平成25年度 全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会報告書 期間 平成25年12月7日(土)〜12月8日(日) 会場 TFT(東京ファッションタウンビル)東館9階 東京都江東区有明3−6−11 TEL:03−5530−5010 主催 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 目次 1 概要 2 カリキュラム別の報告 (1)「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 (2)「グループ討議」 (3)「盲ろう者団体のあり方」 ・「全国盲ろう者団体連絡協議会と全国盲ろう者協会の役割」 ・「盲ろう者と支援者との関わり」 (4)「リーダーとしての交渉力」 3 考察 【資料】 ・「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 ・「全国盲ろう者団体連絡協議会について」 ・「全国盲ろう者協会について」 ・「盲ろう者と支援者の関わり〜盲ろう者の立場から〜」 ・「リーダーとしての交渉力」 アンケート結果 当日アンケート 追跡アンケート 1 概要 若い盲ろう者のリーダーを育成し、盲ろう者地域団体の運営力アップに繋がる知識とノウハウを身に付けることで、地域の盲ろう者の社会的孤立を防止し、団体の活性化を図ることを目的として、以下のとおり実施した。 (1)企画委員会開催(計5回) @設置目的 全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会に必要な会議内容を検討するため、企画委員会を設置した。 A委員構成(計4名) ・川口 智子(奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」役員) ・関 厚博(全国盲ろう者団体連絡協議会役員) ・二宮 朋子(NPO法人えひめ盲ろう者友の会理事) ・福田 麻美(全国盲ろう者団体連絡協議会役員) B委員会実施状況 ○第1回企画委員会 開催時期 平成25年7月14日(日) 開催場所 全国盲ろう者協会(以下、協会) 事務所(東京都新宿区早稲田町67番地早稲田クローバービル3階) 議題  ・事業の趣旨、企画委員の役割 ・研修会カリキュラムの検討 ○第2回企画委員会  開催時期 平成25年8月31日(土)  開催場所 協会事務所  議題  ・カリキュラムの確定 ・講師、司会の選定 ○第3回企画委員会  開催時期 平成25年9月28日(土)  開催場所 協会事務所  議題  ・講師、司会の確認 ・各コマの内容 ・当日の進行  ○第4回企画委員会  開催時期 平成25年11月17日(日)  開催場所 協会事務所  議題  ・当日の進行の確認 ・今後のスケジュール ○第5回企画委員会  開催時期 平成26年1月11日(土)  開催場所 協会事務所  議題  ・研修会の反省 ・今後のあり方 (2)全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会の開催 近い将来地域や社会においてリーダーとして活動を目指す32名の盲ろう者が、2日間にわたる研修を受けた。 【日時】平成25年12月7日(土)〜8日(日) 【場所】TFT(東京ファッションタウンビル)東館9階 東京都江東区有明3−6−11 電話 03−5530−5010 【カリキュラム】 平成25年12月7日(土)  9:00〜 9:30 開講式  9:30〜12:00 「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 12:00〜13:00 昼食 13:00〜17:00 「グループ討議」 18:00〜20:00 「意見交換会」 平成25年12月8日(日)  9:00〜13:00 「盲ろう者団体のあり方」 12:00〜13:00 昼食 13:00〜15:00 「リーダーとしての交渉力」 15:00〜15:30 閉講式 【カリキュラム別の概要】 (1)「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 NPO法人えひめ盲ろう者友の会役員 二宮 朋子氏の司会のもと、協会職員の庵 悟氏が、「リーダーとして、社会的に孤立しがちな盲ろう者のよき理解者となるには、世界や国の動き、様々な盲ろう者のタイプについての知識等を幅広く学ぶとともに、自分の心身を健康に保つこと、信頼できる仲間をつくる事等」について講演した。 (2)「グループ討議」 災害対策をテーマに、過去・現在・未来の三本柱について、3つのグループに分かれて、本研修会企画委員の司会のもと、熱心に討議された。この後、全体会で、全国盲ろう者団体連絡協議会(以下、連絡協議会)役員 福田麻美氏の司会のもと、グループ発表を行い、門川氏より助言を頂いた。 (3)「意見交換会」 NPO法人えひめ盲ろう者友の会役員 二宮 朋子氏の司会により、受講者と講師がテーブルごとに分かれて、所属する友の会活動等について意見交換を行った。 (4)「盲ろう者団体のあり方」 前半は、「全国盲ろう者団体連絡協議会と全国盲ろう者協会の役割」をテーマに、連絡協議会役員 関 厚博氏の司会のもと、連絡協議会会長の高橋信行氏と協会事務局長の山下正知氏がそれぞれの団体の設立経過、役割、課題、今後の展望等について講演した。 後半は、「盲ろう者と支援者の関わり」をテーマに、連絡協議会役員 福田 麻美氏の司会のもと、認定NPO法人東京盲ろう者友の会理事長 藤鹿 一之氏に盲ろう者の立場で、東京都登録通訳・介助員 森下 摩利氏に支援者の立場でそれぞれ講演頂いた。 (5)「リーダーとしての交渉力」 奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」役員 川口 智子氏の司会のもと、福島 智氏から行政等と交渉をする際のポイントを示され、会場の受講者、講師、協会スタッフも交えて活発な議論が交わされた。 2 カリキュラム別の報告 (1)「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 講師:庵 悟(社会福祉法人全国盲ろう者協会 職員) 司会:二宮 朋子(NPO法人えひめ盲ろう者友の会 理事) 【講演要旨】 リーダーとして盲ろう者の良き理解者になるために、まず世界や国の動き等に目を向けながら活動の幅を広げる必要がある。 2013年12月4日、国会の参議院本会議において、障害者権利条約の批准について承認された。「障害者総合支援法」が2013年4月から施行され、盲ろう者向け通訳・介助員派遣および養成事業が(政令指定都市・中核市を含む)都道府県の地域生活支援事業の必須事業になった。また、同年6月に「障害者差別解消法」が新たに制定され、併せて「障害者雇用促進法」が改正された。 盲ろう者が情報を得ること、コミュニケーションを取ること、移動すること等に困難がある事を踏まえつつ、国や世の中の動きに対して、タイムリーに対応できる知識と力を身につけていく必要がある。 各地域で盲ろう者の掘り起しが進まない、働きかけても友の会の入会に繋がらない、自分が盲ろうであることを受容できない人に対してどのように働きかけたらよいか等の悩みを抱えている。 友の会のリーダーが盲ろう者のよき理解者になるには、リーダー自らが自分の体と心を健康にし、広く浅く学び、謙虚になり、心の眼と耳を育てる事から出発する事である。恋愛をし、わくわくするような気持ちを持つとよい。 啓発活動や相談活動で、リーダーとして必要な力は、以下である。 ・自分の事を知る ・盲ろう者全般について幅広く知る ・社会の事を知る ・相手の事を理解する ・コミュニケーション力を身につける ・よきパートナーを作る ・仲間や他団体と連携する ・相手が自分の力で解決する力を引き出す 【質疑応答】 ○質問1 障害者制度改革推進中央本部とは何か 回答(講師) 全日本ろうあ連盟(以下、ろう連)が中心となって、聴覚障害者に関わる運動の団体として、ろう連、全日本中途失聴者・難聴者団体連合会、協会、全国手話通訳問題研究会、全国要約筆記問題研究会、手話通訳士協会の6団体で構成する「聴覚障害者制度改革推進中央本部」(以下、中央本部)がある。協会の代表は、連絡協議会が推薦した川島氏である。 ○質問2 情報・コミュニケーション法の今後について 回答(講師) 中央本部として、同法の第三次提言をまとめて国や社会に提言していく予定である。 ○質問3 盲ろう者を増やす良い方法 回答(講師) 協会が昨年実施した実態調査で、対象者に協会や友の会の情報を提供した。調査以前は協会登録盲ろう者が約8百人だったが、調査によって約千人に増えた。 地域によって実態が違うので、決まった方法はない。 ○質問4 今後の障害者手帳の行方 回答(講師) 障害者手帳がなくなるという話は聞いていないが、現行制度では医学的な数値で障害等級が決められていたり、盲ろうが独自の障害として位置づけられていない問題があるので、見直しを検討していく必要がある。 回答(福島) 海外では、何らかの証明するカードや保険証と一体になったもの等が存在する。(例:スウェーデンでは、本人と福祉担当者が面接をして、医師の診断書を元にどんなサービスが適当かを相談する仕組みになっている。)医学的な診断が全くないという国はほとんどないと思われる。 ○質問5 講師が盲ろう者のリーダーになろうとしたきっかけは何か 回答(講師) 17年前の全国盲ろう者大会で、今は亡き兵庫盲ろう者友の会初代会長の吉田正行氏と話したのがきっかけである。 感想(受講者) 講師の話を聞いて、各友の会での身近なテーマを取り上げ、どこも似たような問題があると感じた。講師の自己紹介を聞いて、自分も似たような境遇だと感じた。 ○質問6 世界の障害者運動の中でのJDF、協会、連絡協議会の位置づけ 回答(講師) 日本障害フォーラムを略したJDFは、国内の主だった障害当事者団体・関係団体、計13団体で構成されている。協会もオブザーバーとして参加しているが、条約批准に向けた取り組みをする条約小委員会や幹事会に連絡協議会メンバーの門川氏が参加した。現在、幹事会に庵が、代表者会議には協会の山下事務局長が参加している。 回答(福島氏) 国際障害同盟(IDA)は国際的な各障害者団体で構成していて、世界盲ろう者連盟が加盟している。福島はアジア地域代表である。 世界盲ろう者連盟の前会長のレックス氏は、IDAで議長をやっていたこともある。世界的に盲ろう者の存在は、かなり認知・認識されてきている。 【所感】 ・良かった点 沢山の方から質問や意見があり、とても充実していたと思う。初参加の方もいたので、講師の自己紹介を踏まえての講義は良かった。 ・悪かった点 質問や意見を言う方が、もう少し簡潔に纏めてお話していただければ良かった。全員の質問を受けられたかどうかわからないが、時間が足りなかったのが残念だった。 (文責:二宮 朋子) (2)「グループ討議」 〜災害対策〜 グループ別司会: Aグループ…川口 智子 Bグループ…関 厚博 Cグループ…二宮 朋子 全体会司会:福田 麻美 (全国盲ろう者団体連絡協議会 役員) 全体会助言者:門川 紳一郎 (NPO法人視聴覚二重障害者福祉センター「すまいる」 理事長) 参加者を3つのグループに分け、災害対策についての討議を行った。その後、各グループの代表者から全体発表会が行なわれた。以下、その概要を記す。 【グループ討議概要】 討議のテーマ: (1)過去 東日本大震災後に友の会で取り組んできたこと (2)現在 地域での災害対策のための行政サービスや制度 (3)未来 災害対策の課題と今後の展望   司会者の所感: ◎Aグループ 参加者の中で東日本大震災の体験者はいなかったが、阪神淡路大震災を体験した方や、台風や洪水の災害が心配な山奥に住んでいる人がおり、参加者の体験から災害が起こったらどのように対応していけばよいのかを話し合った。 盲ろう者友の会を創立して間もない県の盲ろう者から以下の提案があった。 「噴火に対する災害対策で、盲ろう者への対応が遅れているがどうしたらよいか」 参考資料を持ってきた人が多く、とても勉強になった。地震等が起こった場合、近所の人に助けを求めるためのヘルプカードやバンダナ等を見せてくれた。 災害対策を知っている人と知らない人のバランスがとれており、議論しやすかった。 テーマ(1)やテーマ(2)は特に意見が多く、参加者1人ずつ災害が起こった時の体験を語った上で、今後の対応について意見を述べた。テーマ(3)は時間の都合で、短く終わってしまった。しかし身近なテーマだからこそ、多くの意見が出され、実りある話し合いになった。 (文責:川口 智子) ◎Bグループ (1)について 友の会で学習会を開いたり、DVDを作成する活動を行っている団体がある一方、特に活動されていない地域もあった。 (2)について 緊急ボタンでの支援サービスに登録されている方もいた。しかし、災害対策基本法の改正や要援護者支援制度についての情報が十分行き届いていないことが伺えた。 (3)について 友の会で学習会を開きたいという意見や、地域との関わりを深めたい、また、友の会の組織基盤を固めておきたいといった意見が出された。 全体を通して感じたことは、大きな災害経験のない人や地域では、危機管理意識が薄いということだった。また、地域によって起こりうる災害の内容が少しずつ異なってくること。例えば、地震や津波の影響を受けやすい地域、原発の被害を受けやすい地域、台風や洪水の影響を受けやすい地域など、それぞれの地域によって対策も異なってくるだろうということである。 また、自助、共助、公助という話があったように、災害の備えとして行っておけることを探してみることが必要だと感じた。 自助としては、自分自身を守るために行うこと、例えば防災グッズや非常食を準備しておいたり、避難所の場所や行き方を確認したり、SOSカードのようなものを作成してコミュニケーションの工夫を図っておくことである。 共助としては、いざという時に支援が得られるよう、普段から地域との交流を深めておくことである。盲ろう者は存在がわからないこともあるので、ここに盲ろう者がいるということを知ってもらうことで支援を受けやすくなると考える。 公助としては、行政が行っているサービスをうまく活用していくこと。どのようなサービスがあるのか情報を収集しておき、災害時に情報提供を受けられるようにしたり、迅速な支援が受けられるように事前登録するなどしておくことである。 今回のグループ討議で、他地域の参加者と情報交換が行えたことで、今後どのような活動をしていけばよいか考えるきっかけになったと思う。 (文責:関 厚博) ◎Cグループ  今回のテーマは、とても考えさせられる内容だったが、被災地の方の参加もあって、充実した内容だった。被災地の方の貴重な体験談も聞けて良かった。 反省点は、発言者に対するコントロールがうまくできなかったことである。 (文責:二宮 朋子) 【全体会概要】 各グループの発表内容; ◎Aグループ (1)過去 ・東日本大震災が起きた時、岩手、宮城、福島の各地で盲ろう者の安否が心配された。 ・震災後は、あちこちで、防災勉強会が開催されたという話があった。 (2)現在 ・地震、大雨、台風等、様々な天災の可能性があるので常に心配である。 ・避難訓練を地域の人と行う。 ・通訳・介助員が遠くにいてすぐに助けに来てもらえない場合に、助けてもらう方法として、防災訓練を近所の人と一緒に行っている。 ・「助けてカード」と言って、災害が起きた時にどういうことに困っているか、見えなくて聞こえないのでどういう方法で助けてもらうか、避難所まで連れて行ってほしい等、文章で書いたカードを作っているという報告も聞いた。 ・ある地域では、地震体験者の話を聞いたり、触ってわかる防災グッズについて学んだ。盲ろう者は見ても確認できないので、実際に非常食を食べて学習した。 (3)未来 ・情報を得ることが困難である。盲ろう者はテレビに字幕が付いていても見られない。携帯メールやFAXのやりとりの方法では情報を見る事もできない。色々な情報提供があっても停電が起きたら困るので、県に対して、盲ろう者の安否確認や今後の連絡体制の方法等を考えてもらえるよう要望していく必要がある。 ◎Bグループ (1)過去 ・東日本大震災後の取り組みとして、避難訓練や防災学習会を、友の会として行なった。 ・ある友の会では、盲ろう者の様子を理解してもらえるようDVDを作り、配布する予定である。 (2)現在 ・一人暮らしの盲ろう者は一人では避難できないので、緊急の時に役所から救助してもらえるように、前もって市町村に住所登録をしておくというシステムがある。災害時に緊急ボタンを押すと消防署につながり、すぐに緊急支援が来るシステムがあるという。 (3)未来 ・東日本大震災が起きた時、友の会としてすぐに活動ができなかった。災害時に備えて、普段から組織作りをしっかりしておく必要がある。 ・行政の中で盲ろう者を知ってもらうための勉強会を開いてもらうという話が出たが、まず、自分で自分の命を守る「自助」が大事だ。最後に行政に支援してもらう。 ◎Cグループ (1)過去 ・被災した方々、被災地以外の方々、それぞれの体験談を話した。安否確認のために、わざわざ盲ろう者の家を訪問したという話や、友の会の活動を再開後、防災グッズの紹介や情報交換、体験談等の学習をしたという話も出た。 (2)現在 ・「災害時要援護者登録制度」は自治体で行われている。「災害時メール配信サービス」の登録制度や「SOSカード」の話も出た。 ・要援護者登録をした時の個人情報、自分の事がわかる物(健康保険証など)をコピーして入れておくという盲ろう者もいた。 (3)未来 ・色々な制度やサービスを利用しながら、地域とのつながりを得ていくには、視覚・聴覚障害者団体等と連携する事が大事である。 ・地震を経験していないところに対しては「やはり危険意識が薄い」という話も出た。 ・ただ待つよりは「生きる」ということを強く心に持って、みんなで助け合う。そういう社会を、盲ろう者のつながりを、作っていけたら良い。 【助言者からのコメント】 東日本大震災がきっかけになって、だれもが災害について考えるようになった。災害は、地震だけでなく、台風、水害や火山によるもの等、色々ある。災害全体に対してどう向き合っていけばいいかは永遠の課題だ。盲ろう者の場合、情報アクセスの問題がある。 「災害に備えての心構え」として5つに整理した。 (1)自分が盲ろう者であることがわかるもの(IDカードや身分証明書等)、更にコミュニケーションカード的な要素も含めて所持しておく。 (2)緊急時の対策を常に講じておく(避難経路、自宅の耐震性、避難所の場所等) (3)利用できるサービス(災害時要援護者制度、メール配信サービス等)を利用できるようにしておく。 (4)盲ろう者活動の拠点での取り組みとして、災害に備えての勉強会を行う。 (5)地域で行われている地震体験、避難訓練等に参加して、日頃から心の準備をしておく。 【受講者の発言】 11月、フィリピンで開催された盲ろう者世界会議に行き、「盲ろう者と震災」のテーマで発表した。思いもよらずフィリピン滞在中、激しい台風の災害が発生した。 そこで発表のはじめに電気を突然消すと、予告していなかったので驚き、「電気をつけて下さい」と言う人、気付かない人などがいた。10秒程経ってから、また電気をつけて発表を開始した。 発表内容で第一に挙げたのは、予想できない事が起きた時、生き延びたいと思うように毎日を過ごしているか、ということ。「もういいや」と諦めてしまうような毎日を過ごしていると、「生き延びて頑張っていこう」という力が湧いてこない。まずは、毎日を充実させる事が防災の基本だと話した。それを踏まえて、盲ろう者である事を地域内でアピールする。自分のやり方は、カバンに名刺サイズのプラスチックカードを下げている。そこには、「盲ろう者。耳が聞こえません、目も見えません。トントン叩いて、お知らせしてください。」と書いてある。そのカードの後ろには、私のコミュニケーション方法の「触手話(手話を触る)、手書き文字(指で文字を書く)」と書いてある。 各市町村、都道府県レベルで災害に対して計画が作られている。私たちは、盲ろうという知識を提供する立場にある。盲ろう者というと、支援が必要な人と見られがちだ。社会の中で自分たちの障害や自分たちの経験をもとにしてよりよい計画を立てるお手伝いをすることができる。逆に当事者が積極的に計画づくりに関わっていかなければ取り残されてしまう。 【質疑応答】 ○質問1 盲ろう者が生き延びるための手立て 回答(福島) 防災のために盲ろう者にとって必要な機器を公的支援の中に入れるよう国に要望していきたい。今すぐできることとして、避難するより、家にこもった方がよい場合もある。水と食べ物が必要なので、常に水は沢山家にためておくとよい。研究によると缶詰が比較的美味しい。保存用のビスコは、総合的に一番簡単で栄養があり比較的おいしい。 【所感】  視覚と聴覚の両方が不自由な盲ろう者には、現代社会についての情報が入らない、伝わらない、明確な判断ができない、といった支障がある。情報が得られない日々がずっと続くと、情報量が極めて少なくなる。被害を受けた経験のない地域でも、自分は一生被害に遭うことはないだろうという甘い考え方をしてはいけない。それを実感したのは東日本大震災後である。防災対策に関する学習や避難訓練等の機会が増えてきた。しかし、災害時要援護者についての情報が行政からきちんと届けられていない地域が多くあるという話を聞いて、自分の在住を知らせることと同じ様に、進展していないと共感した。盲ろう者はコミュニケーションが困難なため、近所の人との付き合いが難しい現状でもあり、要援護者登録をしても決して十分とは言えない。自分の在住を市民らに知らせて理解して頂くにはポジティブにアピールする働きかけがとても大切だと思った。地球温暖化の影響で気象の異変も多い。早い段階で、災害に備えて命を守るにはどうすればよいか。その課題が重要だと改めて感じた。 (文責:福田 麻美) (3)「盲ろう者団体のあり方」 「全国盲ろう者団体連絡協議会と全国盲ろう者協会の役割」 講師: 高橋 信行(全国盲ろう者団体連絡協議会 会長) 山下 正知(社会福祉法人全国盲ろう者協会 事務局長) 司会:関 厚博(全国盲ろう者団体連絡協議会 役員) 【講演要旨】 それぞれの団体から以下の通り、説明があった。 連絡協議会: (1)設立してから今までのこと 聴覚障害者の当事者団体「全日本ろうあ連盟」は、1947年、視覚障害者の当事者団体「日本盲人会連合」は1948年に設立された。 盲ろう者の当事者団体は、2006年に「全国盲ろう者団体連絡協議会」として設立された。1999年に4名の盲ろう者が神戸に集まり、「盲ろう者の当事者組織を作ろう」と話し合った。翌年、7人に増えたメンバーが中心になって、本格的に盲ろう者の全国組織を作ろうと準備を始めた。2006年、リーガロイヤルホテル堺で設立総会が開かれ、連絡協議会が誕生した。 (2)主な活動内容 全国の盲ろう者の気持ちを1つにし、盲ろう者の要望を協会と一緒になって国に訴えていくことで、盲ろう者が住みやすい社会をつくっていく。 (3)課題 協会と連絡協議会との違いを理解してほしい。連絡協議会は当事者組織として、協会の応援を受けながら、日本の盲ろう者をまとめていく。連絡協議会に加盟していない団体があるので、全ての友の会に加盟してほしい。 一団体1万円ずつの会費だけでは活動費が賄えないので、経済的基盤が弱い。また、各役員は地元の友の会の運営をしながら連絡協議会の仕事をしているので、人的基盤が弱い。 (4)各友の会に期待すること 全国の盲ろう者一人ひとりが生き生きと生活する中で要望が生まれてくる。そのためには、通訳・介助員の存在が欠かせない。通訳・介助員には一人ひとりの盲ろう者を、友の会の活動を、支えてほしい。 (5)今後の展望 連絡協議会と協会はそれぞれに無いものを持っているので、両者が力を合わせることで、日本の盲ろう者福祉の推進体制が整う。 協会: (1)設立してから現在に至るまで 社会福祉法人の本来の業務として、全国の盲ろう者団体との連絡調整と相談事業を行っている。 最初に、福島氏、門川氏を支援する「共に歩む会」が、二人の盲ろう者を中心に支援者が集まって活動を始めたのが、協会のルーツである。活動が進み、1991年に社会福祉法人として協会が設立認可を受けた。当時、社会福祉法人を設立するには最低1億円の基本財産が必要だった。 通訳・介助員の派遣事業や「コミュニカ」の発行等の事業が始まった。その中で、全国各地に盲ろう者と支援者からなる友の会が設立され、現在は青森・福井を除く45都道府県にできるに至った。 (2)主な活動内容 ニューリーダー育成研修会を含めた様々な事業は、広く言えば全国の盲ろう者団体の連絡調整に関わる事業である。 (3)課題 盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度等の盲ろう者の施策が大きな変動期にある。総合支援法の3年後の見直しの中で、盲ろう者向けの制度をいかに充実していくかが最も重要な課題である。また、盲ろう者の情報・コミュニケーション保障と就労促進の課題は、障害者差別解消法の施行や障害者権利条約の批准等の動きの中で、具体的・現実的な話しになってきている。 長期的な課題として、日本版ヘレン・ケラーセンターという国レベルの盲ろう者のためのナショナルセンターづくりがある。 (4)各友の会に期待すること 地域の中で数多く埋もれている盲ろう者の掘り起こしを組織の拡大・強化に繋げることで、友の会活動のいっそうの活性化を期待する。 (5)今後の展望 協会は、理事会や評議員会があり、理事長が代表となり1つの社会福祉法人としての組織であり、年度計画だけでなく、中・長期計画を作っていきたい。今後、理事・評議員の中に盲ろう当事者が増えていくことが協会の活動の活性化・適正な運営になると期待される。全国の盲ろう者が集まる全国盲ろう者大会、会議、研修会等を通し、盲ろう者の声や要望が反映されるようにしたい。最終的には、協会と連絡協議会とで一体的な運営ができるようにしていきたい。 【質疑応答】 ○質問1 事務所問題について 回答(連絡協議会) 友の会事務所が代表者の自宅の部屋であったり、コーディネーターの仕事場も自宅となっているところが多い。各友の会から「事務所が欲しい」という要望をどんどん挙げて、連絡協議会としてとりまとめ、協会と一緒に解決していきたい。 ○質問2 連絡協議会に加盟できない理由 回答(連絡協議会) 協会と連絡協議会の違いが分からないので加盟の必要を感じない、会員数の少ない友の会では連絡協議会への1万円の年会費は負担が大きい、の2つの理由があると考えられる。 ○質問3 連絡協議会と協会との関係性 回答(協会) 様々な組織のあり方があるが、連絡協議会と協会がばらばらに動くのではなく、例えば総合支援法の見直しの検討に向け、国に対して要望等を出し、働きかけていく等、一緒にやっていく。 ○質問4 ヘレン・ケラーナショナルセンターの青写真 回答(協会) 日本でヘレン・ケラーセンターを作ることは目的ではない。盲ろう者の福祉や就職問題、教育、通訳者関連のトレーニング等、具体的に進めるための手段、シンボル。現時点では、「センターを近い将来に作るのだ」という意思表示をしていく。一方でより現実的なモデル事業を行ったり、法制度を少し変えたり、厚生労働省の中のルールを変えればできることもある。こうしたことを少しずつやっていく。そして、あるタイミングでセンターづくりに進みたい。 ○質問5 組織を運営していく上で工夫していること、大切にしていることは何か 回答 (連絡協議会) 全国の盲ろう者の心をひとつにすることが連絡協義会の使命。協会と一緒になって、より連携をうまくとりながら社会を動かしていくことを心がけている。 (協会)  日本を含め世界中の盲ろう者が幸せに生活していけるようにしていくという理念をきちんと掲げ、それを常に頭に置いて、毎日の活動や事業を進めている。 ○質問6 協会の団体としての性格 回答(協会) 協会は日本の盲ろう者を代表しているといってよい。これまで運動体としての性格を強く持った活動をしてきている。これからも日本の盲ろう者の最大の利益のために活動をしていく。具体的には国内でもJDFの一員として、様々な障害分野の団体の一角を占めて「盲ろう者」という障害分野を代表する形で活動している。また、日本の盲ろう者団体として、世界盲ろう者連盟の国内組織として加盟し、世界盲ろう者連盟を通してIDA(国際障害同盟)といった国際組織にも加盟している。 【所感】 この講義では、連絡協議会と協会という盲ろう者福祉に関わる全国組織、それぞれの役割について学んだ。5つの項目についてお話しいただいたことで、それぞれの組織のこれまでの経過、現状、今後の在り方を理解することができた。受講者は各友の会のリーダーとして、今後の地域団体を運営していく上での参考になる内容だった。 時間が足りなくなるほど多くの質問・意見が出され、受講者の関心の強さが窺えた。 (文責:関 厚博) 「盲ろう者と支援者との関わり」 講師: 藤鹿 一之(認定NPO法人東京盲ろう者友の会 理事長) 森下 摩利(東京都登録通訳・介助員) 司会:福田 麻美(全国盲ろう者団体連絡協議会 役員) 【講演要旨】 ≪森下氏:支援者の立場から≫ 通訳・介助員養成事業は国や都道府県の予算がつくが、友の会の運営支援をする者を養成する事業はない。通訳・介助員の活動はある程度謝金等が保障されているが、友の会の運営支援には謝金等の保障もなくボランティアで頑張っている地域もある。正しい支援の仕方には答えがない。ただ通訳・介助員の人数を増やすだけでなく、運営を支える支援者も育てて増やしていく必要がある。支援者は、友の会運営を担うリーダーの仕事を支える役割を担っている。一方、通訳・介助員は盲ろう者の生活を支える役割がある。支援者と通訳・介助員の役割を同じ人が担っているという現状だが、今後、支援者を増やしていくならば、きちんと役割を明確化する必要がある。 通訳・介助員は移動と情報保障をする人だが、友の会のスタッフは、それだけでなく様々な視点を持って仕事をする必要がある。盲ろう者と共に歩んでくれる人を養成するにはどうしたらいいのかが今後の課題である。標準カリキュラムの中にどう組んでいくかを考えている。リーダーには支援者にどんな役割が必要かを教えて欲しい。 リーダーは盲ろう者の代表として強い面を出して活動しなければならないが、1人の人間としては弱い面も持っている。通訳・介助員は、弱い面も支えていく存在であって欲しい。自分をダメな人間だと思わないで、「弱い面も支えて欲しい」という声をぜひあげて欲しい。 東京都盲ろう者支援センターでは、職員が支援者としての役割を担っているので、支援者と通訳・介助員の役割が明確である。東京の例と比較しないで、自分の地域でやってきた取組に自信をもって活躍して欲しい。東京の例だけでは、将来の支援者もしくは通訳・介助員のモデルの材料としては足りないので、各地域の実践例等を参考に、養成研修会や現任研修会で話していきたい。 ≪藤鹿氏:盲ろう者の立場から≫ 支援者と上手に関わっていくには、次の5つがある。 (1) 信頼できる通訳・介助員を3人以上作ろう 友の会の役員として活動する際には、通訳・介助員は基本的に2名が望ましい。有能な人でも1日中1人で難しい通訳をしていると集中力が欠けてミスも出たりする。通訳・介助員が2名いると、連係プレーをとることができる。1人の通訳・介助員が盲ろう者の通訳をしている時、もう1人の通訳・介助員は遊んでいるのではない。例えば、県との懇談会、要望書のどの部分について説明をしているか等のチェックをする。また、弱視手話でコミュニケーションをとる場合、通訳・介助員が少し離れて通訳をするので、盲ろう者に手が届かない。参加者の相槌や会話のリズムを伝えるために、もう1人の通訳・介助員は、盲ろう者の手に「コンコン」と合図を打つことによってリズムをとる。こんな感じで通訳・介助員が2名いると色々な点で連係プレーが取れる。 絶対的に信頼できる通訳・介助員だからといって、毎日同じ人に何時間も通訳をしてもらうと、将来的には腕・肩・肘を痛めてしまう、精神的な問題が出てしまう等、通訳・介助ができなくなる恐れがある。通訳・介助員が3人以上いれば、1人は休むことができるので、3人以上信頼できる通訳・介助員を作るとよい。 特定の人だけに通訳・介助をしてもらっていると、情報が偏ってしまう恐れもある。信頼できる通訳・介助員を作っていくには、まず絶対的に信頼できる通訳・介助員が1人いれば、もう1人は次に期待できる人。その2人ペアで通訳・介助を依頼する。2人目の通訳・介助員は、絶対的に信頼できる通訳・介助を見ながら、学べる。このように2人体制にすると、信頼できる通訳・介助員を増やせるという利点がある。 (2) なるべく支援者(通訳・介助員、コーディネーターや事務局も含む)に対して不信感を持たないこと。 盲ろう者と支援者の信頼関係を築くことも大切だ。自分の方が支援者を信頼しなければ相手にも信頼されない。但し、盲ろう者の事を全く理解しない、支援者としてふさわしくないと判断した場合は、無理をして信頼しなくてもよい。 (3)特定の支援者の情報だけで判断しない。 支援者も人間なので、必ずしも正確な情報を流せるとは限らない。1人の支援者が「Aさんは良くない」と言っても、他の支援者から「Aさんはすごく良い人」という情報提供があれば、盲ろう者の考え方が変わる場合もある。完璧な人はいない。友の会の役員として物事を決める時に、特定の支援者からの情報だけで判断しないようにする事。 (4)支援者の言動に疑問を感じたり、トラブルが起きた時は、じっくり話し合う機会を作ろう。 何か起きた時、話し合いもしないで「Aさんが良くない」と勝手に思い込んでしまうと、完全に損だ。Aさんの言動に疑問を感じても、Aさんとじっくりと話しをすれば、誤解が解け、理解し合えるようになるかもしれない。人の悪い噂話を信用しないようにする。まずは事実を確認して、話すようにする事。 (5) 支援者とできるだけ沢山コミュニケーションを取ろう。 信頼関係を築くには、支援者と沢山コミュニケーションをとる事がとても大切。支援者に対して疑問を感じたら、なるべく早く解決できるようにした方がいい。 支援者に望むことは、盲ろう者にとって良き相談相手になってほしい。情報はできるだけ正確なものを流して欲しい。誤った情報を流した時はできるだけ早めに訂正するようにして欲しい。盲ろう者と粘り強く付き合ってほしい。 【意見交換】 ○意見1 全国盲ろう者大会等、長時間通訳・介助する場合、3人の通訳・介助員を用意する。また、自分の県では、盲ろう者に対する悩みを話したり、ストレスが溜まったりすることを吐き出す場がある。 回答(藤鹿) 先ほどの話で通訳・介助員は2人と話したが、「2人以上」に訂正する。 ○意見2 自分の県では、盲ろう当事者だけでなく、通訳・介助員や支援者にも役員になってもらい、お互いに協力し合いながら進めている。通訳・介助員と盲ろう者間で考え方のずれが起きた時は、いつも自分が間に入って支援をしている。 回答(藤鹿) 支援者であり通訳・介助員であるというのは、本来は望ましくない。通訳・介助員として役員会に同席するのか、一人の役員として出席するのか、どちらかにすべき。 回答(森下) 支援者は移動・介助の時のように盲ろう者より半歩前を歩いている。情報量が多いという意味で、半歩前を歩いているわけだが、心は半歩後ろをついて行くような気持ちであればよい。 ○意見3 自分の県の通訳・介助員の派遣時間が年間盲ろう者一人当たり240時間しかなく、とても足りない。そのため同行援護の制度も利用しているが盲ろう者には使いにくい。今後、通訳・介助員派遣時間をもっと増やしてほしい。 回答(藤鹿) 派遣事業時間数がもっと増えるとよい。 【考察】  盲当事者団体、聴覚障害当事者団体や難聴当事者団体、それらの団体を支えるガイドヘルパ−関係団体や聴覚障害者への通訳(手話通訳、要約筆記等)関係団体と比べて、盲ろう者の福祉や関係団体は歴史が浅いため、盲ろう者と支援者との関わりが難しく、良い関係づくりがなかなかできない。支援者とは、盲ろう者の意志を尊重しながら支援する立場だという認識を持ってほしい。良い信頼関係を築いていくためには、お互いに支え合いながら前進していく必要がある。友の会運営を支えるためには、盲ろう者向け通訳・介助員に限らず、寄付を集める人も必要である。会員数もどんどん増やして、社会から信用されるように、みんなで努力していく必要がある。そうすれば、盲ろう者団体は一層発展していけるだろう。 (文責:福田 麻美)  (4)「リーダーとしての交渉力」 講師:福島 智(東京大学先端科学技術研究センター 教授) 司会:川口 智子(奈良盲ろう者友の会「やまとの輪」 役員) 講師の福島氏が受講者、協会職員等と直接やりとりをしながら話を進めた。 【講演要旨】 講師は、「交渉とは、ケンカすることではなく、お互いに理解しあう力である。行政と交渉する時、行政が大切にすることを理解する事が重要なポイントだ」と切り出し、2人の公務員盲ろう者から次の意見を聞いた。 ・「自分が障害を持っていることをどう周りに理解してもらうか、日々考えながら仕事をしている。」 ・「公務員はすべての市民の安心・安全・安定を第一の理念とし、すべての人の幸せのために奉仕する。財政のもとは、市民が納めている税金なので、市民あっての自治体、国である。」 これに対し講師から、自身の体験から行政の理念は、「公平性、公益性、他の国民が納得するような施策の展開」の三本柱とし、これらを理解した上で、盲ろう者が困っている事を訴え、要望していく事が重要だとした。 次に講師から以下の事例についての紹介があり、受講者に、「もしあなただったら行政の担当とどう交渉するか」と質問を投げかけ、議論がなされた。 〔事例〕 ある地域で盲ろう者向けの通訳・介助員派遣事業が公費で実施されているが、予算に限りがあるので派遣できる総時間数には限度がある。ところが、派遣時間数だけでなく派遣の内容について、行政側が盲ろう者の交流会への参加や交流会準備のための活動には派遣しないという制限をつけてきた。   事例について、受講者から次の意見が出た。 ・「交流会の中でも盲ろう者は情報保障が必要になるので、通訳・介助員の派遣を認めてほしいと訴える。」 ・「盲ろう当事者として健常者と対等になることを認められないのか、家に閉じこもり拘束されるような状況になってもいいのか、と自分の気持ちを正直に県にぶつける。」 これに対して、講師から大事なポイントを教わった。 ・盲ろう者としての自分の気持ちをきちんとぶつける事 ・もし交流会に行くことに対し派遣が認められなかったら、家に閉じこもっていないとだめだという事。 盲ろう者は、単一の障害者とは違う。単一の聴覚・視覚障害者の場合、自分で頑張ったら交流会の会場まで、途中でコミュニケーションや移動に不自由があったとしても、ろう者なら移動は簡単であるし、盲人ならコミュニケーションは簡単である。ところが盲ろう者は移動もコミュニケーションも難しいので、そもそも交流会の会場まで行って帰ってくるのが難しい。つまり、遊びで楽しい集まりだから、派遣の対象にはならないというのは、全く合理的な理由にならない。政治活動や営利活動等以外は何でも認められるべきである。」との話があった。 ここで、協会からの「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業のモデル要綱については、手話通訳者や要約筆記者のモデル要綱を参考にしながら検討している。」との話を受けて、講師は次のように述べた。 「行政側は手話通訳者派遣事業等を下敷きにして盲ろう者の事を考えるが、盲ろう者は1人1人の支援のニーズがバラバラで、移動やコミュニケーション支援のほか、周りの状況や緊急災害の情報を伝える等を同時にする必要がある。ろう者には大勢に同時に通訳できるが、盲ろう者には1人ずつ通訳・介助員がつく必要がある。今の通訳・介助員派遣制度は相当限界にきている。」 次に、講師が1994年の春に初めて都庁へ自身を含めて盲ろう者5人で要望しに訪れ、応対した東京都側の職員だった現協会事務局長の山下氏に対し、その時の印象を聞いたところ、以下の回答があった。 「様々な部署を経験し、障害福祉に関してベテランの範囲だと自負していたが、盲ろう者と実際に会って話をしてみて、盲ろう者の事を何も知らない自分が恥ずかしく、とても大きなカルチャーショックを受けた。」 講師は、これについて「指点字、手書き文字、触手話、ブリスタ等の様々なコミュニケーション方法の盲ろう者がいた事がインパクトを与えた。」として、盲ろう者が行政と交渉する時に大事なことを次にように述べた。 「盲ろう者が本当に困っている事や改善して欲しい事等を上手く話せなくても自分の言葉で直接行政側に伝える、通訳・介助員が代わりに伝えてはいけない。あらかじめ時間を決めておいて、盲ろう者のペースでもたついて時間が延びてしまっても本当の気持ちを行政に伝える事が大事である。 盲ろう者は自分の事だけでなく他のいろいろな盲ろう者の立場も考えながら、交渉して欲しい。間違ったり失敗した時に責任をとるのは通訳・介助員や支援者ではなく、盲ろう者自身である。その代わり、通訳・介助員からあれこれ指図は受けない事。」  続いて、受講者から、次のとおり体験にもとづく発言があった。 「まず怒りを持つ事がとても大切。怒ることをよりエネルギーに変える事が求められる。自分は全盲で電動車いすを支給してもらっているが、前例はなかった。交渉して可能になった。人は心で動くので、交渉は役所の人と直接会わなければ意味がない。そして、行政ができる限界を知っておく。その中で、互いに工夫して妙案を出し合う。相手より情報を多く持っていると、相手の手の内が見える。だから、相手がどう出るかを予想して動く必要がある。 例えば、交流会に通訳・介助員を派遣する事で、交流会が最終目的ではなく、その先の社会全体のためである事を伝える。」 この後、講師は、「交渉は怖がらずに。ただ、しゃべり過ぎには気を付ける」とまとめた。  最後に、受講者から、「これから、みんなで役所に行って、粘り強く交渉していきたい。」との抱負が語られた。 【質疑応答】 ○質問1 行政に繰り返して行く方法 回答 まず、各自治体の来年度予算に間に合うように、6・7月ぐらいに次年度の要望書を出すと決めておいて、毎年1回は要望に行くとよい。また、日常的に担当者と顔を会わせて、コミュニケーションのできる雰囲気を作ることが一番大事な事。要望を出して一度だめだと言われても、粘り強く要望していけば、状況が変わる事もある。協会や連絡協議会にも必要に応じて相談するとよい。 ○質問2 相手の反応をつかむ方法 回答 反応は表情が見えず。わかりにくいので、通訳・介助員に伝えてもらうが、全く表情が変わらない人もいる。担当者と何度も会って話をする事が大事。 【所感】  行政と交渉する時の重要なポイントについて、福島氏が参加者に質問し、いろいろな意見が返ってきたが、まとめると次の3つが挙げられた。公平性、公益性、そして、その延長線上で他の国民が納得するような施策の展開である。 社会としては、不特定多数の人に公平に利益を分け与える仕組みが作られている。例えば、盲ろう者の場合は公的なお金で通訳・介助員派遣事業が実施されている。  しかし、通訳・介助員を派遣できる時間には制限があり、交流会への派遣が認められないケースがある。この場合、行政とどのように交渉したらよいか。 福島氏によると、聴覚障害者向けの手話通訳者は不特定多数の聴覚障害者に対して1人で通訳できるが、盲ろう者の場合、ニーズはまちまちなので、盲ろう者1人ずつに対して通訳・介助員が情報提供・コミュニケーション・移動等の支援を同時にする必要がある。 通訳・介助員派遣等の制度自体の枠組みを変えてもらうためには、行政に直接足を運んで交渉をすることが大事である。盲ろう者が行政と交渉する時、通訳・介助員や支援者に頼らず、自分で発言することが大事であると述べられていた。 講演時間は予定より長くなってしまったが、上記のように福島氏と参加者が交渉力について意見交換するような形式であり、非常に勉強になった。講師が一方的に講演するのではなく、参加者へ質問しながら講演が行われたので、講演の内容がよく理解できた。また、「交渉力」という、あまりなじみが無い言葉ではあったが、講師自身が都庁に交渉をしに行った時の体験等を踏まえて、分かりやすく説明して頂いた。 (文責:川口 智子) 3 考察 (1)企画運営 今年度で3回目の開催となる本研修会では、4人の企画委員のうち1人以外はメンバーが入れ替わった。昨年度までの経験を生かし、4人の若い盲ろうの企画委員が中心となって企画運営がなされた。5回の企画委員会では、毎回、委員が交代で司会を担当し、カリキュラムの内容、講師、役割分担、当日の進め方、研修会の反省等が協議された。 企画委員会は、他の委員の意見を聞きながら、全体の話の内容を整理しつつ、司会進行をしていくということを訓練する場にもなった。また、委員自らが通訳・介助員と相談しながら、よりよい情報保障やサポートのあり方について模索しながら工夫をされていた。 さらに、企画委員と協会事務局との連絡や情報共有の手段として、メーリングリストを立ち上げ、企画委員による自主的な議論が活発になされた。特に本研修会の最大のテーマの一つである災害対策のグループ討議について、各委員があらかじめ知っておいた方がよい情報を共有し、当日の司会進行の具体的な進め方等についての打ち合わせが活発になされた。 こうした企画委員の自主的な取り組みにより、それぞれの力が存分に発揮され、当日の研修会においてたくましく成長している姿を見る事ができた。 しかし、各団体へ事前のカリキュラムやグループ討議内容の案内が遅れたことは協会事務局として反省しなければならない。 (2)内容 アンケート結果より、本研修会の受講者からは全体として概ね高い評価を得たことがわかった。全国各地の地域団体から盲ろう当事者が一同に集まり、情報交換や議論をすることで、自らのモチベーションを高めていくきっかけになったといえる。 カリキュラム内容は、昨年度までの到達点をふまえ、リーダーとして盲ろう者地域団体の運営力を高めるための知識やノウハウのスキルアップをはかっていくことに重点をおいた。 特に企画委員会では、「社会的孤立」と「災害対策」をキーワードに、企画委員自らの頭で考え議論していく中で、カリキュラムの内容を膨らませていった。 地域において盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業や災害時要援護者制度等の福祉サービスを受けられず孤立している盲ろう者が多数存在している日本の現状の中で、盲ろう者地域団体の担い手として、リーダーのあるべき姿を身近な事例を通してイメージしやすいように工夫したカリキュラムが組み立てられた。 具体的には、地域における盲ろう者の掘り起こしや相談活動においてリーダーとして必要な知識とスキル、東日本大震災後の盲ろう者地域団体における災害対策、盲ろう者と支援者の関わり、行政との交渉等を題材にして、地域に戻りすぐに活動に生かせる実践的な内容となった。 グループ討議については、受講者にあらかじめ討議内容を示し、受講者自らが所属する団体で事前に地域の行政や関係機関を訪問調査し、団体内部で協議してまとめてきた上で、当日のグループ討議に臨んでいる受講生が多く見られ、活発な情報交換や議論が展開された。 しかし、受講者の活動年数が回答者28名中11名が9年以上(約4割)のベテランであることから、地域における新しい盲ろう者のリーダーの発掘がきわめて困難な状況にあることが窺える。これは、受講者を募集する過程で、「受講したいが、費用がかかるので参加を見合わせる」との声を寄せた団体が少なくなかったことからも、財政基盤の弱い団体にとって、参加費用の負担が大きいこともひとつの要因になっていると言えよう。 また、追跡アンケートによると、地域に戻って、支援者との関係がよくなったり、自分の意見が言えるようになった等、早速実践している様子が窺える。今後の地域での活躍が期待される。 (3) 今後の課題 本研修会で学んだ盲ろう当事者リーダーたちが中心とって、各地の盲ろう者地域団体を動かし、「災害時要援護者制度」の活用や地域の防災・避難訓練への参加の呼びかけ、行政や関係機関への働きかけ等を通じて、災害時における盲ろう者支援体制の整備がより一層前進し、団体の活性化が図られることが期待される。 盲ろう当事者が地域の盲ろう者福祉を担うリーダーとして活動していくには、通訳・介助員だけでなく派遣コーディネーター、友の会運営に関わるスタッフ等、盲ろう者支援に直接携わる人たちとの良好な関係づくりが重要なカギとなると思われる。盲ろう者地域団体の運営力アップのために、今回のカリキュラムの一つである「盲ろう者と支援者の関わり」について、今後さらに議論を深めていく必要があるだろう。 また、平成25年4月より施行された「障害者総合支援法」の3年後の見直しや平成28年4月からの「障害者差別解消法」の施行に向けた取り組み等、盲ろう者福祉をめぐる国の動きは急ピッチで進んでいることから、今後、盲ろう者のニーズに合わせた支援のあり方について、組織的に全国的な規模で緊急に検討されなければならない。 しかし、残念ながら、ほとんどの盲ろう者地域団体の事務所が個人宅か他団体の部屋の一角を所在地としていることからも、財政面でも人材面でも組織基盤がきわめて脆弱なことが、組織的な活動を困難にしている。こうした現状を克服するには、地域の盲ろう者福祉の向上を目指す運動体としての側面と地域の盲ろう者福祉を担う事業体としての側面を兼ね備えた組織として、盲ろう者地域団体が発展成長していけるよう、そのための人材育成に力を入れていきたいと考える。 【資料】 「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」 社会福祉法人全国盲ろう者協会 職員 庵 悟 1.背景 (1)国連の障害者権利条約 @考え方 ・障害者に特別な権利を与えるための法律ではない。 ・障害のある人もない人も平等に暮らせるようにすることが目的。 A法的な位置づけ  批准すると、憲法の次に法的拘束力をもつ。 B独自の障害としての「盲ろう」  第24条の「deafblind」の正式な日本語訳 →「盲聾」(「聾」の漢字に‘ろう’というルビがつく) (2)国内法の整備 @障害者基本法 ・障害者政策委員会の設置 ・障害者基本計画(第三次) A障害者総合支援法 ・盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業および養成研修事業→都道府県(指定都市・中核市を含む)地域生活支援事業の必須事業化 ・厚生労働省から平成25年3月末に、養成研修事業の標準カリキュラムが各自治体に示された。 B障害者差別解消法 ・2013年 6月成立 ・2016年 4月より施行 ・2019年 見直し 2.日本の盲ろう者の現状と課題 (1)盲ろう者の数が少ない @平成24年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業   「盲ろう者に関する実態調査」 ・盲ろう者数は、約1万4千人(身体障害者手帳に視覚と聴覚の障害が明記されている者) ・約8割が65才以上の高齢者 A盲ろう者 全国盲ろう者協会が把握し支援できている盲ろう者は、わずか900人程度で、全体の6%。 (2)「盲ろう」が独自の障害として認知されていない。 盲ろう者の障害特性に合わせた支援の体制が他の障害者福祉と比べてきわめて貧弱。 あらゆる分野で、盲ろう者が不利益を被っている。 (3)災害対策の遅れ  2011年3月11日に発生した東日本大震災では、障害者の死亡率が、住民全体の死亡率に比べて2倍以上となった。多くの盲ろう者と家族、通訳・介助員が被災した。 (4)盲ろう者地域団体 @現況  青森県と福井県を除く45都道府県に設立。 A盲ろう者福祉を担う団体 ・派遣および養成事業を盲ろう者地域団体が自治体から直接受託されているところがまだ少ない。 ・他団体に委託されている地域が多いため、盲ろう者の特性とニーズに応じた支援が充分でない。 B弱い組織基盤 ・財政的にきびしい。 ・事務局職員がおけない。 ・人材が育たたない。 ・地域の盲ろう者福祉の受け皿となる組織基盤がきわめて弱い。 3.盲ろう者を支える社会づくり (1)盲ろう者地域団体の活性化と組織基盤の強化  @盲ろう者と支援者が情報共有しながら、同じ方向に向かって歩めるよい関係をつくっていく。 A他団体や行政との連携をはかりながら、地域の盲ろう者福祉の担い手として成長していく。 B派遣および養成事業などの盲ろう者福祉事業を受託し、組織基盤を強くしていく。   (2)盲ろう者・家族・支援者の声が反映されるしくみづくり 各地の盲ろう者地域団体から意見を集約し、国や自治体、関係団体等に対して政策を提言し、日本の盲ろう者福祉施策に反映させていく仕組みをつくっていく。 (3)「全国盲ろう者団体ネットワーク活動支援事業」 地域の盲ろう者福祉の担い手である盲ろう者地域団体の活性化と盲ろう者福祉に関わる組織のネットワーク化をはかるために、次の3つの事業を行う。 @全国盲ろう者団体ニューリーダー育成事業 A盲ろう者地域団体ブロック会議 B全国コーディネーター連絡会 4.自分から出発する  これから出会うであろういろいろな盲ろう者のよき相談相手になるには、まず自分から出発しよう。 (1)体の健康づくり ・よく食べて、よく体を動かし、よく寝る。 (2)心の健康づくり  @夢中になれるものを見つけよう Aしんどくなったら、「あとで」 ・「あ」…焦らない ・「と」…自分を特別扱いしない ・「で」…できるところから始める (3)よく学ぼう @広く浅く学ぶ ・友の会の行事、全国盲ろう者大会、各種研修会、他団体の行事などに積極的に足を運ぶ ・いろいろなことにアンテナを張る A謙虚な姿勢  ・学びなくして成長なし (4)心の眼と耳を育む ・相手を理解する想像力 ・相手の言葉や行動に振り回されず、相手の立場を理解しようとする。 ・思いっきり恋愛をしよう  5.盲ろう者のよき理解者となるために  啓発活動や相談活動において、リーダーとして必要な力 (1)自分のことを知る ・自分の見え方や聞こえ方 ・コミュニケーション方法 ・支援してほしいこと など (2)盲ろう者全般を知る ・自分とは違うタイプの盲ろう者が、困っていることやコミュニケーション方法 ・日本の盲ろう者福祉の現状と課題 ・盲ろう者に役に立つ制度や支援機器 など   (3)社会のことを知る ・世界の動き、日本の動き、福祉全般のこと ・障害者に役立つ情報 など (4)相手のことを理解する ・相手の価値観、考え方を受けとめる。 ・家族や第三者の話に耳を傾ける。 ・相手が置かれている環境や生きてきた経緯を理解し、相手の状態を正しくつかむ。 (5)コミュニケーション力 ・直接対話ができる力を身につける。 ・できるだけ多くのコミュニケーションや通信の手段をもつ。 (6)よきパートナー ・相談できる仲間を最低3人つくる。 ・よい支援者(通訳・介助員を含む)を身近につくる。 (7)仲間や他団体との連携プレー ・ひとりで抱え込まない。 ・「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」 (8)自分で解決する力を引き出す ・相手に何かをやってあげるのではなく、相手が自分の頭で考えて、自分で解決していけるように援助する。 「全国盲ろう者団体連絡協議会について」 全国盲ろう者団体連絡協議会 会長 高橋 信行   1.設立からこれまでのこと (1)当事者組織 聴覚障害者 全日本ろうあ連盟 1947年設立 視覚障害者 日本盲人会連合 1948年設立 盲ろう者 全国盲ろう者団体連絡協議会(以下「連絡協議会」) 2006年設立 (2)連絡協議会設立まで 1999年 4名の盲ろう者が神戸に集り、盲ろう者の全国レベルの当事者団体の必要性について話し合う。 2000年 発起メンバーが7名になり、設立準備を始める。 2006年 リーガロイヤル堺にて設立総会を開く。 (3)現在まで 初代会長の吉田正行氏、大杉会長、牧田会長と続き、現会長の高橋は4代目。 2.主な活動内容 ・全国の盲ろう者の気持ちを一つにする。 ・社会に対して盲ろう者の存在やニーズを訴える。 ・協会と協力しながら盲ろう者福祉を牽引する。 3.課題 ・連絡協議会と協会との違いについての周知徹底 ・未加盟の盲ろう者団体問題 ・経済的人的基盤の強化 4.各友の会に期待すること ・今後、盲ろう者福祉をさらに発展させていく上で連絡協議会と協会の両方が必要であることを理解してほしい。 ・全ての盲ろう者団体が連絡協議会に加盟してほしい。 ・地域の盲ろう者のニーズを連絡協議会に集約してほしい。 5.今後の展望 ・連絡協議会は全国の盲ろう者の代表として、盲ろう者の気持ちを一つにしていく。 ・連絡協議会と協会は「当事者組織と応援団体」として、連携しながら、日本の盲ろう者福祉をさらに発展させていく。 「全国盲ろう者協会について」 社会福祉法人全国盲ろう者協会 事務局長 山下 正知    1.設立からこれまでのこと 1981年 福島智君とともに歩む会 設立 1984年 障害者の学習を支える会(門川君とともに歩む会) 設立 1988年 新しい盲ろう者の会設立準備会(東京)設立 新しい盲ろう者の会関西準備会(大阪)設立 1991年 3月 社会福祉法人全国盲ろう者協会設立認可 ・通訳・介助者派遣事業開始 ・教育方法開発委員会発足 ・機器開発委員会発足 ・機関誌「コミュニカ」発行 4月 東京盲ろう者友の会設立 以後、大阪をはじめとして全国各地域に「盲ろう者友の会」設立 初代理事長 小島 純郎(大学教授) 二代目理事長 小村 武(元大蔵事務次官) 現理事長 阪田 雅裕(元内閣法制局長官) 2.主な活動内容 ・盲ろう者関係生活相談事業 ・広報誌発行事業 ・盲ろう者向け通訳・介助員養成のためのモデル研修会 ・盲ろう者向け通訳・介助員現任研修会 ・盲ろう者国際協力推進事業(世界盲ろう者連盟、ESCAP関係など) ・盲ろう者福祉啓発事業(各地域の「盲ろう者友の会」等と連携しての活動) ・盲ろう者向け生活訓練等事業(宿泊型生活訓練事業) ・全国盲ろう者地域団体ブロック会議 ・全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会 ・全国コーディネーター連絡会 ・盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業(パソコン訓練等) ・全国盲ろう者大会 3.課題 ・盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度をはじめとする盲ろう者福祉施策の一層の充実に向けた取り組み(障害者総合支援法の施行後3年の見直し) ・盲ろう者の情報・コミュニケーション保障、就労促進などに向けた取り組み ・日本版ヘレン・ケラーセンター(仮称)の設立 ・財政基盤の強化 4.各友の会に期待すること ・各地域の盲ろう者の掘り起こしによる組織の拡大・強化 ・友の会活動の一層の活性化 ・各地域の盲ろう者向け通訳・介助員養成、派遣事業の充実に向けた取り組み ・国レベルでの施策の充実(障害者総合支援法の見直しなど)に向けた各地域での積極的な取り組み 5.今後の展望についての私見 理事、評議員に盲ろう当事者を増やすとともに、各地域の盲ろう者友の会の声が法人運営に反映される仕組みを作っていく。また、将来的には、社会福祉法人全国盲ろう者協会と全国盲ろう者団体連絡協議会との一体的な運営をめざしていく。 「盲ろう者と支援者の関わり〜盲ろう者の立場から〜」 認定NPO法人東京盲ろう者友の会 理事長 藤鹿 一之 1.友の会の役員として支援者と上手に関わっていくためには? (1) 信頼できる通訳・介助員を3人以上作りましょう。 基本的には友の会の役員として活動する際は通訳・介助員は2名体制にした方がいいでしょう。(もちろん、活動内容や盲ろう者の障害の程度により、通訳・介助員1名で対応できることもあります)例え、絶対的に信頼できる通訳・介助員が1名いたとしても、なんらかの事情で、その通訳・介助員が活動できなくなった時、盲ろう者も役員として活動しにくくなるでしょう。 特定の通訳・介助員に過剰な負担がかかってしまうので信頼できる通訳・介助員を3人以上作りましょう。 (2) 支援者に対し、なるべく、不信感を持たないようにしましょう。(この場合の支援者とは通訳・介助員だけでなく、友の会の事務局、派遣コーディネーター等も含む) 盲ろう者と支援者の信頼関係を築くことが最も大切です。こちらが信頼しないと、相手にも信頼してもらえません。なるべく、支援者に対し不信感を持たないようにしましょう。 (3) 一人の支援者からの情報だけで判断するのは危険。 何事も目的を果たすためには多くの情報が必要です。例え、絶対的に信頼できる支援者がいたとしても、その支援者も人間ですから、誤った情報を提供するかもしれません。盲ろう者自身が誤った判断をしないよう、特定の支援者からの情報だけで自己決定、自己判断しないようにしましょう。 (4) 支援者との間にトラブルが起きたり、不信に感じた時は話し合いの場を設けましょう。 支援者との間にトラブルが起きたり、支援者の言動に不信感を抱いたりした時は、じっくり話し合うようにしましょう。 話し合いにより誤解が解け、その支援者との関係を修復できるかもしれません。 (5) 支援者とのコミュニケーションを大切に。 支援者とたくさんコミュニケーションを取り、信頼関係を築きましょう。そして、お互いの気持ちを理解し合えるようにしましょう。 2.支援者に求めること。 (1) 盲ろう者にとって良き相談相手に。 支援者として盲ろう者とたくさんコミュニケーションを取り、盲ろう者にとって良き相談相手、良き話し相手になって下さい。 (2) できるだけ正確な情報を。 目と耳の両方が不自由な盲ろう者はどうしても情報量が不足してしまいます。支援者からの情報は盲ろう者にとって重要な情報源となります。盲ろう者に情報提供する際はできるだけ正確な情報を提供するようにして下さい。 (3) 盲ろう者と粘り強く接することが大切。 支援者が盲ろう者と粘り強く接することにより、その盲ろう者が持っている能力を引き出し、長所を伸ばすことができます。 「リーダーとしての交渉力」 東京大学先端科学技術研究センター 教授 福島 智 1.「交渉力」とはなにか ・交渉力とは、相手と闘う力ではなく、相手と理解しあう力である。 ・また、自分がこの社会で自分らしく生きていくには、周りの身近な人や地域社会に自分のことをアピールする必要がある。 ・自分のことをアピールするためには、自分が成長する必要がある。自分のことだけでなく相手の立場も理解することが重要だ。それゆえに、自分にとって必要な知識を学んだり、人に教えてもらうことも大切だ。それには困難がともなう。学習したくないとか、人前に出ることが恥ずかしくて遠慮してしまっていては、自分のことをアピールし、相手に理解してもらうことはできない。 ・盲ろう者が社会の中で自分らしく生きていくためにはまず、自分のことを知り、相手のことを理解することから始めよう。 2.リーダーとして必要な交渉力とは? ・自分の立場ばかりを主張するのではなく、盲ろう者全体のことを話せるようになること。 ・相手との交渉の前に、事前に情報収集をする。その場合、友の会役員や事務局員、同行する通訳・介助員と情報共有することが大事。 ・相手の立場や気持ちを汲み取り、相手に納得してもらえるような話し方ができるようにする。 ・短く単純明快に話す力を身につける。 3.交渉の実際〜福島の体験を通じて ・役所との交渉 ・政党への陳情 ・マスメディアとの相互協力 ・養成および派遣事業が委託されている他団体との交渉 アンケート結果 当日アンケート 配布数 32   回収数 28(回答率 87.5%) 1.盲ろう者地域団体(友の会等)との関わりについて 1−1 盲ろう者地域団体での活動年数  あ 3年未満 8  い 3年以上から6年未満 3  う 6年以上から9年未満 5  え 9年以上 11  無回答  1 1−2 盲ろう者地域団体での現在の役職  あ 代表(会長、理事長等)7  い 事務局長 1  う 上記以外の役員 11  え 事務局員 0  お その他 8  無回答 1 2.研修会を受講した目的について 2−1 受講の動機について(複数回答あり)  あ 自主的参加 12  い 所属団体からの要請 3  う 所属団体の役員会での推薦 11  え その他 2 2−2 受講の目的について(複数回答あり)  あ 団体運営等に必要な知識・情報の収集のため 21  い 他団体との情報交換のため 12  う 自己啓発のため 9  え その他 0 3.本研修会の運営等について 3−1 開催時期や日数について  よい 17 【理由】 ・金、土、日の方が参加しやすい。 ・できれば、10月ぐらいから11月ぐらいに開催してほしかった。  普通(特に支障なし)8 【理由】 ・会場設定はよかった。通訳・介助員と一緒に移動する上でも楽だった。  改善を望む 3 【理由】 ・年末は通訳・介助員の確保が困難である。 ・東北や北海道の人が来られないので時期を考えてほしい。 ・2日目は午前中で終了してほしい。3時に終了すると帰宅が夜中になってしまう。 3−2 会場・宿泊施設の設備、サービス等について  よい 16 【理由】 ・今までで一番良い場所だった。 ・会場が広く、ゆったりと勉強ができた。 ・部屋(ホテル)の広さも丁度良く使いやすかった。 ・会場への移動が楽であった。 ・ホテルの備品等は使いやすかった。 ・ホテルの部屋が暑かった。 ・会場近隣に遅くまで交流ができるお店がなかったので、ゆっくりできる飲食店が近くにあると研修会参加の楽しみも増えると思う。  普通(特に支障なし)6 【理由】 ・昨年よりも広かったので、動きやすかった。フードコートと100円ショップが入っていたので良かった。   改善を望む 4 【理由 ・ホテルでは盲ろう者にはやさしい設備になっていなかった。 例)@エレベーターにカードを使うため、盲人にとっては両手を使わなければならない。Aバスのシャンプー、リンス等の区別がつかない。 ・朝食時の混雑について、工夫してほしい。 ・宿泊する部屋が暗かった(夜盲症のため)。 ・宿泊施設はよかったが1人部屋だったため不便だった。2人か3人部屋がほしい。  無回答 2 【理由】 ・会場とホテルが近くて良かったが、ホテルの部屋に、ぶつかる心配のある棚などがあり不便だった。 3−3 案内・連絡等の進行等について  よい 15 【理由】 ・よく発言ができて良かった。できれば、1人が多く発言するのではなく、他の人に発言チャンスを与えてほしかった。 普通(特に支障なし)11 【理由】 ・事前にレジュメやカリキュラムが情報として入っていたので話が聞きやすかった。盲ろう者になり、様々なことに時間がかかるようになったが、一人ひとりのペースを見ながらの進行だったのでよかった。 ・開始時間や終わる時間が遅れた。  改善を望む 2 【理由】 ・レジュメント、資料等、もっと早めに送付してほしい。 ・資料に書かれていたことと連絡係の報告が食い違っていた。 4 個々のカリキュラム及び全体について 4−1 「リーダーとして盲ろう者のよき理解者となるには」   参考になった 23 【理由】 ・「あ・と・で」が印象に残った。 ・自分の発言をすることが出来た。 ・当事者である講師の経験や思いも交えながら、レジュメも事前に読むことができて、わかりやすかった。 ・経験と実績に裏付けられたお話しは、物事がうまくできたことも、課題となったことも、とても説得力があった。そういう話を聞けたことで、自分自身を更にブラッシュアップしていこう、スキルアップを図ろうという前向きな思いに駆り立てられた。 ・知らない事だらけで、勉強になった。学識がないためむずかしい言葉が多く、理解するのに苦労した。(英語)  普通 5 【理由】 ・話が途中で終わったように思った。 ・庵氏の個人的体験が聞けて良かった。  参考にならなかった 0 4−2 「グループ討議」  参考になった  21 【理由】 ・震災体験者からの話が聞けたこと。 ・全体討議よりも各人が発言しやすく内容も深まった。 ・みなさん一人ひとりが、しっかりと準備してきたこと、それぞれの環境で考えられることをしっかり話していた。自ら集めた情報を発信できることは、すばらしいと思った。テーマが前後する場面は当然あると思ったが司会者がよくまとめて進行していた。全体発表の際の指名には驚いた。 ・地域で防災学習会を開いている事を知れて良かった。 ・知らない情報があった。Aグループは東北地方の人がいなかったのが残念だった。 ・グループ討議で、各地友の会など団体が防災への意識が高まっていることを知り触発された。今後の活動にぜひ活かしたい。ただ、全体報告会で各グループ代表からの報告は、1人を除いて、皆がよく理解できるようなまとまりのある発表ではなかった。リーダーとして、話し合いをうまくまとめるための力を養うことが求められるのではないかと思う。 ・東日本大震災被災盲ろう者の生の声を聞くことができた。 ・各地域の取り組みを知ることができた。また、友の会の取り組みも報告できた。 ・各友の会の方々の活動や生活がわかったので、よかった。  普通 7 【理由】 ・もう少し、具体的に避難訓練や防災グッズの内容を話してほしかった。一人の人が長く話していた。 ・限られた時間の割にはテーマが多く混乱していたので、もう少しテーマを絞ってもよいと思う。  参考にならなかった 0 4−3 「盲ろう者団体のあり方」  参考になった 20 【理由】 ・それぞれの立場の講師のお話を広く聞くことができ、当事者として抱える問題や考え方、地域団体や通訳・介助員の実際の場面を感じることができてよかった。話がわかりやすかった。 ・人材育成、参考になった。 ・連絡協議会と協会の関係など、わかりにくいところの説明がありよかった。 ・団体運営の苦労や将来の期待と展望は、全国の盲ろう者友の会に共通する想いであり、それらを束ねて艱難に立ち向かいつつ、よりよい明日へ向かうエネルギーとなっていくことを願ってやまない。  普通 6 【理由】 ・全国盲ろう者協会と全国盲ろう者団体連絡協議会の二つがあるが、一つにまとめたほうが良いのではないかと思う。両方の会費は払えない。  参考にならなかった 2 【理由】 ・(前半)まわりくどい言い方よりも、はっきりとした言い方の方が分かると思う。(後半)流暢な話しぶりでとても引き込まれるような講演だった。 ・言葉の定義が把握しづらい部分があって、わからなかった。そもそも「連絡協議会」と「協会」が別々にあることを知らなかった。 ・ルールを知らなかったので、びっくりする事がたくさんあった。友の会のメンバー全員がこれらをきちんと理解しているのかどうか心配である。また知っていた方が早く進められると思う。 4−4 「リーダーとしての交渉力」  参考になった 23 【理由】 ・交渉の手順が具体的でわかりやすかった。 ・行政に交渉するにあたり、まず担当者と仲良くなることからはじめること、また粘り強くやること等勉強になった。 ・一番楽しい講義だった。講義の進め方も受講生だけでなく主催者スタッフ、当事者の意見や考えも引き出しながら、実際の場面をシュミレーションできた。最後のポイントをおさえたわかりやすいまとめも、とてもよかった。質の高い宇宙のような広さを感じる講義だった。 ・行政とのかかわりについて、大いに参考になった。 ・行政交渉のやり方がわかってよかった。 ・講演のスタイルでなく、参加の皆さんに聞いて回答してもらったりしたことで、参加の皆さんからの声を自然に引き出せていて良かった。 ・司会は進行に気を配る必要があったのではないかと思う。 ・長話は時間のロスにつながるので、短時間で内容のポイントをまとめて話すことも、交渉力の内に求められると思った。 ・交渉を通じて、「理解者・支援者」を増やしていく事は容易なことではないが、柔らかな語り口の中にも不退転の決意を感じた。 ・行政とはケンカをしないということ。また、制度の中で認められないことには地域ごとで格差のあることがわかった。 ・地域内では要望を伝えても、事務局は耳をかたむけようとしない。不信感をおぼえた。  普通 5 【理由】 ・交渉力というのがよく分からない  参考にならなかった 0 4−5 カリキュラム全体について(総合評価)  参考になった 21 【理由】 ・会場の立地条件もよく、建物内の設備も充実していてよかった。 ・他の地域の現状や、思いを聞くことができとても参考になった。 ・バランスのとれた内容であったと感じた。盲ろう者の研修会等は一つ一つ時間がかかることに配慮しながら講義が組まれていると感じた。当事者の話はやはり説得力のあるものだと思った。 ・今までは地元の情報しか分からなかったけど、全国の情報を知ることができた。高橋氏の話で連絡会の事務所が庵氏の自宅と知ってびっくりした。協会と一緒だと思っていた。 ・昨年は寸劇(ロールプレイ)がわかりにくかった。今年はフロアからの発言も多かったと思う。 ・意見交換会はとてもよかった。 ・養成講座の内容をどうやって決めているのかを知りたい。しかし教えてくれないので計画を立てたくてもできずに困る場合がある。盲ろう者も知っておくべきなのに、教えてくれないのはおかしいと思う。(友の会の通訳・介助員が勝手に決めてもよいということか。)  普通 6   参考にならなかった 0  無回答 1 【理由】 ・できれば講師の話を事前に提供していただき、当日の話を短縮して、意見交換や質疑応答の時間を多くとってほしい。 ・組織や団体の運営、定義付けなども大切ではあるが、もっともっと盲ろう者個人に焦点をあてた内容にしてほしい。 5 今後の研修会の企画・運営等について 5−1 今後取りあげてほしいテーマがありましたら、具体的にお書きください。 ・身体障害者手帳の障害種別に「盲ろう」を入れてほしいので、そのための話し合いを提案する。単なる一障害では片付けられない、重複障害の定義を位置づけてほしい。 ・盲ろう者が安心して生活できるよう、福祉機器についての話が聞きたい。(例えば、ポケットの入るくらいの点字で情報を得られるもの。点字で読みとれる体温計など) ・行政との交渉時などを想定して、ロールプレイをしてみたい。 ・災害について勉強できたのはよかった。また取り上げてほしい。年数が経つにつれ風化していく恐れがあるので繰り返し、災害時にどうやったら慌てずに済むかなど、日頃の備えも必要なので毎年テーマに入れてよいと思う。 ・盲ろう者が1人で外出して、地震などに遭遇したときの対処について。 ・盲ろうであることを周囲に知らせるための目印(たとえば、腕章のようなもの)を腕に巻いておくなどの工夫について。 ・災害時の情報保障について ・震災時の体験談 ・盲ろう者の発掘。会員の拡大。 ・世界大会(会議)の様子の報告が聞きたい。 ・障害者が不便なサービスを受けること。 例)JRの駅員は、ホームや電車が空いているのに一番後ろの車両まで移動させる。 ・盲ろう者の自立について。(盲ろう者自身のコミュニケーション能力、交流力を育むため) ・盲ろう者支援のあり方について ・盲ろう者地域団体の運営について(ノウハウや取り組み方) ・盲ろう者の恋愛と結婚について ・人材育成 ・盲ろう者の掘り起こしについて ・講演を開くだけでなく、今回あったようなグループ討議をもっとしてほしい。 ・盲ろう者向け通訳・介助員養成事業においてのカリキュラムの各県の進み具合を聞きたい。 ・各団体で取り組んでいる人材育成や生活の工夫など。また事例検討(「あなたならどうするか」というような形式)。他には相談援助の手法。 ・通訳・介助員派遣支援事業に関する問題、本来のあり方はどんな方法が望ましいか(地域生活支援事業のままで良いのかなど)、今後の取り組みを中心に取り上げてほしい。 ・世界的な動向についても私たちの目や耳を開かせる情報・課題等を提供いただけるとありがたい。 ・外国の盲ろう者を招待して、世界の盲ろう者文化について話を聞きたい。 ・通訳・介助員との関わり方(盲ろう者、弱視難聴など各グループに分け、通訳・介助員との関わり方を討論したい)。 ・弱視難聴に対する誤解が多いので、通訳・介助員の盲ろう者に対する理解不足の解消について取り上げてほしい。 5−2 その他お気づきの点がありましたら、ご自由にお書きください。 ・郵便物やコミュニカ等のデイジー版を作成していただきたい。 ・開講式の挨拶は短くお願いしたい。 ・通訳・介助員の交通費や宿泊、通訳謝金は出るので良いが、盲ろう者の参加については全額とは言わないが、半額でも助成していただきたい。 ・1日中講演を聞くのは、体力的に大変である。せめて半日で講演をやって頂けたらありがたい。スケジュールをもう少し工夫してほしい。 ・積極的な人が多いということがわかった。 ・講習中の休憩の前後など、自主参加でよいので体を動かす(ストレッチ等)機会を設けてほしい。 ・福島氏のお話は、初日とか午前中など頭の回転の良いときにコマを設けてほしかった。 ・発言者のマイクの使い方に配慮が必要。マイク自体、性能、音響の良いものを使えば、よりスムーズな進行の助けとなったのではないか。 ・パソコンが繋がりにくかった。 ・会場と宿泊ホテルの温度設定が暑かったので、換気してほしかった。 ・マイクからの音声が後ろまで届きにくい場面があった。通訳者も聞き取れない場面があった。 ・盲ろう者が集まる雰囲気、スタッフや協会の方々の対応が親切でとてもよかった。 ・カリキュラム内容をもう少し早く教えてほしい。友の会で、誰が行くべきか話し合う時間が欲しい。 ・司会者は意見を聞くだけでなく、司会者の意見を踏まえながら進めてまとめてほしい。 ・グループ討議での司会者はスムーズに進行できるようにテーマに準じた発言を求め、テーマを混在させるような発言をストップさせるだけの力をつけて欲しい。 ・参加者なのに、喋りすぎたと反省している。 ・リーダーとして説明力と整理力を身につけ、力を高めるための企画が必要ではないかと思う。司会・議長など進行役が話し合い内容を整理し、まとめて話す力をつけるための講座を希望する。講座の後で模擬説明と模擬質疑応答を行い、模擬体験を通して全体会で説明力と整理力、あり方について意見交換を行う。 ・意見交換会を1分でも長く持ちたい。 (例:研修会前夜は「意見交換会パート1」、研修会初日は「意見交換会パート2」として、意見交換会の拡充を期待する。会の進行・内容は参加者の自主的な運営に委ねても構わない。それが困難ならば時間と場所の設定、企画内容まで、連絡協議会にリーダーシップを発揮していただく。そうすれば未加入団体ゼロにもつながると思う。形式にとらわれない自由なスタイルの方が、コミュニケーションにも多様性のある盲ろう者には、より自由度が大きくなるだろう)。 ・盲ろう友の会での役員のしくみを知りたい。例えば会長、副会長、事務局長、会計、企画のそれぞれの役割をくわしく知りたい。 ・休憩時間が短いので、もう少し時間に余裕が欲しい。 追跡アンケート 配布数 32 回収数 26(回収率81.3%) 1.本研修会の内容全般について、ご満足いただけましたか。(4択)  ア とても満足 14  イ 満足 12  ウ やや不満足 0  エ 不満足 0 2.(1で「とても満足」「満足」を選んだ方)どのような点が よかったですか。(複数回答可)  ア 役立つ情報が得られた 17  イ 日頃の生活や活動に役立った 12  ウ スキルアップにつながった 10  エ 他の参加者との交流・情報交換が図られた 19  オ 抱えていた問題・不安の解消につながった 7  カ その他(よかった点を具体的に教えてください) ・事業所が取り組んでいる災害のことを他の団体に伝えることができた。また、喜んでもらえた。 ・経験のある先輩方の話を聞くことができた。 ・福島先生のお話がとても有意義だった。また、女性盲ろう者による、運転免許取得に至るまでのお話に勇気づけられた。 ・久しぶりの再会や初めてお会いする盲ろう者や通訳・介助員の皆さんが、元気に活躍していらっしゃることを知り、更に連帯して頑張っていこうと思った。皆さんから「笑顔」や「元気」・「励まし」をもらうことができた。また、初めてお会いする方と旧知の仲のようになれた。東日本大震災を経験した被災盲ろう者として、全国からいらした皆さんにお話をすることができた。研修会まで、地域の活動や交流で学び経験してきたことが活かせた。さらには、現在学習中のコミュニケーション方法で盲ろう者と直接コミュニケーションがとれて感動した。グループ討論では、司会進行の不備に怒りを覚えたが、その後の「講座担当者」の講義を受け、「リーダーとして講師陣のように自分も自身を持って活動をしなくてはならない。」と再認識させられた。 3.(1で「やや不満」「不満足」を選んだ方)どのような点ががよくなかったですか。(複数回答可)  ア 役立つ情報が得られなかった 0  イ 日頃の生活や活動の参考にならなかった 0  ウ スキルアップにつながらなかった 0  エ 他の参加者との交流・情報交換ができなかった 1  オ 抱えていた問題・不安の解消につながらなかった 0  カ その他(よくなかった点を具体的に教えてください) ・発言をする人が限られてしまい、他の人は発言が出来なかった。 4.地域に戻られてから、本件集会で学んだことが役立っていますか。(4択)  ア とても役立っている 8  イ 役立っている 15  ウ あまり役立っていない 2  エ 全く役立っていない 1 5.(4で「とても役立っている」「役立っている」を選んだ方)どのように役立てていますか。具体的にお書きください。 ・初めてニューリーダー育成研修会に参加した。全国の友の会の代表が集まり、色々な意見を交わしていた。同じ盲ろう者が頑張っている様子をみて、僕も頑張ろうと思った。一同に集まって同じ研修会を受けることは大事である。また、藤鹿氏の講演や福島氏の講演はとてもよかった。これからの活動の中で今回学んだことを仲間に伝えていきたいと思う。地域の交渉も担当しているので勉強になった。 ・福島智さんの交渉力のノウハウを今後に役立てたい。 ・盲ろう者団体のあり方や盲ろう者と支援者の関わり、リーダーとしての交渉力等について、やはり更なる団体力が必要であると感じた。 ・盲ろう者の自覚促進や通訳・介助員との関わりのお話、対人関係のアドバイス等、よい勉強になった。 ・研修会を受講し、その内容について地域(地元)の友の会の人に説明をした。理解している人とまだ理解不足の人とがいるが、話を聞けてよかったという意見があった。 ・通訳・介助員、支援者との関わり、行政との関わり等のお話を聞き、役員活動の際自覚を持つことが出来、盲ろう当事者や通訳・介助員への配慮ができた。 ・盲ろう者の抱えている諸問題に取り組むにあたっては、自主的に考えて努力することが大切であり、他人の言うことに従っていては前進しないということをこの研修会で学んだ。 ・通訳・介助員やコーディネーターとの関係が前よりも改善できると感じた。盲ろう者にも、言える勇気が持てた(今までは、言いたくても言えなかったが、言う権利を持つ自覚が持てた)。 ・地元の友の会定例会及びその会報で、報告する予定である。予定としては1月以降の友の会交流会や会報掲載による、いわば公的な報告。また、本研修会参加盲ろう者や通訳・介助員との個人的な出会いを通して、盲ろう者の友の会への新入会員があった。更には新年度に開催予定の養成講座・現任研修、また盲ろう者関連活動などの講義等でも、貴重な情報として紹介していく。 ・研修会前に比べて、地域の盲ろう者の事を考えて活動できるようになった。また地域の盲ろう者団体が抱える問題を客観的な視点で考えられるようになった。その中で、盲ろう者の個人が抱える問題や認識の理解につながる知識や考えを得た。その結果、交流会や勉強会への意欲が高まり、友の会や盲ろう者仲間への愛着が深まった。通訳・介助員の立場、派遣事業については、地域の盲ろう者の課題や盲ろう者福祉向上・改善にむけての交渉術を学びつつ、盲ろう者福祉や交渉の現状を知ることができた。地元の友の会や盲ろう者と重ねあわせてイメージすることができた。今回、全国の盲ろう者とのつながりの中で情報交換や刺激を受けながら、生き生きと活動していきたいというモチベーションを得た。 ・県・福祉課との交渉前には盲ろう役員全員に参加して貰い、自信を持って役員に呼びかける事が出来た。 ・福島氏の講義を聞いて、とても参考になった。皆で話し合いたいと思う。 ・役員会に臨む姿勢や盲ろう会員との交流時の対処方法を聞き、相手の立場を考慮することが出来るようになった。 ・会運営の参考になった。会長として自信がもてた。 ・災害について、友の会で話をしている。他県の情報を、友の会で共有し、緊急時に役立てたい。 ・友の会の機関誌に本研修の内容を感想を交えて報告した。「あまり自分の事ばかり主張しないように」との注意があったが、私はまず自分の置かれている状況や、願いを誰にでも分かる言葉で話せるようになるところから始めたいと思っている。相手の心を動かすことが出来れば、それは決してわがままではないからである。 ・他県も同じ様な悩み(問題)を抱えているということを知り、それにどう対応していけばよいかを考えるきっかけを作れた。報告として会報にも載せる予定である。 ・災害対策については、他の参加者の苦労を聞くことができ、社会的問題であると認識できた。今後、自分にできることを模索したいと思う。意見交換は、普段あまり聞けない話が聞けて良かった。また他団体、理事(役員)の姿を見ることができ大いに参考になった。これを踏まえて自分として何ができるのか、理事としてどう動くのかを考えていきたい。 6.(4で「あまり役立っていない」「全く役立っていない」を選んだ方)具体的な理由をお書きください。 ・難しい内容が多く、役立てられなかった。 ・本研修会で学んだことを地域に持ち帰っても、だれも話を聞いてくれない、興味がない、集まりが悪い等の問題があり困っている。 ・あまり活発に活動していない。 (奥付) 書名:平成25年度 全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会報告書 発行日:平成26年3月20日 編集・発行: 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162−0042 東京都新宿区早稲田町67番地早稲田クローバービル3階 TEL 03−5287−1140 FAX 03−5287−1141 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業