表紙 平成27年度盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会報告書 平成27年10月16日(金)~18日(日) 【福岡県福岡市】  ~日本のヘレン・ケラーを支援する会®~ 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 目次 1.全体概要 1 2.日程表 2 3.カリキュラム別の報告 3-1.全体会「通訳・介助員に望むこと」 3 3-2.A分科会「あなたの悩みを皆で共有しましょう」10 3-3.B分科会「高齢盲ろう者について」17 3-4.C分科会「音声通訳について」24 3-5.D分科会「事例検討」38 3-6.E分科会「通訳・介助の基本に返ろう」42 3-7.F分科会「指点字通訳について」47 3-8.全体会「あなたは盲ろう者にきちんと伝えられますか、様々な制度について」49 平成27年度 盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会 報告書 1.全体概要 (1)目的 盲ろう者の自立と社会参加を図るため、盲ろう者向け通訳・介助員を対象として、盲ろう者についての知識やよりよい介助方法をはじめ、コミュニケーション技術等盲ろう者の多様なニーズに応えることのできる知識並びに技術等について研修することにより、盲ろう者向け通訳・介助員の資質の向上を図ることを目的とする。 (2)日程 平成27年10月16日(金)~18日(日) 3日間 (3)場所 カンファレンスASC 〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東1丁目16番25号 アスクビル (4)カリキュラムの概要 平成27年10月16日(金)~18日(日)の3日間、福岡県福岡市「カンファレンスASC」にて、平成27年度盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会を開催した。研修会には全国から76名の盲ろう者向け通訳・介助員が受講した。 1日目の全体会では福岡盲ろう者友の会より城後直子氏、NPO法人大阪盲ろう者友の会より田中康弘氏、NPO法人えひめ盲ろう者友の会より高橋信行氏、広島盲ろう者友の会より大杉勝則氏の4名の盲ろう者をパネラーとしてお招きし、自身の望む通訳・介助員像についてお話しいただいた。それぞれユーモアのあるお話に受講者は魅了されていた。 2日目の分科会では「あなたの悩みを皆で共有しましょう」「高齢盲ろう者について」「音声通訳について」「事例検討」「通訳・介助の基本に返ろう」「指点字通訳について」の6つのテーマを設け、講義、実践、グループディスカッション等が行われた。今年度は時代背景や地域性に合った内容で進められ、受講者は普段接することのできない体験セット、課題等に触れながら懸命に取り組んでいた。 3日目の全体会は東京都盲ろう者支援センター長の前田晃秀氏と当協会事務局長の山下から盲ろう者を取り巻く煩雑な福祉制度について講演いただいた。制度は目まぐるしく変わっていき、理解が追いつかないという通訳・介助員も多いことから、毎年、法律や制度に関するテーマを設けている。今年度もお二方よりわかりやすく解説いただいた。 2.日程表 10月16日(金) 12:50~13:30 受付 13:30~14:00 開講式 14:00~17:00 全体会「通訳・介助員に望むこと」 17:30~19:30 意見交換会 10月17日(土) 9:00~12:30 A分科会「あなたの悩みを皆で共有しましょう」 B分科会「高齢盲ろう者について」 C分科会「音声通訳について」 12:30~13:30 休憩 13:30~17:00 D分科会「事例検討」 E分科会「通訳・介助の基本に返ろう」 F分科会「指点字通訳について」 10月18日(日) 9:00~12:00 全体会「あなたは盲ろう者にきちんと伝えられますか、様々な制度について」 12:00~12:30 閉講式 受講者数…76名 3.カリキュラム別の報告 3-1.全体会「通訳・介助員に望むこと」 パネラー:城後 直子氏(弱視ろう・福岡盲ろう者友の会 事務局長) 田中 康弘氏(全盲難聴・NPO法人大阪盲ろう者友の会 代表理事) 高橋 信行氏(全盲難聴・NPO法人えひめ盲ろう者友の会 理事長) 大杉 勝則氏(全盲ろう・広島盲ろう者友の会 会長) 司会:増田 規子氏(静岡県盲ろう者向け通訳・介助者の会) ねらい:ろうベース、盲ベースそれぞれの盲ろう者から自身の望んでいる通訳・介助員像をお話いただき、日々の盲ろう者への通訳・介助を振り返りながら、通訳・介助のあり方を考えるきっかけとする。 以下、パネルディスカッションの内容を記す。 質問1.過去に受けた通訳・介助の事例で良かったことは何か。 大杉/ 盲ろう者として活動を始めた20年ほど前は、まだ周りが見えていた。しかし今は全盲ろうに近い状態であるので状況説明をそのまま伝えてもらえれば一番嬉しい。 「ある男性が突然大声で話している、怒鳴っているのだろうか、周囲はそれを黙って見ている」という状況説明は、雰囲気も伝わり有難い。 田中/ 正確な情報を伝えてもらうことが一番大切である。また、指点字の打ち方で話者の喜怒哀楽を伝えることができればよい。 高橋/ 盲導犬を使用している盲ろう者への移動支援のマニュアルは無い。そんな中、私と盲導犬への移動支援は皆手探り状態で試行錯誤しながら行っていた。しかし、最近はそれができる通訳・介助員が増えている。本当に素晴らしいことである。 東南アジアのタイに行った際、格闘技の「ムエタイ」の体験入学を申し込んだ。コーチの指導を受けながら基礎から習い、サンドバッグ相手に練習をする。通訳・介助員は一生懸命考えてコーチの掛け声や指示を通訳してくれた。 これら2点の事例から、マニュアルに無いことを試行錯誤しながら挑戦してみる。上手くいけばそれでよいし、失敗したなら修正をして再度挑戦する。そのような通訳・介助が大変良かったと感じた。 城後/ 通訳・介助員派遣制度を利用して約12年になる。これを利用するようになり、周囲とのコミュニケーションがスムーズに取れるようになった。 通訳・介助を使う前は、耳から入る情報もできるだけ自分の目で見て確認していたが、通訳・介助員はそれも通訳してくれるので安心している。病院に行った際も医師や看護師の話が理解できるようになった。 見る情報も自分で何とか得ようとするが限界があり、そのときも状況説明をしてもらう。たくさん入ってくる情報を取捨選択できるようになったことは良かった。 質問2.もっとこのような通訳・介助をしてもらえればよかった、と思うことは何か。 田中/ 近所の人が挨拶をしてくれたときに、まず性別を伝え、会話をそのまま伝えてくれると挨拶もし易い。 高橋/ エレベーターに乗ろうとしてドアに挟まったことがある。この原因は以下のうちどれか。 ①早く閉まるドア ②動作の遅い盲ろう者 ③移動支援の悪さ →なぜ挟まってしまったのか、原因をきちんと追究することが、通訳・介助員としての今後を左右するうえでとても重要なことである。 一生懸命通訳・介助活動をするあまり、潰れてしまう通訳・介助員が多い。これは本人も困るが、盲ろう者が一番困ることである。気晴らしも大切にして、できる範囲で活動できればそれでよい。潰れないでいただきたい。 城後/ 私のことを「盲ろう者」ではなく「ろう者」と思い違いをされている方が多い。少し見えるがために目から入る情報を正確に伝えてくれていない方が多い。もっと正確な視覚情報が欲しい。目に入る情報も必要かどうかを尋ねて、必要ならばできるだけその状況をお話しして欲しいといつも思っている。状況説明をもっと大切に考えていただきたい。 大杉/ ありのままの状況を伝えて欲しいが、「情報」は非常にたくさんあるもので、その取捨選択に迷われているのだろう。だが、見て感じたことを何でもよいのでどんどん伝えて欲しい。喫茶店で隣のテーブルに座った方の会話が聞こえてきたら、その内容や感じたことを伝えて欲しい。通訳・介助員だけがその会話に納得し、盲ろう者だけ何も知らないのは寂しい。そのような「情報」も伝えてもらえれば自分の世界が広がる。 質問3.状況説明の中で必ず説明して欲しいことは何か。 高橋/ 私は音声通訳を受けている。膨大な情報を全て音声に置き換えるのは物理的に無理なことである。情報の取捨選択が必要になってくる。そんなときは「この盲ろう者が見えて聞こえていたら、何を見て聞いているのだろう」と想像をして伝えるのがよい。 コンピューター技術の発展が著しい現代だが、機械は情報を取捨選択できない。いつも一緒にいる盲ろう者の価値観を理解し、場面に合わせて取捨選択した情報こそがその盲ろう者にとって必要なこと。そして盲ろう者はその情報提供が適切だったか、足りないところがあったのか必ずフィードバックをすること。フィードバックの大切さを盲ろう者に理解してもらう。この繰り返しで、これぞという情報を伝えられるような通訳スキルを通訳・介助員が身につけていくとよい。 城後/ 私自身も、たくさんある情報をどこまで伝えてもらったらよいのか迷うことがある。 電車に乗ったら景色は流れるだけで視覚情報は無い、車内アナウンスがなければ聞こえる情報も無い、そんなときは中吊り広告の内容を伝えてくれるだけでも情報になる。 どこかの窓口に行った際は、担当者が事務処理をしていると会話がないので静かになってしまう。そのときは周囲の状況説明をしてくれるだけでも情報になる。 レストランに行ってもメニューを全て伝えることは難しい。盲ろう者の好みを聞き、飲み物の説明だけでよいのか、更に好みの飲み物等を工夫して伝えるとよい。 大杉/ 盲ろう者一人ひとり求めていることが違う。繰り返しになるが見たまま、ありのままを伝えて欲しいと思う。 人と会ったとき、名前は教えてくれるが年齢は教えてくれない。そんなときは通訳・介助員に何歳くらいなのか確かめることがある。 ある方が小さな声で「OK」と言っているのに、通訳・介助員が大きくはっきりと「OK!」と通訳してしまうと私は誤解して受け取ってしまう。話者の気持ち、雰囲気をそのまま伝えて欲しいということである。 また、話者が間違ったことを話しているときもそのまま通訳して欲しい。その人に対し、間違いを自分から指摘できる。 改札で駅員に切符を見せるとき、駅員は「ありがとう」と言うが、それを通訳してくれない方もいる。そんなときは駅員は何と言ったのかを通訳・介助員に聞く。 このように私は通訳・介助員に全て任せているというわけではない。自分で知りたいことがあれば通訳・介助員に聞くこともある。 田中/ 盲ろう者がどんな分野に関心を持っているか、それを理解するためには盲ろう者とたくさん話をすること。そうするとどんな情報を求めているのかがわかると思う。 私は映画が好きなので、観たときの状況を思い出して説明していただけたらわかる。 食べ物の話も好きである。盲ろう者の好みを掴むのは非常に大事である。店探しの際も、好みがわかっていたら時間短縮ができる。 講演は聞こえてきた通りに伝えてもらうのがよい。 質問4.通訳内容がわからなかったときはどうするか。 城後/ 私は弱視手話とパソコンで通訳を受けている。その両方を利用することもある。盲ろう者が多い集まりの場合は、話者にもう一度言って欲しいとお願いをする。健聴者が多い集まりの場合は、パソコン通訳を受けてその後もう一度読み直している。弱視手話とパソコンを併用していて、手話通訳がわからないときはパソコン通訳で確認をする。自分に対する質問内容がわからないときは、もう一度通訳をお願いする。雰囲気をみてそれを言えない状況ならそのときに考える。今までにそのような経験はない。 大杉/ 話者の話しがよくわからないときは、直接話者にもう一度言って欲しいとお願いをする。通訳を受けている最中にボーっとしてしまい、通訳・介助員にもう一度通訳して欲しいとお願いをすることもある。 質問を受けたときはわかるまで確認をし、回答するようにしている。 田中/ 指点字通訳の場合は、わからなかった箇所をもう一度打ち直すという方法で行っている。 講演会などで内容自体がわからないこともあるが、記録を取らなければならない時は残って聞くこともある。 高橋/ 光と音の世界を音声にして伝える、そして私の方ではその音声を光と音に戻すわけなので、これは高度な技である。それが上手くいくこともあれば、そうでないこともある。 盲ろう者の責任として、伝わっているのかそうでないのか、フィードバックをすることが大事なこと。通訳・介助活動は盲ろう者との二人三脚である。通訳・介助員が一方的に通訳して済む問題ではない。上手くいかないこともあるので、盲ろう者の協力を得て高度なことができるように二人でトレーニングするとよいと思う。 質問5.一緒にいて楽しく、安心できる通訳・介助を受けたことはあるか。 大杉/ 私は全盲ろうに近い状態なので、隣にいて通訳をしてもらうと一番安心できる。 ①部屋の中に大勢いるのに自分だけが孤立している状態 ②誰もいない部屋に1人だけでいる ①の状態はとても嫌である。どうせなら、②のほうがましである。そばにいて繋がっているという事が一番落ち着く。 田中/ その場から離れるときに伝えてくれると安心する。 高橋/ 私はマッサージ師でもある。施術する際に気をつけていることは自分自身がリラックスして揉むということ。力いっぱい揉むよりも難しく技術の必要なことである。リラックスして揉むことがお客さんの気持ち良さや安心できる施術に結び付いていると思う。 通訳・介助には、心も技術も両方大事である。技術的な余裕が無いと心に余裕が無くなる。リラックスして通訳・介助ができるのは高い技術があり、そこに余裕があるからこそである。 城後/ 私は物事をマイナスに考えてしまう傾向がある。通訳・介助を依頼する際も気を遣ってしまう。依頼をしたはよいが、一緒に楽しんでくれているか、迷惑を掛けていないかといつも思っている。おそらく通訳・介助員の方々も自分の通訳・介助方法で盲ろう者が困っていないのか、いつも気になっていると思う。余裕が無いのは私も同じである。安心するのは家に帰ってきたときである。 質問6.望む通訳・介助員像とは。 田中/ 直接話法の出来る通訳・介助員がよい。そうでないとコミュニケーションが取れなくなってしまう。状況説明もきちんとしていただける方がよい。私の目と耳になってくれる人がよい。 高橋/ あまり依頼をしたくないと思う通訳・介助員は以下のような人である。 ①慢心してしまって自身が成長するのをやめてしまっている人。 そういう人は一緒にいてつまらないし、わくわくしない。技術レベルもそれほどは高くない。 ②「盲ろう者のために私はしてあげている」と考えながら通訳・介助をしている人。 自身の成長、自己実現、新しい自分の発見等、自身のためにやるからこそ続くものだし、辛くても技術を磨いていけるのだと思う。 この活動は私自身のためにやっている、だから辛くても泣かない、そうやって頑張っている通訳・介助員と一緒にいると、私も頑張れそうな気になり、元気になる。 時々、通訳・介助員ではなく支援者として私にアドバイスをくれると私も耳を傾ける。自分自身の精神的世界をもっと広げたいと日々思っている。一緒に成長できる通訳・介助員と過ごしたい。 城後/ 気持ちが通じることが大事だと思う。そのためにはたくさん話をすることが必要になる。私が怒ってもなだめてくれ、気持ちの落ち着く話し方の人だったらよい。お互いに気遣い、一緒に成長できる人、それが一番大事である。 大杉/ 失敗を恐れず、一緒に動いて欲しい。失敗の後、反省をすることが大事である。その失敗の原因を探り、次に活かすことが大事である。次は失敗しないように、という気持ちを持っていただきたい。原因追求は通訳・介助員同士だけではなく、盲ろう者とも行って欲しい。盲ろう者がそれをわからないでいると、通訳・介助員を責めてしまうことになる。情報交換をしながら一緒に歩んでいきたい。 受講者からの質問1.ろう者からの通訳・介助を受けたことがあればその時の話を伺いたい。 田中/ 何度か受けたことはある。指点字通訳も受けたことがある。講演等では難しいが、友の会の行事であれば問題ない。 私が発言する際は文字盤を利用した。私が指で押さえた箇所を見てもらう。ろう者の通訳・介助員も指点字を覚えれば通訳をできなくはない。 大杉/ 私は生まれつきのろう者である。コミュニケーション方法は手話。ろう者同士のコミュニケーションは手話であり、触手話でも伝えることができるので、ろう者の通訳・介助員も増えて欲しい。健聴者で手話を学ぶ人はたくさんいるが、ろう者はもともと手話を習得されている方。一緒に同行し、内容を伝えてもらい、話をしながら進めることが出来る。 広島県にはろう者の通訳・介助員がたくさんいる。会議の時には手話通訳がいるので、その手話を読み取って触手話で伝えてもらう。また、全国盲ろう者大会の時もたくさんいる。安心して触手話で通訳をして欲しい。 城後/ 私は以前はろう者だったので、ろう者の友達が多く、その友達に通訳・介助を依頼することがある。ろう者の気持ちはわかるし、友達も私のことを理解してくれていると思う。 目から入る情報を伝えてくれるということはとても良いことである。しかし、耳から入る情報を伝えることは出来ないので、その時は健聴の方とペアになり、お互いカバーし合う方法もある。 ろう者が出来ないことは耳から入る情報を伝えることであり、他のことは何でも出来ると思うので、私はろう者の通訳・介助員に期待したい。 受講者からの質問2.言語障害があり、上手く伝えられない。そんなときはどうしたらよいか。 高橋/ 手のひら書きで伝えたらよい。指点字のわかる方なら指点字で伝え、点字で書いて渡す等方法はある。指点字ができなければ、一緒に指点字を学ぶことを楽しみにする。視力が少し残っていればタブレットに大きく書いてもよいだろう。伝えるために色々工夫し、それをお互いに楽しんでいただけたらよいだろう。 大杉/ 腕の無い方とどのように話したらよいのか困ったことがあるが、結局、通訳・介助員を介して話すという方法になった。直接話す時はパソコンメールでやり取りをしたことがある。 受講者からの質問3.入店先で盲導犬を断られることはあるのか。 高橋/ 10数年前に身体障害者補助犬法ができ、よほどの理由がない限り介助犬を断ることはできなくなっている。 しかし、その法律を知らない店員の場合、ペットは入店不可と断る。法律を説明しても入店出来ない時は都道府県の盲導犬の担当者にメールをする。そうすると、その店に指導が入り、次回からはスムーズに受け入れてくれるようになるという段取りになっている。 【考察】 今回、4名の盲ろう者をお招きし、通訳・介助を受けた際に感じた生の声を聞かせていただいた。ろうベースの方、盲ベースの方、それぞれの立場からの話しをお伺いでき、また盲導犬を連れながらの通訳・介助についても伺えるなど、様々な角度から通訳・介助のあり方を学べた。 通訳・介助員の多くは、自身の通訳・介助方法について悩み、不安を抱え、つまずき、しかし時には喜びも感じることが出来るから活動を続けていると思われる。その気持ちは、盲ろう者も同じだということが、この全体会で再認識できたのではないだろうか。通訳・介助活動はどちらか一方だけで成り立つものではなく、高橋氏の言葉を借りると「二人三脚」で進めていくもの。共に悩み、喜び合うことを大切にしていきたい。 支援方法に対する考え方の違いはあれど、パネラーの方々が声を揃えて言っていたことは、以下の2点である。 ・「失敗を恐れずに通訳・介助活動を続けて欲しい」 ・「状況説明をしっかり行う」 平成24年に当協会が通訳・介助員派遣事業に利用登録している盲ろう者16名に行った、「盲ろう者通訳・介助員の養成カリキュラムの内容に関する調査」の通訳・介助についてのニーズ調査では、「状況説明」について以下のような回答を得られている。 ・「状況説明が無いことが一番困る」 ・「ただ歩くよりは周りの様子がいろいろわかると楽しい」 ・「お店が新しくなったこと、こういう品物がある、という情報がもらえるのがよい」 ・「服は何がよい、かわいいものはどれか、どんな美味しいものを食べようか、料理はどうしようか、そういうことを教えてもらいながら買い物をするのがとても楽しい」 このような回答が多く寄せられたことから、盲ろう者にとっての状況説明は、今回のパネラーの回答と重ね合わせると、盲ろう者の生活を左右するものだということが伺える。 パネラーからいただいた言葉を踏まえながら、日々の通訳・介助活動に取り組んでいただければ幸いである。 (文責:梶 愛衣子) 3-2.A分科会「あなたの悩みを皆で共有しましょう」 助言者:城後 直子氏、田中 康弘氏、三科 聡子氏(盲ろう者向け通訳・介助員)  司会:畑中 みさよ(NPO法人鹿児島県盲ろう者友の会いぶき通訳・介助員) ねらい:日々の通訳・介助における悩みやストレスを皆で共有する。解決することだけが目的ではなく、個々の問題解決の糸口、自信につながることを目的とし、同じような悩みを持つ仲間がいることを再認識することで、元気に長く通訳・介助活動を行うためのポイントを探る。 内 容: (1)事前アンケート結果についての話し合い (2)助言者からのコメント (3)感想 研修会開催前に受講者に対し、以下の内容で事前アンケートを行った。 <設問1>  通訳・介助にあたるうえでどのような悩みを抱えていますか。また、困っていることを具体的にお書きください。 <設問2> 悩みやストレスを抱えたときに相談する相手(または機関)はいますか。 <設問3> その他アドバイスをもらいたいことをお書きください。 (1)事前アンケート結果についての話し合い <設問1>  通訳・介助にあたるうえでどのような悩みを抱えていますか。また、困っていることを具体的にお書きください。 <回答1> 盲ろう者自身が出来るところまで手を出し過ぎてしまうこと。当事者が出来ることなのに何かしてあげないと、と思ってしまう。(活動歴4年) 【受講者からの意見】 ・「手を出し過ぎている」と自分で理解している時点で問題ないと思う。支援は状況に合わせて判断する必要がある。盲ろう者の荷物は、盲ろう者自身が持つというのが基本的なルールであるが、触手話の場合にはコミュニケーションの都合上、通訳・介助員が持たなければならないというやむを得ないケースも現場ではある。都道府県の担当者から、通訳・介助なので「介護」に関わることは好ましくないと言われたことがある。だが、「介護」を抜きにして通訳・介助を行うのは無理である。介護面(着替え・トイレ・車椅子を押す等)の必要性に対し、理解して対応してくれる通訳・介助員にお願いしているのが現状である。 ・盲ろう者が出来ることには基本手を出さない。盲ろう者から頼まれたら行うようにしている。荷物も基本的には盲ろう者が持つが、持ってほしいと言われたら持つようにしている。   【三科氏からの助言】 自分が手を出し過ぎていると思うなら、まずは盲ろう者とコミュニケーションを取りながら、信頼関係を築いていく中で、何を必要としているのかを知ることが大切である。盲ろう者の個々の状況やニーズを考えると、その支援は多岐にわたり、その支援内容が「介助」なのか、「介護」なのかと安易に線引きをすることは難しいと思う。 今後、高齢の盲ろう者の増加が予想され、さらに盲ろう以外の他の障害を併せ持つ盲ろう者に対して、どこまでが通訳・介助の業務の範囲なのかというのは今後の課題となるであろう。 【田中氏からの助言】  以前、全国盲ろう者大会のしおりの中に、「盲ろう者は自分の行動を全面的に通訳・介助員に委ねることは避けてください」と記載があった。 大阪府は、通訳・介助員とホームヘルパーの業務範囲は区別している。風呂場での移動や状況説明は通訳・介助員の仕事である。だが、身体を洗うのは盲ろう者自身が出来る。 東京都の場合、肢体不自由の盲ろう者が通院する際には、通訳・介助員の他にヘルパーを同行させるのは構わないらしい。マニュアルではコミュニケーションと移動の手引きが通訳・介助員の業務範囲となっていたと思う。 【城後氏からの助言】  私自身は弱視ろうであるため、身の回りのことは自分で出来る。そのため通訳・介助員には必要なことだけお願いしたいと伝えてある。通訳・介助員の業務は、コミュニケーション・移動介助・情報保障だと理解している。「介護」というのは、入浴・排泄・食事などを行ううえで、身体的に困難なことを手伝うと理解している。 盲ろう者の中にはいろいろ手伝って欲しい人もいる。個々に合わせて、盲ろう者と通訳・介助員間での話し合いが必要だと思う。     <回答2> 直接依頼を受ける際、盲ろう者に「あなたの都合の良い日に通訳・介助に入って欲しい」と言われるので断りにくい。(活動歴4年)   【受講者からの意見】 ・以前は盲ろう者が個人的に依頼するケースもあったが、現在は必ず情報提供施設が窓口になり、調整して派遣を行っているのでこのような問題はない。 ・以前、盲ろう者から予定の空いている日を聞かれ、その日を空けて待っていたら突然キャンセルをされるということがあった。そういったトラブルを解消するために、現在は派遣窓口を通さないと認めないことになっている。しかし、緊急時は事後報告が認められている。 【城後氏からの助言】  盲ろう者として正直に言えば、個人的にお願いしたい思いがあるために「あなたの都合に合わせるから」と言ってしまう気持ちは理解できる。その通訳・介助員を信頼しているからこそである。その反面、トラブルが起こりやすいという心配もあるので、派遣窓口に依頼したい方をはっきり伝えて依頼する方法もあると思う。 【田中氏からの助言】  大阪府の場合は直接依頼をすることが多い。通訳・介助員の名簿が公開されているので、直接依頼ができる。大事な会議や話し合いではない時は、研修を終えたばかりの通訳・介助員にお願いするが、名簿への掲載を希望しない通訳・介助員もいるので、その時はコーディネーターにお願いする。 盲ろう者としては、信頼できる通訳・介助員にお願いしたい、という気持ちがある。大事な通訳の場面では慣れた方にお願いしたい。 【三科氏からの助言】 派遣制度は地域によって異なる。コーディネーターが調整して依頼がくる地域もある。チケット制のために、盲ろう者が通訳・介助員と直接相談して約束する場合もある。 現在、通訳・介助の業務だけで生計を立てている人はほとんどいないと思う。他の仕事をしながら活動をしている人がほとんどであろう。この状況を考えると、無理だと感じながら活動を続けていくことは難しいと思う。無理が溜まると決して良い結果を生まない。「断る」勇気を持つことも大切な責任の一つなのではないかと思う。 <回答3> 盲ろう者との交流や現場経験が少ない。 【受講者からの意見】 ・友の会には入会しているが、活動経験も少ない。2か月に1度開催される交流会に地域の盲ろう者と参加する程度である。それ以外では、盲ろう者と触れ合う機会が少ないので、できるだけ交流会に参加しようと思っている。 ・私の友の会では、年1回運動会を行っている。今年で20回目になる。盲ろう者は日頃、身体を動かすことが少ないので、体育館の中で徒競走や綱引き、パン食い競争などをして交流を深めている。盲ろう者はみんな生き生きしている。このような交流を通して経験していくのもよいと思う。 【城後氏からの助言】  友の会に是非入会し、行事に参加していただきたい。 【田中氏からの助言】  今、友の会が未設置なのは2県だけ。それ以外は友の会が設置されている。 まず、友の会の活動を見学することをお勧めしている。私の友の会は日中活動も行っていて、養成研修会修了後、実際に活動する前にほとんどの人がここの見学に来ている。とにかく現場を覗いてみることをお勧めする。 【三科氏からの助言】 皆さんの話を聞きながら、25年前に東京盲ろう者友の会ができた頃のことを思い出していた。東京もその頃から運動会を開催していた。楽しい企画、魅力的な企画を立てることで、盲ろう者や通訳・介助員の参加のきっかけになるかもしれない。交流会などの情報を通訳・介助員が持っていることも大切である。 今、この分科会の中で、交流会で運動会をした話題提供がなされたように、例えば、全国盲ろう者協会が発行している冊子『コミュニカ』を使って、友の会の交流会の企画内容やおすすめの企画などの情報交換をする場所を作っていくこともとても大切だと思う。 <回答4> 雨天時、自身の傘を持って来ない盲ろう者がいる。通訳・介助員の傘を使うのが当たり前だと思っているのか。通訳・介助時のルールを知りたい。(活動歴3年) 【城後氏からの助言】  同じ質問をしたことがあり、持ち歩かないという盲ろう者が数人いた。急に雨が降ってきたときは濡れて帰るとのことだった。通訳・介助を受けている際に雨が降ったら通訳・介助員の傘に入れてもらう考えならば、それは違うと思う。ルールが必要なのではないか。自分の傘を出し、通訳・介助員に差してもらうという考えを盲ろう者に持って欲しい。わたしは傘もレインコートも所持している。 【田中氏からの助言】 傘をいつも持って来ない盲ろう者の理由はわからないが、傘のルールまで必要なのだろうか。私は二人用の傘を持っているが、場合によってはレインコートを使うなど使い分けている。 【三科氏からの助言】 私も一つひとつ、そこまでルールが必要なのかと思う。盲ろうという障害が情報障害であることを、通訳・介助員は忘れてはいけない。見えて聞こえる人たちが意識的に見て、聞いていることだけではなく、無意識のうちに目や耳から入ってくる情報がとても大切な情報源になっている。盲ろうという障害はそれらを自由に得られない、とても制限があるということを私たちは忘れてはならない。 「傘を持ちたがらない」のであれば、なぜそのような行動を強いるのか、その行動をもたらす理由を考える視点を持ちたい。 また、盲ろう者は他者の行動を知り、自分の行動と比較したり、見直すことも難しい場合がある。「ルールだから・・・」と決めつけるのではなく、「盲ろうのAさんは二人用の大きな傘を持っている」「盲ろうのBさんは傘が嫌いなのでレインコートを着ている」など、まずは情報提供をすることも大切だと考える。 <回答5> 通訳時に盲ろう者がわかったふりをしていたらどうするか。(活動歴3年) 【受講者からの意見】 ・盲ろう者それぞれの状況にもよる。その盲ろう者が受け止められる量やスピードかどうか。また、盲ろう者の経験に依るところもある。例えば、他の通訳・介助員が通訳している時は一生懸命に通訳を受けているのに、私が通訳している時には全然集中していない、聞こうとしていない場合がある。通訳をしながら、対象者がわかっていないとわかりつつも、そこを追求したら次の通訳の機会がなくなってしまうかもしれないと考え、あえて聞かない場合もある。 ・伝わっているかどうかの確認作業はとても難しいことだと思う。伝わっていないと感じたら、言い方を変える、方法を変える等工夫をするようにしている。以前、通訳しながら伝わっていないと感じることがあり、その時は通訳終了後に盲ろう者にその旨を伝え、コーディネーターにも様子を伝えたことがあった。自分の意志でわかったふりをしている場合と、わかったつもりでいる場合もあると思う。 【城後氏からの助言】  あまり聞きたくない話の場合は、頷いて聞いているふりをすることもある。また、わかったつもりでも、あとでよく考えたらわからなかったときもある。人間なので全部を吸収できない時もある。大事な内容の時は、あとから確認した方がよいと思う。 【田中氏からの助言】 細かいことでわからないことがあっても、あとで聞けるような場合にはわかったふりをしていることもある。指点字通訳の場合は、わからない時はその場で聞いている。 【三科氏からの助言】 とても難しい問題ではあるが、通訳している盲ろう者がわかっていないと気づいたら、まずは通訳・介助員としてわかるように言い換えたり、補足説明を加えるなどの工夫をすることが大事である。同時に話者にゆっくり話すようにお願いするなど環境を変えることも重要となるであろう。後で困るのは盲ろう者。正しく伝わらなかったために、後で誤解が生じるかもしれないと感じたら、当然訂正すべきだと思う。同時に、なぜ「わかったふり」をするのかも合わせて考えたいと思う。 <設問2>  悩みやストレスを抱えたときに相談する相手(または機関)はいますか。    <回答> ・報告書に挙げ、派遣元に返す。(活動歴4年) ・一緒に担当した先輩がいるときは反省会などで相談することもある。(活動歴4年) ・相談する相手はいるが、機関はない。(活動歴12年) ・事務局の愚痴などを言われたときに、自分の胸中に納めるか、事務局に連絡したほうがよいのか、結局誰にも言えず抱え込む。(活動歴4年) 【受講者からの意見】 ・派遣先で何か問題などが生じたら、派遣元に戻すようになっている。友の会のことなどもわかっているので色々と相談できる。 【三科氏からの助言】 私たち通訳・介助員には守秘義務がある。たとえ仲の良い通訳・介助員同士であっても、通訳上知り得た情報を口外すると守秘義務違反になる。しかし、個人では解決できない問題もある。そのために通訳・介助員が集まり話し合える組織のようなものが今後必要になってくると思う。 また、「事務局の愚痴を言われた時に」という回答があったが、何故、盲ろう者のこの発言を“愚痴”と思ったのだろうか。そのことがより大きな問題を含んでいるように思える。 盲ろう障害は、情報障害とコミュニケーション障害をもたらす。盲ろう障害のために他者とのコミュニケーションに困難を抱え、周囲の情報から隔絶されてしまう。このことを私たち通訳・介助員は忘れてはいけない。盲ろう者の個々に合ったコミュニケーション技術を身につけている通訳・介助員は、盲ろう者にとっては自由に話すことができ、多くの情報を得ることができる大切な存在だといえる。そんな関係の中で出てきた盲ろう者の発言を、通訳・介助員の主観で単に“愚痴”と切り捨ててしまってはいけない。たとえ、通訳・介助員にとっては些細なことであっても、盲ろう者の言葉の中には大きな問題が潜んでいるかもしれない。 <設問3>  その他アドバイスをもらいたいことがあればお書きください。 盲ろう者は通訳・介助員と毎日会うわけではないので情報不足になりがちである。そのようなことから、ある盲ろう者に点字を習得すれば自分で情報を得られることを説明したら「覚える気はない」と言われた。皆さんはどう思うか。 【城後氏からの助言】  私は点字の習得を勧めているが、点字は難しいから嫌う人もいる。ろうベースの人は文章が苦手な人も多いため、「点字=文章を読む」というイメ―ジがあるように感じる。また、高齢のために敬遠する人もいる。点字を覚えると色々な情報が得られると思うが、無理には勧めない。 【三科氏からの助言】 実際に点字の本を読めるようになることはとても大変なことである。視覚障害者の中で点字を使用しているのは一割程度。中途で見えなくなった人が指で触読するのはとても難しいことであることも知って欲しい。 例えば、視力が低下して身の回りの物の整理が難しくなった盲ろう者に対して、触覚を活用して整理ができることをアドバイスすることができる。さらに点字シールや点字のラベルを貼ることでよりわかりやすく整理をすることができるかもしれない。点字をわかることのメリットを具体的に知ることで、学びたい気持ちが芽生えるかもしれない。点字の学習の目標を「本を読む」などではなく、もっと身近な、便利さが実感できることからスタートできるとよいと思う。 (2)助言者からのコメント 【城後氏】 通訳・介助員の皆様の悩みはこれからも尽きないと思うが、今回の内容が今後の活動の参考になればと思う。今後の皆さんの活動に期待したい。 【田中氏】 通訳・介助員の悩みに触れる機会はなかなか無いので、今回色々と聞くことが出来てよかった。今後も皆で悩みを共有できればよいと思う。 【三科氏】 悩みを持つことは良いこと。悩むことは自分の考えや行動を解決に導くと思うので、自分の通訳・介助方法について振り返るという時間が持てればよいと思う。人間同士なので完璧はないと思う。どうしたらよいのか悩んだ時に、解決の方向に向かって通訳・介助員同士で語り合える場所が持てればよいと思う。 (3)感想 分科会の中で、色々な経験などを上手く引き出せなかった点は反省点であるが、助言者の方々の話から、私たちが忘れてはならない、通訳・介助員の原点に立ち返る良い機会をいただいた。 仲間がいることの心強さ、私たちを信頼してくれる盲ろう者がいることを糧に、日々の活動に精進していければと思う。 (文責:畑中 みさよ) 3-3.B分科会「高齢盲ろう者について」 講師:前田 晃秀氏(東京都盲ろう者支援センター センター長) ねらい:高齢者疑似体験セットと耳栓を併用し、高齢盲ろう者が日常生活の基本動作等にどれだけの困難を抱えているかを体験し、その後の振り返りと共に、今後確実に増える高齢盲ろう者に必要な支援を考える。 内容:前半は講義、後半は高齢者疑似体験セットを使用して、歩行、階段やエレベーターの利用、他者とのコミュニケーション、金銭の授受等を行った。 以下、講義で使用したスライドを記載する。 1 高齢盲ろう者について 東京都盲ろう者支援センター 前田 晃秀 2 高齢盲ろう者の状況 3 盲ろう者の人数と年齢層 13,952名 老年人口10,798名(77.4%) 生産年齢人口2,527名(18.1%) 年少人口109名(0.8%) 平均年齢75.8歳 (全国盲ろう者協会「平成24年度盲ろう者に関する実態調査」より抜粋) 4 目と耳の両方に障害のある方の生活状況に関する調査 2012年実施 視覚と聴覚の両方の障害が身体障害者手帳に記載してある人を対象に行った全国調査 自治体から調査票の配布の協力が得られた12,813名を対象 2,744通が有効回答 65歳以上の2018通を抽出・分析 以後のスライドは65歳以上の回答者の回答を集計したもの 5 視聴覚障害受障年齢階層 視覚障害受障時期N=1882 聴覚障害受障時期N=1869 加齢に伴い受障者が増加 ※棒グラフは省きます 6 障害の受障時期の組み合わせ 聴覚障害の受障時期4歳未満、視覚障害の受障時期4歳未満→先天性3.5% 聴覚障害の受障時期4歳以上65歳未満・65歳以上、視覚障害の受障時期4歳未満→盲ベース4.5% 聴覚障害の受障時期4歳未満、視覚障害の受障時期4歳以上65歳未満・65歳以上→ろうベース6.6% 聴覚障害の受障時期4歳以上65歳未満・65歳以上、視覚障害の受障時期4歳以上65歳未満・65歳以上→後天性(成人期)61.0% 聴覚障害の受障時期65歳以上、視覚障害の受障時期65歳以上→後天性(高齢期)13.6% 7 視覚の状態(矯正後) 視覚活用困難(全盲)36.8% 視覚活用可能(弱視)56.3% 光も感じない18.3% 明るい光は見える18.5% 目の前で手を動かせばわかる13.1% 目の前の指の本数が数えられる10.8% 大きな文字を読める27.3% 小さな文字を読める5.1% 無回答7.1% 8 聴覚の状態(補聴後) 聴覚活用困難(全ろう)20.9% 聴覚活用可能(難聴)77.2% 話し声をまったく聞き取れない20.9% 耳元で大きな話し声なら聞き取れる45.7% 少し離れても大きな声なら聞き取れる27.0% 少し離れても普通の大きさの話声を聞き取れる4.5% 無回答2.0% 9 視聴覚障害の状態の組み合わせ 全盲・全ろう→全盲ろう10.3% 弱視・全ろう→弱視ろう8.9% 全盲・難聴→全盲難聴25.6% 弱視・難聴→弱視難聴46.1% 10 補聴器 受給率 全盲ろう(N=207)→23.7% 弱視ろう(N=180)→34.4% 全盲難聴(N=517)→50.9% 弱視難聴(N=931)→52.4% 難聴であっても補聴器受給は半数程度 初対面者の発話の理解の可否(補聴器受給者) 全盲ろう(N=49)→12.2% 弱視ろう(N=61)→18.0% 全盲難聴(N=257)→44.4% 弱視難聴(N=474)→49.6% 補聴器受給されている難聴者でも、発話を理解できるのは、半数程度 11 受信コミュニケーション方法 全盲ろう(N=207)手書き文字、手話・指文字 弱視ろう(N=180)筆談 全盲難聴(N=517)聴覚 弱視難聴(N=931)聴覚 ※棒グラフは省きます 12 「孤立している盲ろう者」(月2日以下)の割合 会話 全盲ろう33.5% 弱視ろう19.1% 全盲難聴10.1% 弱視難聴7.4% 外出 全盲ろう52.6% 弱視ろう37.0% 全盲難聴45.8% 弱視難聴28.8% 情報入手 全盲ろう63.2% 弱視ろう37.6% 全盲難聴38.0% 弱視難聴23.6% 全盲ろう者の「社会参加」が特に困難 13 コミュニケーション方法ごとの 「孤立している盲ろう者」者の割合 (全盲ろう) 手話・指文字触読 会話11.1% 外出16.2% 情報入手38.9% 手書き文字 会話21.4% 外出73.6% 情報入手81.1% 「手書き文字」の盲ろう者の社会参加が極めて困難 14 加齢に伴う身体機能の変化 15 加齢に伴う身体機能の変化① 聴覚→聴こえにくくなる 16 健聴者の聴こえ 聞こえない→音の大きさ→聞こえる 母音→音の高さ→聞こえる ((出典:Birmingham Speech and Hearing Associates)) 17 老人性難聴の聴こえ ・老人性難聴では、高い音が聴こえにくくなる ・子音を使う語(特にサ行、タ行)は音が高く、聞き取りにくい ↓ ・人の話を正確に聞きとれなくて何回も聞き返す ・話の内容が分からないまま相づちを打つ ・引っ込み思案 18 老人性難聴の聞こえ(模式図) TAKESHITASAN たけしたさん ↓ TAKESHITASAN たけしたさん…音が小さくなる ↓ K、S、T音などが聞き取れない ↓ 騒音があると音がぼやける ↓ 反響のあるところでは音が歪む ↓ 「あれはいかん」??…聞こえた音のイメージから類推して判断 大沼直紀『教師と親のための補聴器活用ガイド』(コレール社)より抜粋 19 加齢に伴う身体機能の変化② 視覚→見えにくくなる 20 高齢期の眼疾患 白内障 原因…レンズの役割をする水晶体が濁る 症状…かすんで見える、明るいところへ出ると眩しく見にくい。それに伴ない、視力が低下する 見え方…まぶしさ、ぼやけ 緑内障 原因…眼圧があがり、視神経が押しつぶされる 症状…視野が徐々に欠ける 見え方…視野欠損 加齢黄斑変性 原因…網膜の中心にある黄斑部に異常が生じ、視野・視力障害をひきおこす 症状…視野の中央が、暗く見える、よく見えない、線がゆがむ 見え方…ぼやけ、中心暗点 21 目の断面図 ※図は省略します 硝子体、角膜、瞳孔、水晶体、脈絡膜、黄斑(中心窩)視神経→脳へ 22 様々な見えにくさ ぼやけ まぶしさ 視野狭窄 中心暗点 23 アムスラーチャート このアムスラーチャートを30センチメートルくらい話して見る。 片目ずつチェックする。 老眼鏡はかけたままチェックする。 ↓ ・線がぼやけて薄暗く見える。 ・中心がゆがんで見える。 ・部分的に欠けて見える。 以上のように見えるときは加齢黄斑変性症が疑われますが、正式な検査は眼科医で行ってください。 24 加齢に伴う身体機能の変化③ 上肢→物をうまくつかめなくなる、高いところに手が届かなくなり腕力も弱くなる 25 20または25歳時の値を100%としたときの割合(%) ※グラフは省略します 握力低下→手指でのつかみづらさ 腕の筋力低下→腕のあげ伸ばしづらさ ((平井:ライフサイエンスの現状と将来【理化学研究所、1981】P76、久野:老年病のとらえかた【文光堂、2002】P137より)) 26 加齢に伴う身体機能の変化④ 下肢→不安定な姿勢が維持しにくい、つまづいたり転びやすくなる 27 加齢にともなう筋肉量の変化 40歳代を100%としたときの各年代の割合(%) ※グラフは省略します 脚の筋力低下→安定した姿勢維持の困難 ((広島工業大学工学部 佐藤広徳准教授呉市・宮崎県延岡市在住約600人(22歳から89歳)対象にした測定研究結果より)) 28 高齢者の歩行 筋力低下、関節拘縮 ↓ ①姿勢:前かがみ ②腕振り:小さく ③歩幅:小さく ④つま先:すり足気味 ↓ つまづき、転倒の危険性大 29 加齢に伴う身体機能の変化⑤ 泌尿器→頻尿や残尿傾向になり、トイレが近くなる 冷温覚→熱い冷たいを感じにくい 温度感覚→暑さ寒さを感じにくい 30 高齢者疑似体験 31 目的:高齢者の状態を疑似的に体験することを通して、高齢盲ろう者に必要な配慮を考える 耳栓→高音域を遮断する耳栓により、「耳が遠い」状態を体験します。 メガネ→老眼、白内障による色覚変化と暗く、ぼやけて見える体験をします。 二重チョッキ→重りによって前かがみの姿勢になります。 肘サポーター→加齢による関節の動きにくさを体験します。 手袋→物がつかみづらい、握力が弱い等手指の感覚機能が弱くなります。 膝サポーター→加齢による関節の動きにくさを体験します。 靴型サポーター→歩くとき、つま先が上がりにくくつまずきやすくなります。 重り→動作を緩慢にします。 32 進め方 ①3人で1組になってください ②「高齢者役」「介助者役」「観察者役」の順番を決めてください ③スタッフが高齢者役に装具を装着します ④高齢者役は装具を装着後、着席してください ⑤渡された封筒から課題の書いてある紙を取り出し、その内容に従い、行動してください ⑥体験終了後、感想を記入してください ⑦グループ(6人1組)ごとに感想を話し合ってください ⑧グループごとに発表します 33 留意点 ①高齢者役は自力で課題をこなすように心がけましょう。難しい場合は、介助者役に援助を依頼してください 競争ではないので、無理に急がないようにじっくり高齢状態を体験してください ②介助者役は危険を感じたとき以外に手や口を出さないようにしてください ③観察者役は高齢者役の行動を客観的に観察し、困難さや介助の必要性を考えてください ④普段の通訳・介助活動を振り返りながら、体験や観察をしてください 34 ⑤装具の装着はスタッフがしますが、体験終了後、可能な装具はご自分で外してください ただし、二重チョッキは重りを取り出してから、脱ぐようにしてください 35 感想記入 ①高齢者役を体験してみての感想や気づき ②介助者役、観察者役の視点からの感想や気づき ③高齢者疑似体験を経験して気づいた、高齢盲ろう者に必要な配慮 ・高齢者役が装具を装着しているときに、感想を記入してください ・感想記入用紙は講義終了時に回収し、後ほど、受付で返却します 36 高齢者疑似体験の限界 ・身体機能の加重、拘束することにより、高齢者の状態をシミュレートしているが、高齢者の困難さのほんの一部に過ぎない ・すべての高齢者が同じような状態ではない。 ・そもそも心理的状態(老化にともなう不安や認知機能の低下など)はシミュレートできていない。 ・ごく短時間の体験である。 ↓ 体験を絶対的なものと思わない 実際の高齢盲ろう者の困難や配慮を想像する「きっかけ」として体験を捉える 3-4.C分科会「音声通訳について」 講師:高橋 信行氏 ねらい:音声通訳を行ううえで留意すべきポイント、通訳上難しい場面などを皆で共有することを目的に、通訳・介助実習、その後の振り返りを通じて通訳・介助技術を学ぶ。 以下、講義で使用したスライドを記載する。 1 音声通訳スキルアップ講座 特定非営利活動法人えひめ盲ろう者友の会 高橋信行 2 本講義の構成 ・PartⅠ 伝わるために ・PartⅡ 通訳であるために ・PartⅢ 精神的世界の創造のために 3 A状態 1光と音を失ったとき、まるで宇宙でひとりぼっちでいるようだった。 B状態 2指点字というコミュニケーション手段を 手に入れたとき、壺の中に入れられて誰かが時々、壺のふたを開けて話しかけてくる、そんな感じだった。 C状態 3指点字通訳を手に入れたとき、集団の中で活躍できるようになった。 4 A状態→PartⅠ 伝わるために B状態→PartⅡ 通訳であるために C状態→PartⅢ 精神的世界の創造のために 5 PartⅠ 伝わるために 6 可能および最も円滑な受信コミュニケーション方法は「音声」 ・可能な受信コミュニケーション方法 可能な受信コミュニケーション方法では「音声」の割合が最も高く69.0% 次いで「筆記」20.2%、「手書き文字」13.2%となっている。 表2-2-6a 可能な受信コミュニケーション方法 音声→1,870人(69.0%) 手話を見る(弱視手話)→218人(8.0%) 手話を触る(触手話)→182人(6.7%) 指文字を見る→103人(3.8%) 手書き文字→358人(13.2%) 筆記→549人(20.2%) 点字→131人(4.8%) 指点字→45人(1.7%) その他→198人(7.3%) 特にない→225人(8.3%) 7 耳の断面図 ※図は省略します 外耳→耳介、外耳道、鼓膜 中耳→耳小骨、鼓室、 内耳→半規管、蝸牛、聴神経 聴神経 8 伝音性難聴 耳の断面図 ※図は省略します 外耳、中耳、内耳 9 感音性難聴 耳の断面図 ※図は省略します 内耳、聴神経 10 難聴の種類による聞こえ方の違い 伝音性難聴 音が小さく聞こえる→補聴器で音を大きくすることで比較的解決しやすい 感音性難聴 音がこもって聞こえる 歪んで聞こえる 誰かが話しているのは分かるが何を言っているのか分からない。(隣の部屋で話しているのを聞いているよう) →補聴器で音を大きくしただけでは解決しない 11 アッシャー(Usher)症候群 ・盲ろう者の半数を占めると言われる ・感音性難聴に網膜色素変性症を伴う症候群性の疾患 タイプ1→弱視ろう、全盲全ろう 先天性の高度難聴を呈する。視覚症状は10歳前後より生じる。 タイプ2→弱視難聴、全盲難聴 先天性の高音障害型難聴を呈する。視覚症状は思春期以降に生じることが多い。前庭機能は正常である例が多い。 タイプ3→全てのパターン 進行性の難聴を呈し、前庭機能障害の有無、および視覚症状の発症時期は様々である。 ・音声通訳の対象となるのはタイプ2と3と考えられる。 12 蝸牛の有毛細胞 (イメージ図) ※図は省略します 高温→低音 13 聞こえる音の範囲 (聴野) 健聴者のオージオグラム 盲ろう者のオージオグラム ※図は省略します 14 音のストライクゾーン 健聴者のストライクゾーン→広い 盲ろう者の ストライクゾーン→狭い ※図は省略します 15 補聴器は音のストライクゾーンを少し広げる デジタル補聴器では ・小さい音は大きく ・大きい音はそのまま ・音質を改善 →ストライクゾーンを広げる効果 健聴者と同じように聞こえるようになるわけではない。 16 盲ろう者の音のストライクゾーンに音を入れていく ・ちょうど良い音の大きさ ・聞きやすい音の高さ ・明瞭に発音 ・口ごもった発声で通訳すると こもり×こもり=もこもこ 17 明瞭な音声を得るために (距離) 通訳者の口から 盲ろう者の耳までの距離 できるだけ近い方が良い 距離が2倍になれば、音圧は1/4 18 明瞭な音声を得るために (口の方向) 通訳者の口の向いている方向 ・方向がそれると音がこもる ・高い周波数の音ほど、空気吸収による減衰が起こりやすい 中心から外れるに従って、こもる 19 語尾までしっかりと ストライクゾーンに入れていく ・日本語における語尾 語尾が聞き取れないと結局通じない。 ・発声の最初から最後までを音のストライクゾーンに納める。 (途中でストライクゾーンを外れないように) 20 視覚障害者用の移動支援スタイルではNG 視覚障害者の手引きは、肩や肘に手を置いてガイドの一歩後ろを歩く。 →通訳介助者の口から盲ろう者の耳までが遠い。 →通訳介助者の口が盲ろう者の耳の方向を向いていない。 →音声は小さく、こもる 21 適切な声の大きさ ①小さすぎて聞こえない ②適切な音量で良く聞こえる ③大きすぎて聞き取れない 22 S/N比 「S/N比 (Signal–Noise–Ratio) 」とは S→Signal通訳者の音声 N→Noise雑音 (通訳者の音声以外の音) ①S/N比が良い。 良好に聞こえる。 ②S/N比が悪い。 健聴者には聞き取れても、盲ろう者には聞き取れない。(ノイズによるマスキング効果) 23 補聴器で聞こえるようになる場合とそうでない場合 ①静かな場所では 補聴器を使って聞こえるようになる。 ②雑音の多い場所では補聴器を使っても聞こえない。 24 FMマイクを用いた補聴器では良好なSN比が得られる ①通常の補聴器 ②FMマイクを用いた補聴器 25 盲ろう者ではカクテルパーティー効果が得られない。 ①話者が一人の時 健聴者〇 盲ろう者〇 ②話者が複数になると 健聴者〇←カクテルパーティー効果 盲ろう者× 26 話者の声を音声通訳する ①盲ろう者に話者の声は聞き取れない。 ②そこで通訳介助者が話者の声を通訳する。 盲ろう者に通訳介助者の声だけが聞こえる。 27 話者と通訳介助者の声がかぶるケース ①理想的な状態 ②話者と通訳介助者の声がかぶるケース (話者と通訳介助者の両方の声が聞こえて聞き取りづらい) ③話者と通訳介助者の声が逆転するケース (通訳介助者の声より、話者の声の包が大きく聞こえていて通訳介助が不要なケース) 28 聞き取りやすさは語彙の親近性による ・音声と語彙リストとの照合を行って判別 ・語彙リストにない単語は認識が困難 通訳者「アイス」 盲ろう者「ライス、マイク、アイス、アイチ、ナイフ…」 29 「さ?、た?、か?、は?」 これらの音は区別が困難 「しゃ、ちゃ、きゃ、ひゃ」、「い、き、ひ、ち」等についても同様 どのように伝えますか? 30 聞き取れない発音を何度繰り返しても、聞き取れない。→注意不足で聞き取れないのではないから。 「かきくけこ」の「か」のように伝える?→NGです。 「かきくけこ」 「さしすせそ」 「たちつてと」 これらは同じに聞こえます。 31 フォネティック読みで伝えれば良い ア→朝日のア イ→いろはのイ ウ→上野のウ エ→英語のエ オ→大阪のオ カ→為替のカ キ→切手のキ ク→クラブのク ケ→景色のケ コ→子供のコ サ→桜のサ シ→新聞のシ ス→すずめのス セ→世界のセ ソ→そろばんのソ タ→煙草のタ チ→千鳥のチ ツ→つるかめのツ テ→手紙のテ ト→東京のト ナ→名古屋のナ ニ→日本1のニ ヌ→沼津のヌ ネ→ねずみのネ ノ→野原のノ ハ→はがきのハ ヒ→飛行機のヒ フ→富士山のフ ヘ→平和のヘ ホ→保険のホ マ→マッチのマ ミ→三笠のミ ム→無線のム メ→明治のメ モ→もみじのモ ヤ→大和のヤ ユ→弓矢のユ ヨ→吉野のヨ ラ→ラジオのラ リ→りんごのリ ル→留守居のル レ→れんげのレ ロ→ローマのロ ワ→わらびのワ ワ行のイ→ゐどのイ ワ行のエ→かぎのあるエ ヲ→尾張のヲ ン→おしまいのン 濁点マーク→濁点 半濁点のマーク→半濁点 32 「ディラン」と伝える 「デ」→手紙の「テ」に濁点 「ィ」→いろはの「イ」の小さい 「ラ」→ラジオの「ラ」 「ン」→おしまいの「ン」 33 演習 全員でフォネティック読みを「あ」~「ん」まで読み上げます。 34 演習 次の単語をフォネティック読みにして下さい。 ①テラス ②デイゴ ③フォネティック 35 演習 2人一組になる 1人は盲ろう者役(目隠しして耳栓を装着) 他の1人は通訳介助者役 次のことをフォネティック読みで伝える ・好きな食べ物 ・好きな芸能人 ・最近読んだ本 36 フォネティック以外の方法 ・意味を説明して伝える 「親近性」→どれほど慣れ親しんでいるか ・漢字を説明して伝える 「親近性」→親(おや)、近い、性質 ・和訳や英訳して伝える 「親近性」→affinity 「夕日」→sunset ↓ 聞き取れない言葉を連呼するのではなく 相手に応じて工夫をすること 37 演習 意味を説明 漢字を説明 和訳や英訳   ①公園 ②冗長性 38 演習(交代) 意味を説明 漢字を説明 和訳や英訳   ①浅間神社 ②最適化 39 場面毎に確認する 環境や体調の変化による聞こえ方の変動 ・環境、体調などで聞こえたり聞こえ方が変化 ・各場面において聞こえているかの確認が必要 40 フィードバックを活用して音声通訳の最適化を図る 環境や盲ろう者の体調などによって調整が必要 適切な調整が行われるためには、フィードバックの活用が重要 ・盲ろう者が意識してフィードバック ・通訳者が盲ろう者の表情、反応などを観察 41 障害の受容の困難 ・盲ろう者の抱える心理的な問題 ・聞こえていないことを主張できない ・聞こえていないことを認めようとしない 42 伝達成功率は何%? ・100~80%良好状態 落ちた情報は推測により補って、 ほとんどの情報は伝えられている。 ・80~50%要改善状態 推測によりある程度は補っているが、 重要な情報が落ちている可能性が高い。 ・50%以下伝達不全状態 コミュニケーションとして成立していない。 「伝わっていない」ことすら通訳者に認知されていない? 43 PartⅡ 通訳であるために 44 A状態→PartⅠ 伝わるために B状態→PartⅡ 通訳であるために C状態→PartⅢ 精神的世界の創造のために 45 社会参加とは みんなと一緒にいるだけでは 社会参加しているとはいわない。 体はみんなと一緒にいても 心は孤立しているのでは? ・社会参加とは盲ろう者が社会で活躍すること。 ・B状態ではなく、C状態でなければならない。 46 間接話法と直接話法&登場人物の識別 間接話法 「田中さんがラーメン食べたいだって、佐藤さんがとんこつが好きだって」 「本町に新しいとんこつラーメンの店ができてただって、鈴木さんが言ってる」 直接話法 「田中:あー、おなかすいた、ラーメン食べたいなー」 「佐藤:イェィ、私はとんこつが好きだなぁっ」 「鈴木:おー、それなら、本町に新しいとんこつラーメン屋ができとったぜ」 47 A状態 B状態←間接話法 C状態←直接話法 48 ご注文は何になさいますか?おすすめはペスカトーレですが、いかがでしょうか? 音声通訳 ウエイターが来ました。 ウエイター:ご注文は何になさいますか?おすすめはペスカトーレですが、いかがでしょうか? 49 マサル これユリちゃんに渡してほしいんだけど。 キョウコ いやよ、自分で渡しなさいよ 音声通訳 マサル:これユリちゃんに渡してほしいんだけど。(プレゼント手に持ってます) キョウコ:いやよ、自分で渡しなさいよ(笑いながら言ってます) 50 タイムラグの長さ 追っかけ通訳で伝える これユリちゃんに渡してほしいんだけど  ((の「だけど」のあたりで)) マサル:これユリちゃんに渡してほしいんだけど これユリちゃんに渡してほしいんだけど ((の「これ」のあたりで)) マサル:これユリちゃんに渡してほしいんだけど 51 レスポンスを高める タイムラグ短い→レスポンスが良い タイムラグ長い→レスポンスが悪い 52 演習 ・2人一組になる ・1人は盲ろう者役(目隠しして耳栓を装着) ・他の1人は通訳介助者役 ・演者二人の会話を音声通訳して下さい。 留意点 ・直接話法 ・ハイレスポンス 53 1対1場面での通訳形態 基本的通訳スタイル 話者A→コミュニケーション←盲ろう者←支援←通訳介助者 54 誤りの例 話者A→コミュニケーション←通訳者→支援→盲ろう者 ・これは通訳ではなく伝聞 ・自立や社会参加の形になっていない。 →B状態 55 基本的通訳スタイル 話者A→コミュニケーション←盲ろう者←支援←通訳介助者 56 演習 ・3人一組になります。 ・1人目は盲ろう者役 (アイマスク、耳栓を着用) ・2人目は通訳介助者役 ・3人目は店員役 アクセサリー店にいます。 店員とのやりとりをしながら気に入るアクセサリーを購入しましょう。 留意点 通訳介助者の立ち位置 57 集団における通訳形態 これで良いか? 話者A←コミュニケーション→盲ろう者←コミュニケーション→話者B 上記の盲ろう者を通訳介助者が支援 58 盲ろう者と話者A、盲ろう者と話者Bのコミュニケーションは存在するが、これを集団におけるコミュニケーションとはいわない。 59 話者Aと話者B間のコミュニケーションをも通訳しないと集団に参加できない。 話者A←コミュニケーション→盲ろう者←コミュニケーション→話者B←コミュニケーション→話者A 上記の盲ろう者を通訳介助者が支援 60 集団とのインターフェース(進行スピード) 全体の進行が早すぎるとき、 盲ろう者に情報が伝え終わるまで、進行の停止や、ゆっくり進行するように全体に対して要望する。 61 集団とのインターフェース(発言のタイミング) 盲ろう者が発言したい時に、発言するタイミングを計りそのタイミングを盲ろう者に伝える。 62 場面背景の通訳の重要性 コミュニケーションに文脈をもたらす 場面背景が無い…断片的なコミュニケーション 場面背景がある…文脈のあるコミュニケーション 63 ノンバーバルコミュニケーションをも伝えよう ・ノンバーバルコミュニケーションとは? ・非言語によるコミュニケーション(65%) ・人体(性別、年齢、体格、皮膚の色など) ・動作(人体の姿勢や動きで表現されるもの) ・目(アイ・コンタクト,目つき) ・周辺言語(話しことばに付随する音声上の性状と特徴) ・沈黙 ・身体接触(相手の身体に接触することによる表現) etc 64 PartⅢ 精神的世界の創造のために 65 ”Real World” ”My World” 66 精神的世界の創造 ・誰もが精神的世界の中で生活をしている ・どのような精神的世界に住んでいるかということは人生の豊かさを決定づける 67 ”Real World” 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 表在感覚 深部感覚 etc →精神的世界の創造 68 盲ろう者の場合、精神的世界の創造が困難 69 光と音の世界を凝縮して伝える ・音と光で満ちあふれた世界を、どのようにして 言語化するか? ・膨大な情報量を、限られたコミュニケーション能力で伝達する ↓ 全てを伝えるは無理 ↓ 取捨選択 ・ITで置き換えられない ・人間の通訳介助者のなせること 70 5W1Hで伝える "WHO"だれが "what"何を "when"いつ "where"どこで "why"なぜ "how"どのように 71 「要約」 と「私見」の区別 ・要約→事実のエッセンスを凝縮 ・私見→通訳介助者の考え・判断 ※私見を伝えてもいいが、しかるべきタイミングに、私見であることを明言して伝えればよい。 72 良い情報とは? 情報は多ければ多いほど良いか?→No 良い情報とは ・確からしさ ・シンプル ・タイミング これらを逸脱した情報は「ノイズ」となる。 73 階段を移動支援するときの有効な情報とノイズ 有効な情報:理由 歩くスピードを緩める:この先に何かある 一旦停止:前に何かある 等速で階段を降りていく:階段が続きます 階段の終わりで一旦停止:階段の終わり ノイズ:理由 「もうすぐ階段です」:不確か 時々、立ち止まって、足もとを確認する:不必要 後、3段です:不確か 74 音声にする必要がない情報 例えば椅子へのガイド 椅子がある場所を言葉で伝える? 背もたれや座面を触らせればいいのでは? すると盲ろう者は自分で座れる。 75 サインの併用 場所や方向を伝えるときなどに、場所、方向、状態を示すサインを活用 例)お店を出るとき 「右側から店員さんがお礼を言っています」 ↓   通訳介助者が店員さんの方を指し示し、手で挨拶のサインをしながら「ありがとうございました。」 76 どのようにしたら効率的に精神的世界を構築していけますか? 盲ろう者と一緒に歩いて行く ↓ 新聞屋、居酒屋、コンビニ、電気屋、菓子屋、酒屋、薬屋、ラーメン、そば屋、マクドナルド、時計屋 77 周囲への理解 音声通訳は、盲ろう者にだけでなく、周囲の人にも聞こえるので、実施が困難な場面も少なくない。 できる限り周囲の理解を得られるように取り組む →盲ろう者の存在の理解 →通訳の必要性の理解 78 演習 ・二人一組になります。 ・一人は盲ろう者役 (アイマスクと耳栓を着用) ・他の一人は通訳介助者役 模擬商店街を歩きながら音声通訳をする。 留意点 ・視覚障害者スタイルではなく盲ろう者スタイル ・方向や場所はサインにより伝える。 ・立ち止まらない 79 有毛細胞は消耗して細胞死する ・長時間の音声通訳 ・騒音下での大音量の通訳 ・必要以上の音声情報 ↓ 聴覚を疲れさせ、聴覚低下を引き起こす 80 まとめ ノイズを押さえて 必要最小限の音量で サインなどを併用しながら 効率よく 必要な情報を 適切なタイミングで 伝えていこう! 3-5.D分科会「事例検討」 助言者:城後 直子氏 前田 晃秀氏 畑中 みさよ氏 司会:増田 規子氏(静岡県盲ろう者向け通訳・介助者の会) ねらい:様々な通訳・介助事例を持ち寄り、いろいろな方向からアプローチをする。また、討議をする中で新たな視点から今後の通訳・介助活動に役立つポイントを見つける。 内容:4つの事例をグループで討議する。時間があれば事前アンケートの事例等も討議する。 【事例】 ①白杖を使用しない盲ろう者の通訳・介助に入りました。階段・段差等色々な注意を払っていますが、やはりつまずくことが多く、普段も危険に遭遇することが多い盲ろう者です。そのような盲ろう者の通訳・介助を引き受けたとき、あなたならどうしますか。 ②スーパーに盲ろう者と一緒に買い物に行きました。盲ろう者の目的の商品を探して長時間歩き回りましたが見つかりません。それで、盲ろう者に「ここで待っていて」と声をかけて、通訳・介助員が店員に聞きに行きました。そして、目的の商品とは違うけれど、似たような商品が見つかりました。二人とも疲れていたため、通訳・介助員から「これに決めたらどうか」と盲ろう者に言い、それを買うことになりました。これについてあなたはどう思いますか。 ③二人体制で通訳・介助に入りました。対象の盲ろう者が暑い部屋の中で上着を着たままでいます。それに気づいたあなたのペアで入っている通訳・介助員が「暑いから脱いで」と言い、勝手に上着を脱がせました。盲ろう者はそれを当たり前のように受け入れています。その後、その通訳・介助員は盲ろう者から頼まれていないのに「熱中症になると困るからね」と言い、水を買ってきて「これ100円だからね」と言いました。それを見たあなたはどうしますか。 ④盲ろう者の希望で、朝食が美味しいと有名なホテルに泊まりました。メニューが豊富なフランス料理のバイキング形式の朝食です。朝食会場に行くととても混雑していて、残りの朝食時間も少なかったのですが、盲ろう者は会場を一緒に周り、メニューを教えてほしいと言います。メニューはジャガイモのテリーヌ、赤ピーマンのファルシー、ラタトゥイユ、キッシュなど盲ろう者は初めて聞く単語ばかりで「ファルシーとは何ですか、テリーヌとは何ですか」と聞いてきます。テーブルにはおすすめメニューや季節限定メニューもあると書いてあります。あなたならどうしますか。 ⑤ここの事例に限らず、各グループで出た事例を題材にしても構いません 1.各グループ討議意見のまとめ 事例①について ・日頃から付き合いのある盲ろう者には、白杖を持った方がよいと伝える。 ・通訳・介助員からは何も口出しできないので、派遣元に返す。 ・友の会に白杖についての勉強会を開催してもらう。 ・白杖の使い方がわからない、怖いという理由で持たないならばそこを解決しなければならない。 ・白杖の必要性を機関紙等に載せてもらう。 ・友の会からも伝えてもらう。 ・盲ろう者同士で意見交換する。 ・盲ろう者本人が決めることであり、通訳・介助員が口を出すことではない。通訳・介助員がけがのない範囲で見守る。 ・白杖を持った方がよいことを、コーディネーターから伝えてもらう。 ・白杖を持つことは道路交通法で定められていることも伝える。 事例②について ・長時間、疲れるまで歩くのはいかがなものか。早く店員に聞いた方がよかったのではないか。 ・「待っていて」と言って盲ろう者を1人にするのがよくない。そのときは理由を説明する。 ・通訳・介助員は「疲れた」と、口に出してはいけない。 ・決定権は盲ろう者にあるので、必ず盲ろう者に確認する。 ・盲ろう者が通訳・介助員に自分の意見を言えるかどうか、そこが問題である。 ・すべて盲ろう者が決定するのは無理ではないだろうか。決められないまま派遣の時間が終わるだろう。通訳・介助員が家に帰ってから改めてインターネット等で探し、盲ろう者に相談して買ったこともある。 ・派遣終了の時間が迫っているなら盲ろう者と相談し、盲ろう者がどうしても今日買いたいというなら対応する。 事例③について ・ペアの通訳・介助員が注意すべきである。しかし通訳・介助員同士の上下関係があり、何も言えない。 ・コーディネーターに返す。 ・服を脱がせるのは手を出し過ぎである。盲ろう者に水を買ってくるよう頼んだのか聞いてみる。 ・盲ろう者が疲れていたので飴を盲ろう者の口に入れてあげた、という似たような例があった。 ・「通訳・介助員」ではなく、「奥さん」や、「母親」になっているのではないか。 事例④について ・朝起きる時間を決めておいた方がよい。 ・すべて説明する必要はあるが、時間が無いことも伝える。 ・メニューはたくさんあるが、終了時間が迫っていることも伝え、そのうえで盲ろう者に判断してもらう。 ・状況説明をしたうえで、盲ろう者がメニューを全部知りたければ全部説明する。 ・事前に朝食の時間やメニューを調べておく。 ・楽しんで食べるために、トレーには小皿をたくさん並べ、少しずつ料理を入れる。 2.講師からのコメント 事例①について ・盲ろう者は白杖を使ってほしい。それを盲ろう者に伝えるのには友の会の協力も必要である。コーディネーターから話してもらうのもよい。 ・盲ろう者と通訳・介助員が話しができる関係を作っていく事が大切である。 ・白杖の役割は、「路面の障害物等の情報を教えてくれる」、「障害物から守ってくれる」、「自身の障害を周囲に知らせる」がある。 ・単独で安全に歩行するために白杖は不可欠だが、 通訳・介助員がいる時にはそうではない。白杖の役割を通訳・介助員ができればよい。白杖よりも通訳・介助員の方が優秀なので白杖に頼る必要はない。 ・盲ろう者の中には、危険な目にあっても白杖を持ちたくないという人もいるので理解していただきたい。 事例②について ・このような通訳・介助は受けたくない。盲ろう者に決める権利があり、情報提供を受け、盲ろう者が判断できるようにするのが通訳・介助員の役割である。 ・通訳・介助員に聞いてくる盲ろう者もいるので、その時は柔軟な対応をする。 ・通訳・介助員も長時間歩き、判断ができかねている。自分の感情が出てしまっているのではないだろうか。疲れている時ほど、通訳・介助員に求められている忍耐力が試されるのではないか。 ・通訳・介助員はすぐに「待って」と言う。そう言われれば盲ろう者は待つしかない。自分の主体性が失われてしまう。「待って」を使わないで通訳・介助ができるとよい。 ・盲ろう者が「どこかに店員いないかな」と言っただけなのに、通訳・介助員は「ちょっと待って」といい、自分から離れてしまった。勝手に動かれ、悲しい気持ちになった。これはよくない対処で注意すべきである。(実際にあった話) 事例③について ・盲ろう者から通訳・介助員に注意してもらうのが一番よい。怒る盲ろう者は少ないかもしれない。通訳・介助員に遠慮している盲ろう者が多いのかもしれない。 ・盲ろう者が自分でできる事まで通訳・介助員がやってしまう。「盲ろう者は何もできない」というイメージが抱かれやすいということを盲ろう者はわかっていない。 ・家族のように接するのは良い部分もあるが危険な部分もある。盲ろう者と通訳・介助員は移動介助時も含め、体が接触している。ということは親密な関係を抱きやすい。距離感を保つことが難しい。近づき過ぎると盲ろう者と一体化してしまうし、離れ過ぎると信頼関係を築くのが難しい。 事例④について ・バイキングが好きな盲ろう者はたくさんいる。 ・失敗しても次に活かしていけばよい。 ・余裕を持って朝食を楽しめればよい。 ・状況説明をして盲ろう者に判断してもらう。盲ろう者のおかしな判断の裏には、おかしな通訳・介助員がいるという事である。 3.全体を通して講師からのコメント ・ありえない事例もあったかもしれないが、あり得ないことが起こることもある。そんな時もすぐに対応でできるようになってほしい。 ・通訳・介助員がいるから、盲ろう者は外出ができる。しかし、盲ろう者の主体性を無視するような通訳・介助をすると、盲ろう者は外出したくなくなる。そうならないよう注意してほしい。 感想 ・ありえない事例もあったかもしれないが、どのグループも活発に意見を出していた。講師の方もそれぞれの立場でわかりやすくお話して頂いて、日々の活動を振り返るよい機会になったと思う。(文責:増田 規子) 3-6.E分科会「通訳・介助の基本に返ろう」 講師:三科 聡子氏 ねらい:盲ろう疑似体験等を通し、見えない(見えにくい)、聞こえない(聞こえにくい)ということを再認識すると ともに盲ろう者に対する支援技術を再認識する。 内 容: 1.見えにくさの疑似体験 2.聞こえにくさの疑似体験 3.伝え方について考える 4.コミュニケーションについて考える 5.通訳・介助の基本とは 6.全体を通して講師からのコメント 1.見えにくさの疑似体験 受講者は白濁0.2、視野狭窄5度のシミュレーションゴーグルを装着し、以下の課題に取り組んだ。 <課題> (1)受講者に窓の方向を向いてもらい、カーテンを開ける (2)プリントの問題を読み、問題を解く 課題文章を読まなければ内容が理解しにくい学習プリントを用意した。幼児学習用のプリントのコピーなので、課題文章、課題だけではなく、数多くのイラストが書かれている。 ①図形描写 4×4の表が左右に1つずつ並んでおり、左側の表には、マスの中にひし形や三角、丸のマークが書かれている。左側の見本を見て、同じ形になるよう右側の表へ記入する。 ②グリッド点つなぎ 四角の枠が左右に1つずつ並んでおり、どちらの枠にも等間隔に点(グリッド)が打ってある。左側のマスには、点をつないでできた線や形(家や鉛筆など)が描かれている。左側の見本を見て、同じ形になるように右側の枠へ記入する。 ③点つなぎ 紙全体に点と、点に付随して数字が書かれている。数字の小さい点から順番に線でつないでいく。(点を順番につないでいくと雪だるま等の絵になる) ※図は省略します ©ぷりんときっず http://print-kids.net/ (3)旅費明細書に必要事項(氏名、住所、電話番号、経路など)を記入する 【受講者からの感想】 ・何をするのか書いた問題文が小さくて見えず、推測して書いた。 ・紙の裏表を間違えており、何をすればいいのか分からなかった。周囲の人が書いている音が聞こえてくるので、自分だけができていないことに不安になった。裏表が違うことを一言、声をかけてもらえれば、自分の行動や気持ちが変わったと思う。 ・①で、見本は大きな丸だったが、自分が書いたものは小さかった。 ・③で、点つなぎの点が全く見えず、適当に線を引いたため、指定された点を無視して書いてしまった。 ・③で、雪だるまの帽子の絵と数字が重なっていて、見えづらかった。 ・書く範囲と書く内容を事前に教えてほしかった。 ・自分で書いた文字はボールペンよりも太いマジックで書いた方が見やすかった。 【講師のコメント】 あるプリントが配られた際、何をしなければいけないのかを知るために、まずは課題内容などの指示を理解する必要がある。しかし、盲ろう者はその指示が見えにくいために、なんとなく行動してしまう場面があるのかもしれない。そのような盲ろう者の行動を見て、「もっとよく見て」「なんでそんな所に書くのかな」と感じた経験があるだろう。そうした時、通訳・介助員として、配慮や工夫、提案することが必要になる。 今回の体験を通して、文字の太さ・色・文字の並び(縦書きか、横書きか)・文字が書かれている場所が統一されていないために、見えたり見えにくくなったりしたと思う。また数字や点だけであれば見えるが、背景と重なることで見たいと思う数字や点が見えづらくなったと感じた人も少なくないだろう。見えやすくするためには、文字の大きさや文字の色等を明確にすること、見て欲しい文字などとその背景のイラストなどが重ならないように配置するなどの配慮が必要になる。また、どこを見たらよいのか、見る範囲を明確にすることで探しやすくなる。例えば、文字を記入する欄に、黒画用紙にスリットを切り抜いた紙をかぶせてエリア【範囲】をわかりやすくすることも効果的である。視覚障害者の便利グッズとして購入も可能。 また、通訳・介助員としてどのような説明をしたら、どのような情報を提供したら、盲ろう者が書きやすく、わかりやすくなるのかも考えていきたい。 2.聞こえにくさの疑似体験 難聴者の聞こえを基にして編集したシミュレーションテープを聞き、難聴の聞こえ方を擬似的に体験した。女性の声、男性の声、伝音性難聴、感音性難聴など、いくつかの異なるシミュレーションテープを準備した。難聴のシミュレーションテープを視聴したあとに、クリアな音での同文を聞いて比較をした。 難聴のシミュレーションテープは音としては聞こえるが、くぐもっていたり、音が割れていたりして、内容は聞き取れない受講生が多数いた。 【講師からのコメント】 音を聞き取るためには、音の鮮明さ(音をクリアにすること)が重要。特に感音性難聴の場合、複数の人が同時に話す状況では、聞きたい相手の声が聞き取りにくかったり(カクテルパーティー効果の喪失)、音量をあげるとかえって聞きにくくなってしまう場合(リクルートメント現象の異常)もある。盲ろう者が聞きやすくなるためには、通訳の話し方を工夫する他に、周囲の環境を整えることも大切である。 3.伝え方について考える 2人1組になり、1人はアイマスクを付ける。アイマスクを付けていない人(通訳・介助員役)は、モデルの動き(ダンス)を見て、アイマスクを付けている人にその動きを言葉だけで伝える。動きは手だけを動かす、足だけを動かす、手と足を同時にそれぞれ動かすなど、いくつかの動きが組み合わされている。説明を終えた後、実際に音楽に合わせて踊る。踊り終えた後、アイマスクをはずし、見本となったダンスの映像を視聴する。1人目が終了した後、役割を交代して別のダンスで同様の内容を体験した。 【受講者からの感想】 ・具体的な例を挙げてもらうとわかりやすかった(ご飯を食べているような動きなど)。 ・自分も一緒に動きながら説明すると、説明しやすかった。 ・言葉だけで伝えることが難しく、つい触って教えそうになった。 【講師からのコメント】 動きがあり、触ることが難しい状況をどのように盲ろう者に伝えるかを、今回の体験を通して考えてもらった。通訳・介助員役の一人ひとりが異なる説明で、どうにかして伝えようとする気持ちが伝わってきた。動きを説明する際に、一つひとつの身体の部位の説明(例えば、右手をあげる、両手をふる)だけではなく、具体的な例をすることでイメージがわきやすくなったという感想も聞かれた。どの場合にもあてはまるような、正しい説明方法はないだろう。まずは思いつく方法で伝え、伝わらない場合は別の説明を工夫する。そうした気持ちの切り替えも大切。ただ、視覚的な情報がない場合には、「あれ」「これ」「それ」などの指示語はあいまいでわかりづらいため、避けたほうが望ましいだろう。 4.コミュニケーションについて考える 2人1組になり、以下の3つの方法で会話をする。 ①背中合わせになり、筆談で会話する。(音声は発してはいけない)…会話をする相手の顔を見ない、自分が言いたい(伝えたい)内容のみを書いている状態。 ②顔を合わせて、筆談で会話する。(音声は発してはいけない)・・・会話をする相手の表情を確認しながら、会を進めることができる状態。 ③顔を合わせて、「めんたいこ」という単語のみの発声または手話で会話する。・・・会話をする相手の表情を見ながら、たとえ意味のない言葉であっても、コミュニケーションをする方法が増えた状態。 【受講者からの感想】 ・①の時は、待っている間が待ち遠しかった。 ・①の時は、相手が何を伝えたいのかわからないため、自分が伝えたいことばかり書いていた。 ・①の時は、表情がわからないため、相手が会話を楽しんでくれているのか心配になった。表情が見えることで距離が縮まり、声を出せることで表情がさらによくわかるようになった。 ・背中合わせの時よりも顔を見合わせ、声を出した方が会話しやすかった。 ・文章が長すぎると読みづらいので、短い文章で返事をするようにした。 【講師からのコメント】 相手のことがわからないから自分のことで精一杯という意見があった。相手が今、何をしているのか、自分が書いたことに対してどんな表情で受け止めているのかを確認できると、安心感や親近感に繋がる。私たちは無意識的にうなずきや首を傾げる行為、表情の変化などをお互いに確認しながらコミュニケーションを取っている。盲ろう者と会話を楽しむとき、盲ろう者に通訳をするときも同じである。しかし、そのようなうなずきは相手に伝わらなければ意味をなさない。だからこそ、盲ろう者には、その盲ろう者がわかりやすい方法で敢えて意図的に示し、相手が自分の言葉や思いを受け止めていることを示すことが大切になる。相手の言葉や思いに共感し合えるからこそ、次の話題に繋がることができる。そして、コミュニケーションの方法(体験では音声や手話)が増えると、その会話の言葉にさらに感情が加わる。相手を認めるからこそ共感し合え、コミュニケーションが深まり、豊かになっていく。これは通訳・介助員の通訳業務においても同様である。 5.通訳・介助の基本とは (1)通訳・介助員として、基本にある力は「想像力」 初日の講演の中で、講師から通訳・介助員に「想像力をもってほしい」という意見があった。目の前にいる盲ろう者がどのような状況にあるのか想像する。その人の見えにくさ、聞こえにくさを想像する。盲ろう者の表情やしぐさから、通訳内容を理解しているのか想像する。この「想像力」は「思いやり」と同じ。相手のことを思いやることで自分の通訳を工夫したり、配慮することができる。 (2) 受講者が考える「通訳・介助員として基本の力」 受講者一人ひとりに「通訳・介助員としての基本とは?」の問いに発言してもらった。 ・安全を守ること ・一人ひとりの盲ろう者を理解しようとすること ・盲ろう者の状態を知ること ・相手にきちんと伝わること ・盲ろう者が心地よい状態で通訳を受けられること ・同じ時間と場所を共有して、共感すること ・状況をきちんと伝えること ・ニーズを知り、そのニーズに合ったものを提供すること ・自分も楽しめること 6.全体を通して講師からのコメント よく通訳・介助員から「何を伝えればよいのか」と聞かれる。今、この瞬間にも私たちの周囲にはたくさんの情報が存在している。私たちが見て、聞いて得ることができる情報の全てを盲ろう者に通訳できればよいのだろうが、それは不可能。盲ろう者に対して、「伝えなければならない情報」があり、それを伝えさえすればよいのではなく、むしろ「伝えなくてもかまわない情報・伝える必要のない情報」など存在しないと思う。しかし、私たちが得ている情報の全てを盲ろう者に伝えることができない事実をどう受け止め、では、どうしたらよいのかを考えることが通訳・介助員に求められる姿勢であり、技術だと思う。通訳・介助員として、今、何をするのかを大切にしていきたい。 3-7.F分科会「指点字通訳について」 講師:田中 康弘氏、高橋 信行氏、橋間 信市 内容: 【講義】 指点字の基本について説明した。 指点字の打ち方 ・一般的には“爪の生え際”と言われているが、盲ろう者が出した6本の指の理解しやすい位置に打つ。 ・指のどの位置が読みやすいか、確認が必要である。 ・最初に発言者の名前、つなぎ符(3・6の点)、その後に発言内容を直接話法で打つこと。 ・間接話法では通訳しないこと。相手との会話が成り立たなくなってしまう。 状況説明 ・点訳者挿入符(2・3・5・6の点)の後に入れる。 数字の打ち方 ・点字の規則に従うこと。 マス空け ・点字とは違い、指点字は気にせずそのまま打ってよい。 その他 ・間が空くときは、同じように間を空ける。自然の成り行きに任せて打つ。 ・点字の場合は文の最後に句点を打つが、指点字の場合は不要である。 ・正確に打たなければならない時は、軽く間を取ることもある。 ・強く打つと“怒っている様子”を表すことが出来る。 ・考えながら話すときはスピードが遅くなる。 【実習】 以下の3つのグループに分けて実習を行った。 ①田中グループ(指点字で通訳が出来る) ②高橋グループ(指点字で会話が出来る) ③橋間グループ(初心者) ①グループ 点字技能師試験の点字化技能試験問題と校正技能試験問題をテープで流し、それを聞きながら、指点字による通訳練習を行った。 ②グループ ・指点字の基本的知識 手の置き方、強さ、打つ場所の指導を行った。 ・簡単な自己紹介文の練習 ブリスタや机上での練習、および講師に対して指点字を打った。 ・指点字での会話 講師は音声で話し、受講者は指点字で会話をした。 ③グループ ・指点字の基礎を説明し、その後ブリスタを使用して50音を打った。 ・講師に対し、直接指点字を打った。(挨拶程度) 【感想】 指点字通訳のできる通訳・介助員はまだまだ少ない印象がある。旅行先でのことを考えると、各都道府県に指点字の出来る通訳・介助員が少なくとも一人は登録されているとありがたい旨お話した。 講義の後、3つのグループに分かれて実習を行なった。私のグループは、点字技能師試験の点字化技能試験問題と校正技能試験問題のテープ教材を使用して、それを指点字通訳の練習としたが、問題の複雑さ等の要因で、時間が短く感じられた。 最後に、本分科会の趣旨とは少し離れてしまうが、本講義を担当したことで、盲ろう者が点字技能師試験を受ける場合、点字化技能試験問題や校正技能試験問題について、どのような配慮が必要かを担当者と交渉する際の知見が得られたことは良かったと思う。                                                        (文責:田中 康弘) 3-8.全体会 「あなたは盲ろう者にきちんと伝えられますか、様々な制度について」 講師:山下 正知(社会福祉法人 全国盲ろう者協会 事務局長)、前田 晃秀氏 司会:橋間 信市(社会福祉法人 全国盲ろう者協会 事務局次長) ねらい:盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業はもとより、現在の福祉施策の中で盲ろう者が利用できる制度について盲ろう者を取り巻く現在の状況を踏まえつつ、福祉制度について学び、盲ろう者に質問されたときに、的確に回答できる通訳・介助員を目指すべく、2人の講師より講演いただいた。 山下スライド 1 あなたは盲ろう者にきちんと伝えられますか 様々な制度について「今後の盲ろう者福祉制度について」 全国盲ろう者協会 事務局長 山下正知 2 盲ろう者福祉制度の 見直しの経緯 3 障害者総合支援法の施行 平成25年4月から、障害者総合支援法が施行され、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業と養成事業が都道府県(指定都市・中核市を含む)の必須事業とされた。 また、同時に、同法の附則において、同法施行後3年(平成28年4月)を目途として、意思疎通を図ることに支障のある障害者等に対する支援の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずることが規定された。 4 国における見直し検討の状況 ・平成26年12月に「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ」が設置され、関係団体からのヒアリングを受けて、障害者総合支援法の見直しに向けての論点整理を行った。 ・平成27年4月から、社会保障審議会障害者部会において、上記の「論点整理」を踏まえて、障害者総合支援法の見直しに関する審議が開始された。(平成27年12月までに、意見を取りまとめて提言の予定) 5 全国盲ろう者協会における対応 ・平成25年9月、福島理事を中心に、「盲ろう者支援のグランドデザインに関する勉強会」を設置し、具体的な検討を開始した。 ・平成26年6月、福島理事などの盲ろう当事者、学識経験者、障害者団体関係者、厚生労働省及び地方自治体の行政関係者等をメンバーとする「盲ろう者のための支援策の充実に向けた検討会」を設置し、盲ろう者の意思疎通と移動の支援の問題を中心に総合的な検討を進めた。 ・平成27年1月以降、福島理事が、厚生労働省の「論点整理のためのワーキンググループ」及び「社会保障審議会障害者部会」において、前記「検討会」の検討内容を踏まえて、通訳・介助員派遣制度の見直し等の問題について、3回にわたり意見表明を行った。 ・平成27年8月、前記「検討会」の「中間のまとめ」を作成し、福島理事から、厚生労働省の藤井障害保健福祉部長に手渡すとともに、内容説明、意見交換を行った。 6 盲ろう者福祉制度の 見直しの内容 7 現行制度の法的枠組み ・障害者総合支援法第78条 都道府県(指定都市、中核市を含む。以下、同じ。)は、地域生活支援事業として、特に専門性の高い意思疎通支援を行う者を養成し、派遣する事業を行うと規定されている。 ・同法施行規則第65条の14の4 都道府県は、特に専門性の高い意思疎通支援を行う者の養成、派遣について、少なくとも手話、要約筆記、触手話、指点字に係るものを行うと規定されている。   8 地域生活支援事業と個別給付 ・地域生活支援事業は、手話通訳者派遣、日常生活用具給付など、地方自治体が地域の実情に応じて、柔軟に事業を実施することができるものであり、国は裁量的経費として、予算の範囲内で費用の二分の一以内を補助することができるとされている。 ・個別給付(自立支援給付)は、居宅介護、重度訪問介護、同行援護など、市町村から利用者のニーズに応じて支給される定型的なサービスであり、国は義務的経費として、費用の二分の一を負担しなければならないとされている。(報酬単価は全国一律) 9 現行制度見直しの必要性 ・盲ろう者への通訳・介助員の派遣は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む(憲法25条)」ために不可欠の、日々、継続的に必要とされる支援である。 ・現状では、各都道府県等における通訳・介助員の派遣は、予算枠が限定されていることなどから、利用時間の絶対量が大幅に不足しており地域間の格差が著しい。また通訳・介助員の資質や謝金単価についても格差が大きい。 ・地域生活支援事業は、裁量的経費であることから国の予算枠が限定されており、都道府県等において事業費の予算を増額しても、国の補助金は増加しない。また、様々な障害分野向けの事業費を包括しているため、特定分野の事業費の増額は「パイの奪い合い」となりやすい構造があり、都道府県等において盲ろう者向け事業の予算を大幅に伸ばすことは困難である。 ・このようなことから、現行の通訳・介助員派遣事業については、財政構造を含めた大幅な見直しが必要である。 10 制度見直しの方向性 ・盲ろう者への通訳・介助員の派遣は、本来的には個別給付になじむ支援であると考えられ、裁量的経費である地域生活支援事業から、義務的経費である個別給付に移行することにより、個々のニーズに応じた必要な派遣時間が確保されることが期待される。 ・盲ろう者の数が少ない地域では、事業所方式を前提とする個別給付方式を直ちに実施することは困難であり、また、比較的障害が軽度な盲ろう者の場合は、必ずしも継続的な派遣を必要とはしないため、現行制度の枠組みでも対応可能である。 ・したがって、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣制度は、個別給付の枠組みによるものと、地域生活支援事業の枠組みによるものの二本立ての制度とする方向が望ましい。  ※視覚障害者に対する個別給付である同行援護が制度化された際にも、地域生活支援事業における視覚障害者の移動支援事業(ガイドヘルパー)は存置されている。  11 個別給付化にあたっての主な選択肢 ①障害者総合支援法の改正により、盲ろう者向けの新たな個別給付事業を創設する。 ②同行援護の事業内容を拡大し、盲ろう者向けに特化した新たな制度的枠組みを作る。 ③重度訪問介護の対象及び事業内容を拡大し、盲ろう者向けに特化した新たな制度的枠組みを作る。 12 ①新たな個別給付を創設 (メリット) ・分かりやすく、アピールしやすい。 ・ニーズに即したきめ細かな制度設計が可能。 (デメリット) ・法律改正を必要とするためハードルが高い。 ・盲ろう者のみを対象とする制度のため、必要なサービス量を確保できない可能性もある。 13 ②同行援護を拡大 (メリット) ・法改正を要しないため、制度化までのハードルが比較的低い。 ・障害支援区分の認定を受けなくともよい可能性がある。 (デメリット) ・一般の同行援護との違いが分かりにくく、十分なサービス量が確保されない恐れがある。 ・居宅内での支援に対応できない。 14 ③重度訪問介護の拡大 (メリット) ・法改正を要しないため、制度化までのハードルが比較的低い。 ・盲ろう者のニーズとの親和性が高く、使い勝手の良い制度となることが期待される。 ・十分なサービス量の確保が期待される。 (デメリット) ・盲ろう者を、障害支援区分の上での「重度」と認定することへのハードルが高い。 15 個別給付化にあたっての問題 ・障害支援区分の認定の問題が生ずる。 ・派遣事業所の指定の問題が生ずる。 ・費用負担(利用者負担)の問題が生ずる。 ・地域生活支援事業と比較して、運用上の制約が大きくなることも予想される。 16 個別給付化に向けて取り組むべき課題 ・地域の「友の会」が派遣事業所の指定を受けるためには、まず法人格(NPO法人)を取る必要があり、さらにサービス提供責任者の配置や事務処理体制の整備などが不可欠である。 ・当面、「友の会」が派遣事業所の指定を受けることが困難な地域については、当協会を中心とした全国ネットワーク・システムの構築などにより、個別給付による通訳・介助員の派遣体制を整備していく必要がある。 前田氏スライド 1 あなたは盲ろう者にきちんと伝えられますか、様々な制度について 東京都盲ろう者支援センター 前田 晃秀 2 1.障害の認定と身体障害者手帳 3 身体障害者に関する法律の概要 障害者基本法 国や自治体が取り組む障害者支援の大まかな方針を定める ↓ 障害者総合支援法 国や自治体が取り組む障害者支援の具体的なサービス内容を定める ↑ 身体障害者福祉法 国が認める「身体障害者の条件」を定める 4 障害者基本法(第1条・目的) 第一条   この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。 5 障害者総合支援法におけるサービス (「平成26年版障害者白書」より抜粋) 『市町村』 自立支援給付 第6条 ※原則として国が1/2負担→障害児 「介護給付」第28条第1項 ・居宅介護 ・重度訪問介護 ・同行援護 ・行動援護 ・療養介護 ・生活介護 ・短期入所 ・十度障害者等包括支援 ・施設入所支援 「訓練等給付」第28条第2項 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・就労意向支援 ・就労継続支援(A型・B型) ・共同生活援助 「相談支援」第5条第16項 ・地域移行支援 ・地域定着支援 ・サービス利用支援 ・継続サービス利用支援 「自立支援医療」第5条第22項 ・更生医療 ・育成医療 ・精神通院医療 「補装具」第5条第23項 「地域生活支援事業」※国が1/2以内で負担 第77条第1項 ・相談支援 ・意思疎通支援 ・日常生活用具 ・移動支援 ・地域活動支援センター ・福祉ホーム 等 『都道府県』市町村を支援  第78条 ・広域支援 ・人材育成 等 6 身体障害者福祉法における視覚障害の定義 (身体障害者福祉法施行規則別表第5号より) 障害等級:視覚障害の程度 一級:両眼の視力の和が0.01以下のもの 二級: 1 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの 2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視能率による欠損率が95%以上のもの 三級: 1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの 2 両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視能率による損失率が90%以上のもの 四級: 1 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの 2 両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの 五級: 1 両眼の視力の和が0.13以上、0.2以下のもの 2 両眼の視野の2分の1以上が欠けているもの 六級: 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので両眼の視力の和が0.2を超えるもの 7 身体障害者福祉法における聴覚障害の定義 (身体障害者福祉法施行規則別表第5号より) 障害等級:聴覚障害の程度 一級:該当項目無し 二級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの(両耳全ろう) 三級:両耳の聴力レベルが90dB以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの 四級: 1.両耳の聴力レベルが80dB以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの) 2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの 五級:該当項目無し 六級: 1.両耳の聴力レベルが70dB以上のもの(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの) 2.一側耳の聴力レベルが90dB以上、他耳の聴力レベルが50dB以上のもの 8 障害の認定と手帳の交付⑥手帳交付 申請者→①受診→身体障害者福祉法指定医→②診断書交付→申請者→③交付申請→市町村障害福祉課(福祉事務所)→④進達→都道府県知事(更生相談所)→⑤交付決定→市町村障害福祉課(福祉事務所)→⑥手帳交付→申請者 手帳交付により「身体障害者」と認められる「サービスを受ける権利」を得られる 9 身体障害者手帳の例 ((障害者手帳のイラストがあります)) ・第1種と第2種がある ・第1種だと、障害者本人と介助者の鉄道運賃がそれぞれ50%減額。 ・第2種だと、介助者の割引はない。本人分について、100キロを超える場合のみ50%減額。 10 事業運営上における「盲ろう者」 東京都の派遣事業 「視覚障害と、聴覚又は言語障害を重複してもつ重度の身体障害者(児)であって、身体障害者手帳を所持するもの」 視覚障害、聴覚・言語障害それぞれ6級以上 福岡県の派遣事業 「視覚と聴覚及び音声または言語機能障害を重複してもつ盲ろう者で、身体障害者手帳の1級及び2級所持者及び実施主体が認めた盲ろう者」 視覚障害、聴覚・言語障害それぞれ6級以上 + 両方合わせて1級か2級(総合等級) 11 重複障害の場合の「総合等級」 等級:指数 1級:18 2級:11 3級:7 4級:4 5級:2 6級:1 7級:0.5 ↓ 該当する等級の指数を合計 合計指数:認定等級 18以上:1級 17~11:2級 10~7:3級 6~4:4級 3~2:5級 1:6級 例 視覚障害1級(指数18)+聴覚障害6級(指数1)=1級(指数19) 視覚障害6級(指数  )+聴覚障害2級(指数  )= 級(指数  ) 視覚障害4級(指数  )+聴覚障害4級(指数  )=  級(指数  ) 12 盲ろう者の人数 (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-身体障害者手帳の交付状況についての調査」) 13,952名(実測値) 65歳以上10,798名(77.4%) 18歳以上65歳未満2,490名(17.8%) 18歳未満146名(0.1%) 平均年齢75.8歳 13 盲ろう者の障害等級の組み合わせ (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-身体障害者手帳の交付状況についての調査」) <視覚重度層> 視覚1級-聴覚6級 1,396名(10.1%)   視覚2級-聴覚6級 1,387名(10.1%) <視覚・聴覚重度層>   視覚1級-聴覚2級 986名(7.2%)   視覚2級-聴覚2級 995名(7.2%)   14 盲ろう者の総合等級 1級:6913 2級:3571 3級:1074 4級:903 5級:1020 6級:15 NA:453 1級と2級で75.1% 15 2.手帳の交付で受けられる福祉サービス 16 福祉サービス利用の流れ 身体障害者手帳の交付 ↓ 補装具、日常生活用具、通訳・介助者派遣、自立訓練など ただし、一部の難病は身体障害者手帳の必要なし 17 補装具 身体機能を補完し、又は代替し、かつ長期間にわたり継続して使用される用具 視覚障害者:白杖、義眼、眼鏡 聴覚障害者:補聴器 18 日常生活用具(視覚障害) 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められる用具 盲人用時計、点字タイプライター、点字ディスプレイ、拡大読書器、点字器、電磁調理器 19 日常生活用具(聴覚障害) 日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められる用具 屋内信号装置、聴覚障害者用通信装置、携帯用信号装置、補聴器対応電話機 20 補装具と日常生活用具の特徴 補装具 ・製作時に個々に応じた調整を必要とする用具 ・原則、認められる品目は全国共通 ・原則、本人が1割負担(所得によって負担上限を設定) 日常生活用具 ・製作時に個々の調整を必要としない用具 ・認められる品目は市町村で異なる ・本人の負担額は市町村で異なる 21 利用者負担の上限 補装具 区分:世帯の収入状況:負担上限月額 生活保護:生活保護受給世帯:0円 低所得:市町村民税非課税世帯:0円 一般:市町村民税課税世帯:37,200円 障害福祉サービス 区分:世帯の収入状況:負担上限月額 生活保護:生活保護受給世帯:0円 低所得:市町村民税非課税世帯:0円 一般1:市町村民税課税世帯:9,300円 一般2:上記以外:37,200円 「世帯」の範囲は障害者本人と配偶者(18歳以上の障害者の場合) 22 障害者総合支援法における「障害者」 ・身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者(発達障害者含む) ・治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病(難病) ↓ 障害者総合支援法の対象となる難病は約2年で130→151→332に拡大 突発性難聴、網膜色素変性症、チャージ症候群などの視聴覚障害を引き起こす疾患も含む 23 3.障害支援区分の認定が必要となる福祉サービス 24 福祉サービス利用の流れ 身体障害者手帳の交付 ↓ 障害支援区分の認定 ↓ 居宅介護、生活介護など ↑ 介護給付 25 介護給付のサービスを利用するためには個々に「障害支援区分」の認定が必要!(個別給付) 26 障害支援区分とサービス利用の流れ 障害支援区分は、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの。区分1(低)から区分6(高)まである。 受付申請→障害支援区分の認定…調査員…→サービス等利用計画案の作成…支給決定からケアマネジメントを実施←相談支援事業所→支給決定→サービス担当者会議←相談支援事業所、サービス事業者→支給決定後のサービス等利用計画←相談支援事業所→サービス利用←サービス事業所→支給決定後のサービス等利用計画←一定期間ごとのモニタリング←相談支援事業所、サービス事業者 27 障害支援区分の認定調査項目(80項目) 1.移動や動作等に関連する項目(12項目) 1-1寝返り 1-2起き上がり 1-3座位保持 1-4移乗 1-5立ち上がり 1-6両足での立位保持 1-7片足での立位保持 1-8歩行 1-9移動 1-10衣服の着脱 1-11じょくそう 1-12えん下 2.身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目) 2-1食事 2-2口腔清潔 2-3入浴 2-4排尿 2-5排便 2-6健康・栄養管理 2-7薬の管理 2-8金銭の管理 2-9電話等の利用 2-10日常の意思決定 2-11危険の認識 2-12調理 2-13掃除 2-14洗濯 2-15買い物 2-16交通手段の利用 3.意思疎通等に関連する項目(6項目) 3-1視力 3-2聴力 3-3コミュニケーション 3-4説明の理解 3-5読み書き 3-6感覚過敏・感覚鈍麻 4.行動障害に関連する項目(34項目) 4-1被害的・拒否的 4-2作話 4-3感情が不安定 4-4昼夜逆転 4-5暴言暴行 4-6同じ話をする 4-7大声・奇声を出す 4-8支援の拒否 4-9徘徊 4-10落ち着きがない 4-11外出して戻れない 4-121人で出たがる 4-13収集癖 4-14物や衣類を壊す 4-15不潔行為 4-16異食行動 4-17ひどい物忘れ 4-18こだわり 4-19多動・行動停止 4-20不安定な行動 4-21自らを傷つける行為 4-22他人を傷つける行為 4-23不適切な行為 4-24突発的な行動 4-25過食・反すう等 4-26そう鬱状態 4-27反復的行動 4-28対人面の不安緊張 4-29意欲が乏しい 4-30話がまとまらない 4-31集中力が続かない 4-32自己の過大評価 4-33集団への不適応 4-34多飲水・過飲水 5.特別な医療に関連する項目(12項目) 5-1点滴の管理 5-2中心静脈栄養 5-3透析 5-4ストーマの処置 5-5酸素療法 5-6レスピレーター 5-7気管切開の処置 5-8疼痛の看護 5-9経管栄養 5-10モニター測定 5-11じょくそうの措置 5-12カテーテル 28 サービス等利用計画(案)の例 「NPO法人なみき福祉会」(webサイト http://npo-namiki.mods.jp/)より引用 サービス利用等計画案・障害児支援利用計画案(例) ・利用者氏名 ・障害支援区分 ・相談支援事業者名 ・障害福祉サービス受給者証番号 ・計画作成担当者 ・地域相談支援受給者証番号 ・通所受給者証番号 ・計画案作成日 ・モニタリング期間(開始年月日) ・利用者同意書名欄 ・利用者及びその家族の生活に対する意向(希望する生活) 本人:成人したので、一人で生活していけるようになりたい。 家族:本人の意向をかなえてやりたい。しかし、心配である。 ・総合的な援助の方針 グループホームに入居し、日中は生活介護施設を利用する。週末は家族とともに過ごす。 ・長期目標 ・短期目標 優先順位:解決すべき課題(本人のニーズ):支援目標:達成時期:福祉サービス等種類・内容・量(頻度・時間):課題解決のための本人の役割:評価時期:その他留意事項 1 日中働きたい、自分で働いたお金でCDを買いたい:福祉作業所への入所:2015.4.1:生活介護施設 月~金 9時から16時 送迎(施設に相談)8時半から16時:2015.9.1 2 一人で生活していけるようになりたい:グループホームへの入居:未定:グループホーム 月~金 16時から8時半:未定 3 スイミングに通いたい:2015.4.1:移動支援(ガイドヘルパー) 火曜日、金曜日 16時から16時半 17時半から18時 29 居宅介護 ・居宅において、介護(入浴、排せつ、食事など)、家事(調理、洗濯、掃除など)、生活に関する相談・助言などを行う。 ・原則、障害程度区分が区分1以上 30 同行援護 ・移動、外出の際の視覚的情報の支援(代筆・代読を含む。) ・移動、外出の際の移動の支援 ・介護(排泄・食事等)→介護が必要な場合、区分2以上。 ↓ 介護が必要でなければ、障害支援区分の認定は必要ない。別途「同行援護アセスメント表」で必要度を判定。 31 生活介護 ・昼間に施設に通所する利用者に、介護(入浴・排せつ・食事等)、家事(調理・洗濯・掃除等)、生活に関する相談・助言、創作的活動・生産活動、リハビリなどを行う。 ・障害程度区分が区分3以上(ただし、50歳以上は区分2以上) 32 人的支援による福祉サービスの利用状況 (18歳以上65歳未満) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-盲ろう者の生活状況についての調査」) ・利用の有無 利用している53%、利用していない45%、無回答2% ・サービス種別ごとの利用状況 ※項目のみ記載し、棒グラフは省略します 利用状況 1週間に1日以上、1ヵ月に1日以上、まったくない・ほとんどない、無回答 種別 通訳・介助員 手話通訳者・要約筆記者 移動支援・同行援護 ホームヘルパー 33 平日日中の過ごし方 (18歳以上65歳未満) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-盲ろう者の生活状況についての調査」) N=676 複数回答可 家庭内370 障害者通所サービス111 家事育児介護96 施設内77 就労(正職員)52 就労(正職員以外)47 自営業43 社会活動41 リハビリテーション32 デイケア12 介護保険通所サービス9 学校8 障害児通園施設1 その他63 54.7%が家庭内 34 コミュニケーション方法 (18歳以上65歳未満) N=676 発信方法 音声50% 手話18% 指文字1% 文字11% その他6% 特にない9% 無回答5% 受信方法 音声43% 弱視手話10% 触手話8% 指文字視読1% 指文字触読1% 手書き文字6% 筆記10% 点字1% 指点字1% その他4% 特にない7% 無回答8% 35 全盲ろう者のコミュニケーション方法 (18歳以上65歳未満) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-盲ろう者の生活状況についての調査」) N=100 発信手段 手話32.0% 文字18.0% 指文字4.0% その他14.0% 特にない10.0% 無回答8.0% 受信手段 触手話27.0% 手書き文字23.0% 弱視手話5.0% 指点字4.0% 音声3.0% 指文字視読2.0% 指文字触読2.0% 筆記1.0% 点字1.0% その他10.0% 特にない11.0% 無回答11.0% 36 4.盲ろう者のみを対象とした福祉サービス 37 障害者総合支援法と派遣事業 通訳・介助員派遣は「都道府県地域生活支援事業」 38 「孤立している盲ろう者」の割合 (「1ヵ月に2日以下」の割合、18歳以上65歳未満) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-盲ろう者の生活状況についての調査」) 全盲ろう 会話…36.5% 外出…36.4% 情報入手…55.7% 全盲難聴 会話…18.4% 外出…27.0% 情報入手…35.5% 弱視ろう 会話…24.4% 外出…13.9% 情報入手…24.5% 弱視難聴 会話…11.5% 外出…13.4% 情報入手…20.0% 全盲ろう者の「社会参加」が極めて困難 39 「通訳・介助員派遣の利用有無」と「社会参加の頻度」の関係(全盲ろう) (平成24年度「盲ろう者に関する実態調査-盲ろう者の生活状況についての調査」) ※項目のみ記載し、棒グラフは省略します 頻度:毎日、1週間に5-6日程度、1週間に3-4日程度、1週間に1-2日程度、2週間に1-2日程度、1カ月に1-2日程度、ほとんどない、まったくない 会話 利用群(N=40) 非利用群(N=55) 外出 利用群(N=41) 非利用群(N=57) 情報入手 利用群(N=41) 非利用群(N=55) 40 派遣事業の今後の展望 通訳・介助員派遣事業を介護給付へ(=派遣事業の個別給付化) 奥付 書名:平成27年度 盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会報告書 発行:平成28年3月3日 発行・編集:~日本のヘレン・ケラーを支援する会®~社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL03-5287-1140     FAX03-5287-1141 (ここまで)