講者の受信方法や速度、聞こえの不安定さなどから発言が交錯してしまう場面があった。通訳方法や、通訳上の留意点など、討議に入る前に全員で共有すると改善できるのではないかと考える。  ただ、討議の内容を板書したことで、確認ができ、通訳がしやすく、受講者にとっても内容を理解する上での一助となった。  文責:世川桃子 2-3.グループ発表「友の会活動でのリーダーの役割」 講評:高橋信行 司会:世川桃子 グループ1の発表  盲ろう者同士、お互いのコミュニケーション方法を勉強し対話を重ねることにより理解し合う。  盲ろう者の掘り起しは盲ろう当事者が直接行政に出向き、盲ろう者自身が説明することが有効。盲ろうの障害特性や必要な支援を、きちんと説明できるように工夫することが大切。 友の会で講演会等を開催するなど積極的なPRを行う。様々な意見をまとめ、支援者との関係もうまく築くことで活発な活動につなげる。 グループ2の発表 @友の会の周知 引きこもっている盲ろう者のところに、盲ろう当事者が直接訪問し、情報を伝え、ピアカウンセリングも行う。 県・市等の広報紙に友の会の活動等を掲載できるように要望を出す。 A他団体との協力 ボランティア団体等に周知とPRをお願いする。 Bろうベースの盲ろう者と盲ベースの盲ろう者とのコミュニケーションの違い  友の会をお互いのコミュニケーションの習得の場にする。  話をするときは簡単な合図も有効。当事者同士が直接触れ合うことで気持ちが通じ、温もりが伝わる。  盲ろう者同士、直接コミュニケーションが取れないときは、通訳・介助員が間に入り、スムーズに会話ができるような態勢を整えることも大事。 グループ3の発表 神奈川:啓発DVDやパンフレットを行政に配布。役員が他の障害者団体等の様々なイベントに参加し、盲ろう者をPRする。 広島:眼科に、しおりを置いてもらう。 鳥取:盲ろう者支援センターの相談員が、盲ろう者宅を訪問し情報提供をする。交流会などに誘う。 群馬:福祉作業所でモップなどを作り、福祉関係のイベントで販売し、友の会をPRする。また、イオンの黄色いレシートキャンペーンに参加するなど、様々な方法で啓発活動を行っている。  助言者の高橋氏から講評があり、その後講義が行われた。 発表に対する講評  グループ討議では受講者が地域の課題と、その解決方法を積極的に発言し、各グループの司会進行もスムーズだった。  発表者が発表する内容を全て覚え、何も見ないで話した事には驚いた。各グループ、素晴らしい発表だった。 講義「友の会活動のバロメーター」 1.コミュニケーション方法獲得の課題  盲ろう者には、盲ベース、ろうベース、健常ベース、先天性と、障害の発生順等による違いがあり、そのため、それぞれ独自の文化を持っている。  コミュニケーション方法については、盲ろう者になることによって、従来の方法では対応が難しくなり、盲ベースは指点字、ろうベースは点字、健常ベースは点字や手話の習得が必要になる場合もある。  また、先天性の盲ろう者は、コミュニケーション手段に加えて様々な概念の獲得を身につける必要がある。 2.様々なタイプの盲ろう者の協働  様々な文化を持つ盲ろう者が協力し、友の会を運営する様子はまるで小さな地球のようである。 3.盲ろう者と支援者との関係性  支援者は、違う文化を持ち、異なるコミュニケーション手段の盲ろう者同士を「つなぐ」こと。当事者は主体性を持ち、支援者はつなぐという役割を念頭に、両者バランス良く活動をしてほしい。 <考察>  発表では「孤立している盲ろう者を探し出し、仲間の生活を良くするために自ら行動する」という当事者の積極性・自主性が共通した内容だった。講評では「多種多様な盲ろう者同士をつなぐのは、支援者の役割である」と言われ、当事者と支援者、両者のバランスや、忘れてはいけない支援のあり方に深い示唆を与えた。参加したすべての人がそれぞれの立場や環境で、地域の友の会で何をしたいかが明確になる、とても有意義な発表・講評となった。  文責:世川桃子 2-4全体会2『盲ろう者福祉〜過去・現在・未来〜』 講師:福島智 司会:大杉勝則 講義  グループ発表を聞き、行政の担当者と話をする場面を想定してのアドバイスがあった。  書類をきちんと作り、できれば1週間前までに提出し、要望のポイント・理由を説明する文章をつけること。書類作成に慣れている盲ろう者や、支援者に手伝ってもらっても構わない。ただし、内容はきちんと把握しておくこと。  また、盲ろう者自身が話さなければ、説得力がない。上手に話せなくてもいいので、当事者が話すことが一番大切である。  実際に話をする際は、ポイントを押さえる必要がある。例えば、「話が3つあります」というように最初にいくつ話すのかを提示し、全体の見通しを伝える。そして最後に「できれば、この3つの問題をお願いしたいと思います」ともう一度締めくくるとわかりやすい。  また、優先的にやってほしいことと、できればやってほしいことを分けて話すのも工夫のひとつ。もっと言えば、本当に、要望したいことを1つに絞ることが効果的だと思う。要望が実現したら毎年変えていき、実現しなければ繰り返し同じ要望をすればいい。  障害者自立支援法が2006年にスタートし、2009年にはほぼ全ての都道府県で派遣事業がスタートした。  地域生活支援事業の派遣事業は、問題点がいくつかある。 ・派遣時間が少ない ・利用できる活動の中身に制限が加えられているなど。 今年度、国の障害福祉を担当する部門で使う予算は1兆7000億円くらい。その内、自立支援給付(個別給付)事業は、1兆円を超えた予算が付いている。  ところが、地域生活支援事業は、予算が500億円にも満たず、その枠組みの中に盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業が入っている。この地域生活支援事業の予算は10年前と比べてほとんど増えていない。いつまでたっても予算不足。  以前から、予算が十分ある個別給付に移るべきだと考えていたが、自己負担があるから嫌だと、賛成してくれる人はあまりいなかった。しかし、自己負担は、盲ろう者本人か盲ろう者の配偶者に一定の所得がないと発生しない。(年間300万円以下、市町村民税非課税世帯は自己負担なし)  来年度(2018年度)から、盲ろう者向け同行援護事業(仮称)を始めたいと考えている。  どんな事業もすぐに始まることはないので、この事業も、準備をしながら細かい問題を調整し、工夫してやっていけばいい。来年は私たちにも大切な年になると思っている。  盲ろう者向け同行援護事業(仮称)のメリット・デメリットは何か。 〈メリット〉 ・予算が増える。 ・ルールや基本的な約束事は、全国一律になる。 〈デメリット〉 ・自己負担の問題。  どうしても自己負担をしたくない場合は同行援護は使わず、今までの地域生活支援事業の通訳・介助員派遣事業を使えばいい。 ・友の会がNPO法人格を持っていないと事業者になれない。  確かに、友の会が派遣事業を運営すれば、一定の収入が入り、財政的な基礎を作っていける。だが、全ての友の会が新しい事業を受託して、運営するのは難しい。最初は、他の団体にやってもらったり、全国盲ろう者協会が地方の友の会に代わって行うこともあり得る。また、しばらく新しい事業を行わずに様子をみるという判断もあると思う。  次に大杉氏より、来年度から始まる盲ろう者向け同行援護事業(仮称)、障害福祉サービス事業を友の会がどのようにしてはじめたらよいかという話があった。  まずは、法人格の取得が必須である。  次に3つの準備が必要になる。 (1)人材  常勤職員として管理者とサービス提供責任者を雇用すること。(管理者とサービス提供責任者を兼ねる職員1名でもよい)他に、従業員(通訳・介助員)も確保する。 (2)場所  NPO法人の事務所は個人の自宅でも可能だが、利用者や通訳・介助員、職員等が出入りするので、公共の施設が望ましい。 (3)資金  役所に障害福祉サービス事業を運営するための申請をし、認可がおりるまでには、2カ月ぐらいかかる。認可がおりてから運営が始まるが、実際に事業所にお金が入り運用できるまで4ヶ月程度かかる。その間は自分たちで運営費を工面する必要が出てくる。  準備する運営費は、職員や通訳・介助員への給与、事務所の家賃、光熱費などで、概算すると、少なくとも200万円は必要と思われる。  以上の3つの準備が整ったら、立ち上げる事業所のある役所へ申請を行う。 〈事前アンケート・質疑応答に対する回答〉 Q1.新しい事業所を運営する場合、盲ろう者が中心となり運営する必要があるのか。また、そこで働く盲ろう者や職員の給料はどうなるか。ボランティアになるのか。 A1.盲ろう者が職員になるのは、とても素晴らしいことだと思うが、全体のバランスを考え職員を配置していくことになる。職員にはボランティアではなく賃金を支払う。  視覚障害者のための同行援護事業の場合は、1時間に2000円程度支払われている。2000円のうち、経費(家賃、人件費、光熱費など)を差し引きガイドヘルパーに支払われるお金は1000円程度。盲ろう者向け同行援護事業(仮称)の単価はまだ決まっていない。  新しい制度をやるからには、経費(家賃、人件費、光熱費など)を支払い、きちんと経営ができるようにしていくことが目標である。将来的には各友の会が事業所を運営する。そこに盲ろう職員が1人いて、ピアカウンセリング業務もする。安定した事業所経営ができれば、文字通り友の会が地域の核になるので、友の会が運営することが望ましいと思っている。 Q2.通勤・通学等に、派遣が使えないのはなぜか。 A2.毎日の通勤・通学の往復に、全て税金を使ったら、予算がいくらになるか分からない。通勤・通学の移動介助は盲ろう者だけの問題ではないので、視覚障害者団体とも協力して、何とか実現したい。 Q3.通訳・介助員の指名をする場合の、メリットとデメリットはあるか。 A3.メリットは一人ひとりの盲ろう者が望む支援を提供できる人が派遣されるということ。  デメリットは、一人の通訳・介助員に通訳依頼が重なってしまうこと。また、同じ通訳・介助員に依頼を続けていると、新しい通訳・介助員が育たず、増えていかない。  では、どうしたらいいのか。指名制とコーディネート制を同時に並行してやることが望ましい。 Q4.来年度から始まる盲ろう者向け同行援護事業(仮称)について、各友の会でいきなりやるのは難しいが、具体的に全国盲ろう者協会がどのような形で関わるのか。 A4.全ての友の会に対して、新しい制度の内容やどのような規定を設けるかなど、情報提供をしていく。書類を送るだけではなく、協会の職員が出向き説明をすることもある。  今現在、説明できないのは、正式な事業として決まるのが今年度の終わり頃になる予定だから。決まり次第、情報提供をしていく。  まだ可能性の段階だが、全国盲ろう者協会を中心に、地方に支部を作り、その支部の職員は地元の人にしてもらう。小さな規模だが新しい事業が応援できるようにするネットワークを作って、派遣事業をする工夫が必要になる。 <考察>  平成30年度から新しく始まる、盲ろう者向け同行援護(仮称)について、まだ理解できていない、不安を持っている盲ろう者も多い中、この講義を通じて少しでも理解してもらえたと感じた。  しかし、周知するためには、今後も今回のような集まりを設け、話し合う場が必要であり、新しい制度について全国で情報交換ができるよう力を入れていきたいと考える。  文責:大杉勝則 3総括 (1)研修会を実施した背景  現在、障害者総合支援法(以下、同法)の都道府県地域生活支援事業としての「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」が実施されている。  しかし、自治体によって盲ろう者一人当たりの利用可能時間数や通訳・介助員の待遇等の地域格差が著しいことが大きな問題となっている。  そこで、国において、盲ろう者の特性とニーズに見合った通訳・介助員派遣制度のあり方について検討がなされ、当協会としても国との協議を重ねてきた。  その結果、平成30年度より、従来の派遣制度を残しつつ、同法にもとづく自立支援給付としての同行援護事業の枠組の中で、「盲ろう者向け同行援護事業(仮称)」が新たに開始されることとなった。  こうした情勢をふまえ、友の会など盲ろう者地域団体が地域の盲ろう者福祉の拠点として、通訳・介助員派遣事業等を展開できる組織として成長していくことが急務である。そのための人材、とりわけ盲ろう当事者のリーダーの育成は喫緊の課題となっている。こうした背景から、前年度に引き続き、厚生労働省の委託事業として本研修会を実施することとなった。 (2)研修会を終えて 成果 @企画の創意工夫  昨年度の反省を踏まえ、受講者の所属する友の会の問題と結びつけて考え、主体的に受講できるよう研修内容を工夫することができた。 Aリーダーのあり方をイメージできた企画運営  実際に友の会でリーダーとして活動をしている盲ろう当事者によるスピーチを導入したり、企画委員が通訳・介助員のサポートを受けながら活動している様子を実際に見ることで、受講者が友の会での盲ろう当事者のリーダーの役割について具体的にイメージすることができた。 B研修会への主体的な参加  事前課題(アンケート)を実施することで、受講者自身が所属団体の事務局や支援者の協力を得ながら、一番身近な自分の地域の派遣事業について調べ、所属団体の抱える課題をまとめてくることで、受講者の研修会への主体的な参加意欲を引き出すことができた。 C地域活動へのモチベーションの向上  事後アンケートの回答からも「地元に帰り、友の会を大きくする力になりたい」等、全体として受講者の今後の地域活動へのモチベーションを高めていくことにつながった。 (3)反省点 @開催日程や会場の選定   開催時期が、地元の行事と重なってしまうなど、研修会への参加を見合わせた団体も少なくなかった。 早い時期に開催日程と会場を確定し、案内していく必要がある。 A時間配分  限られた日程の中で、全体会において、質疑応答の時間があまり確保できなかった。講義と質疑応答の時間配分を工夫する必要がある。 B情報保障(通訳)態勢  様々なコミュニケーション方法を用いる盲ろう者同士が発言する場において、発言者の声が聞き取りにくい、話の内容にずれがある、発言者が表す手話の読み取り通訳がスムーズにできない、パソコン通訳の文字の誤変換がある等が見られた。このような事態が起きることを想定し、あらかじめ話し合いのルールを設けることや、調整役のスタッフをつける必要があった。 (4)今後の展望  平成30年度より、「盲ろう者向け同行援護事業」(仮称)が開始される。新しい制度が盲ろう者とその家族、通訳・介助員にとって利用しやすいものとなることが重要である。  そのためには、盲ろう者の特性とニーズを一番理解している友の会等の盲ろう者地域団体が、組織基盤を一層強化していく必要がある。その要となるのが、盲ろう当事者のリーダーである。  しかし、地域の過疎化や、盲ろう者とその家族の高齢化・障害の重度化が急速に進む中では、活動できる盲ろう当事者の人材確保が難しく、盲ろう者のエンパワーメントの発揮をいっそう困難にしている。  当協会としては、全国的な規模で啓発活動をよりいっそう押し進め、新しい盲ろう者の掘り起こしの強化をしていく。同時に、各地の盲ろう者がリーダーとして、通訳・介助員を含む支援者と良好な関係を築きながら、地域の盲ろう者福祉の拠点づくりに積極的に取り組んでいけるよう支援していく。そのために本事業のさらなる充実をはかっていきたい。  文責:庵悟(いおり さとる) 以下に、各カリキュラムのレジュメを記載します。 4参考資料 4-1.全体会1『盲ろう者は友の会で何をするか』 講師:高橋信行(全国盲ろう者団体連絡協議会 会長) スピーチ発表者: 川口智子(奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」 役員) 小林功治(愛知盲ろう者友の会 事務局) 大杉勝則(広島盲ろう者友の会 会長) 司会:世川桃子(鳥取県盲ろう者支援センター 職員) 【講義】「友の会の目的と機能」 講師:高橋 信行 1活躍する、認められる場 2盲ろう者の受け皿 3コミュニケーション手段獲得 4障害の受容 5通訳・介助員の養成と派遣 6社会啓発 7連絡協議会の一員 以下は、パワーポイントの資料です。 友の会の目的と機能  全国盲ろう者団体連絡協議会会長 高橋信行 1活躍する、認められる場 ・活躍する ・認められる →活き活きと生きていける 友の会の目的 盲ろう者の活き活きとした生活の実現 2盲ろう者の受け皿 図1 盲ろう者とは目と耳の両方が不自由な者  H24盲ろう者生活実態調査から 目の不自由な人 316,000人 耳の不自由な人 324,000人 盲ろう者 14,000人 人口比率 0.011% 図2 盲ろう者の年齢構成 (棒グラフ読み取り) 0〜10歳 約0.5% 11〜20歳 約1% 21〜30歳 約1.5% 31〜40歳 約2% 41〜50歳 約3% 51〜60歳 約6% 61〜70歳 約12% 71〜80歳 約23.5% 81〜90歳 約32% 91歳以上 約18.5% 図3 生まれつきの盲ろう者は少なく、後から盲ろうになった人が圧倒的に多い。友の会はそうした盲ろう者の受け皿となる。 (図1 図2の表示) 3コミュニケーション手段獲得 ・指点字、ブリスタ ・弱視手話、触手話 ・てのひら書き ・音声 ・要約筆記 ・etc  友の会でコミュニケーション手段を獲得する。 4障害の受容 @受容とは、障害のあることで人生や将来を諦めてしまうことではない。 A障害があることを受け入れ、積極的に生きていこうとすること B家でじっとしていても受容できない  友の会で皆と一緒に皆のために活動する→障害を受容できる 5通訳介助員の養成と派遣  @地域生活支援事業における派遣制度 ・約1/3の友の会が受託・実施 ・地域格差が問題 ・今後、先細り?  A個別給付事業に於ける派遣制度(H30.4から開始予定) ・友の会が事業を起業・運営できれば、友の会の経済的・人的状況の改善の期待  友の会が一番よく分かっている ・友の会が派遣事業を行うべき ・そうでない場合でも、友の会がイニシアチブを取って、適正な派遣が行われるようコントロールをする必要 6社会啓発  社会に訴えていく必要 ・盲ろう者の存在やニーズ ・盲ろう者と支援者の活き活きとした友の会活動 →新たな仲間(盲ろう者・支援者)の入会  社会の盲ろう者に対する理解の獲得 7連絡協議会の一員  他団体に半世紀以上も遅れて誕生 聴覚障害者 全日本ろうあ連盟 1947年設立 視覚障害者 日本盲人会連合 1948年設立 盲ろう者 全国盲ろう者団体連絡協議会 2006年設立 ・全国の盲ろう者に気持ちを一つにまとめる ・社会に対して我々の存在やニーズをアピール スピーチ 【スピーチ1】川口智子 1自己紹介 障害の程度:弱視ろう コミュニケーション方法 受信:弱視手話 発信:手話 2友の会に入って (1)活動してきたこと ・初めて友の会に入ったのは中学生の時。触手話、手書き、指点字などいろんなコミュニケーション手段を持つ盲ろう者の様子が深く印象に残った。 ・盲ろう者が楽しむために交流企画を考え、会報を配布してきた。 ・現在、企画部長・広報部長。 (2)よかったこと ・盲ろう者への理解を広めることにやりがいを感じる。 3リーダーとして  活動を通して思ったことは、友の会を必要と思っている盲ろう者には友達がほしい、情報がほしい、交流をしたいなどの色々な思いがある。リーダーとして、一方的ではなく、盲ろう者の声をきちんと聞いて、それぞれの盲ろう者が求めることに合わせて活動をしなければならないと考える。 【スピーチ2】小林功治 1自己紹介 障害の程度:弱視難聴 コミュニケーション方法 受信:音声、接近手話 発信:音声、手話 2友の会に入って (1)活動してきたこと ・会員としては7年目。そのうち通訳・介助員養成講習会担当長を2年、現在事務局として2年目。これらの役割の中で、自分だけでない他の盲ろう者の通訳・介助方法、多様で個別性があること、それに対する通訳・介助員の気持ちを多く知り、ともに考え、話し合ってきた。 (2)よかったこと ・同じ障害を持つ人や支援をする人と出会えたこと。 ・見えにくいこと、聞こえにくいことを気にせず、おしゃべりできること。 ・会員同士で、障害について、通訳・介助について語り合えたこと。 3リーダーとして (1)友の会活動で悩み、苦労してきたこと ・役員会のような話し合いの場でも、事務的な連絡でも、軽い雑談でも、さまざまな場面で、意図がなかなか伝わらない。障害程度も生育歴も学んできた環境もみな異なる仲間がともになにかすることはむずかしく、時間がかかる。しかし、意見が一致し、なにかを一緒にやり遂げた時の喜びはとても大きい。 (2)何を大切に思っているか ・わかりやすく話すこと。 ・自分ばかりが作業をしないこと。 ・自分が楽しむこと。 【スピーチ3】大杉勝則 1自己紹介 障害の程度:全盲ろう コミュニケーション方法 発信:基本的に手話 受信:基本的に触手話 相手によって、手書き、指点字 2友の会に入って (1)活動してきたこと ・友の会の基盤作り ・行政や他団体などとのパイプ作り ・啓発活動やほりおこし (2)よかったこと ・仲間との交流が持て、笑顔がたくさんみられること 3リーダーとして (1)友の会活動で悩み、苦労してきたこと ・制度や日本語による文書などを読む理解力、作成力のある人を増やすのに苦労する (2)何を大切に思っているか ・仲間の笑顔 ・聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥 ・行政や外部とのつながりをもつ 4-2.グループ討議 『友の会活動でのリーダーの役割』 グループ別司会: 大杉勝則(広島盲ろう者友の会 会長) 川口智子(奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」 役員) 小林功治(愛知盲ろう者友の会 事務局) グループ発表・講評 助言者:高橋信行(全国盲ろう者団体連絡協議会 会長) 司会:世川桃子(鳥取県盲ろう者支援センター 職員) グループ討議の進め方 全体会1の講義とスピーチを踏まえて、3つのグループに分かれ、以下の点について、話し合って頂きます。 話し合うポイント @友の会が抱えている課題 ・友の会の活動の中で困っていること、悩んでいること ・様々なタイプの盲ろう者同士が円滑にコミュニケーションが取れない ・会員拡大や啓発活動の方法 ・友の会活動での盲ろう者と通訳・介助員との関わり方など A課題の解決のためにリーダーがするべきこと 4-3.講評「友の会活動のバロメーター」 講師:高橋 信行 1コミュニケーション方法獲得の課題 2様々なタイプの盲ろう者の協働 3盲ろう者と支援者との関係性 4友の会活動におけるITの活用 5その他 (以下は、パワーポイントの資料です) 友の会活動のバロメーター  全国盲ろう者団体連絡協議会 会長 高橋信行 1 コミュニケーション方法獲得の課題 1−1大多数は大人になってから盲ろうになった!  盲ろうでない世界からの流入 1−2盲ベースの盲ろう者 ・コミュニケーション方法 点字系 音声 ・文化 盲人の文化 課題 指点字の獲得 1−3ろうベースの盲ろう者 ・コミュニケーション方法 弱視手話 触読手話 指文字 ・文化 ろう者の文化 課題 ITを活用するための点字の獲得 1−4健常ベースの盲ろう者  はじめ目も耳も不自由でなかった人が後から目と耳の両方が不自由になった。 ・コミュニケーション方法 音声 手書き文字 ・文化 健常者の文化 課題 指点字、触手話などの効率的なコミュニケーション手段の獲得 1−5先天性の盲ろう者  一人ひとりの特性により最も適したコミュニケーション方法を選択 課題 諸概念の獲得、適したコミュニケーション手段の獲得 2 様々なタイプの盲ろう者の協働 ・盲ベースの盲ろう者 ・ろうベースの盲ろう者 ・健常ベースの盲ろう者 ・先天性盲ろう者 課題 異なる文化を持つこれらの人々が、以下にしてお互いを理解し、盲ろう者福祉の発展という共通の目標に向かって活動していけるか。 3 盲ろう者と支援者との関係性 ・盲ろう者の主体性 ・自己実現を主体とした支援者の活動 ・信頼関係 ・etc 4 友の会活度におけるITの活用 ・友の会運営におけるITの活用 ・盲ろう者のIT活用支援 ・支援活動におけるITの活用 ・etc 5 その他 ・派遣事業の実施 ・外部資金の活用 ・関係諸団体との関係 ・各種イベントの実施 ・etc 4-4.全体会2 『盲ろう者福祉〜過去・現在・未来〜』 講師:福島智(東京大学先端科学技術研究センター 教授) 司会:大杉勝則(広島盲ろう者友の会 会長) 1.過去〜盲ろう者福祉の歩み (1)全国盲ろう者協会ができるまで 1949年 山梨県立盲唖学校で、盲ろう児教育開始 1964年 山口県で、わが国初の盲ろう者による回覧同人誌が作られるも、数年で挫折 1981年 東京で「福島智君とともに歩む会」結成 1984年 大阪で「門川君とともに歩む会」結成 (2)協会ができてから 1991年 3月 社会福祉法人全国盲ろう者協会設立 →まず、手がけたことは、次の2つ。 ・全国規模で通訳・介助員(訪問相談員)の養成と派遣事業を実施 ・年一回の全国盲ろう者大会開催 ⇒全国各都道府県に「盲ろう者友の会」等の盲ろう者地域団体が発足 (3)各自治体で派遣事業、開始 1996年4月 東京都で「通訳・介助者派遣事業」 12月 大阪市で「盲ろう者ガイド・コミュニケータ派遣事業」 2000年4月 国の補助による各都道府県の「盲ろう者向け通訳・介助員派遣試行事業」が開始 (4)国による養成・派遣事業の整備 2006年 4月 「障害者自立支援法」の施行に向けての、通訳・介助員養成および派遣事業が都道府県地域生活支援事業の任意事業となった。 <2009年度にはほぼすべての都道府県で実施されるようになった> 2013年4月  「障害者総合支援法」施行 両事業は都道府県(指定都市・中核市を含む)の地域生活支援事業の必須事業となった。 2.現在〜「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」の現状と課題 (1)現状 ・派遣を利用できる時間数が不足している。 ・謝金単価が低い等通訳・介助員の待遇が悪い。 ・派遣事業で利用できる内容(派遣対象となる活動の種類)に制限があるところが多い。 ・以上のことについて、地域格差が著しい。 (2)課題  現在の国の地域生活支援事業の予算規模は障害福祉関連予算全体の中でも大変小さい。例えば、2017年度予算で障害保健福祉部関連予算は1兆7千億円程度なのに対して、地域生活支援事業の要求額は約490億円に過ぎない。 (参考)平成29年度予算 ・障害保健福祉部予算 1兆7,486億円 ・自立支援給付 1兆391億円 ・地域生活支援事業 488億円  このように地域生活支援事業の予算額は少ないため、派遣事業の予算を増やすことは厳しい状況である。  さらに、地域生活支援事業で派遣事業を行う場合、派遣事業の予算は国と自治体が半分ずつお金を出すことになるので、財政規模が小さい自治体では派遣事業の予算が少なくなる傾向がある。 (3)解決策  現行の地域生活支援事業の派遣事業を残しつつ、個別給付に移行した派遣事業を利用できるようにする。  一つは盲ろう者が複数の制度を使い分けられるようにすることが考えられる。 例えば、継続的な通訳・介助支援が必要な重度の盲ろう者には個別給付を利用できるようにする。日常生活の中で部分的な支援があれば大丈夫な軽度の盲ろう者には従来の派遣事業を利用してもらう。  また、活動の内容によって二つの制度を使い分けることも考えられる。 3.来年度以降の派遣事業に向けた近年の取り組み (1)障害者総合支援法施行3年後の見直しの取り組み 2014年6月 「盲ろう者のための支援策の充実に向けた検討会」(以下、「検討会」)設置 2015年1月〜 福島理事が、厚生労働省の「論点整理のためのワーキンググループ」及び「社会保障審議会障害者部会」において、前記「検討会」の検討内容を踏まえて、通訳・介助員派遣制度の見直し等の問題について、3回にわたり意見表明を行った。 2015年8月 「検討会」の「中間のまとめ」を作成し、福島理事から、厚生労働省の藤井障害保健福祉部長に手渡すとともに、内容説明、意見交換を行った。 (2)新たな制度の方向性 既存の個別給付事業である「同行援護事業」の枠組みの中で、盲ろう者の特性やニーズに対応した新たな制度を検討する。(政省令、告示、通達等の改正) 2018(平成30)年4月から開始予定。 4.未来〜今後の派遣事業のあり方 4-5.事前課題集計結果 ※回答数…受講者11名全員 ※「1.所属団体、2.派遣事業の実施自治体、3.派遣事業の実施団体」については省略。 4.現在、派遣事業を利用していますか A.利用している 11人 B.利用していない 0人 5.派遣事業を利用する際、通訳・介助員は指名できますか A.指名出来る 5人 B.指名できない 4人(指名はできないが希望を伝えることが出来る1人) C.その他 2人(規定は無い) 6.通訳・介助員への依頼はどのようにしますか。 A.通訳・介助員に直接依頼出来る 0人 B.派遣事務所の担当者にコーディネートをしてもらう 8人 C.AとBのどちらもできる 3人 7.チケット制度を導入していますか。 A.はい 1人 B.いいえ 10人 8.派遣事業を利用するための登録条件はありますか。 A.視覚障害と聴覚障害の等級は関係ない 3人 B.視覚障害と聴覚障害の各等級に制限がある 2人 聴覚障害、視覚障害共に4級以上 2人 C.視覚障害と聴覚障害の総合等級に制限がある 8人 6級以上 1人 2級以上 2人 1級または2級以上 5人 D.その他 1人(県内に居住する者) 9.1年間の利用時間に制限はありますか。 A.制限がある 5人 県341時間、市300時間 1人 県240時間、市60時間 1人 240時間 3人 B.制限はない 5人 C.その他 1人(利用時間の多い盲ろう者には行政と相談の上、月の利用時間の制限をする場合がある) 10.以下のうち派遣事業が利用できないものはありますか。(複数回答可) A.政治活動 11人 B.宗教活動 11人 C.営利活動(仕事も含む) 10人 D.通勤・通学など長期にわたる継続的な利用 10人 E.都道府県(市)外での利用 0人 11・派遣事業について、今回の研修会で知りたい内容、講師に聞いてみたいこと、話し合いたいことなど自由に記入してください。 (新しい派遣制度について) ・平成30年から制度が変わるようだが、具体的にどう変わるのか知りたい。 ・平成30年度から盲ろう者向けの同行援護が始まると聞いているが、この制度のメリット、デメリットを聞きたい。 ・同行援護について他県の動きはどうなのか。 ・盲ろう者用派遣事業所について詳しく聞きたい。 ・盲ろう者が中心となって運営する必要があるのか。事務所で働く場合、盲ろう者や通訳・介助員の給料はどうなるのか。ボランティアになってしまうのか。 (現行の派遣事業について) ・他県の人はどのように派遣を利用しているのか。 ・早朝・夜間・長時間移動について、他の団体ではどう対応しているか。 ・派遣を利用できる場所とできない場所がある。また施設等障害者割引の使える所と使えない所がある。他の地域はどうなのか知りたい。 ・今の派遣制度が継続されるのか。併用されるのかを聞きたい。 ・住んでいる市が中核市になろうとしているが、政令指定都市などもある地域での制度のメリット・デメリットを知りたい。 ・制限時間の事を知りたい。 ・学校や会社、作業所に毎日通いたいのに派遣が使えないのはどうしてなのか。(派遣時間が沢山ある県でもできないのはどうしてか) ・通訳・介助員派遣上限時間240時間を引き上げて欲しい。(友の会の行事が増えたり、通院等、個々の生活をするために使う時間が足りない) ・派遣事業の対象は現在、医学モデルに基づいているが、将来、社会モデルへ変わる可能性はあるのか。 (啓発について) ・派遣事業を利用する盲ろう者を増やす方法は何かあるか。 ・「盲ろう」という言葉を知ってもらうための、啓発や活動がどこまで進んでいるのか聞きたい。 ・盲ろう者や支援者の会員が少ないので、会員拡大の方法など知りたい。 (友の会の活動等について) ・手話言語条例等の学習会を支援者と一緒に行いたいが、支援者と一緒に勉強会をしているか。 ・盲ベースとろうベースの盲ろう者のコミュニケーションを円滑にする方法を知りたい。 ・全国の盲ろう者の生活状況、活動状況が知りたい。 ・友の会の活動状況を報告したい。 ・盲ろう者も派遣事業の勉強が必要だと思うがしているか。 4-6.事後アンケート集計結果 配布数 11 回収数 10 1.盲ろう者地域団体(友の会等)との関わりについて 1−1 盲ろう者地域団体での活動年数 あ 3年未満:1 い 3年から5年:1 う 6年から8年:0 え 9年以上:8 1−2 盲ろう者地域団体での現在の役職 あ 代表:1 い 事務局長:1 う 上記以外の役員:5 え 事務局員:0 お 役職なし:1 か その他:2 2.本研修会に参加した目的について 2−1 受講の動機について あ 自主的参加:5 い 所属団体からの要請:2 う 所属団体の役員会での推薦:3 え その他:0 2−2 受講の目的について(複数回答) あ 団体運営等に必要な知識・情報の収集のため:7 い 他団体との情報交換のため:4 う 自己啓発のため:3 え その他:0 3 研修会の運営等について 3−1 開催時期や日数について あ よい:6 い 普通:2 う 改善を望む:1 3−2 会場・宿泊施設の設備、サービス等について あ よい:8 い 普通:0 う 改善を望む:2 3−3 案内・連絡等の進行について あ よい:7 い 普通:1 う 改善を望む:1 4.個々のカリキュラム及び全体について 4−1 全体会1『盲ろう者は友の会で何をするか』 あ よい:8 い 普通:1 う 改善を望む:0 4−2 グループ討議 『友の会でのリーダーの役割』 あ よい:6 い 普通:1 う 改善を望む:2 4−3 グループ発表・講評 あ よい:7 い 普通:1 う 改善を望む:1 4−4 全体会2『盲ろう者福祉〜過去・現在・未来〜』 あ よい:9 い 普通:0 う 改善を望む:1 4−5 カリキュラム全体について(総合評価) あ よい:8 い 普通:1 う 改善を望む:1 5.自由記述 ●全体会1について ・「盲ろう者の受け皿」の話が印象的だった。 ・通訳・介助員との関わり方の中で、信用・信頼が大切だとよくわかった。 ●グループ討議について ・グループ発表の前に、グループ内で発表者のリハーサルの時間がありとても良かった。来年もリハーサルの時間を作ってほしい。 ・グループ討議で、よく話し合いができた。 ・友の会の存在を宣伝し、盲ろう者を探し出すことが難しいと痛感した。 ・友の会の中で、すぐに相談できる環境が大事だと感じた。 ・自分の友の会について人の前できちんと話ができた。 ・話し合いの内容が、各友の会が抱える問題やその解決方法に重点が置かれ、テーマからずれていると感じた。 ●意見交換会について ・意見交換会でのゲームなどの企画が大変よかった。2時間ではなく3時間に延ばしてほしい。(3人) ●研修会の運営等について ・研修会を3日間、または1日目の午前中からはじめてほしい。(3人) ・開講式から閉講式まで、時間通りに運営されていた。 ●会場について ・研修会場と宿泊施設が同じ建物だったので便利だった。 ・東京に近く、交通の便がいい。 ・研修会場の壁と机が白く、まぶしかった。 ●全体を通して ・講義で基本的なことと応用に加え、講師・企画委員が人間関係のあり方を見せてくれ、勉強になった。リーダーとは何か少しわかった気がする。 ・せっかく全国から受講者が集まっているので、閉校式の際、1人2分程度でいいので、感想を言う時間があればよい。 ・司会進行は繰り返しが多く、盲ろう者は疲れてしまう。進行方法を工夫してほしい。 ・盲ろう者同士でゆっくり交流をする時間がなかった。 ・考えさせられることが沢山あった。地元に帰り自分のできることを見つけ、友の会を大きくする力になりたいと思った。 ・一度ではわからないことが多いので、又参加したい。 ・研修期間を延ばして欲しいが、受講者の金銭的負担が大きくなるので、上半期・下半期など、2回に分けて研修会をするのはどうか。 ・グループ討議をする内容を受講者から募集してほしい。 ・多くの人と意見交換をしたいので、全国の半分の友の会が参加できるように、予算を組んでほしい。 ・他の地域の友の会の運営や、活動についてもっと知りたかった。 ・盲ろう者と、通訳・介助員がお互いに研修できる内容にしてほしい。 書名:平成29年度全国盲ろう者団体 ニューリーダー育成研修会報告書 発行日:平成30年1月31日 編集・発行:〜日本のヘレン・ケラーを支援する会?〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162−0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 03−5287−1140 FAX 03−5287−1141