平成28年度 盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会 報告書 目次 1.全体概要…1 2.日程表…2 3.カリキュラム別の報告…3 3−1.全体会「通訳・介助員に望むこと〜盲ろう者の本音を聞く〜」…3 3−2.A分科会「通訳・介助員の悩み」…9 3−3.B分科会「音声通訳」…14 3−4.C分科会「通訳・介助員の心構えと倫理」…17 3−5.全体会「福祉制度について」…23 1.全体概要 (1)目的 盲ろう者の自立と社会参加を図るため、盲ろう者向け通訳・介助員を対象として、盲ろう者についての知識やよりよい介助方法をはじめ、コミュニケーション技術等盲ろう者の多様なニーズに応えることのできる知識並びに技術等について研修することにより、盲ろう者向け通訳・介助員の資質の向上を図ることを目的とする。 (2)日程 平成28年9月24日(土)、25日(日) 2日間 (3)場所 TKPガーデンシティ仙台勾当台 〒980−0803 宮城県仙台市青葉区国分町3丁目6番1号 仙台パークビルヂング (4)カリキュラムの概要 平成28年9月24日(土)、25日(日)の2日間、宮城県仙台市「TKPガーデンシティ仙台勾当台」にて、平成28年度盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会を開催した。研修会には全国から89名の盲ろう者向け通訳・介助員が受講した。 今年度は例年の3日間から2日間の日程に変更し、分科会も例年は6つの分科会を行っていたが、3つの分科会に縮小し、より充実した内容のものを企画した。 初日の全体会では三重盲ろう者きらりの会より北澤真紀(きたざわまき)氏、山形県盲ろう者友の会より鍬形和志(くわがたかずし)氏、全国盲ろう者団体連絡協議会より高橋信行(たかはしのぶゆき)氏、みやぎ盲ろう児・者友の会より石黒昌道(いしぐろまさみち)氏の4名の盲ろう者をパネラーとしてお招きし、普段、通訳・介助を受ける中で感じている本音の部分をお話し頂いた。 2日目の分科会では「通訳・介助員の悩み」「音声通訳」「通訳・介助員の心構えと倫理」の3つのテーマを設け、講義、実践、ディスカッション等が行われた。 午後の全体会は東京都盲ろう者支援センター・センター長の前田晃秀(まえだあきひで)氏と当協会事務局長の山下より、福祉制度について講演頂いた。今年度は障害者差別解消法が施行されたこともあり、複雑化した制度内容の講義がなされた。 2.日程表 9月24日(土) 12:50〜 受付 13:30〜 開講式 13:50〜17:00 全体会「通訳・介助員に望むこと〜盲ろう者の本音を聞く〜」 17:30〜19:30 意見交換会 9月25日(日) 9:30〜12:30 A分科会「通訳・介助員の悩み」 B分科会「音声通訳」 C分科会「通訳・介助員の心構えと倫理」 12:30〜13:30 休憩 13:30〜16:30 全体会「福祉制度について」 16:30〜 閉講式 受講者数…89名 3.カリキュラム別の報告 3−1.全体会「通訳・介助員に望むこと〜盲ろう者の本音を聞く〜」 パネラー:石黒 昌道氏(全盲ろう・みやぎ盲ろう児・者友の会) 北澤 真紀氏(弱視ろう・三重盲ろう者きらりの会 会長) 鍬形 和志氏(弱視難聴・山形県盲ろう者友の会 会長) 高橋 信行氏(全盲難聴・全国盲ろう者団体連絡協議会 会長) 司会:畑中 みさよ氏(NPO法人鹿児島県盲ろう者友の会いぶき 通訳・介助員) ねらい:ろうベース、盲ベースそれぞれの盲ろう者から自身の望んでいる通訳・介助員像をお話し頂き、普段感じている本音の部分を語ってもらう。 それを聞くことで、日々の実践の振り返りと、今後の通訳・介助に活かすことを考える。 以下、パネルディスカッションの内容を記す。 質問1.通訳・介助を受ける際、通訳・介助員に対し、例えば手引きの細かい方法や、通訳内容がよくわからないなど、自分の率直な希望や気持ちを言えますか。 高橋/ 通訳・介助において通訳・介助員への要望を盲ろう者が伝え、通訳・介助員がそれを受け入れてスキルアップしていくという流れはとても大切である。 通訳・介助は回を重ねれば上達するものである。 そのためには2つの条件が揃っていなければならない。 1つ目は、盲ろう者が自分自身の要望をわかりやすく、具体的に説明出来ること。 2つ目は通訳・介助員が盲ろう者からの意見を真摯に受け止め、技術を高めようとしていること。 この2つの条件が揃わないと、「通訳・介助をすればするほど腕が上がる」ということにはならない。 「このことを要求しても問題ないか」ということは通訳・介助を受けながら判断する。 解決しやすそうなものから難しそうなものまで、盲ろう者の要望は多岐に渡る。 どこまでなら要望が出来そうか常に考えている。 誰でも無理なことを要望されれば壊れてしまうので、そこを超えないようにしないといけない。 関係性のこともあるので結局、人間関係のところに突き当たるのではないかと思う。 盲ろう者にも通訳・介助員にも責任があり、上手くいくためには二人三脚が必要である。 北澤/ 私は通訳内容がわからない場合は、はっきり聞き返す。 しかし盲ろう者の中には聞きたくても聞けないという方もいる。 これまで様々な通訳・介助を受けてきたが、通訳・介助員は技術よりも気持ちが大切である、ということをあらためて思う。 通訳・介助は「仕事」であるということを強く意識して欲しい。 通訳・介助技術の向上にもなり、通訳・介助をすることで気持ちも明るくなるだろう。 会議に参加していても、途中から誰の意見なのかがわからなくなることがある。 必ず名前をきちんと伝えて欲しい。 そうすれば、私も落ち着いて発言者の意見を聞ける。 細かい話だが、その細かいことに気づくのも大事なことである。 鍬形/ その場で即座に「わからない」とは言えない。 私は音声通訳をメインで受けているが、なかなか私のほうを向いて通訳をしない。 近づいても聞き取れないこともある。 伝える人も心をこめて伝えて欲しいと思う。 それを通訳・介助員に伝えると「今まではこのようにやっていた」と言われがっかりしたこともあった。 通訳・介助員も意識を高く持ち仕事をして欲しい。 石黒/ 通訳・介助員のほとんどは時によって不安を抱き、緊張する。 そのような通訳・介助員には、こちらから通訳、及び介助の自分のニーズについて説明することにしている。 経験を積み重ねることにより、自然とコツを掴めれば通訳と介助の技術が上がると思う。 通訳を受けている途中でわからなくなったときは、確認のため聞くようにしている。 例えば、会議などは途中で通訳を止めることが出来ないので、終了後、聞き漏れた箇所を確認するようにしている。 皆さんも不安や迷いがあるだろうが、盲ろう者に最適な通訳・介助の方法とは何か、お互いに話し合って解決することを心掛けたいと思う。 質問2.これまで受けた通訳・介助の中で、もう一度受けたいと思う、印象に残っていることは何ですか。 北澤/ 1点目は、全国盲ろう者大会でのこと。初めて私に付く通訳・介助員とお土産を見に行った。 買いたい商品を店員に伝えたが、財布を席に忘れ、取りに戻ろうとすると「店員が包装紙で包んでくれている」と通訳・介助員が教えてくれた。 そのおかげで私も早めに動くことが出来た。 2点目は、娘の大学の入学式に通訳・介助員と一緒に行った時のこと。入学式の内容や状況のほか、さらに音楽のリズムも教えてくれ、感動した。 3点目は、白杖を忘れて歩いているとき、階段で1段1段手を軽く叩いて教えてくれたこと。安心して降りることが出来た。 鍬形/ 私は弱視のため、周囲の状況が掴みづらいので相手にきちんと伝わっているかどうか確認しながら話す。 研修会等で発表の際は、肩を軽く叩く、丸を書く等の相槌をしてもらい、安心して意見を述べることが出来た。 石黒/ 1点目は、以前は弱視で見えていたが、視力が段々低下して見えなくなってきた。 手書き文字や拡大筆記による通訳を受けていたが、会議等の進行に追いつけなかったため、伝達される情報が乏しく、辛い思いをした。 その後、通訳方法が触手話に変わってからは情報がスムーズに、しかもリアルタイムに伝わるようになり、感激したこと。 2点目は、各地のろう者や手話通訳者と触手話で会話するとき、その地域の手話が面白く感じられるようになった。 地域によって手話表現がまちまちで、勉強になったこと。 高橋/ 音声通訳は、サインやジェスチャーを併用することにより、短時間でその場の状況が理解出来ることがある。 そんな通訳を受けたときは嬉しい。 音声だけで全てを言葉にするのは難しいが、サインやジェスチャーを加えると簡単に伝わる。 その場の状況を理解した盲ろう者は、場に適した振る舞いが出来るということである。 例えば、私に挨拶をしてきた方がいたら、その方がいる方向を通訳・介助員が私の指をとって指し示し、挨拶している旨のサインをしながら「〇〇/おはようございます」と通訳をする。 そうすると私も自ずとその方向を見る。 これが音声通訳なら「右前方から〇〇さんが歩いてきます」などと説明するだろう。 ジェスチャーだけでも不十分、音声通訳だけでも不十分である。 しかしジェスチャーと音声通訳の2つを組み合わせると、「1+1=2」ではなく、「1+1=3以上」になっていく。 そういう工夫を盲ろう者と通訳・介助員とで相談し、互いにスキルアップしていければよい。 一人ひとりの盲ろう者に合わせて共同作業していくことが大事である。 音声とサインだけでなく、他の通訳方法でもよい。 盲ろう者が格好良く振る舞えるときの通訳・介助員も格好良い。 質問3.これまで受けた通訳・介助の中で嫌だなと感じたことは何ですか。 鍬形/ 約束の時間に遅れること。 また、音声通訳が聞き取れない時はとても困る。 石黒/ 私は、触手話で通訳を受けており、場面によって通訳方法はいろいろある。 一般通訳だけでなく、コピー通訳もイメージ通訳もある。 コピー通訳とは、通訳・介助員または手話通訳者が話し手の手話表現を読み取り、そのまま模写して盲ろう者に伝えるという通訳である。 実際に触手話で通訳してもらったときの手話表現が話し手の手話表現と違ってしまったことがしばしばある。 読み取った手話を日本語に訳さないというルールに従ってコピー通訳して頂きたい。 高橋/ 2つの通訳・介助のタイプを紹介するのでそれらについて考えて欲しい。 タイプ1. 歩いていると通訳・介助員が「止まってください」と言うので私は止まる。 しばらくすると「進んでください」と言うので私は進む。 そうして目的地に到着する。 タイプ2. 歩いていると、通訳・介助員が「交差点です。信号が赤です。」というので、私は止まった。 そして、通訳・介助員が「信号が青になりました、進めます」と言うので、私は青になって進めることがわかったので犬に命じて進んだ。 タイプ1は盲ろう者から思考を奪い、盲ろう者が何も考えなくてもよい状況である。 思考を奪うということは、盲ろう者は認識や学習をしない、つまり成長しないということであり、一緒にいる通訳・介助員も成長するはずがない。 タイプ2のように、信号が青になったから進む、と盲ろう者が自分で判断して進む。通訳・介助はタイプ2でなくてはならない。 会議の場面も同様で、司会を盲ろう者が担当することになったらタイプ1の場合、通訳・介助員が「始めてください」「休憩してください」などと言い、その通りに盲ろう者は動くだろう。 タイプ2の場合、通訳・介助員が「出席者の皆さんは席に着いています、スタンバイしている様子です」と言い、それを聞いた盲ろう者は時間を確認し、「ただいまから始めます」と自分で判断して話を始めるだろう。 「速すぎて付いてきていない盲ろう者がいるようです」と伝えれば、盲ろう者はもう少しゆっくり進行するようになるだろう。 タイプ1の通訳方法を行っていると、ただの「操り人形」になってしまう。 そうなるくらいなら家に閉じこもっているほうがよい。 タイプ1の通訳は嫌な気分になる。 自身の通訳をタイプ2にするようにトレーニングして欲しい。 北澤/ 1点目。12時半が終了予定の学習会で司会を担当していた。 通訳・介助員に時間を尋ねると「12時25分だから終わってもよいのではないか」と言われた。 私は残り5分でも続けたいと思っていたので腹が立ち、がっかりした。終了後、「なぜあなたが決めるのか」とその通訳・介助員に聞いたが、何のことなのかわかっていなかった。 2点目。ある会議で参加者が疲れていそうなときに私は通訳・介助員に時間を尋ねた。 すると、ただ時間を知りたかっただけなのに「〇〇時まで休憩してはどうですか」と言われた。 これらの2つのことは全て通訳・介助員が出過ぎているので、皆さんも気をつけて頂きたい。 質問4.通訳・介助を受ける際に、通訳・介助員に一番大切にして欲しいと思うのはどんなことですか。 石黒/ 1点目。盲ろう者の通訳・介助のニーズに合わせて活動して欲しい。    例えば、触手話で新聞の代読通訳をする場合、難しい漢字があれば、時間がかかっても手書き文字でその漢字の詳細を説明するなどして欲しい。 2点目。私は点字ブロックが苦手だが、通行人とのすれ違いなどでやむを得ず点字ブロックを歩かなければならないときもある。ガイドにおけるイメージ通訳も必要で、周りの状況を伝えて頂きたい。 3点目。話し手の手話表現のコピー通訳は、主観を入れないで見た通りにそのまま伝えて頂きたい。 高橋/ 通訳・介助員の中には盲ろう者のために「してあげている」という考えの人もいる。 そういう人を観察していると共通点がある。 1点目。「してあげているのだから、この程度でよいだろう」と考える人。スキルは向上していかない。 2点目。盲ろう者と通訳・介助員とで意見が対立したとき、結論ありきの話をする。「あなた(盲ろう者)が理解出来ていないからわからない。 理解すれば私(通訳・介助員)の言っていることが正しいとわかるはず」ということを言う。 3点目。対等な立場だったら到底言わないことを面と向かって言う。 「してあげているのだから対等ではない、私の言うことを聞きなさい」ということだろう。 盲ろう者のために「してあげている」という信念で仕事をしているとこれらの3点に陥りやすい。 大切にして欲しいのは、盲ろう者を中心に置くけれど、通訳・介助活動は自分を成長させるため、人生を豊かにするため、自己実現をするため、という気持ち。 そうすれば「この程度でよい」とは思わない。勉強し、技術を磨き、意見が対立しても当たり合うだろう。 なぜ通訳・介助活動をしているのかしっかり信念を持って頂きたい。 北澤/ 通訳・介助の仕事の基本は私と話し手のコミュニケーションを繋ぐサポートである。 通訳・介助員と一緒に買い物に行き、店員に聞きたいことがあり、質問して答えてくれた。 何度か繰り返し、最後に通訳・介助員が店員に対し「ありがとうございました」と言った。 本来であれば私が先に言うべきである。店員と私を繋いでもらう、これが通訳・介助員に求めることである。 鍬形/ 通訳・介助員と一緒に運動に行き、帰りに通訳・介助員が誰かと話していた。 後ほど誰と話していたのかを聞いたが、本来であれば「前から〇〇さんが来ている」と伝え、挨拶をするのが当然だと思う。 盲ろう者抜きで話すのはよくないことである。 質問5.また会いたい、通訳・介助をお願いしたいと思うのはどんな通訳・介助員ですか。 高橋/ 私はもっと自分の精神的世界を広げ、勉強し、成長したいと思っている。 色々な所に行って色々なことを考えたいが、盲ろうだから1人で色々な所に行って考えるのは難しい。 目の前にある映像や聞こえてくるものの情報は膨大である。 全てを通訳するのは無理なので取捨選択して伝えるしかない。 その方法は通訳・介助員十人十色で腕の見せ所とも言える。 「高橋さんが見えて聞こえている人なら、何が見えて何が聞こえているだろう」という想像から取捨選択し、私に伝えてくれれば大変ありがたい。 それで自分の精神的世界を広げ、発見し、もっと成長していけるだろうと思う。 その取捨選択のセンスの良い通訳・介助員にこれからもお願いしたい。 北澤/ 相手とのコミュニケーションをきちんとサポートしてくれる人。 鍬形/ 私のことを理解し、私と共に歩んでレベルアップしてくれる人がよい。 地元では通訳・介助員が非常に少ないので、養成講座を開き、通訳・介助員を増やしたい。 皆さんも研修会に参加してレベルアップし、どんな盲ろう者でも対応出来るように頑張って欲しい。 石黒/ 盲ろう者が孤独にならないように万遍なく情報を伝えてくれる通訳・介助員がいれば助かる。 また、ろうベースの盲ろう者における手話通訳のニーズは様々であるが、特に年配の場合、わかりやすい手話に変える通訳が望ましい。 質問6.通訳・介助を受ける中で感じた喜びは何ですか。 鍬形/ 数年前までは盲ろう者ではなく視覚障害者だった。 盲ろうになり、皆さんの通訳・介助を受けられとても良かったと思っている。 どんどんこれからもスキルアップして頑張って欲しいと思う。 石黒/ 通訳・介助員との信頼関係が出来、その絆のもとで社会参加を楽しめるのは大きな喜びである。 高橋/ 通訳・介助員と一緒に動き、その結果、感動的な場面や人に出会え、そうやって自分の世界がどんどん広がり、その瞬間は至福のときである。 もし通訳・介助員がいなければどんな生活をしていたのだろうか。 きっと今みたいニコニコしながら生きていないだろう。 書斎に閉じこもるだけの生活をしていただろうと思う。 私があちこちに出向いて皆さんの前で話せるのは通訳・介助員がいるからである。 だから私にとって皆さんは大事。 技術も心も磨いて日本の盲ろう者福祉を一緒に向上させて欲しい。 北澤/ 30代後半で視力が落ちてきて、単独の外出には限界があった。 しかし盲ろう者登録をして通訳・介助員と一緒に動くようになって行動範囲が広がった。 子どもたちの生活のサポートも出来るようになり楽しみが増えた。 地域で生活出来ることが一番嬉しい。 盲ろう者が地域で暮らせることに感謝している。 受講者からの質問1. 「今日の通訳はどうでしたか」と聞くことがある。 盲ろう者は遠慮しているのか「何もない」と言う。 盲ろう者からどう見られているのか、通訳・介助員に向いていないのではないかと思うこともある。 アドバイスがあればお願いしたい。 高橋/ 「私は上手になりたいので、今日の通訳・介助でどこを改善したら良くなるか教えて欲しい」と言えばいくつかのヒントは言ってくれるだろう。 受講者からの質問2. 人見知りで初めて会う人に話しかけられない。 どうすればよいか。 北澤/ 最初に「恥ずかしいが、よろしくお願いします」と挨拶すればよい。 盲ろう者もわかりやすいのではないか。 鍬形/ 自分の好きなことを話して、それで盲ろう者が好感触であればそれを話していくのもよい。 盲ろう者が好きなことを話題にすればよい。 石黒/ コーディネーターや盲ろう者専用の相談員を介して、自由に話し合う時間を作ることで、コミュニケーションの様子等を理解する。 お互いに気持ちが打ち溶けるまでは時間がかかるのではないか。 受講者からの質問3. 複数の通訳・介助員が担当する場合、工夫していることや困ったこと、要望があれば教えて欲しい。 北澤/ 友の会の行事の際、通訳・介助員は3名で、癖が様々で困った。 そのことを地域の設置通訳者に相談した。 3名だと癖の把握が難しいが、2名だと癖も容易に掴める、とのことで、それ以降3名体制ではなく、2名体制でお願いをしている。 「待つ」という手話はあごに手を持っていき表現するが、触手話の場合は盲ろう者の手のひらに、通訳・介助員の手を軽く打ちつける表現をする。 しかしそれを「ストレス」と読み間違えてしまったことがある。 そういったことから癖があると読みにくい。通訳・介助員もコーディネーターもその癖を把握し、盲ろう者からの色々な意見を聞いていかなければならない。 鍬形/ 経験が少なく、複数の通訳・介助員から通訳・介助を受けたことは数回のみだが、交代の際のタイミングは通訳・介助員に任せ、交代の際に教えてもらえればそれでよい。 石黒/ 私は触手話で情報保障を受けている。 パワーポイントのデータがスクリーンに提示される講演において、話者の話しとパワーポイントの両方の内容をタイミングよく通訳するのは極めて困難である。 15分交代で、一人の通訳・介助員は話しの内容を通訳し、もう一人はパワーポイントの内容をメモし、終了後、その内容をメモによって補足説明してもらうことにしている。 しかし、パワーポイントは画像情報もあり、なかなか情報を入手できない。 このような課題を解決するために、近いうちに触手話に関する研究会を立ち上げたいと思っている。 高橋/ 全国大会や研修会では2名の通訳体制が多い。 交代は通訳・介助員にお任せしている。 今まで問題は生じていない。 余談だがオーストラリアの通訳・介助員は、交代の時間になると号令がかかり、会場内の全ての通訳・介助員が交代する。 【考察】 この全体会では普段、通訳・介助員が聞きたいと思っている、盲ろう者の本音を率直に話して頂き、耳の痛い話も含め、貴重な話を聞くことが出来た。 全体会を通して、以下の4点に着目すべきではないかと考えた。 ・何故そのようなことが起きるのか。 ・盲ろう者が、気持ちや要望を通訳・介助員になかなか言えないのは何故なのか。 ・主体は誰なのか。 ・それぞれの盲ろう者が、自身で判断や決定するために必要な情報提供とは何か。 これらを通訳・介助員自身が常に心に留め、自身の活動を振り返り、また原点に立ち返り、考えることが大切だろう。 通訳・介助という仕事は、「盲ろう者の社会参加に大きく関わっている」ということ、また「盲ろう者の日常生活を大きく左右する場合もある」という緊張感を常に持ちながら活動したいものである。 この全体会を通して感じたことは、「盲ろう者が求めているのは“向上心を持った通訳・介助員である”」ということ。他者の言葉を伝え、状況の説明をする、という通訳・介助の仕事においてパーフェクトはありえないが、そこを目指して努力を重ねることこそが何より大切であると感じた。 盲ろう者も通訳・介助員も対等の立場にあり、共に歩み、高みを目指す「同志」という関係を築いていきたい。 パネラーの方々のお話を聞きながら、如何に通訳・介助員を大切に思っているかがひしひしと伝わり、胸がいっぱいになった。 だからこそ、私たちは一つひとつの通訳・介助を真摯に丁寧に行うことが大事である。 (文責:畑中 みさよ) 3−2.A分科会「通訳・介助員の悩み」 助言者:北澤 真紀氏 佐藤 誠住子氏(福島盲ろう者友の会 事務局員) 畑中 みさよ氏 司会:佐々木 聖子氏(岩手盲ろう者友の会 通訳・介助員) ねらい:通訳・介助活動を続けていくということは、悩みも絶えず付きまとっているだろう。 このように、日々抱えている悩みを事前アンケートに記入頂き、それを全国の通訳・介助員と共有し、盲ろう当事者を交えて解決の糸口を見つけることを目的としている。 内容:(1)事前アンケート結果についての話し合い (2)助言者からのコメント (3)感想 研修会開催前に受講者に対し、以下の内容で事前アンケートを行った。 <設問1>通訳・介助員になったきっかけは何ですか。 <設問2>通訳・介助活動で「嬉しい、やっていて良かった」と思うこと。 <設問3>通訳・介助活動で、困ったり不安に感じたりすること。 <設問4>悩みやストレスを感じた時に相談する相手(または機関)はいますか。 <設問5>その他、この分科会で聞きたいと思うことなど自由にお書きください。 (1)事前アンケート結果についての話し合い 設問1と2は、時間の都合上割愛したので、事前アンケート結果のみを掲載する。 <設問1>通訳・介助員になったきっかけは何ですか。 <回答> ・目の見えにくくなったろう者のために専門的な知識が必要だと思い、研修会や講座に参加した。 ・手話通訳者に勧められた。 ・知人に盲ろう者がいるため、勉強したいと思った。 ・友人の兄弟が盲ろう者で、友人から講習会の受講を勧められた。 ・先輩の通訳・介助員に誘われた。 ・ヘレン・ケラーの本を読んで。 ・手話サークルに来る盲ろう者がおり、その人に合った支援が必要だと思ったため。 ・点訳ボランティアだけではなく別の活動もしたいと思った。 ・ボランティアで盲ろう者に出会い、もっと触れ合いたい、何か協力出来ることはないかと思い研修を受けた。 ・手話通訳と通訳・介助を兼ねている方がおり、その影響を受けた。 <設問2>通訳・介助活動で「嬉しい、やっていて良かった」と思うこと。 <回答> ・情報が乏しい盲ろう者に情報を提供すると、笑顔が見られること。 ・買い物をしたり、他者と交流して嬉しそうに活動している盲ろう者の姿を見られたとき。 ・自身も身体障害者なので気持ちが少しわかる。手伝いたい。 ・盲ろう者から「あなたが通訳・介助員ですごく楽しかった」と言われたこと。 ・「ありがとう、居てくれてよかった」と言われたとき。 ・色々な出会いがあったこと。 ・役に立てたと思ったときや盲ろう者と日常会話が出来たとき。 ・うまく通訳が出来てすぐに理解してもらえたとき。 ・「楽しかった、また行きたい」等の言葉をもらったとき。 ・触手話でコミュニケーションが取れたとき。 ・盲ろうの他、知的障害のある方と身振り手振りで通じたとき。 設問3からは、受講者と事前アンケート結果について考えながら意見交換をした。 <設問3>通訳・介助活動で、困ったり不安に感じたりすること。 <回答1> 正確に伝わっているか、わかりやすい表現や通訳が出来ているか、伝わらず我慢してもらうことが多いのではないか。 【受講者からの意見】 ・後で盲ろう者に確認すると、間違った意味で捉えていることがあった。もっとわかりやすい表現で伝える必要があると感じた。柔軟な対応力も必要だと思う。 ・盲ろう者の表情を注視して通訳している。 【北澤氏からの助言】 不安に感じた時には盲ろう者の表情を確認することが大切である。盲ろう者によっては、頷いていても内容がわかっていない時もあるので、工夫して表現を変えてみる方法も有効だろう。 ろう者の通訳・介助員は全体手話通訳の表現をそのまま表出するのではなく、普段、盲ろう者が使う表現に変えるとよい。 一番大切なのは、盲ろう者と何でも言い合える信頼関係を築くこと。 どこまで理解出来ているのか見極める力を付けて頂きたい。 また、聴者の通訳・介助員は状況説明が苦手な人もいるが、ろう者の通訳・介助員は観察力に優れており、状況説明に長けている方も多い。 ろう者、聴者が共に協力し、状況に合わせた通訳・介助が行えることが望ましい。 【佐藤氏からの助言】 伝わっているか確認しようとすることは、大切なことだと思う。 盲ろう者の立場を考えて、自分の技術の足りなさを認識出来ることが通訳・介助員として大事なことである。 その場で内容が正しく伝わっているか確認出来ると、不安なく通訳することが出来る。 【畑中氏からの助言】 通訳・介助員という立場で現場に入ったときは、盲ろう者に正しい情報を伝えることがプロの仕事である。 チームとして力を合わせ、ひとつの作業に取り掛かることが大切である。 <回答2> 待ち合わせの際、遅刻の連絡が出来ないときは不便で不安になる。 【受講生からの意見】 ・事前に下見に行く、下調べをしっかりする等の対策を行うと失敗は無くなると思う。 ・通訳・介助依頼の時間帯に無理があるときは断る。 【佐藤氏からの助言】 「早起きが苦手で早朝の通訳・介助依頼は避けたい」などの情報は事前に派遣事務所に伝える。 その方がコーディネーターとしても助かる。 失敗しても、めげずに活動して欲しい。 もし、待ち合わせ場所に行けないときはコーディネーターに連絡をする。 近隣の通訳・介助員に依頼するなどの対応が出来る。 <回答3> 耳が聞こえないので、もし何か起きたらと不安になる。 盲ろう者が無事に家に帰れるようにといつも思う。   【受講生からの意見】 駅員に協力してもらい、下車駅を知らせてもらう方法もある。(盲ろう者が1人で電車で帰る場合) 【畑中氏からの助言】 盲ろう者が1人で無事に自宅に帰れるのか心配になるのは、通訳・介助員ならば皆同じ気持ちである。 もし、ろう者の通訳・介助員が一日の業務を無事に終えられるのか不安であるという意味なら、注意深く周りを観察することが大切である。 また、そういう気持ちを持ち続けて欲しい。 【北澤氏からの助言】 出来るだけ交通量の少ない道を選ぶようにしている。 【佐藤氏からの助言】 何かあったら派遣事務所に連絡するよう通訳・介助員には伝えている。 駅では駅員に協力してもらう(例:下車駅や下車時間を予め伝える、通訳・介助員の待つ改札まで連れて行ってもらう)等色々な工夫が出来る。 それらは盲ろう者の自己責任のもとに行っている。 盲ろう者と確認しながら安全な通訳・介助活動をして頂きたい。  <回答4> 通訳に時間がかかり、周囲から「まだ終わらないの?適当にすればよい!」と言われること。 【受講者からの意見】 ・こんなことを言う人の気持ちがわからない。 ・一般の方から言われることもあると思う。盲ろう者の理解を広めていきたい。また未然に防ぐために事前の打ち合わせが必要である。(例:レジに並ぶ前に小銭の準備をする等) 【北澤氏からの助言】 「適当に」という言葉は良い言い方ではない。 通訳・介助員は工夫し、話のポイントを伝えるようにして欲しい。 料理に例えるなら“技術”よりも“工夫”して腕を上げていくように、通訳・介助員も工夫する気持ちをもって欲しい。 <回答5> ろう者なので全体手話通訳を見て盲ろう者に伝えるが、その手話通訳者が盲ろう者の話を読み取れず、ごまかすことがある。 そうすると流れが把握出来ず、盲ろう者に伝えられなくなる。 【受講者からの意見】 ある通訳・介助員が間違ったまま盲ろう者の読み取りをした。 ろう者の私はその都度訂正した。そんな経験から、読み取りは聴者に任せるだけではなく、口形の確認が出来るなら、ろう者も聴者の読み取りの確認をしたほうがよい。 正しい読み取りをすることが大事だと思う。 【北澤氏からの助言】 ろう者も聴者も、お互いに通訳・介助員としてフォローし合い、協力して頂きたい。 <回答6> 音声で話せる盲ろう者の声を上手く聞き取ることが出来なく、何度も聞き返すことも出来ない。 【北澤氏からの助言】 盲ろう者を傷つけるかもしれないという思いで聞きにくいが、そこはやはり聞くべきだろう。 盲ろう者の性格に合わせた聞き方を工夫するのが望ましい。 <設問4>悩みやストレスを抱えたときに相談する相手(または機関)はいますか。 <回答> ・手話サークル員 ・夫  ・ろうあ者協会 ・通訳・介助員 ・派遣事務所  ・友の会事務局 ・相談出来る人はいるが、深い所までは相談出来ない ・相談したことがない  【受講者からの意見】 活動を始めて4年半は相談出来る場所が無かった。 今年から決まった曜日に自由参加で通訳・介助員が集まり悩みを共有している。 【佐藤氏からの助言】 盲ろう者、通訳・介助員同士が信頼関係を築いて、はじめて良い通訳・介助が出来る。 それが出来ず、一人で悩みを抱え、通訳・介助活動を辞めてしまう場合もあり残念に思う。 派遣中の悩みは、報告書に問題点などを記入してもらえると次に繋げる良いヒントにもなる。 遠慮しないで派遣事務所に相談して欲しい。 <設問5>その他、この分科会で聞きたいと思う事などご自由にお書きください。 <回答1> 男女の関係(独身の男性への対応) 【畑中氏の助言】 通訳・介助員の心構えが大切である。 通訳・介助員として毅然とした態度をとるのが望ましい。 また、盲ろう者が何故そのような行動をするのか、理由を観察する目線も必要である。 <回答2> 事前に学んでおくことがあれば教えてほしい。 【北澤氏の助言】 先輩の様子を見て学ぶこと、失敗を繰り返しながら学ぶことが必要だと思う。 <回答3> 派遣事務所との意思疎通が出来ない。 こちらの言い分を十分に聞かないまま、派遣事務所の言い分を押し付けるように終わらせるので相談しても先が見えない。 似たような問題の解決策があれば聞きたい。  【佐藤氏からの助言】 派遣事務所の職員が未熟なのかもしれない。 みんなでその職員を成長させていかなければならないと思うが、歩み寄りも大切である。 解決しないときは自治体の担当者に相談する方法もある。 (2)助言者からのコメント 【佐藤氏】 私が盲ろう者と関わるようになって20年近くが経った。 この世界は自分を磨いてくれた場でもあったと思う。 悩みも沢山あったが、みんなと相談出来ることで新たな通訳・介助に繋がっていくのだと感じた。 信頼関係を築いていくことはとても大切である。 また、盲ろう者から感謝されることで励みにもなる。 受講者の方々は自分を磨こう、自分の技術に甘えることなく支援していこう、という気持ちの方々だと思う。 ぜひ、これからも通訳・介助活動に励んで頂きたいと思う。 【畑中氏】 通訳・介助の仕事で同じ現場、同じ状況は無い。 また、通訳・介助において完璧を目指す人がいるが、それは難しいだろう。 しかし、そこを目指すからこそ、みんな悩み苦しみ、成長していくのだと思う。 成長の仕方はそれぞれ違うが、出会ってすぐ私たちを信頼してくれる盲ろう者の気持ちに対して、真摯に応えていかなくてはならない。 そのためには、このような学習を積み続けていくことが大事だし、仲間がいることで心強くもなれる。 【北澤氏】 頑張っている人ほど悩みはある。 何もしない人は悩みも無い。 頑張っている気持ちを大切にして欲しい。 自分自身、盲ろう者として色々な人と出会い、通訳・介助員や盲ろう者をサポートしていきたい。 (3)感想 ろう者の通訳・介助員が半数を占める分科会であった。 それは、ろう者にも通訳・介助員としての活躍の場が増え、それに伴い、様々な悩みも生じてきたということである。 想像以上に多くの意見が出て大変有意義な分科会であったが、時間の関係で全ての回答に応えることが出来なかったのは残念である。 助言者の方々は、盲ろう者、通訳・介助員、事務局員という顔ぶれで、それぞれの立場でわかりやすく的確なアドバイスをして頂いた。 設問1と2については、事前アンケート記入時に初心に返り、活動の中で喜びを感じた時の気持ちを思い出して欲しいというねらいがあった。 キャリアを積むほど悩みも多くなるが、時には原点に帰ることも必要だろう。 これからも仲間との信頼関係を大切にして活動に励んで頂きたい。 (文責:佐々木 聖子) 3−3.B分科会「音声通訳」 講師:高橋 信行氏、鍬形 和志氏 ねらい:通訳する上で留意すべき点、通訳上難しい場面などを皆で共有することを目的に、通訳・介助実習を行い、その後の振り返りを通じて通訳・介助技術を学ぶ。 以下、講義で使用したスライドを記載する。 1. 音声通訳スキルアップ講座 ロールプレイ「買い物シーン」 高橋 信行 2. 1.概要 1−1 目的 受講生自身が通訳介助場面における各役割を演じることで、通訳介助技術のスキルアップを図る。 3. 1−2 場面設定 盲ろう者は鞄を買うために鞄屋を訪れる。 鞄屋の店員とやりとりしながら盲ろう者は好みの鞄を見つけて購入する。 4. 1−3 役割 盲ろう者 実習生がアイマスクと耳栓を装着 通訳介助者 買い物場面において盲ろう者の通訳介助 店員 買い物場面において盲ろう者とやりとり 5. 2.定型パターンを演じよう 2−1 入店 盲ろう者は通訳介助者の移動支援を受けながら鞄屋に入店する。 6. 2−2 応対ポジション 盲ろう者、店員、通訳介助者は応対ポジションを取る。 応対ポジション ・盲ろう者と店員は適切な距離で向かい合う。 ・通訳介助者は盲ろう者の斜め後ろにつく。 7. 2−3 応対 盲ろう者と店員とのやりとりし、好みのバッグを特定する。 通訳介助者はこのやりとりを支援する。 表1 バッグの属性 種類 ポーチ、ハンドバッグ、手提げバッグ、肩掛けバッグ、アタッシュケース、リュックサック、スポーツバッグ、キャリーバッグ、スーツケース 色 黒、白、赤、青、黄色、ベージュ、etc 材質 布、ビニール、合皮、本皮、プラスティック、金属、etc 価格 任意 8. 表2 応対例 店員 盲ろう者 いらっしゃいませ リュックサックが欲しいのですが                              はい、どのようなリュックサックですか? ちょっと外出するときに持って行く小さめの  はい、ございます。色は何色がよろしいですか? 黒がいいです                            布製のものとレザーのものがございます 各々いくらですか? 各々、2,000円と5,000円です ちょっと見せて頂けませんか                             かしこまりました、ご用意します (品物を観察、通介者に対して)ねぇ、どっちがいいと思う?うん、こっちにします ありがとうございます、では、レジの方へどうぞ 9. 2−4 代金の支払い 盲ろう者は通訳介助者の移動支援を受けてレジに行く 盲ろう者は店員から伝えられた金額に応じて代金を紙幣で支払い、おつりを受け取る(模擬紙幣を使用) 10. 2−5 店から退出 買い物を終えた盲ろう者は、通訳介助者の移動支援を受けながら店を出る。 店を出る際、店員が「ありがとうございました」とつげ、盲ろう者は「どうも」と答える。 11. 3.エラーチェック! 3−1 入店 ・入店したタイミングを伝えない(いつの間にか店の中にいる) ・店員の挨拶を伝えない ・店の混み具合など店の様子を伝えない 12. 3−2 応対ポジション ・盲ろう者に店員の方向を伝えてない(盲ろう者が店員の方向を向いていない) ・通訳介助者が盲ろう者と店員の間に割って入ってしまっている ・通訳介助者が盲ろう者の聞こえに配慮したポジションを取ってない(通訳者の声が聞こえにくい) 13. 3−3 応対 ・直接話法ではなく、間接話法で伝えてしまっている ・伝えるタイミングが遅すぎて、レスポンスが悪くなっている ・通訳介助者が盲ろう者の代わりに答えてしまっている ・店員の出してきた品物について、通訳介助者が盲ろう者に説明をしていない(どんな品物なのか盲ろう者が十分に理解できていない) ・盲ろう者からの求めもないのに、通訳介助者の主観を述べてしまっている ・盲ろう者、店員、通訳介助者の3者での会話になった際に、通訳に話者を付けないことから、店員の発言なのか、通訳介助者の発言なのかが不明瞭になっている。 14. 3−4 代金の支払い ・レジにいることを伝えていない(盲ろう者はレジに来ていることを知らない) ・店員の方向を向いていない(盲ろう者はお金を差し出す方向がわからない) ・お金を差し出すタイミングを伝えていない(盲ろう者はお金を持ってずっと待っている) ・おつりのタイミングを伝えていない(盲ろう者はおつりをスムーズにうけとれていない) 15. 3−5 店から退出 ・店を出たタイミングを伝えていない(いつの間にか店の外にいる) ・店員のお礼の挨拶を伝えていない(盲ろう者は無愛想な客として認識される) 16. 4.ロールプレイの練習の仕方 ・正しいパターンを繰り返し練習する ・誤りパターンを行ってみる ・各々の役割になりきって演じること ・ロールプレイで習得できたことを確認後、実地練習に入る 3−4.C分科会「通訳・介助員の心構えと倫理」 講師:前田 晃秀氏(東京都盲ろう者支援センター センター長) ねらい:社会的責任を自覚し、ルールを守り公正に職務を遂行するため、今一度、通訳・介助員の心構えと倫理を考える。 以下、講義で使用したスライドを記載する。 1. 通訳・介助員の心構えと倫理 認定NPO法人 東京盲ろう者友の会 東京都盲ろう者支援センター 前田 晃秀 maeda@tokyo-db.or.jp 2. 通訳・介助員として守ること 法律  職業倫理 職務専念義務 守秘義務 自己研鑽 心構え シミュレーション 事前準備 個別的対応 受容的態度 自己決定の尊重 3. 法律:社会人として当然守ること 守らないと「犯罪者」 職業倫理:通訳・介助者として守ること 守らないと「通訳・介助者失格」 心構え:盲ろう者に接する者として守ること 守らないと「信頼関係が築けない」 4. 法令順守(法律に反する行為をしない) 手当の不正請求 業務時間を偽って報告する 盲ろう者「今日はがんばってくれたから5時間だけど8枚渡すね」 通訳・介助者「わぁ、ありがとうございます!」 そのまま謝金を請求し、受領すると・・・ 「詐欺罪」に該当する可能性も 5. どう対応しますか? 盲ろう者「今日はがんばってくれたから5時間だけど8枚渡すね」 通訳・介助者「※ご自分の意見を記入してください 」 6. 心構え 盲ろう者に接するうえで心がけること 通訳・介助業務にあたるうえでの心がけること 1.シミュレーションと事前準備 2.個別的対応 3.受容的態度 4.自己決定の尊重 利用者や業務に対する誠実さ 7. 1.シミュレーションと事前準備 ・どのようなことが起こるのか、業務前に想像してみる(シミュレーション) ・そのうえで、当日までに以下の事項を確認・準備しておく 業務内容 緊急時の対応 服装 持ち物 エチケット 8. 通訳・介助派遣 決定通知書 氏名:山田太郎(全盲ろう、60代) 日時:9月25日(日) 13時00分〜16時00分 内容:往路の移動介助と 友の会の会議(14〜16時)への参加 待ち合わせ場所:神保様ご自宅(仙台市青葉区国分町3-6-1) 待ち合わせ時間:14時00分 通訳方法:触手話(2名) 当日に向けて考えておくこと、準備しておくことは何ですか? 9. 服装 ・服装 ・履物 ・装飾品 持ち物 ・業務に必要なもの ・かばん エチケット ・手指 ・におい 10. 2.個別的対応 それぞれの盲ろう者がそれぞれの生活背景や価値観、見え方、聞こえ方を持つひとりの人間として捉える。 通訳・介助者「今度初めて会う弱視ろうのAさんは、いつもよく担当するBさんと状況が同じだ。手引きされることは嫌がるだろうから、しなくて大丈夫だな。」 業務終了後・・・ 弱視ろうのAさんから、「この間の通訳・介助員は暗くなっても手引きをしてくれず、怖い思いをした」という苦情が派遣事務所に寄せられる 11. 盲ろう者の声 「私は全盲難聴で少し聞こえるのに、階段の上り下りのときに、通訳・介助員が必ず、私の手をポンとたたく。声で言ってくれればわかるのに・・・」 「通訳・介助員がずっと体を寄せて、手に触れてくる。少し見えるから離れてても大丈夫なのに・・・。」 12. 3.受容的態度 盲ろう者の言葉を受け止め、どうしてそのような考え方になるのかを理解する 盲ろう者「白杖は持ちたくないんだよね。恥ずかしいし」 通訳・介助者「危ないから、持ってくれないと困ります」 盲ろう者「別に私は困らないよ!」 通訳・介助者「法律でも決められてるんですよ!」 13. 相手の言葉を受け止め、良い悪いを判断せず、冷静に言葉を返している。 盲ろう者「白杖は持ちたくないんだよね。恥ずかしいし」 通訳・介助者「そうですかー。 白杖を持つと恥ずかしい気持ちがするんですね。」 盲ろう者「そうそう。それにまだ見えるから大丈夫かと。」 通訳・介助者「なるほど。ただ白杖を持っていると歩行者がよけてくれるので、人が多いところでは、使ってみるのもいいですね。」 盲ろう者「そうかー。考えてみるよ。」 14. 4.自己決定の尊重 盲ろう者が自分の責任や権利を自覚し、自分自身で行動を決定できるよう支援する 盲ろう者「今度の友の会の交流会はいつだったっけ?」 通訳・介助者「18日の土曜ですよ。あ、その日、私空いてますよ。」 盲ろう者「……」 15. 自己決定の軽視の例 補聴器店店員「補聴器は耳穴型と耳かけ型とポケット型があります」 通訳・介助員「どれが一番聞こえるの?」 店員「お客様にもよりますが、耳かけ型とポケット型は重度な方にも対応できますね」 通訳・介助員「お値段がお安いのは?」 店員「ポケット型が安くて、2万円台からありますね」 通訳・介助員「へえ、そうなんですか。・・・〇〇さん(盲ろう者)、よく聞こえる補聴器が2万円ぐらいで買えるそうですよ。これにしたらいかがですか」 盲ろう者「そうですかー。・・・じゃあ、予算内だから、それにします」 16. 盲ろう者の声 「買い物中、「店員はどこかいないかな?」と尋ねたら、通訳介助員が「ちょっと待って!」と言って、自分から離れて店員を呼びに行ってしまう。」 「通訳・介助員が話に口出ししたり、買い物を勧めたりするのはおかしいと思う。盲ろう者のペースに合わせて待つ余裕が持てるといい。」 17. 職業倫理 盲ろう者を支援する専門職として、また、業務に対する対価(報酬)を受け取る立場として、最低限守らなければいけない規範 1.職務専念義務 2.守秘義務 3.自己研鑽 各地の派遣事業の実施要綱で明示されている 18. 1.職務専念義務 千葉県盲ろう者通訳・介助員派遣事業 実施要綱 (目的) 第1条 千葉県盲ろう者通訳・介助員派遣事業は、盲ろう者に通訳・介助員を派遣して情報保障及び移動等の介助を行い、盲ろう者の自立と社会参加を促進することを目的とする。 (通訳・介助員) 第5条 通訳・介助員とは、手話(触手話・接近手話)、点字(ブリスタ・指点字)、指文字、音声、筆記通訳、手のひら書きなどの盲ろう者との通訳技術を有し、身体障害者福祉に理解と熱意をもち、盲ろう者の通訳・介助を行うことができるもので、盲ろう者通訳・介助員登録申請書により登録している者をいう。 通訳・介助員の職務は、「盲ろう者の福祉に理解と熱意をもって、通訳・介助技術を駆使して、盲ろう者の通訳・介助にあたる」こと。 19. 職務専念義務に反する例 職務の放棄 ・連絡をせずに無断で欠勤する ・他の予定が入るとすぐにキャンセルする 職務の怠慢 ・業務中に私的な買い物やメールのやりとりをする ・利用者を忘れて、他者(盲ろう者、通訳・介助者など)との会話に夢中になる 20. 職務怠慢の例 (通訳・介助員の前田が全盲難聴の香取を介助しながら歩いている。そこに、前田の友人の市川が通りかかり、前田に気づく) 市川「あ、前田さん、久しぶりです」 前田「久しぶりー。元気にしてた?」(市川に向かって手をあげながら話しかける前田。香取は不思議そうな顔をしている) 市川「・・・なんか前会ったときより太ってません?」 前田「いやー、食欲の秋のせいか、最近、食べ過ぎてしまってねえ(笑)」 21. 香取(困った顔をしている。それに気づく前田) 前田「あ、香取さん、実はいま友達とばったりあって、久しぶりって話をしてるんです」(香取の耳元で話す) 香取「あ、そうなんですかー」 前田「で、ちょっと、込み入った話しがあるので、待っててもらっていいですか?」 香取「え、ええ・・・。ごゆっくり・・・」(作り笑顔をしながら) 前田「じゃあ、ここで待っててくださいね」(香取から離れる前田) 22. 2.守秘義務 北海道盲ろう者通訳・介助員派遣事業 実施要領 第13条 通訳・介助員及び受託団体の職員は、本事業に係る業務を行うに当たり個人の人権を尊重するとともに、当該業務を行うに当たって知り得た個人の秘密はこれを守らなければならない。 山形県盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業 実施要綱 第9条(3)通訳・介助業務を行うにあたっては、個人の人権を尊重し、業務遂行に伴い知り得た情報を他に漏らしてはならない。 岩手県盲ろう者通訳・介助者派遣事業について 3(1)@通訳・介助活動に当たっては、利用登録盲ろう者の人格を尊重し、また、知り得た情報は活動の後も他に漏らさないこと。 業務に当たって知った「個人情報」を他の人に漏らさないこと。 23. 守秘義務に反する例 「この前、盲ろうのAさんとデパートに行って・・・」 「盲ろうのBさんから、この前、『個人的に食事に行こう』と誘われて・・・」 「盲ろうのCさんの聞こえが落ちて、会話がなかなか通じなくて・・・」 「この前、事務所から盲ろうのEさんが参加する講演会の通訳を依頼されて・・・」 「盲ろうのDさんってどこに住んでるんだっけ?」「○○市だよ」 24. 守秘義務をなぜ破るのか? 解決策の模索 「自分のやり方でいいのだろうか?」 「もっといい関わり方がないだろうか?」 →より良い方法を教えてもらいたい 不平・不満 「盲ろう者のあの態度はおかしい」 「自分は正しいことをしているのに盲ろう者に理解してもらえない」 →「あなたは悪くない」と言ってほしい 25. 自慢話 「盲ろう者が自分のことを頼りにしてくる」 「指名で依頼をもらった」 →誰かに、「すごい」「立派」と言ってほしい 話の種 「この前の通訳・介助は面白かったなあ」 「あの盲ろう者が素晴らしい人でね」 →笑ってほしい、関心してほしい 26. 守秘義務はどこで破られるのか? 他の通訳・介助者との業務時間外の懇談 ・友人関係にある通訳・介助者との会食 ・サークル仲間との活動場面 ・研修会の休憩中や終了後 他の利用者(盲ろう者)の通訳・介助業務中 Webなどへの書き込み ・SNS(Twitter、facebookなど) ・ブログ、ホームページなど 27. 守秘義務違反の例 前田(盲ろう者)「市原さんは、いろいろな人の通訳・介助でがんばってるみたいだね」 市原(通訳・介助者)「いえいえ、まだまだですよ」 前田「たとえば、どなたの通訳・介助に入ってるの?」 市原「えーと、藤原さんとか渡辺さんとか」 前田「あー、藤原さんにも入ってるんだ!藤原さん最近元気?」 市原「元気ですよー!この前も、渡辺さんとか何人かの盲ろう者と一緒にディズニーランドに行ってきましたよ」 前田「・・・みんなでディズニー行ったの?僕は誘われていないけど・・・」(不満そうに) 市原「あ・・・いや・・・」(気まずそうに) 28. どう対応しますか? 盲ろう者 (前田)「たとえば、どなたの通訳・介助に入ってるの?」 通訳・介助者「※ご自分の意見を記入してください 」 29. 盲ろう者の声 「通訳・介助員が他の盲ろう者の愚痴や悩みを話してくる。気持ちはわかるけど、私のことも他の誰かに話しているんじゃないかしら・・・。」 「「この前、○○さんの介助をしたんだよ」とか、しゃべる人は平気でしゃべるんですよね。たまたまだと思って、聞き流していますけど・・・」 30. 守秘義務を破るとどうなるか? 多くの場合は「問題」にならない。 ・破られたことが、利用者本人に伝わることが少ない ・破られたことを知っても、利用者が気にしない ・破られたことを知っても、利用者が追求しない もし守秘義務違反を利用者が問題として追求したら・・・ 利用者  通訳・介助者 派遣事業 友の会 信頼関係の崩壊 31. 通訳・介助者に求められる高い「倫理観」 通訳・介助者 守秘義務や職務専念義務に違反 盲ろう者 気づかない、不満・苦情が言えない 誰も問題を指摘しない 「倫理」についての強い意識が必要 32. 「倫理」違反の構造と対策 人としての「弱さ」、通訳・介助者としての「未熟さ」 ・問題を抱えきれずに混乱する ・自分の欲求を優先する →「倫理」違反 →「強さ」「成熟」 →研修の受講、経験の蓄積 利用者と通訳・介助者だけの「閉ざされた空間」 ・ほとんどが1名態勢での業務 ・利用者が障害ゆえに把握困難 →「倫理」違反 →一人で抱えこまない →事務所への相談 33. 3.自己研鑽 群馬県盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業 実施要綱 第9条3 通訳・介助員は、常に通訳・介助技術の向上に努めるとともに、盲ろう者の理解促進、福祉の向上、社会への啓発に努めなければならない。 福島県社会参加奉仕員養成・派遣事業 実施要綱 6(3)盲ろう者通訳・介助員は、自らその技術と知識の向上に努めるとともに、市町村等公的機関からの依頼による盲ろう者に対する広報活動、文化活動に協力すること 通訳・介助技術の向上のために・・・ ・自らの通訳・介助をその都度、振り返る。 ・交流会・サークル等へ参加する。 ・講習会・研修会等を受講する。 34. 振り返り 改善策の検討 実践 時間・経験増える→通訳・介助員の資質上がる 3−5.全体会「福祉制度について」 講師:前田 晃秀氏、山下 正知(社会福祉法人 全国盲ろう者協会 事務局長) 司会:橋間 信市(社会福祉法人 全国盲ろう者協会 事務次局長) ねらい:2016年4月より、障害者差別解消法が施行され、また、障害者総合支援法の改正に伴う動きも気になるところである。そのような状況を踏まえつつ、あらためて、盲ろう者を取り巻く福祉制度を学ぶ。 以下、講義で使用したスライドを記載する。 前田氏スライド@ 1. 盲ろう者に関わる福祉制度について 東京都盲ろう者支援センター 前田 晃秀 2. 1.障害の認定と身体障害者手帳 3. 身体障害者に関する法律の概要 障害者基本法 国や自治体が取り組む障害者支援の大まかな方針を定める 障害者総合支援法 国や自治体が取り組む障害者支援の具体的なサービス内容を定める 身体障害者福祉法 国が認める「身体障害者の条件」を定める 4. 障害者基本法(第1条・目的) 第一条 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。 5. 障害者総合支援法におけるサービス (「平成26年版障害者白書」より抜粋) 「市町村」 自立支援給付 第6条 *原則として国が1/2負担 → 障害者・児 《介護給付》 第28条第1項  ・居宅介護 ・重度訪問介護 ・同行援護 ・行動援護 ・療養介護 ・生活介護 ・短期入所 ・重度障害者等包括支援 ・施設入所支援 《訓練等給付》 第28条代2項 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・就労移行支援 ・就労継続支援(A型・B型) ・共同生活援助 《相談支援》 第5条第16項 ・地域移行支援 ・地域定着支援 ・サービス利用支援 ・継続サービス利用支援 《自立支援医療》 第5条第22項 ・更生医療 ・育成医療 ・精神通院医療 ※自立支援医療のうち、精神通院医療の実施主体は、都道府県及び指定都市 《補装具》 第5条第23項 《地域生活支援事業》 国が1/2以内で補助 第77条代1項 ・相談支援 ・意思疎通支援 ・日常生活用具 ・移動支援 ・地域活動支援センター ・福祉ホーム 等 「都道府県」→ 「市町村」を支援 第78条 ・広域支援 ・人材育成 等   6. 身体障害者福祉法における視覚障害の定義 (身体障害者福祉法施行規則別表第5号より) 障害等級:視覚障害の程度 一級:両眼の視力の和が0.01以下のもの 二級:1 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの   :2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視能率による欠損率が95% 以上のもの 三級:1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの   :2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視能率による損失率が90% 以上のもの 四級:1 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの   :2 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 五級:1 両眼の視力の和が0.13以上、0.2以下のもの   :2 両眼の視野の2分の1以上が欠けているもの 六級:一眼の視力が0.02以下、 他眼の視力が0.6以下のもので両眼の視力の和が0.2を超えるもの 7. 身体障害者福祉法における聴覚障害の定義 (身体障害者福祉法施行規則別表第5号より) 障害等級:聴覚障害の程度 一級:該当項目無し 二級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの( 両耳全ろう) 三級:両耳の聴力レベルが90dB以上のもの( 耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの 四級:1 両耳の聴力レベルが80dB以上のもの( 耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)   :2 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの 五級:該当項目無し 六級:1 両耳の聴力レベルが70dB以上のもの( 40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの) :2 一側耳の聴力レベルが90dB以上、 他耳の聴力レベルが50dB以上のもの 8. 障害の認定と手帳の交付 「申請者」 @受診 → A診断書交付 → B交付申請 → 市町村障害福祉課(福祉事務所)→ C進達 →都道府県知事(更生相談所)→ D交付決定 → 市町村障害福祉課(福祉事務所)→ E手帳交付 → 「申請者」 *手帳交付により「身体障害者」と認められるサービスを受ける権利」 を得られる 9. 身体障害者手帳の例 総合等級 旅客鉄道株式会社 旅客運賃減額 ・第1種と第2種がある ・第1種だと、障害者本人と介助者の鉄道運賃がそれぞれ50%減額。 ・第2種だと、介助者の割引はない。本人分について、100キロを超える場合のみ50%減額。 10. 事業運営上における「盲ろう者」 《東京都の派遣事業》 「視覚障害と、聴覚又は言語障害を重複してもつ重度の身体障害者(児)であって、身体障害者手帳を所持するもの」 視覚障害、聴覚・言語障害それぞれ6級以上 《宮城県の派遣事業》 「手帳に記載された障害の内容が視覚障害及び聴覚障害の双方に該当し、かつ視覚障害と聴覚障害の重複による障害の程度が1級または2級に該当 視覚障害、聴覚障害それぞれ6級以上 + 両方合わせて1級か2級(総合等級) 11. 重複障害の場合の「総合等級」 等級:指数 1級:18 2級:11 3級:7 4級:4 5級:2 6級:1 7級:0.5 → 該当する等級の指数を合計 合計指数:認定等級 18以上:1級 17〜11:2級 10〜7:3級 6〜4:4級 3〜2:5級 1 :6級 (例) 視覚障害1級(指数18)+聴覚障害6級(指数1)=1級(指数19) 視覚障害6級(指数 )+聴覚障害2級(指数 )= 級(指数 ) 視覚障害4級(指数 )+聴覚障害4級(指数 )= 級(指数 12. 盲ろう者の人数 (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査− 身体障害者手帳の交付状況についての調査」) 13,952名(実測値) 65歳以上 10.798名(77.4%) 18歳以上65歳未満 2.490名(17.8%) 18歳未満 146名(0.1%) 平均年齢 75.8歳 13. 盲ろう者の障害等級の組み合わせ <視覚重度層> 視覚1級-聴覚6級 1,396名(10.1%) 視覚2級-聴覚6級1,387名(10.1%) < 視覚・聴覚重度層> 視覚1級-聴覚2級 986名(7.2% ) 視覚2級-聴覚2級 995名(7.2%) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査− 身体障害者手帳の交付状況についての調査」) 14. 盲ろう者の総合等級 1級・2級 75.1% 1級 6.913 2級 3.571 3級 1.074 4級 903 5級 1.020 6級 15 NA 453 (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査− 身体障害者手帳の交付状況についての調査」) 15. 2.手帳の交付で受けられる福祉サービス 16. 身体障害者手帳で受けられる主なサービス サービス→内容 手当の交付→特別障害者手当、障害児福祉手当など 公共料金の減免→NHKの受信料、携帯電話の通信料など 交通機関の割引→JR、私鉄、民営バス、タクシーなど 税金の控除→住民税、所得税、自動車税など 移動費の助成→タクシー券の交付、自動車燃料費の助成など 医療費の助成→保険診療の自己負担分を助成 障害者総合支援法におけるサービスの受給→通訳・介助員派遣、補装具、居宅介護など 17. 「市町村」 自立支援給付 第6条 *原則として国が1/2負担 → 障害者・児 《介護給付》 第28条第1項  ・居宅介護 ・重度訪問介護 ・同行援護 ・行動援護 ・療養介護 ・生活介護 ・短期入所 ・重度障害者等包括支援 ・共同生活介護 ・施設入所支援 《訓練等給付》 第28条第2項 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・就労移行支援 ・就労継続支援 ・共同生活援助 《自立支援医療》 第5条第19項 ・更生医療 ・育成医療 ・精神通院医療 ※自立支援医療のうち育成医療と精神通院医療の実施主体は都道府県等 《補装具》 第5条第20項 《地域生活支援事業》 国が1/2以内で補助 第77条第1項 ・相談支援 ・コミュニケーション支援、日常生活用具 ・移動支援 ・地域活動支援センター ・福祉ホーム 等 「都道府県」→ 「市町村」を支援 第78条 ・広域支援 ・人材育成 等   18. 福祉サービス利用の流れ 身体障害者手帳の交付 → 補装具、日常生活用具、通訳・介助者派遣、自立訓練など 19. 補装具 身体機能を補完し、又は代替し、かつ長期間にわたり継続して使用される用具 視覚障害者:義眼、白杖、眼鏡 聴覚障害者:補聴器 20. 補装具申請の流れ 申請 補装具の購入(修理)を希望するもの→市町村 認定 更生相談所等の意見→支給または不支給決定 更生相談所等の製造指定適合判定→補装具製作販売業者 製作支払い支給決定 利用者(申請者)と補装具製作販売業者が契約 補装具製作販売業者が引き渡し→利用者(申請者) 利用者(申請者)が1割負担→補装具製作販売業者が請求→市町村 市長村が補装具費9割分補装具製作業者 21. 日常生活用具(視覚障害) 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められる用具 盲人用時計、点字タイプライター、点字ディスプレイ、拡大読書器、点字器、電磁調理器 22. 日常生活用具(聴覚障害) 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められる用具 屋内信号装置、聴覚障害者用通信装置、携帯用信号装置、補聴器対応電話機 23. 補装具と日常生活用具の特徴 《補装具》 ・製作時に個々に応じた調整を必要とする用具 ・原則、認められる品目は全国共通 ・原則、本人が1割負担(所得によって負担上限を設定) 《日常生活用具》 ・製作時に個々 の調整を必要としない用具 ・認められる品目は市町村で異なる ・本人の負担額は市町村で異なる 24. 利用者負担の上限 *「世帯」の範囲は障害者本人と配偶者(18歳以上の障害者の場合) 《補装具》 区分:世帯の収入状況:負担上限月額 生活保護:生活保護受給世帯:0円 低所得:市町村民税非課税世帯:0円 一般:市町村民税課税世帯 37,200円 《障害福祉サービス》 区分:世帯の収入状況:負担上限月額 生活保護:生活保護受給世帯:0円 低所得:市町村民税非課税世帯:0円 一般1:市町村民税課税世帯:9,300円 一般2:上記以外:37,200円 25. 3.障害支援区分の認定が必要となる福祉サービス 26. 福祉サービス利用の流れ 身体障害者手帳の交付→障害支援区分の認定→居宅介護、生活介護など←個別給付 27. 自立支援給付 1人ひとりの障害者支援の必要度を見極めて、サービスを提供…個別給付 原則、介護給付のサービスは「障害支援区分」で支援の必要度を判断 28. 障害支援区分とサービス利用の流れ 障害支援区分は、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの。区分1(低)から区分6(高)まである。 「受付・申請」 →障害支援区分の認定(←認定調査員) →サービス等利用計画案の作成(支給決定時からケアマネジメントを実施) →「支給決定」 →サービス担当者会議 →支給決定後のサービス等利用計画 →「サービス利用」 →支給決定後のサービス等利用計画(一定期間ごとのモニタリング) 29. 障害支援区分の認定調査項目(80項目) 1.移動や動作等に関連する項目(12項目) 1-1寝返り、1-2起き上がり、1-3座位保持、1-4移乗、1-5立ち上がり、1-6両足での立位保持、1-7片足での立位保持、1-8歩行、1-9移動、1-10衣服の着脱、1-11じょくそう、1-12えん下 2.身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目) 2-1食事、2-2口腔清潔、2-3入浴、2-4排尿、2-5排便、2-6健康・栄養管理、2-7薬の管理、2-8金銭の管理、2-9電話等の利用、2-10日常の意思決定、2-11危険の認識、2-12調理、2-13掃除、2-14洗濯、2-15買物、2-16交通手段の利用 3.意思疎通等に関連する項目(6項目) 3-1視力、3-2聴力、3-3コミュニケーション、3-4説明の理解、3-5読み書き、3-6感覚過敏・感覚鈍麻 4.行動障害に関連する項目(34項目) 4-1被害的・拒否的、4-2作話、4-3感情が不安定、4-4昼夜逆転、4-5暴言暴行、4-6同じ話をする、4-7大声・奇声を出す、4-8支援の拒否、4-9徘徊、4-10落ち着きがない、4-11外出して戻れない、4-12一人で出たがる、4-13収集癖、4-14物や衣類を壊す、4-15不潔行動、4-16異食行動、4-17ひどい物忘れ、4-18こだわり、4-19多動・行動停止、4-20不安定な行動、4-21自らを傷つける行動、4-22他人を傷つける行動、4-23不適切な行動、4-24突発的な行動、4-25過食・反すう等、4-26そう鬱状態、4-27反復的行動、4-28対人面の不安緊張、4-29意欲が乏しい、4-30話がまとまらない、4-31集中力が続かない、4-32自己の過大評価、4-33集団への不適応、4-34多飲水・過飲水 5.特別な医療に関連する項目(12項目) 5-1点滴の管理、5-2中心静脈栄養、5-3透析、5-4ストーマの処置、5-5酸素療法、5-6レスピレーター、5-7気管切開の処置、5-8疼痛の看護、5-9経管栄養、5-10モニター測定、5-11じょくそうの処置、5-12カテーテル 30. 障害支援区分とサービス利用の流れ 障害支援区分は、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの。区分1(低)から区分6(高)まである。 「受付・申請」 →障害支援区分の認定 →サービス等利用計画案の作成(支給決定時からケアマネジメントを実施)←相談支援事業所 →「支給決定」 →サービス担当者会議 →支給決定後のサービス等利用計画 →「サービス利用」 →支給決定後のサービス等利用計画(一定期間ごとのモニタリング) 31. サービス等利用計画(案) の例 「NPO法人なみき福祉会」(webサイト http://npo-namiki.mods.jp/)より引用 利用者氏名:○○ ○○ 障害支援区分:123456 相談支援事業者名:相談支援スペース「ゆめ」 障害福祉サービス受給者証番号:123456 計画作成担当者:○○ ○○ 地域相談支援受給者証番号:123456 通所受講者証番号:123456 計画案作成日:2015年1月1日 モニタリング期間(開始年月)2015年6月1日 利用者同意署名欄:○○ ○○ 利用者及びその家族の生活に関する意向(希望する生活):  本人:成人したので、一人で生活していけるようになりたい。  家族:本人の意向をかなえてやりたい。しかし、心配である。 総合的な援助の方針:グループホームに入居し、日中は生活介護施設を利用する。週末は家族とともに過ごす。 長期目標:‐ 短期目標:‐ 優先順位:1  解決すべき課題(本人のニーズ):日中働きたい、自分で働いたお金でCDを買いたい  支援目標:福祉作業所への入所  達成時期:2015年4月1日  福祉サービス等:生活介護施設 月〜金 9:00〜16:00 送迎(施設に相談)8:30と16:00  課題解決のための本人の役割:‐  評価時期:2015年9月1日  その他留意事項:‐ 優先順位:2  解決すべき課題(本人のニーズ):一人で生活していけるようになりたい  支援目標:グループホームへの入居  達成時期:未定  福祉サービス等:グループホーム 月〜金 16:00〜8:30  課題解決のための本人の役割:‐  評価時期:未定  その他留意事項:‐ 優先順位:3  解決すべき課題(本人のニーズ):スイミングに通いたい  支援目標:‐  達成時期:2015年4月1日  福祉サービス等:移動支援(ガイドヘルパー) 火曜日、金曜日 16:00〜16:30、17:30〜18:00  課題解決のための本人の役割:‐  評価時期:2015年6月1日  その他留意事項:‐ 32. 障害支援区分とサービス利用の流れ 障害支援区分は、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの。区分1(低)から区分6(高)まである。 「受付・申請」 →障害支援区分の認定 →サービス等利用計画案の作成(支給決定時からケアマネジメントを実施) →「支給決定」 →サービス担当者会議 →支給決定後のサービス等利用計画 →「サービス利用」←サービス事業者 →支給決定後のサービス等利用計画(一定期間ごとのモニタリング) 33. 居宅介護 ・居宅において、介護(入浴、排せつ、食事など)、家事(調理、洗濯、掃除など)、生活に関する相談・助言などを行う。 ・原則、障害程度区分が区分1以上 34. 同行援護 ・移動、外出の際の視覚的情報の支援(代筆・代読を含む。) ・移動、外出の際の移動の支援 ・介護(排泄・食事等)→ 介護が必要な場合、区分2以上。 *介護が必要でなければ、障害支援区分の認定は必要ない。別途「同行援護アセスメント表」で必要度を判定。 35. 生活介護 ・昼間に施設に通所する利用者に、介護(入浴・排せつ・食事等)、家事(調理・洗濯・掃除等)、生活に関する相談・助言、創作的活動・生産活動、リハビリなどを行う。 ・障害程度区分が区分3以上(ただし、50歳以上は区分2以上) 36. 人的支援による福祉サービスの利用状況 ・利用の有無 利用している49%、利用していない47%、無回答3% ・ サービス種別ごとの利用状況 (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査− 盲ろう者の生活状況についての調査」) 以下、棒グラフの数値の多い順に記載します。 利用していない理由 全盲ろう(N=63) 家族がサポート 知らない 利用方法がわからない 自分でできる 全盲難聴(N=200) 家族がサポート 利用方法がわからない 自分でできる 知らない 弱視ろう(N=100) 家族がサポート 知らない 利用方法がわからない 自分でできる 弱視難聴(N=592) 家族がサポート 自分でできる 利用方法がわからない 知らない 37. 4.通訳・介助者派遣事業の状況 障害者総合支援法と派遣事業 通訳・介助員は都道府県地域生活派遣事業 38. 「孤立している盲ろう者」の割合(「1ヵ月に2日以下」の割合、18歳以上65歳未満) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査−盲ろう者の生活状況についての調査」) *全盲ろう者の「社会参加」が極めて困難 〈全盲ろう〉 会話:36.5% 外出:36.4% 情報入手:55.7% 〈全盲難聴〉 会話:18.4% 外出:27.0% 情報入手:35.5% 〈弱視ろう〉 会話:24.4% 外出:13.9% 情報入手:24.5% 〈弱視難聴〉 会話:11.5% 外出:13.4% 情報入手:20.0% 39. 全盲ろう者の平日日中の過ごし方(18歳以上65歳未満) (n=100、複数回答可) 家庭内:59 障害者通所サービス:21 施設内:18 社会活動:10 家事育児介護:8 リハビリテーション:4 就労(正職員以外)4 就労(正職員):3 自営業:3 介護保険通所サービス:2 学校:2 デイケア:1 その他:9 40. 一人あたりの実質利用可能年間年間派遣事業時間 平成25年度社会福祉法人全国盲ろう者協会調べ 各県の棒グラフは省略します 全国平均199時間 41. 障害福祉サービス等予算の推移 障害福祉サービス関係予算額は義務的経費化により10年間で2倍以上に増加している。 平成18年度から平成27年度の各年度について 合計前年比 障害児措置費 給付費 自立支援給付 地域生活支援事業 の順に予算額を記載していきます。 平成18年度 4893 518 4175 200 平成19年度 5380 10 507 4473 400 平成20年年度 5840 8.6 495 4945 400 平成21年度 5989 2.5 478 5071 440 平成22年度 6716 12.1 557 5719 440 平成23年度 7346 9.4 560 6341 445 平成24年度 8.406 14.4 522 7434 450 平成25年度 9314 10.8 625 8229 460 平成26年度 10373 11.4 840 9071 462 平成27年度 10849 4.6 1055 9330 464 42. 全国盲ろう者協会の要望 【社会保障審議会障害者部会ヒアリング(平成27年5月)における意見】 盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度は、本来的に個別給付になじむ事業である ・現在は地域生活派遣事業として行われているが、実施主体である都道府県等の予算枠の確保が厳しく、通訳・介助員を利用できる時間が極めて限定されている。 ・コミュニケーション支援、広義の情報提供支援、移動支援等の身体的な介助を総合的に提供するものであり、状況に応じた個別的な対応が求められる。 ・盲ろう者に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障するために不可欠の支援であり、長時間の派遣を必要とする。 43. 派遣事業の今後の展望 通訳・介助員派遣事業を地域生活支援事業から介護給付へ(=派遣事業の個別給付化) 前田氏スライドA =障害福祉サービス等の体系1= (注) 1.表中の(者)は「障害者」、(児)は「障害児」であり、利用できるサービスにマークを付している。 2. 利用者数及び施設・事業所数は平成27年3月現在の国保連データ。 《介護給付》 ○訪問系 ・居宅介護(ホームヘルプ)(者・児)  自宅で、入浴、排せつ、食事の介護等を行う。  利用者数:155,787  施設・事業所数:18,719 ・重度訪問介護(者)  重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する者であって常に介護を必要とする人に、自宅で、入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援等を総合的に行う。  利用者数:9,960  施設・事業所数:6,629 ・同行援護(者・児)  視覚障害により、移動に著しい困難を有する人が外出する時、必要な情報提供や介護を行う。  利用者数:22,512  施設・事業所数:5,736 ・行動援護(者・児)  自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援、外出支援を行う。  利用者数:8,519  施設・事業所数:1,439 ・重度障害者等包括支援(者・児)  介護の必要性がとても高い人に、居宅介護等複数のサービスを包括的に行う。  利用者数:29  施設・事業所数:9 ○日中活動系 ・短期入所(ショートステイ)(者・児)  自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含め施設で、入浴、排せつ、食事の介護等を行う。  利用者数:43,119  施設・事業所数:3,977 ・療養介護(者)  医療と常時介護を必要とする人に、 医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護及び日常生活の世話を行う。  利用者数:19,457  施設・事業所数:241 ・生活介護(者)  常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、 排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供する。  利用者数:260,169  施設・事業所数:8,801 ○施設系 ・施設入所支援(者)  施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事の介護等を行う。  利用者数:132,296  施設・事業所数:2,626 《訓練等給付》 ○居住系 ・共同生活援助(グループホーム)(者)  夜間や休日、共同生活を行う住居での、相談、入浴、排せつ、食事の介護、日常生活上の援助を行う。  利用者数:96,012  施設・事業所数:6,637 ○訓練系・就労系 ・自立訓練(機能訓練) (者)  自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持、向上のために必要な訓練を行う。  利用者数:2,435  施設・事業所数:187 ・自立訓練(生活訓練) (者)  自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、生活能力の維持、向上のために必要な支援、訓練を行う。  利用者数:12,254  施設・事業所数:1,184 ・就労移行支援(者)  一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓線を行う。  利用者数:29,626  施設・事業所数:2,985 ・就労継続支援(A型=雇用型)(者)  一般企業等での就労が困難な人に、雇用して就労する機会を提供するとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行う。  利用者数:47,733  施設・事業所数:2,668 ・就労継続支援(B型) (者)  一般企業等での就労が困難な人に、就労する機会を提供するとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行う。  利用者数:196,019  施設・事業所数:9,223 =障害福祉サービス等の体系2= (注) 1.表中の(者)は「障害者」、(児)は「障害児」であり、利用できるサービスにマークを付している。 2. 利用者数及び施設・事業所数は平成27年3月現在の国保連データ。 《その他の給付》 ○障害児通所系 ・児童発達支援(児)  日常生活における基本的な動作の指導、 知識技能の付与、集団生活への適応訓線などの支援を行う。  利用者数:75,011  施設・事業所数:3,198 ・医療型児童発達支援(児)  日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練などの支援及び治療を行う。  利用者数:2,623  施設・事業所数:101 ・放課後等デイサービス(児)  授業の終了後又は休校日に、児童発達支援センター等の施設に通わせ、生活能力向上のための必要な訓練、 社会との交流促進などの支援を行う。  利用者数:94,978  施設・事業所数:5,815 ・保育所等訪問支援(児)  保育所等を訪問し、障害児に対して、障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援などを行う。  利用者数:1,670  施設・事業所数:312 ○障害児入所系 ・福祉型障害児入所施設(児)  施設に入所している障害児に対して、保護、 日常生活の指導及び知識技能の付与を行う。  利用者数:1,844  施設・事業所数:192 ・医療型障害児入所施設(児)  施設に入所又は指定医療機関に入院している障害児に対して、保護、日常生活の指導及び知識技能の付与並びに治療を行う。  利用者数:2,148  施設・事業所数:186 ○相談支援系 ・計画相談支援(者・児)  【サービス利用支援】   ・サービス申請に係る支給決定前にサービス等利用計画案を作成   ・支給決定後、事業者等と連絡調整等を行い、 サービス等利用計画を作成  【継続利用支援】   ・サービス等の利用状況等の検証(モニタリング)   ・事業所等と連絡調整、 必要に応じて新たな支給決定等に係る申請の勧奨  利用者数:117,411  施設・事業所数:5,995 ・障害児相談支援(児)  【障害児利用援助】   ・障害児通所支援の申請に係る給付決定の前に利用計画案を作成   ・給付決定後. 事業者等と連絡調整等を行うとともに利用計画を作成  【継続障害児支援利用援助】  利用者数:26,739  施設・事業所数:2,513 ・地域移行支援(者)  住居の確保等、地域での生活に移行するための活動に関する相談、各障害福祉サービス事業所への同行支援等を行う。  利用者:500  施設・事業所数:278 ・地域定着支援(者)  常時、 連絡体制を確保し障害の特性に起因して生じた緊急事態等における相談、 障害福祉サービス事業所等と連絡調整など、緊急時の各種支援を行う。  利用者:2,167  施設・事業所数:414 出典:社会保障審議会障害者部会(第71回)資料 山下スライド 1. 福祉制度について 「盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度の今後の方向性」 全国盲ろう者協会 事務局長 山下正知 2. 盲ろう者福祉制度の見直しの経緯 3. 障害者総合支援法の施行 平成25年4月から、障害者総合支援法が施行され、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業と養成事業が都道府県(指定都市・中核市を含む)の必須事業とされた。 また、同時に、同法の附則において、同法施行後3年(平成28年4月)を目途として、意思疎通を図ることに支障のある障害者等に対する支援の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずることが規定された。 4. 盲ろう者福祉制度の見直しの内容 5. 現行制度の法的枠組み ・障害者総合支援法第78条 都道府県(指定都市、中核市を含む。以下、同じ。)は、地域生活支援事業として、特に専門性の高い意思疎通支援を行う者を養成し、派遣する事業を行うと規定されている。 ・同法施行規則第65条の14の4 都道府県は、特に専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成、派遣について、少なくとも手話、要約筆記、触手話、指点字に係るものを行うと規定されている。 6. 地域生活支援事業と個別給付 ・地域生活支援事業は、手話通訳者派遣、日常生活用具給付など、地方自治体が地域の実情に応じて、柔軟に事業を実施することができるものであり、国は裁量的経費として、予算の範囲内で費用の二分の一以内を補助することができるとされている。 ・個別給付(自立支援給付)は、居宅介護、重度訪問介護、同行援護など、市町村から利用者のニーズに応じて支給される定型的なサービスであり、国は義務的経費として、費用の二分の一を負担しなければならないとされている。(報酬単価は全国一律) 7. 現行制度見直しの必要性 ・盲ろう者への通訳・介助員の派遣は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む(憲法25条)」ために不可欠の、日々、継続的に必要とされる支援である。 ・現状では、各都道府県等における通訳・介助員の派遣は、予算枠が限定されていることなどから、利用時間の絶対量が大幅に不足しており地域間の格差が著しい。また通訳・介助員の資質や謝金単価についても格差が大きい。 ・地域生活支援事業は、裁量的経費であることから国の予算枠が限定されており、都道府県等において事業費の予算を増額しても、国の補助金は増加しない。また、様々な障害分野向けの事業費を包括しているため、特定分野の事業費の増額は「パイの奪い合い」となりやすい構造があり、都道府県等において盲ろう者向け事業の予算を大幅に伸ばすことは困難である。 ・このようなことから、現行の通訳・介助員派遣事業については、財政構造を含めた大幅な見直しが必要である。 8. 制度見直しの方向性 ・盲ろう者への通訳・介助員の派遣は、本来的には個別給付になじむ支援であると考えられ、裁量的経費である地域生活支援事業から、義務的経費である個別給付に移行することにより、個々のニーズに応じた必要な派遣時間が確保されることが期待される。 ・盲ろう者の数が少ない地域では、事業所方式を前提とする個別給付方式を直ちに実施することは困難であり、また、比較的障害が軽度な盲ろう者の場合は、必ずしも継続的な派遣を必要とはしないため、現行制度の枠組みでも対応可能である。 ・したがって、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣制度は、個別給付の枠組みによるものと、地域生活支援事業の枠組みによるものの二本立ての制度とする方向が望ましい。 ※視覚障害者に対する個別給付である同行援護が制度化された際にも、地域生活支援事業における視覚障害者の移動支援事業(ガイドヘルパー)は存置されている。 9. 個別給付化にあたっての主な選択肢 @障害者総合支援法の改正により、盲ろう者向けの新たな個別給付事業を創設する。 A同行援護の事業内容を拡大し、盲ろう者向けに特化した新たな制度的枠組みを作る。 B重度訪問介護の対象及び事業内容を拡大し、盲ろう者向けに特化した新たな制度的枠組みを作る。 10. 個別給付化にあたっての問題 ・障害支援区分の認定の問題が生ずる。 ・派遣事業所の指定の問題が生ずる。 ・費用負担(利用者負担)の問題が生ずる。 ・地域生活支援事業と比較して、運用上の制約が大きくなることも予想される。 11. 国の審議会の報告書 「社旗保障審議会 障害者部会 報告書」 平成27年12月14日 12. (基本的な考え方) 意思疎通支援については、基本的に現行の支援の枠組みを継続しつつ、盲ろう・失語症など障害種別ごとの特性やニーズに配慮したきめ細かな見直しを行うべきである。 ※現行の地域生活支援事業による通訳・介助員の派遣事業は継続する。 ※盲ろう者の支援に関しては、法改正は行わず、その特性やニーズに配慮したきめ細かな見直しを行う。 13. 審議会の報告を受けた厚生労働省における制度見直しの方向性 ・今回は障害者総合支援法の見直しにあたっては盲ろう者固有の施策についての法改正は行わない。 ・既存の個別給付事業である同行援護事業の枠組みの中で盲ろう者の特性やニーズに対応した新たな制度を検討する。(政省令、告示、通達等の改正) ・新たな制度の施行時期は、平成30年4月とする。 14. 見直し検討(協議)のポイント ・現行の盲ろう者向け通訳・介助員が円滑に新制度の従業者(職員)に位置づけられるような資格要件のあり方 ・盲ろう者に対して、質の良い通訳・介助を安定的に提供する為に十分な報酬単価の設定 ・通訳・介助を必要とする全ての盲ろう者が必要なだけ通訳・介助を利用できるような仕組み作り 15. 盲ろう者福祉制度の見直しに向けて、今後取り組むべき課題 16. 全国盲ろう者協会における取組み ・全国の友の会との連携に向けた取組み ・厚生労働省等との調整に向けた取組み ・その他 17. 全国の友の会における取組み ・派遣事業所設置に向けた取組み ・組織、活動の強化に向けた取組み ・その他 18. 盲ろう者福祉制度の将来展望 奥付 書名:平成28年度 盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会報告書 発行:平成29年2月10日 発行・編集:〜日本のヘレン・ケラーを支援する会R〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162−0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 03−5287−1140     FAX 03−5287−1141 ここまで