平成25年度 盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業報告書 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 目次 第1部 事業の概要 1-1 目的 1-2 平成25年度の事業内容 第2部 盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会 2-1 概要 2-2 研修会開催要領 2-3 研修会カリキュラム 2-4 科目別の内容 2-4-1 盲ろう者向けパソコン指導概論  2-4-2 パソコン・点字ディスプレイの接続・スクリーンリーダーの設定方法(講義・実習)  2-4-3 パソコンキーボード操作概論  2-4-4 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksの指導法  2-4-5 スクリーンリーダーPC-Talker上で動作するアプリケーションの指導法 ―メーラー「MyMail」、ニュース閲覧ソフト「MyNews」、総合読書システム「MyBook」―  2-4-6 画面インターフェースを活用した指導法1〜4  2-4-7 ブレイルセンスプラスの概説  2-4-8 ブレイルセンスプラスの演習1・2  2-4-9 点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー ―NVDAを中心に―(講義・実習)  2-4-10 盲ろう者へのパソコン指導事例 2-5 受講者からのアンケート結果 2-6 考察 第3部 コミュニケーション訓練個別訪問指導 3-1 概要 3-2 募集要領 3-3 個別訪問指導報告(パソコン編)  3-3-1 Aさん  3-3-2 Bさん  3-3-3 Cさん 3-4 個別訪問指導報告(ブレイルセンス編)  3-4-1 Dさん 3-5 受講盲ろう者へのアンケート結果  3-5-1 パソコンと点字ディスプレイ  3-5-2 ブレイルセンス 3-6 地域指導者へのアンケート結果 3-7 考察 第4部 まとめ 第1部 事業の概要 1-1 目的  当協会が平成3年の発足以来取り組んできた「盲ろう者向け通訳・介助員養成事業」「同派遣事業」は、平成25年4月より施行された「障害者総合支援法」の下、都道府県(政令指定都市・中核市含む)地域生活支援事業の任意事業から必須事業として位置づけられた。盲ろう者の社会参加においては、通訳・介助員の存在は必要不可欠であり、人的支援の制度的裏づけとして一歩前進したものと評価できる。  盲ろう者が抱える困難として、コミュニケーション・情報入手・移動の三つが挙げられるが、盲ろう者の生活の質を向上させるためには、人的支援に加え、ICTを活用することにより、コミュニケーション・情報入手の幅を広げることが可能となる。一方、盲ろう者のICT活用を促進する取り組みとしては、全国で数県においてパソコン等の訓練がなされているに過ぎず、盲ろう者へのICT活用の機会提供が不十分だと言わざるを得ない。  このようなことから、盲ろう者のコミュニケーション能力を向上させ、社会参加の促進を図ることは、個々の盲ろう者が有する能力および適性に応じた、自立した日常生活または社会生活を営む上で必要不可欠であり、現在国内で施行されている障害者総合支援法の趣旨にも、さらには国連の「障害者の権利条約」の理念にも合致するものである。また、災害・緊急時の連絡手段確保の観点でも本事業の意義は計り知れず、必要不可欠な取り組みといえる。  本事業は、盲ろう者へのパソコン等ICT機器の活用を促進するために、研修会の開催、盲ろう者への個別訪問指導を通じて、指導者養成を図ることで、コミュニケーション・情報入手の課題を解決しようとするものである。 1-2 平成25年度の事業内容  本事業は、次の三つを柱に実施した。 (1)盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会の開催  盲ろう者にパソコン等ICT機器を指導する場合に、その盲ろう者の障害の程度やニーズを把握することや、それを受けて指導者として配慮すべき点や心構えとなる事項についての「概論」を皮切りに、盲ろう者のパソコン利用を、画面を拡大して使用する方法、点字ディスプレイの表示を頼りに使用する方法の二つに大別し、これら二つを中心に、各種スクリーンリーダーやアプリケーションの講義・実習を行った。また、点字情報端末「ブレイルセンス」の操作方法ならびに指導法や、さらに、パソコン等ICT機器を使いこなせるようになった後もサポートが重要になることなども含たカリキュラム編成で実施した。  本研修会の特徴的なポイントとしては、昨年度に引き続き、マウスを使わずキーボードのみでパソコンを操作する方法を紹介した「パソコンキーボード操作概論」や、パソコンと点字ディスプレイの接続方法を詳しく取り上げた「パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法」、盲ろう者の間で普及している点字情報端末「ブレイルセンス」(最新機種を含む)の指導に十分な時間を確保して実施した他、フリーウェアとして開発が進められているスクリーンリーダー「NVDA」の科目を新たに導入するなどの試みを行った。  今年度の研修会は、平成25年10月12日(土)〜16日(水)の五日間、東京都豊島区東池袋1−6−4伊藤ビル4階「アットビジネスセンター池袋駅前別館」で開催し、全国各地から8人(内視覚障害者1人を含む)の受講があった。(第2部に詳述) (2)コミュニケーション訓練個別訪問指導の実施  下記に示す団体と連携して、コミュニケーション訓練個別訪問指導を希望する盲ろう者4人に対して、9月〜12月の約4ヶ月間、パソコン等ICT機器を貸与し、それぞれの地域で指導者を派遣して訓練を行った。これに併せて講師を派遣し、盲ろう者および地域指導者を対象に、貸与期間の初期・中期・後期に講習会を実施した。  今年度は、パソコンの画面拡大利用、パソコンと点字ディスプレイ利用、点字情報端末ブレイルセンス利用とさまざまであったが、それぞれの盲ろう者に対して、2人ないしは3人の地域指導者の下で訓練を提供することができた。その結果、4ヶ月程度の期間ではあったが、すべての盲ろう者がメールを送受信できるようになり、また、インターネット上のニュース等にアクセスできるようになった。中には、訓練終了とともにこれらの機器を購入し、日常生活の中で実際に役立てているケースも出ており、大変有意義な成果が得られている。  また、特筆すべきは、これまで盲ろう者のみにこれらの機器を貸与していたが、地域指導者にも同機種を貸与することで、実際の指導に当たって、指導者側でも検証できる環境を準備できたことは大変有効であった。(第3部に詳述) *連携団体:NPO法人和歌山盲ろう者友の会、神奈川盲ろう者ゆりの会、新潟盲ろう者友の会、       札幌盲ろう者福祉協会 (3)「盲ろう者向けパソコン指導マニュアル―Windows 8編―」の作成  パソコンのOSであるWindowsがアップグレードしていく中で、否が応でもこれに対応したマニュアルが求められる。Windowsのアップグレードに伴い、操作性が変わったり、対応するスクリーンリーダーや各種アプリケーションも変わってくる。そのことで、指導する場合にも、この変化は決して無視できない。点字情報端末ブレイルセンスもその例外ではない。  盲ろう者向けとしてこれまでにWindows XP、Vista、7にそれぞれ対応したマニュアルを作成してきた。しかしながら、急速に変化する環境化において、Windows 8上での盲ろう者に適した環境構築、指導のノウハウのマニュアル化、その普及等が必要とされていることを受け、今回はWindows 8及び最新機種のブレイルセンスに対応したマニュアルを作成することとした。  今年度は、前述の指導者養成研修会、コミュニケーション訓練個別訪問指導においても、Windows 8をベースに実施した。 第2部 盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会 2-1 概要  平成25年10月12日(土)〜16日(水)までの五日間、豊島区東池袋1−6−4「アットビジネスセンター池袋駅前別館」を会場に、「平成25年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」を開催した。  全国各地から、盲ろう者団体関係者をはじめ、実際に盲ろう者へのパソコン指導を行っている方、盲ろう者へのパソコン指導を志す通訳・介助員の方等々、受講者8人(内視覚障害者一人、を含む)の参加があった。  五日間、講義と実習を通して、盲ろう者がパソコン等情報機器を活用することの有用性をはじめ、盲ろう者へのパソコン指導の心構えや注意点、必要な機器および各種ソフトウェアの紹介等、また、点字ディスプレイを使用してパソコンを利用する盲ろう者(点字ユーザー)、残存視力を活用してパソコンを利用する盲ろう者(画面ユーザー)の二つのタイプを想定してのカリキュラムを組んで実施した。  パソコンのOSは「Windows 8」とし、点字ユーザー向けのスクリーンリーダーでは「PC-Talker8」(以下、PC-Talker)に加え、点字表示に対応している「NVDA」を取り上げた。また、点字情報端末ブレイルセンスについては、特に健常の指導者にとってはパソコンと本質的には同じものであるが、インターフェースは点字が基本ということもあり、操作方法ならびに指導法において、ややハードルが高くなってくること等を鑑み、十分な時間を取って講習と実習を行った。  今年度の特徴は、スクリーンリーダーのフリーウェア「NVDA」を取り上げたことである。このNVDA上で動作するメールソフト「やむメール」と、ニュース閲覧ソフト「GSニュース」も取り上げ、Windows 8で使える点字対応のソフトウェアを、短い時間であったが紹介した。  いずれも、指導者としての基礎知識の強化となった。 2-2 研修会開催要領 平成25年度「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」開催要領 1.目的 本研修会は、盲ろう者向けパソコン指導者の養成を図り、もって盲ろう者がパソコン等情報機器の操作を学ぶ機会を拡大し、情報バリアフリーおよび社会参加の推進に資することを目的とする。 2.主催 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 3.日程 平成25年10月12日(土)〜16日(水) 計5日間 4.場所 アットビジネスセンター池袋駅前別館 405号室 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1−6−4 伊藤ビル4階 TEL 03-5465-5506  http://abc-kaigishitsu.com/ikebukuro/ 5.研修対象者  次の条件を満たす方 ・盲ろう者福祉に熱意があり、盲ろう者に対してのパソコン指導を志す方、もしくは学校・団体・個人等で指導に従事している方。 ・日常的にパソコンを活用し、メーラーのアカウント設定ができる方。 ※点字ディスプレイに表示されている点字を読むことが可能な方が望ましい。 6.受講定員 10人程度(障害は不問、盲ろう者枠2人予定) 7.カリキュラム ※(別添2)「平成25年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会カリキュラム」参照 8.研修目標 ・盲ろう者を正しく理解する。 ・盲ろう者に合ったパソコン環境を選択・構築できる。 ・盲ろう者のニーズを汲み取り、その盲ろう者のコミュニケーション手段・必要なユーザーインターフェース等を考慮した上で、適切な指導ができる。 9.研修料 3千円(交通費・宿泊費・食費は自己負担とする) 10.受講証交付 一定時間の研修を受けた方に対しては受講証を交付する。 11.申込締切 平成25年9月6日(金)必着 12.申込方法 (別添3)「平成25年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会申込方法・諸注意」参照 13.申込先 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 03-5287-1140  FAX 03-5287-1141  E-mail info@jdba.or.jp 2-3 研修会カリキュラム 平成25年度「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」カリキュラム 10月12日(土) 9:00〜 9:10 受付 9:10〜 9:20 開講式 9:20〜10:50 盲ろう者向けパソコン指導概論(森下摩利) 11:00〜12:00 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法(講義)(九曜弘次郎) 12:00〜13:10 昼食 13:10〜15:10 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法(実習)(九曜弘次郎、大河内直之、森下摩利、渡井秀匡) 15:30〜17:00 パソコンキーボード操作概論(九曜弘次郎) 10月13日(日) 9:00〜10:30 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダーPC-Talker + BrailleWorksの指導法(大河内直之)10:40〜12:10  点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksの指導法(実習)(大河内直之、九曜弘次郎、村岡寿幸、森下摩利) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:50 スクリーンリーダーPC-Talker上で動作するアプリケーションの指導法 ―メーラー「MyMail」、ニュース閲覧ソフト「MyNews」、総合読書システム「MyBook」― (大河内直之) 15:10〜16:40 スクリーンリーダーPC-Talker上で動作するアプリケーションの指導法(実習)―メーラー「MyMail」、ニュース閲覧ソフト「MyNews」、総合読書システム「MyBook」―(大河内直之、九曜弘次郎、村岡寿幸、森下摩利) 10月14日(月) 9:00〜10:30 画面インターフェースを活用した指導法1(高橋信行) 10:40〜12:10 画面インターフェースを活用した指導法2(実習)(高橋信行、大河内直之、九曜弘次郎、森下摩利) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:50 画面インターフェースを活用した指導法3(高橋信行) 15:10〜16:40 画面インターフェースを活用した指導法4(実習)(高橋信行、大河内直之、九曜弘次郎、森下摩利) 10月15日(火) 9:00〜10:30 ブレイルセンスの概説(村岡寿幸) 10:40〜12:10 ブレイルセンスの演習1(村岡寿幸、大河内直之、九曜弘次郎、森下摩利、渡井秀匡) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜16:40 ブレイルセンスの演習2(村岡寿幸、大河内直之、九曜弘次郎、森下摩利、渡井秀匡) 10月16日(水) 9:00〜10:30 点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー―NVDAを中心に―(大河内直之) 10:40〜12:10 点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー(実習)―NVDAを中心に―(大河内直之、森下摩利、渡井秀匡) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:20 盲ろう者へのパソコン指導事例(渡井秀匡) 14:30〜15:00 研修まとめ(森下摩利) 15:00〜15:10 閉講式 2-4 科目別の内容  以下、カリキュラムに従って、講義内容、実習内容を示す。 2-4-1 盲ろう者向けパソコン指導概論 森下 摩利 【実施日・時間】 10月12日(土) 9:20〜10:50 【講義の目的】 盲ろう者の障害の程度、盲ろう者特有の困難、盲ろう者のパソコンインターフェースや指導上の注意点、心構えについて講義する。 【到達目標】 盲ろう者のパソコン利用において客観的な視点を持ち、パソコン指導は人の支援であることを理解する。 【講義】 以下の内容を講義した。 (1)盲ろう者とは  視覚と聴覚の両方に障害を併せもつ人のことで、日本には、現在約14,000人の盲ろう者がいるとされている。(厚生労働省 平成24年度盲ろう者に関する実態調査より)  盲ろうという障害の困難は、単に「盲」+「ろう」ではなく、「盲」×「ろう」で困難は大きい。  盲ろう者は受障時期によって、盲ベースとろうベースに大別でき、こうした受障の背景はパソコン利用において重要である。 (2)盲ろう者のコミュニケーション手段  盲ろう者のコミュニケーション手段は、手話をベースとした視覚的な言語と、点字をはじめとした日本語を基本としている言語に大別される。前者は映像的な表現であり、後者とは文化の相違が見られる。 (3)盲ろう者の困難とパソコンの関わり  盲ろう者の困難は、@移動の困難、A他者とのコミュニケーションの困難、B情報入手の困難があり、Bの情報入手困難を補うために期待されているのがパソコンや点字情報端末である。 (4)盲ろう者のパソコン利用について  盲ろう者のパソコンユーザーは次のように大別される。  @音声ユーザー  パソコンの情報を読み上げる合成音声を聞いて使う。視覚障害者とほぼ同じ環境を基本とする。他に携帯電話、テレビ、ラジオ等が活用できる場合もある。  A画面ユーザー  パソコンの画面を拡大したり配色を変更し使う。拡大読書器、携帯電話、FAX、テレビ等が活用できる場合もある。  B点字ユーザー  パソコンの情報を点字で触読し使う。全盲ろう者に多く、携帯電話、FAX、テレビ、ラジオ等は活用できない。  C音声、画面、点字をそれぞれ併用するユーザーも増えている。 (5)ろうベースの全盲ろう者への指導  ろうベースの全盲ろう者へのパソコン指導はもっとも難しいとされている。まずは点字の触読ができることが必須である。また、基本操作ができたとしてもメール等の内容を日本語で理解しなくてはならない。点字で墨字を書く点字入力の難しさや漢字の詳細読みの困難などもある。  指導は、アルファベット点字を避ける等の環境づくりや、あまり点字を読まなくても操作できる手順の工夫が必要である。また、できるだけ映像イメージに結び付けて指導すると良い。 (6)盲ろう者のパソコン・点字情報端末の使用環境  盲ろう者向けに開発されたハードウェア・ソフトウェアはほとんどなく、視覚障害者向けに開発されたそれらの一部の機能を盲ろう者が利用するに過ぎない。そのため、どのユーザーインターフェースにおいても工夫した環境整備が必要である。 (7)盲ろう者のパソコン等指導の注意点  盲ろう者が操作しているときは説明ができない、反対に盲ろう者に説明しているときは盲ろう者は操作ができないため、覚えられる範囲の1・2手順を説明し、その手順を実行して、さらにまた1・2手順を説明するという方法が良い。  「はい」は○、「いいえ」は×、「ストップ」の時は肩をたたく等のサインを決めておくと良い。 (8)心構え  盲ろう者がパソコンを使うということは、健常者のパソコン利用とは大きく異なる。盲ろう者にとってパソコンは、新聞やテレビ等のメディアや、電話やFAX等の通信手段の代替となるものである。  パソコンは何でも可能にするというイメージが先行しているが、盲ろう者が利用する場合、画像が見えにくく文字列だけで理解しなければならない等、盲ろう者の期待に叶わないこともある。盲ろう者の期待値と大きく外れたまま指導に入ることは、パソコンや周辺機器は高価なだけに、避けなければならない。  パソコン指導とは盲ろう者の生活向上を目的としている。指導者は、パソコンだけではなく、盲ろう者への理解を深めなければならない。そのことを念頭に置いて指導にあたってほしい。 【成果・課題】  受講者の中には、通訳・介助員として関わっている者が多かったが、普段あまり盲ろう者と接する機会がない者もいて、基礎的な内容に留めた。  盲ろう者が利用可能なアプリケーションは、スクリーンリーダーとの組み合わせによっては使えない・使いにくいものがあり、今後はそういった点を詳細に講義する必要があるだろう。それがこの後のカリキュラムに大きく影響するものと思われる。 【所感】  この概論は研修会の道案内のような役割を果たす。盲ろう者のパソコン利用において、受講者が俯瞰できるような内容でなければならないと改めて感じた。 2-4-2 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法(講義・実習) 九曜 弘次郎 【実施日・時間】  10月12日(土)  講義 11:00〜12:00  実習 13:10〜15:10 【講義の目的】  ここでは点字インターフェースのシステム構築において最も基本となるパソコンと点字ディスプレイの接続について講義し、この後の実習に繋げるものとする。 【到達目標】  点字ディスプレイの種類、必要なソフトウェア、接続方法について一通りの知識を得て、Windows 8においてどのような問題があるかも含めて理解する。 【講義】 1.点字ディスプレイとは?  点字ディスプレイとは電気的にピンを上げ下げすることによって点字を表示する機械である。ピンを使って点字を表示するので「ピンディスプレイ」とも呼ばれている。画面に表示された文字を見ることができず、音声を聞くことも困難な盲ろう者がパソコンを使う上で必須の機器。 2.点字ディスプレイを使う上で必要なソフトウェア ・ドライバー  点字ディスプレイを動かすためのソフトウェア。パソコンと点字ディスプレイをUSB接続するときに使用する。 ・スクリーンリーダー  画面の内容を読み取って音声や点字に変換するためのソフトウェア。 ・点字ディスプレイ出力機能強化プログラム  点字ディスプレイの機能を強化し盲ろう者が使いやすくするために使用するソフトウェア。 3.点字ディスプレイの接続とスクリーンリーダーの設定方法 (1)接続方法 @USB接続(パソコン → USBケーブル → 点字ディスプレイ)  USBドライバーのインストールが必要。  ブレイルテンダー(BT46)はUSBによる電源供給が可能。(電源コードは不要) Aシリアル接続(パソコン → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ)  パソコン側にシリアル(RS-232C)ポートがある場合、リバース(クロス)という種類のシリアルケーブルで接続する。※ストレートという種類では接続できない。 Bシリアル/USB接続  (パソコン → 変換アダプター → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ)  パソコン側にシリアル(RS-232C)ポートがなくUSB接続が不安定な場合など、シリアル(リバース)ケーブルとシリアル/USB変換アダプターを使って接続する。 CBluetooth(ブルートゥース)接続  Bluetooth内蔵の点字ディスプレイで利用可能。パソコン側にBluetoothアダプター(外付け、または内蔵)が必要。 (2)USBドライバーのインストール @USBドライバーのインストールファイルを入手する  以下のいずれかの方法で入手しておく。  ・各点字ディスプレイ付属のCDに収録されている。  ・点字ディスプレイのメーカーのホームページよりダウンロードする。   ※インターネットに接続できる環境にあることが条件。  ・あらかじめホームページよりダウンロードしておき、USBメモリなどに保存しておく。 Aパソコン側のUSBポートの決定  決められたUSBポートでしか使用できないので、あらかじめ接続するUSBポートを決めておく。外付けのキーボードやマウスを使う場合があるので、なるべく邪魔にならないポートを選択する。 B互換モードの設定  ブレイルテンダー(BT46)Ver1.0、及びブレイルメモ32(BM32)のUSBドライバーは、現時点でWindows 8に正式対応していない。従って、下記の設定を行う必要がある。  ・@で入手したインストールファイルを右クリック。  ・コンテキストメニューが表れるので<プロパティ>をクリック。  ・<互換性タブ>をクリック。  ・<互換モードでこのプログラムを実行する>にチェックを入れる。  ・OS選択で<Windows 7>を選択。  ・<OK>ボタンをクリック。 CUSBドライバーのインストール  @で入手したインストールファイルをダブルクリックするか[ Enter ]で実行し、ウィザードに合わせてインストールする。USBドライバーのインストールファイル名は以下のとおり。  ・ブレイルテンダー(BT46)Ver1.0 → ksusbserdrv145.exe  ・ブレイルテンダー(BT46)Ver2.0 → CP210x_VCP_Win7.exe  ・ブレイルメモ32(BM32) → bm32drv312.exe D点字ディスプレイとパソコンを接続する  ※ここで接続したUSBポートでしか使用できない。 Eインストールできたかどうかを確認する  下記の手順で、パソコンの<デバイスマネージャー>を開き、<ポート>にUSBドライバーの名前が表示されるかどうか確認し、ポート番号(COMの番号)を覚えておく。  ・デスクトップ画面を表示する。  ・画面の右上隅にマウスポインターを合わせて、  ・表示されたチャームから[設定]を選択。  ・<設定>チャームが表示されるので、<PC情報>を選択。  ・<システム>画面が表示されるので、画面左側の<デバイスマネージャー>を選択。  ・マウスを使用せずキーボードのみで操作を行う場合は、[ Windows ]を押しながら[ X ]を押して<デバイスチャーム>を表示。[下矢印キー]で<デバイスマネージャ>を選択、[ Enter ]を押す。 (3)スクリーンリーダーの設定  スクリーンリーダーの点字ディスプレイの設定をし、きちんと点字が表示されるかどうか確認する。 4.うまく接続できない時は @スクリーンリーダーの設定を確認する。 AUSBドライバーが正しくインストールされているかどうかデバイスマネージャーで確認する。 BUSBドライバーを再インストールする。(アンインストール後、再度インストール) C点字ディスプレイの通信速度を確認する。 D他の接続方法を試みる。 5.アンインストール  インストールファイルをダブルクリックするかエンターで実行し、アンインストールを選択、ウィザードに合わせてアンインストールする。  ※<コントロールパネル>の<プログラムと機能>からはアンインストールしないこと。 【実習】 課題1:KGS株式会社のホームページから、今使用している点字ディスプレイのUSBドライバーのインストールファイルをダウンロードする。     ※ブレイルテンダーはVer1とVer2の2種類があるので、ブレイルテンダー本体の裏に記載されているバージョンを確認しておくこと。 課題2:USBドライバーをインストールする。 課題3:各スクリーンリーダーを設定し、きちんと点字表示できるかどうかを確認する。   ・PC-Talkerを起動し、点字ディスプレイの設定を行う。   ・PC-Talkerを終了し、NVDAを起動し、点字ディスプレイの設定を行う。 課題4:受講生同士で点字ディスプレイを交換(ブレイルテンダーとブレイルメモ32を交換)し、課題1〜4を行う。 【成果・課題】 一部パソコンのトラブルで接続がうまくいかないグループもあったが、最終的に接続や設定を完了することができた。パソコンと点字ディスプレイの接続において、おおむね知識を得ることができた。 【所感】 USBドライバーのインストールは、最近なじみがないようで苦労している様子であった。 ドライバーのダウンロードを行う際、ドライバーではなく間違ってファームウェアをダウンロードしている受講生がいたので、その辺りの説明が必要だと思った。 スクリーンリーダーの設定項目が多いので、質問が多く寄せられた。点字出力を行う上で、最低限必要な項目のみ説明した。 以上のことから、この講義の重要性を改めて感じた。 2-4-3 パソコンキーボード操作概論 九曜 弘次郎 【実施日・時間】  10月12日(土) 15:30〜17:00 【講義の目的】  ここではパソコンやマウスを使用せずキーボードのみで操作する実習を通じて、盲ろう者が行っているパソコンの操作方法を理解する。 【到達目標】  キーボードのみで基本的なWindowsの操作ができることを理解する。 【実習】 1.アプリケーションの起動  ・PC-Talkerに付属のマイスタートメニューを使って、スタートメニューの中を移動する。  ・メモ帳を起動する。 2. メモ帳の操作  ・文章を入力。  ・入力した文章から特定の文字列をコピーして別の箇所に貼り付け。  ・[ Alt ]でメニューを表示。  ・文章に名前を付けてファイルに保存。 3.保存した文書を開く  ・Windows エクスプローラでファイルを選択して[ Enter ]で文書を開く。  ・メモ帳を起動してファイルを開く。 4.Windowsの終了  ・マイスタートメニューからWindowsを終了してコンピュータの電源を切る。 【成果・課題】  概ねキーボード操作について理解していただけた。 【所感】  普段マウスでパソコンを操作している晴眼者にとってキーボード操作は慣れない経験であったかと思うが、マウスを使わなくてもパソコンが操作できることを理解していただけたかと思う。  以上のことからこの講義の重要性を改めて感じた。 2-4-4 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダーPC-Talker + BrailleWorksの指導法 大河内 直之 【実施日・時間】  10月13日(日) 9:00〜12:10 【講義の目的】  スクリーンリーダーPC-Talkerの特徴と、盲ろう者に有用な点字表示・点字入力等の基本的な環境を理解する。 【到達目標】  点字インターフェースを踏まえた、盲ろう者のパソコン環境の構築・指導ができるよう、PC-Talkerの基本操作・設定方法を習得する。 【講義・実習】 1.PC-Talkerの設定  主に盲ろう者が、点字環境でパソコンを利用することを前提に、PC-Talkerの説明を行なった。 (1) BrailleWorks(ブレイルワークス)の説明  PC-Talkerのみを購入しただけでは、点字機能を利用することができない。付属のBrailleWorksというソフトを購入しインストールする必要がある。そうした点字環境の基本的な構築方法について紹介した。 (2)マイスタートメニューの紹介  Windows 8よりスタートメニューに変わりタイルメニューが導入されたが、盲ろう者や視覚障害者には使い勝手が悪いため、PC-Talkerに「マイスタートメニュー」というプログラムが用意されている。これは、PC-Talkerをインストールすると自動的にインストールされ、これまでのスタートメニューとほぼ同様の操作が可能である。またキーボード操作でメニューの順番なども簡単に変えることができる。講義では、タイルメニューとマイスタートメニューを比較しながらその違いと盲ろう者に使いやすいスタートメニューのカスタマイズについて学習した。 (3)自動起動設定  盲ろう者がパソコンを利用する際、スクリーンリーダーや点字入力機能は、パソコン起動時に自動起動することが必須である。そのことを、確認した上で、PC-Talker・マイスタートメニュー等の自動起動設定を学習した。 (4)起動と終了のショートカット  PC-Talkerは、起動[ Alt ]+[Shift]+[ F3 ]、終了[ Alt ]+[ Ctrl ]+[ F3 ]のようにショートカットがあらかじめキーに割り当てられている。そのことを確認した上で、もし何かのトラブルが起きた際、盲ろう者がこのショートカットを利用して、スクリーンリーダーの再起動を行ない、問題が解決できる場合があることを紹介した。ただし、パソコン購入時にはIntelのグラフィックドライバーなどが、上記ショートカットを専有している場合があるので、その機能をOFFにする必要があることも併せて説明した。 (5)PC-Talkerの設定  PC-Talkerを一度初期設定に戻した上で、点字設定を中心に、以下の基本的な項目を確認しながら設定を行った。 @日本語変換注目文節のカーソル表示無し A点字ステータス表示無し B点字ディスプレイの機種選択 CCOMポートの選択 D通信速度は9600bps 2.PC-Talkerの6点入力機能KTOSについて (1)点字入力の意義  点字入力は、点字環境でパソコンを利用する盲ろう者にとって、パソコンのキーボードと点字ディスプレイの手の動きを最小限に留め、比較的効率的に文書編集作業が可能な機能である。まずはそのことを説明し、単にローマ字入力が難しいために点字入力が利用されているわけではないことを説明した。 (2)KTOSの設定  PC-Talker付属のプログラムKTOSを利用して点字入力を行うこと、PC-Talkerインストール時はKTOSは利用できない状態なので一度KTOSを起動して利用できるようにしないといけないこと等を説明した。  実際にKTOSを起動し、次回から自動起動する設定や点字入力とフルキー入力の切り替え方法等を学習した。その後の実習は、基本的にこの点字入力を使って行うこととした。 【成果・課題】  PC-Talker・ブレイルワークス・KTOSの基本的な仕組みについて理解し、一通りの設定・操作ができるようになった。ただ、受講生が普段使いなれない点字環境であるため、盲ろう者に指導するためには、さらに同環境に慣れていただく努力が必要である。 【所感】  Windows 8環境について、講師側もすべてを掌握していたわけではなかったので、いろいろと混乱があったかと思う。特に、スタートメニューの違いについての説明は、もう少し分かりやすく整理して伝えられればよかったと反省している。 2-4-5 スクリーンリーダーPC-Talker上で動作するアプリケーションの指導法 ―メーラー「MyMail」、ニュース閲覧ソフト「MyNews」、総合読書システム「MyBook」― 大河内 直之 【実施日・時間】  10月13日(日) 13:20〜16:40 【講義の目的】  PC-Talkerで利用するアプリケーション、MyMailV・MyNews・MyBookの使い方を学習する。 【到達目標】  点字インターフェースを踏まえた、盲ろう者のパソコン環境の構築・指導ができるよう、PC-Talkerの関連アプリケーションの基本操作・設定方法を習得する。 【講義・実習】 1.MyMailV  メールが盲ろう者にとって非常に重要な連絡・コミュニケーションツールであることを踏まえて、以下の課題に取り組みながらMyMailVのメール機能を学習した。 (1)実習の課題 @MyMailVの起動と終了。 Aメールを受信して本文を読む。 B拡張機能オプションで、プレビュー画面へのタブ移動を可能にする。 Cメール一覧オプションで、メールの一覧に番号を付ける。 D受信したメールに返信する。 E受信したメールのアドレスをアドレス帳に登録する。 Fアドレス帳を使って新規メールの作成と送信をする。 Gアドレスを手動入力して新規メールの作成と送信をする。 (2)注意事項  初心者の盲ろう者にとって、メールアドレスなどアルファベットを読み書きすることは非常に難しい作業であるため、まずはメールを受信し、そのメールに返信する、また受信したメールのアドレスをアドレス帳に自動登録するという手順での覚え方が重要であることを説明した。  また、MyMailVを点字ディスプレイで利用する場合、メール本文をプレビュー画面で開かないと、本文の点字が音声に合わせて自動的に流れていってしまうため、必ずBの拡張機能オプションで、プレビュー画面へのタブ移動を可能にする設定を行う必要があることを強調した。 2.MyNews (1)実習の課題 @ニュース一覧オプションで、項目に番号を付ける。 A「アサヒ」の「社会」の1番目の記事を読む。 B「毎日」の「話題」の3番目の記事を読む。 C「読売」の「経済」の5番目の記事を読む。 D自分の地元の新聞社を選び任意の記事を読む。 Eニュース検索で「東京」と入力して検索する。 (2)注意点  同じ記事を、一般のブラウザで閲覧すると、広告や余計なリンクが邪魔になって、点字ディスプレイのユーザーには非常に使いづらいことを説明した上で、メールと同じ操作性でネット上のニュース記事が読めるということが、いかに重要であるかを確認した。 3.MyBookU  基本的にMyMailやMyNewsと操作性が同じであることを確認した上で、点字図書のデータベース「サピエ図書館」の本を検索し、読むという実習を行った。 (1)実習の課題 @図書オプションで、項目に番号を付ける。 Aサピエ図書館で人気のある順、5位までのタイトルの内容を表示させる。 Bサピエ図書館のタイトル・著者名の検索で、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を選んで、表示させる。 C本棚を作る。 D点字図書データを本棚に保存する。 E本棚に保存した点字図書データを開く。 (2)注意点  サピエ図書館の点字データは、ネットがつながっていれば本棚に保存しなくても読むことが可能であるが、安定して読むために本棚に保存してから読むことを紹介した。また著者名・タイトル名等さまざまな検索方法があるため、どの検索項目なのかをユーザーにきちんと確認してもらうことが重要であることを説明した。 【成果・課題】  それぞれのソフトについて、一通りの操作を体験することができた。実習の課題もほぼ全員が取り組むことができた。ただ、一部点字ディスプレイの機械的なトラブルなどが発生し、それを回避するのに時間を要してしまい、受講生には迷惑をかけてしまった。 【所感】  機械トラブルに加えて、コンピュータや点字のスキルにより、受講生の実習の作業スピードの差がどうしても出てしまった。ゆっくりの人に合わせると早く終わった人が時間を持て余してしまうし、その反対だと実習についてこられない人が出てくる。  次年度に向けて、実習の方法をさらに工夫する必要があると感じた。 2-4-6 画面インターフェースを活用した指導法1〜4 高橋 信行 【実施日・時間】  10月14日(月) 9:00〜16:40 【講義の目的】  グラフィックユーザーインターフェース(GUI)を活用できる盲ろう者に対してパソコンの設定・操作方法についての指導ができる人材を育成する。 【到達目標】 (1)GUIを活用できる盲ろう者の範囲を理解する。 (2)見えにくさについて理解する。 (3)各々の見えにくさに対してパソコンを操作する上での支援策を理解する。 (4)上記について具体的な支援策を講じることができるようになる。 (5)ロービジョンの盲ろう者に対して適切な指導を行うことができるようになる。 【講義】 1.ロービジョンの盲ろう者に対する理解 (1)全盲とロービジョンの違い  全盲者は、視覚を使わないで、学ぶ、生活するのに対し、ロービジョン者は視覚をできるだけ活用して、学ぶ、生活するという方向性を持っています。つまり、同じ「目が不自由」な状態であっても、全盲とロービジョンではパソコンの使い方、指導の仕方が全く異なることに注意してください。 横軸に視覚機能を、縦軸に聴覚機能をスケールにとって、障害の程度によるマップを示します。盲ろう者はこのマップの右下に位置する人たちです。さらに盲ろう者は、その見え方、聞こえ方により、弱視難聴、弱視ろう、全盲難聴、全盲全ろうの四つに分類されます。この講座で指導対象となる範囲は、弱視難聴、弱視ろうの盲ろう者です。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− (2)ロービジョンの範囲  身体障害者手帳の視覚障害等級は1〜6級まであります。2級の最も視力の低い人では、30センチの距離から43.5ミリのランドルト環の切れ目方向が判別できます。2級の最も低い視力では24インチのディスプレイに4文字を表示して読むことができるだろうと考えられます。視覚障害者を対象とした調査結果などを見ても、2級が全盲とロービジョンの境界といえるでしょう。もちろん視覚障害等級表を用いて全盲とロービジョンを明確に区分できるわけではありません。あくまでも目安です。  視覚障害者約30万人のうち、2〜6級までには18.9万人が含まれています。盲ろう者においても、ロービジョンの盲ろう者は相当数いらっしゃるだろうと推測されます。ですから、皆さんが今後指導する盲ろう者の中にロービジョンの盲ろう者が多く含まれるでしょう。 パソコン操作方法をスケールに全盲とロービジョンの境界を示します。受信に関しては、通常の視覚的ディスプレイが使用できるか、スクリーンリーダーや点字ディスプレイが必要かというところに境界があります。発信に関しては、マウス操作ができるかどうかというところに境界があります。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− 2.ロービジョンの特徴について ロービジョンの見えにくさを理解するためには、見える仕組みを知る必要があります。図は眼球の構造です。風景が見えるまでの経路を示しています。この長い経路のどこかに障害が発生するとさまざまな見えにくさが発生します。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− (1)白濁 くもりガラスをとおしてみたようにくもって見える、明るいところがまぶしい、コントラストが低下するという特徴があります。白濁を引き起こす疾患として白内障があげられます。レンズの役割を果たす水晶体が濁る病気です。レンズが濁ると見え方も濁るわけです。 −−−−−− 白濁と羞明 水晶体:透明でレンズの役割をする 正常:濁りのない水晶体 老人性白内障は周囲から濁りが出てくる 症候性の白内障は中心部より濁りが出てくることが多い −−−−−− (2)屈折異常 ピントが合わないとぼやけて見えます。水晶体の調節障害、水晶体の欠損、眼球の前後径の異常などによって屈折異常がおこります。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− (3)中心暗点 中心が見えない状態です。視線を当てたところが見えないので、あるものを見たい時には、それに視線を合わせるのではなく、わざわざ視線をずらしてそれを見る、ということになります。視力が出ません。中心暗点がおこる病気として、黄斑部変性症があげられます。 −−−−−− 黄斑部の変性による中心暗点 →図は省略。 −−−−−− (4)視野狭窄 視野とは見える範囲のことです。視野狭窄がおこる目の病気は様々あります。ここでは、網膜色素変性症を示しています。網膜が周辺部から変性しています。周辺部から徐々に見えなくなっていき、中心部を残すのみとなっています。   −−−−−− 網膜の求心性による視野狭窄 網膜の周辺部から中心部に向かって変性が起こる。 →図は省略。 −−−−−−  視野障害には図に示すように様々なタイプがあります。 −−−−−− 視野障害の種類 ・視野狭窄  求心性視野狭窄では、周囲から中心に向かって、視野が狭くなる。 ・暗点  視野の中に見えない部分があるものを「暗点」という。緑内障は、弓状暗点、網膜色素変性症は、輪状暗点。 ・半盲  脳腫瘍や脳血管障害で視路が障害されると、両目において、片側の視野が欠損する。 ・沈下  網膜の反応性が低下した状態を「沈下」という。暗点に至る前状態と考えられる。 −−−−−− 3.GUIの最適化  最適化とは、ロービジョンの盲ろう者の見え方に合わせてGUIの調節や設定をすることです。 (1)画面配色、コントラストの最適化  コントラストは輝度の高い部分と低い部分との差を示しています。マイケルソンコントラストがしばしば使われます。マイケルソンコントラストの計算法を示します。 −−−−−− コントラストとは ・明るい部分と暗い部分との差 マイケルソンコントラスト=(明るい−暗い)÷(明るい+暗い) コントラスト感度=1÷マイケルソンコントラスト →図は省略。 −−−−−− 「コントラスト感度」はコントラストの逆数で表します。どれだけ低いコントラストで対象物を識別できるかを意味しています。   −−−−−− なぜコントラスト感度が重要か? ・通常の視力測定では、白の背景に提示された 黒のランドルト環の切れ目が、視認できるか、を測っている。 ・だが、我々が日常、目にする場面は、そのような白の背景に 黒のオブジェクトのような高コントラスト状態であることは、 むしろ少ない。 →視力計測条件と、日常生活上、必要な視機能は解離している。 →コントラスト感度の評価が必要 →図は省略。 −−−−−−  ひらがなを行列に配置しています。左から右に向かって文字が薄くなり、上から下に向かって文字サイズが縮小します。どの範囲の文字が読み取れますか?ロービジョン者と晴眼者を被験者として見える範囲を示してもらうと図のように三つのエリアが区別されます。小さい文字ほど、コントラストがはっきりしていないと判別できません。ロービジョンの盲ろう者に対して文字を提示するときはコントラストに配慮する必要があることが分かります。 −−−−−− コントラストの配置の必要性 @晴眼者もLV者もみえるエリア A晴眼者は見えるが、LV者は見えないエリア B晴眼者もLV者も見えないエリア すなわち、Aを@に持ってくればいいのだ! →図は省略。 −−−−−−  黒文字白背景と白文字黒背景ではどちらが見やすいでしょうか?  この時の見やすさに差がある場合,「コントラストポラリティ効果がある」といいます。 −−−−−− コントラストポラリティ効果 被験者は3文字のひらがなからなる単語を音読 フォトサイズを小さくしながら読字速度を測定 どちらが、安定して、早く読める? @黒文字白背景(B/W)  A白文字黒拝啓(W/B) →図は省略。 −−−−−− 「ハイコントラスト黒」は「スタンダード」に比べ、低いコントラスト部がないことが分かります。「ハイコントラスト黒」の方が、ロービジョンの盲ろう者にとって見やすいことが期待されます。 −−−−−− 「ハイコントラスト黒」は低コントラスト感度者に向いている →図は省略。 −−−−−− (2)文字、表示項目サイズの最適化  文字フォントの選択についてです。  晴眼者では明朝体や教科書体といった細いフォントが、比較的視力の保たれる視野狭窄型ロービジョン者ではMSゴシック体が、視力低下型ロービジョン者ではHG創英角ゴシックなどの太いフォントが好まれる傾向があります。   −−−−−− 文字フォントの選択 ・同じ文字サイズでも、教科書体や明朝体は文字線幅が細く、 ロービジョン者に好まれない場合が多い。 ・文字線幅が太すぎても、複雑な文字では視認しづらい。 ・適したフォントはロービジョン者により異なる。 →図は省略。 −−−−−−  最適な文字サイズについてです。  MNREAD-Jという方法によって、求めます。1文30文字の文章を提示し、できるだけ早く音読させます。文字サイズを縮小しながら読み速度の変化を記録していきます。   −−−−−− MNREAD-Jによって最適文字サイズを求める これから、文章を提示しますから、できるだけ速く、声を出して、 読み上げてください。読めない文字があっても、とばしながら読んでください。 →図は省略。 −−−−−−  読書速度のグラフを示します。読書速度はある文字サイズ以上であれば一定しています。ある文字サイズを下回ると急激に読書速度は低下します。この時のある文字サイズを臨界文字サイズ(CPS)といい、その人にとって最も適した文字サイズと考えられます。 −−−−−− 最適な文字サイズ(臨界文字サイズ)とは 計測値を元に最適な文字サイズを求める。 ・CPS(臨界文字サイズ)Critical Print Size 最大の読書速度を保って読むことのできる最小の文字サイズ ・MRS(最大読書速度)Maximum Reading Speed 最大の読書速度を保っている時の平均読字数  単位 CPM ・RA(読書視力)Reading Acuity 文字として知覚できなくなる視力  単位 logMAR →図は省略。 −−−−−−  MNREAD-Jで計測したグラフを示します。上は晴眼者のものです。  中は視力低下型ロービジョンで、文字サイズが大きければ大きいほど、読書速度が高くなります。この場合、必要な読書速度が得られる文字サイズを選択することになります。下は視野狭窄型ロービジョンで、文字サイズが大きすぎても小さすぎても読書速度が低下することから、狭い範囲に適正な文字サイズが存在していることが分かります。 −−−−−− ・一般的な文字サイズ読書速度曲線 CPS以上の文字サイズでほぼ、読書速度が一定である。 ・視力低下型ロービジョンで見られた一例 文字サイズが大きければ、大きいほど、読書速度が速い。 ・視野狭窄型ロービジョンで見られた一例 文字サイズが大きすぎると、視野に入る文字数が減少し、読書速度が低下する。 MRSが得られる文字サイズの範囲が狭い。 →図は省略。 −−−−−− (3)マウス操作支援  マウスポインターの状態が操作パフォーマンスに与える影響についての説明。画面の中央にターゲットを表示し,マウスでクリックさせます。支援ツールを使わない場合と、各種の支援ツールを使う場合で比較します。晴眼者の例では、マウスカーソルの違いによる有意な差がありませんでした。ロービジョン者の例では、支援ツールを使った場合の効果が見られました。 −−−−−− マウスポインタの状態が操作パフォーマンスに与える影響の計測 ターゲットサイズ:10,30,50ピクセルの3水準 マウスカーソルとターゲットの距離:100,200,300ピクセルの3水準 各8試行 →図は省略。 −−−−−−  マウスポインターの軌跡をみると、支援ツールを使わない状態では、マウスポインターが迷走しているのに対して、支援ツールを使った場合、速やかにマウスポインターがターゲットに移動してクリックされていることが分かります。 −−−−−− マウスポインタ軌跡の比較 →図は省略。 −−−−−− ※他に、コントロールパネルのマウスのプロパティを設定する方法、マウス支援ツールを使う方法、「tarzanMouse」の活用を指導した。 4.各アプリケーションにおける配慮事項と設定  ここでは、Internet Explorerの文字フォントの設定、ユーザ補助機能の活用、ユーザースタイルシートの活用と、Firefoxの活用、Microsoft WordとExcelにおける設定と効率的な操作方法を指導した。 5.指導上の配慮事項 (1)部屋の照度は明るすぎても、暗すぎても操作に支障をきたします。  窓からの光は逆光になったり、画面に映り込みをおこさないように注意しましょう。 (2)盲ろう者がパソコンを操作できるようになるためには、タッチタイピングあるいは点字入力のスキルは必須です。本人も指導者も、その重要性を理解して、焦らずじっくりと練習に励むことが大事です。 (3)盲ろう者に対してパソコンの指導を行う上で、最も重要なことの一つとして「待つこと」があります。指導者は、盲ろう者のペースに応じて、盲ろう者が様々な学習事項を処理するのに必要な時間として「待つこと」が重要です。 (4)達成感や楽しさで駆動していくようにしましょう。 (5)盲ろう者は一人一人、状態やニーズが異なるので、一人一人に適した使い方・指導法があることに留意します。 【実習】 (1)Windows 8の画面設定  ・疑似体験眼鏡を使って画面の見えにくさ、操作のしにくさの体験。  ・「ハイコントラスト黒」への設定。  ・ディスプレイ自体の輝度やコントラストの調整  ・マウスのプロパティを設定し、マウスポインターを変更し、軌跡を表示させる。 (2)拡大鏡の設定と操作方法 (3)各アプリケーションの設定と操作方法  ・マウス操作支援ツール「あんだーまうす君」の活用。  ・マウス操作支援ツール「でかポインタ」の活用。  ・マウス操作支援ツール「tarzanMouse」の活用。 (4) Internet Explorerの設定  ・文字フォントの設定。  ・ユーザ補助機能の活用。  ・ユーザースタイルシートの活用。 (5)Firefoxの活用 (6)Microsoft Wordにおける設定と効率的な操作方法 (7)Microsoft Excelにおける効率的な操作方法 【成果・課題】 ・GUIが適応となるロービジョンの盲ろう者の範囲を理解できた。 ・見えにくさについて理解できた。 ・各々の見えにくさに対しての支援の方法を理解できた。 ・具体的な活用方法について理解できた。 ・ロービジョンの盲ろう者に対して指導する際の配慮事項について理解できた。 ・今回,学習したことを地元の盲ろう者への指導に生かしてほしい。 【所感】  受講生全員が積極的に取り組んでいた。  ロービジョンの盲ろう者に対して、GUIを最適化しながら指導していくための基本的な知識・技能については理解していただけたと思う。盲ろう者一人一人の見え方は異なるので、盲ろう者一人一人について、適した使い方、指導法があるということを念頭において、各地域において指導に当たっていただきたいと思う。受講された皆さんの一層のご活躍を期待しています。 2-4-7 ブレイルセンスプラスの概説 村岡 寿幸 【実施日・時間】  10月15日(火) 9:00〜10:30 【講義の目的】  点字情報端末「ブレイルセンス」について、盲ろう者にとってどのようなメリットがあるのか、どのような機器であり、機能を有しているのか等を概説する。 【到達目標】  ブレイルセンスの特徴といえる6点による点字入力方式や点字ディスプレイ一体型である点、そして、盲ろう者にも便利な機能(各種アプリケーション)を理解する。 【講義】 1.ブレイルセンスの概要  ブレイルセンスは7年ほど前に発売された点字情報端末である。点字ユーザーでも音声ユーザーでも使いやすいように設計されており、盲ろう者の点字ユーザーは、普段音声をオフにし、点字ディスプレイのみで使用することが多い。  ブレイルセンスは、発売当初は1機種だけであったが、その後、「ブレイルセンスプラス」が発売され、さらに小型化された「ブレイルセンスオンハンド」が加わった。そして、2013年に「ブレイルセンスプラス」をアップグレードする形で「ブレイルセンスU2」が発売された。ブレイルセンスU2は処理能力が大幅に向上している。  ブレイルセンスが発売される以前、盲ろう者はモバイル用の機器として、ノートパソコンとブレイルメモ24等の点字ディスプレイを併用していたが、これは大変重く、持ち運びに適しているとは言えなかった。またパソコンは電源を入れてから起動するまでに時間がかかるため、利用したいときにすぐに利用できず不便であった。その点、ブレイルセンスは点字ディスプレイが内蔵されているため、持ち運ぶのも1台でよく、また電源を入れるとすぐ起動するため、パソコンと比べるとモバイル機器として非常に便利である。 2.ブレイルセンスの特徴  ブレイルセンスは、入力方法として6点による点字入力方式を採用しており、点字タイプライター等の利用経験がある盲ろう者にとっては容易に利用することが可能である。しかし、点字およびパソコンの利用経験が少ない盲ろう者にとっては難易度が高い。特に、アルファベット点字が大きなハードルとなる。盲ろう者がよく利用するメール機能においても、差出人名が英語表記であったり、またメールアドレスのみが表示されていたりすると、アルファベット点字が苦手な盲ろう者には、誰から来たメールなのかが判別しにくくなる。  またブレイルセンスU2には、小型の液晶ディスプレイが搭載されており、支援者等がブレイルセンスの状態を確認することができる。しかし、小型のオンハンドでは、この液晶ディスプレイが省略されており、別途オプションで外付けの液晶ディスプレイを購入する必要がある。  さらに、U2とオンハンドの決定的な違いは、点字ディスプレイのマス数である。U2は32マス、オンハンドは18マスの点字ディスプレイを搭載する。オンハンドは、価格が約38万円であるため、ほぼ日常生活用具の給付額内で購入が可能である。しかし、一方、点字ディスプレイのマス数が少ない分、点字表示を読むに当たってはスクロール操作の回数が多くなるため、初心者には使いにくい面もある。その点、マス数の多いU2はスクロール操作が少ない分使いやすいが、58万円と高額であるため、日常生活用具の給付制度を利用しても、およそ20万円の自己負担金が発生する。 3.盲ろう者が利用できるブレイルセンスの機能  ブレイルセンスにおいて、盲ろう者が利用できる機能は、電子メール、RSSリーダーを使っての新聞記事やブログ、天気予報の閲覧、ワードプロセッサーを使ってのWord、テキスト、点字等各種文書の処理等さまざまである。また、ウェブブラウザを使って、ホームページを直接閲覧することもできる。ただし、データ量の多いホームページは読み込みに時間がかかるため、ブレイルセンスオリジナルのブラウザに加えて、クイックブラウザも併用すると便利である。  その他、盲ろう者には次のようなアプリケーションが利用できる。 ・サピエオンライン:視覚障害者向け電子図書館「サピエ図書館」から点字やデイジー形式の図書をダウンロードして読むことができる。 ・電子辞書・センスディック:一般のepwing企画の辞書と、点訳された辞書「センスディック」が利用できる。 ・スケジュール帳:盲ろう者が予定を自分で入力してスケジュール管理をすることができる。 ・バーコードトーカー:飲み物やお菓子など商品についているバーコードを使って商品名等を点字で知ることができる。  それ以外には、電卓機能・時計機能等も盲ろう者には便利である。  ただし、これら機能については、指導する盲ろう者が使いやすいかどうかを十分に判断しながら各機能を紹介する必要がある。 4.ブレイルセンス利用時のネットワーク環境  インターネットに接続する際、ブレイルセンスU2は有線・無線の両方に対応する。それに対して、オンハンドは無線のみの対応である。したがって、どちらの機器を購入するかによって、ネットワーク環境にも考慮が必要である。つまり、オンハンドを購入する盲ろう者の自宅等に、無線LAN環境がない場合は、同時にその環境構築の支援も必要となる。  一方、ブレイルセンスはモバイル機器であるため、モバイル環境におけるインターネット構築も重要である。ブレイルセンスが発売された当時は、データカードをつかったダイヤルアップ接続が主流であり、CFスロットに同カードを挿入して接続を行っていた。ダイヤルアップ接続は、電波の状況が悪かったり、速度が遅かったりしてあまり使い勝手がいいとは言えなかった。  現在は、無線LAN接続によるモバイルルーターが一般的になり、接続も安定している。NTTドコモやEモバイル等携帯電話の会社が提供するサービス(契約制)と、Bモバイル等の会社が提供するサービス(前払い制・都度払い制)に分かれる。また、公衆無線LANサービスを利用する方法もある。  いずれにしろ、これらサービスにはさまざまなプランがあり、支援する盲ろう者とよく相談し、またその盲ろう者の利用頻度をよく見極めた上で、各プランの中から選択する必要がある。 5.盲ろう者にブレイルセンスを指導する際の注意点  ブレイルセンスは、Windowsをベースに作動する機器である。そのため、パソコンのWindowsにおけるキーボード操作と操作方法が類似している。例えば、コピーは、パソコンでは[ Ctrl ] + [ C ]、ブレイルセンスでは[ Enter ] + [ C ]である。そのため、普段マウスでパソコンを利用している支援者は、こうしたWindowsの基本的なキーボード操作をしっかりと把握しておくことが重要である。また[ Enter ] + [ C ]のように、キーボードの同時押しという方法は、最初のうち慣れない盲ろう者も多いので、そうした点も考慮して指導する必要がある。 【成果・課題】  受講者の理解度を評価することは難しい面があるが、この講義の後の実機による実習に繋ぐための概論と位置づけている。 【所感】  概論をレクチャーする必要性はもちろんだが、実機に触れた後に、盲ろう者の利用事例、また、実際の指導法のポイントや指導上の留意点等、実習後に講義を行うと効果的といえる部分もあるのではないかと考えている。講義と実習の比率、順序など再検討したい。 2-4-8 ブレイルセンスプラスの演習1・2 村岡 寿幸 【実施日・時間】  10月15日(火) 10:40〜12:10、13:20〜16:40 【講義の目的】  点字情報端末「ブレイルセンス」の実機に触れてもらいながら、実際の操作を通じて、指導上の留意点等の気付きを体感する。 【到達目標】  ブレイルセンスの基本的な操作方法、基本となるアプリケーション(メーラー、ニュースリーダー等)での指導ができるようになる。 【実習】 1.方法  受講者を2名1組として4グループに分け、各グループに講師を1名配置し、下記の課題にあるステップに従ってグループごとに実習を行った。受講者には一人1台のブレイルセンスプラスもしくはU2を配布した。 2.実習の課題 ステップ1:各部の名称。 ステップ2:基本操作。 ステップ3:時計の表示と設定。 ステップ4:バッテリー、ネットワーク状態の確認など。 ステップ5:メールの送受信、メールの受信、返信メールの作成と送信、        差出人のアドレスをアドレス帳に登録する、新規メールの作成と送信。 ステップ6:バックアップ、復旧方法。 ステップ7:インターネット接続。 ステップ8:乗り換え検索。 ステップ9:RSSリーダ。 ステップ10:クイックブラウザ。 ステップ11:メイン(スタート)メニューのカスタマイズ。 ステップ12:その他。(サピエ、簡単スケジューラ、ウィキペディア、点字辞書等々) ステップ13:メールアカウント設定。 【成果・課題】  この実習は4時間半行われたが「とても時間が足りない」というのが、本実習を終えての受講者の感想であった。受講者自身がブレイルセンスを操作することに精一杯な面もあり、盲ろう者への指導法、もしくは指導上の留意点を身に付けるまでにはハードルが高いといわざるを得ない。普段より気軽に触れることのできない機器だけに、ブレイルセンスの講習は、もう少し時間が必要と考える。  しかし、受講者が体験した段階的な課題は、実際に盲ろう者へブレイルセンスを指導する際に応用できるものである。また、「ブレイルセンスは難しい、分からない」という実感は、指導を受ける盲ろう者の心理でもある。 【所感】  ブレイルセンスは受講者にとって最も難しい機器であり、そのため、きめ細やかな指導が必要となる。講師1名に対し受講者2名という小グループで実習を行った。指導内容の差が出ないよう、あらかじめ段階的な課題を用意し、そのグループの進行に合わせて指導を進める形とした。  しかしながら、点字の知識(特に6点入力)等の影響から、進捗はグループごとで変わってしまった。  講師1名対受講者2名という小グループ単位での指導の利点として、講師に自由に質問し、それに答える形で行うことができ、それぞれの受講者のペースで進めることができたといえる。講師の判断でステップの順番を変更したグループもあった。概ね、受講者の満足度は高かったと考える。  地域の指導で、この実習の経験を生かしてもらえることを期待している。 2-4-9 点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー ―NVDAを中心に―(講義・実習) 大河内 直之 【実施日・時間】  10月16日(水) 9:00〜12:10 【講義の目的】  無料のスクリーンリーダーNVDAの特徴と、関連アプリケーションとして、やむメール・GSニュースの基本的な使い方を理解する。 【到達目標】  NVDAの性質を理解した上で、現状、盲ろう者にとって何が有用であり、何が課題であるかを把握する。 【講義】 1.NVDA  NVDAを点字環境で利用する場合の設定や、インストール時の留意点等について概説した。 (1)KGS社製点字ディスプレイの利用について  KGS社から発売されている、国内で標準的に使われている点字ディスプレイをNVDAで利用する場合、KGS社が提供するアプリケーション「BMシリーズ機器用ユーティリティ」をホームページからダウンロードし、インストールする必要がある。これがインストールされていないと、KGS社製点字ディスプレイは動作しない。そのことを紹介し、NVDAの点字環境構築の際は、必ずこれらアプリケーションをインストールするよう促した。 (2)点字設定  点字ディスプレイをパソコンに接続した上で、NVDAの点字設定について、以下を確認しながら実際に設定を行った。  ・点字ディスプレイの機種選択  ・COMポートの選択 (3)自動起動の設定  盲ろう者がパソコンを利用する際、スクリーンリーダーや点字表示が、パソコン起動時に自動起動することは非常に重要である。そのことを再度確認した上で、NVDAの自動起動設定を行った。 (4)NVDAの起動と終了  NVDAにも、他のスクリーンリーダー同様、起動[ Alt ]+[ Ctrl ]+[ N ]、終了[NVDA](NVDAの設定等で利用するNVDAキーのこと。初期設定では[ Ins ]または[無変換]に割り当てられている)+[ Q 」のように、ショートカットキーが準備されている。  これにより、もし何らかのトラブルで点字表示ができなくなった場合でも、盲ろう者がNVDAを再起動することで、問題を回避できる可能性がある。そのことを紹介して、ショートカットによるNVDAの起動と終了を学習した。 (5)スタートメニューとシャットダウン  NVDAは、PC-Talkerのようなマイスタートメニューはない。そのため、Windows 8では通常のタイルメニューを利用する必要がある。また手近なところにシャットダウンのメニューもないこ  とから、キーボードでシャットダウンを行うときは[ Alt ]+[ F4 ]を利用するのが便利である。そのことを紹介し、実際に操作を行ってアプリケーションの起動と終了、パソコンのシャットダウンを学習した。 (6)点字入力について  NVDAには点字入力機能もない。また、現状、点字入力を行う単体のアプリケーションは存在しない。そのことを紹介した上で、点字入力が必要な盲ろう者には、NVDAは現状利用することが難しいことを説明した。 2.メールソフトやむメール  やむメールは、NVDA上で利用可能なシェアウェアのメールソフトである。新しいソフトであり、初心者から上級者まで、さまざまなレベルに合わせたモードが選択できる。このソフトを使って、以下のメール実習を行った。 @やむメールの起動と終了。 Aメールを受信して本文を読む。 B受信したメールに返信する。 C受信したメールのアドレスをアドレス帳に登録する。 Dアドレス帳を使って新規メールの作成と送信をする。 Eアドレスを手動入力して新規メールの作成と送信をする。 3.GSニュース  GSニュースは、NVDA上で利用できるニュース閲覧ソフトである。無料の簡易版と、有料の高機能版が準備されている。講義では、簡易版を利用して以下の実習を行った。 @「アサヒ」の「社会」の記事を読む。 A「毎日」の「話題」の記事を読む。 B「読売」の「経済」の記事を読む。 4.まとめ  本講義で紹介したNVDAは、点字に対応したのが2013年であり、まだ不具合等も多い。また点字環境にて利用できるアプリケーションも限られている。そのため、今回は短時間での簡単な紹介に留めた。しかし、現在積極的な開発が行われており、次々に修正版が公開されている。  また、無料であることも、盲ろう者のパソコン利用の促進に寄与するスクリーンリーダーであると思われる。そのことを受講生と共有した上で、今後の開発動向に注目しておくべきスクリーンリーダーであることを強調して、本講義のまとめとした。 【成果・課題】  最終日であるためか、点字インターフェースについては、受講生がかなりスムーズに操作・設定ができるようになっていた。NVDAの点字設定や、やむメールのメール送受信等も、混乱なくスムーズに実習することができた。 【所感】  無料のスクリーンリーダーであるため、コスト的には非常に導入しやすい環境である。しかし、まだ点字対応の歴史が浅く、点字環境にて利用できるアプリケーションも限られている。その辺りの微妙なニュアンスが、どれだけ受講生に伝えられたかが不安である。盲ろう者にとってのメリット・デメリットを、もっと具体的な例を出して説明すればよかったと思っている。 2-4-10 盲ろう者へのパソコン指導事例 渡井 秀匡 【実施日・時間】  10月16日(水) 13:20〜14:20  【講義の目的】  この講義では盲ろうの状態やコミュニケーション方法に応じた様々な指導方法、指導する際の注意事項、事例、習得後のアフターケアの事例などを紹介する。 【到達目標】  見え方や聴こえ方によるパソコン環境の構築、パソコンの入力方法の選択、ソフトウェアや点字ディスプレイの購入方法、ネット環境の構築などを理解する。 【内容】 1.パソコン環境の構築について  盲ろう者の見え方や聴こえ方によって、「拡大」と「音声」と「点字」の中から二つ以上の組み合わせでパソコンを操作する事例を紹介した。 (1)弱視難聴の盲ろう者の場合、基本的には拡大機能を利用して画面を見ながら操作する人が多いが、長時間画面を見ていると疲れるので、読み上げソフトを組み合わせて目の負担を軽減する例。 (2)盲難聴の盲ろう者の場合、基本的には読み上げソフトの音声を聴きながらパソコンを操作する人が多いが、やはり長時間聞いていると聴き疲れがあったり、初めて聞く人名などの言葉は聞き取れないことがあるので、点字ディスプレイを組み合わせることでそれらの問題が緩和されることの例。 (3)弱視ろうの盲ろう者の場合、拡大機能の他に、点字の触読ができる人は、目の負担を軽減するために点字ディスプレイを組み合わせて使う例。 2.キーボードの入力方法について (1)メールやインターネットを利用する人で、点字のルールを分かっている場合、点字入力によるパソコンの操作を試してもらう。一方、点字を全く知らない人については基本的にローマ字入力による操作を覚えてもらっている。しかし、中にはローマ字による書き方が分からない人は、かな入力で覚えてもらった例があることを紹介した。 (2)点字入力による操作の場合、フルキーのキーボードでは押さないキーが多いため、キーの少ない点字入力専用のキーボード「ブレッキー」があることを紹介した。ブレッキーは容易にキーを見つけることができ使いやすいキーボードである。 (3)ラビット製のブライトーカーについては、点字キーからパソコンの文字入力は行えるが、[ Windows ]や[ Alt ]などのキーがないため、パソコンの操作ができない問題があることを指摘した。しかしながら、点字キーを押すと音声読み上げができるので、音声での発話が難しい盲ろう者の場合、外出時に援助依頼をするのに活用できるかもしれないことを紹介した。 3.ソフトウェアや点字ディスプレイの購入について (1)日常生活用具で視覚障害者向けのソフトウェアや点字ディスプレイの補助があることの紹介。 (2)再申請ができるまでの期間が5年から10年と自治体によって期間は様々であるが、新しいものが発売されても補助を受けて導入しにくい問題。 (3)点字ディスプレイの補助の枠で高機能なブレイルセンスが認められない自治体があることの問題。 4.ネット環境の構築について (1)外出中のインターネットを必要としない人は、ご自宅の固定回線によるプロバイダーと契約することを推奨した。テキスト中心のメールやインターネットで十分な人は安価なADSLを、動画や大きなファイルを交換する必要のある人は光等の高速回線を選択する。 (2)外出中にもメールやインターネットをする人の場合、Wi-Fiモバイルルーターの導入を検討する必要があり、固定回線に比べて費用が高くなったり、電源のオン/オフの切り替えが同じボタンを押す方式で分かり難い問題があることを指摘した。また、モバイルインターネットでも、障害者割引や銀行口座の引き落としができる会社等があることを紹介した。 【成果・課題】  様々な事例を紹介したが、具体的に図式化した資料を配布すれば、より理解が得られると思った。 【所感】  盲ろう者は一人一人異なっているため、広く浅く話してしまったが、実演を交えながら紹介すべきであった。 2-5 受講者からのアンケート結果 受講者:8名  回答者:7名 回答率:87.5% 1. 現在の勤務先及び職種 勤務先(複数回答あり) @ 視・聴覚障害者関係団体 1 A その他障害者関係団体 0 B 視・聴覚障害者関係施設 1 C その他障害者関係施設 0 D 社会福祉協議会 0 E 都道府県 1 F 市町村 0 G その他 2(登録型派遣) 無回答 2 職種(複数回答あり) @ 手話通訳者(手話奉仕員を含む。) 1 A 点訳奉仕員 0 B 朗読奉仕員 0 C 要約筆記奉仕員 0 D ガイドヘルパー 1 E ケースワーカー 1 F ホームヘルパー 0 G 盲ろう者向け通訳・介助員 5 H その他 3(情報提供施設職員派遣コーディネーター、歩行訓練士) 2.これまでに障害者福祉関係の業務に携わった経験のある方の年数。 @1年未満 0 A1〜3年 2 B3年以上 3 無回答 2 3.盲ろう者との関わりの状況について @現在、あなたは盲ろう者に接していますか (a)はい  7 (b)いいえ  0 Aこれまでに盲ろう者に接した経験がありますか (a)はい  7 (b)いいえ  0 B盲ろう者に接した年数 (a)1年未満  0 (b)1〜3年  3 (c)3年以上  4 C 盲ろう者に接しているときの主な活動内容(複数回答あり) (a)生活相談・就業相談等 0 (b)買い物等外出・移動時の支援 4 (c)第3者との対話等のコミュニケーション支援 5 (d)その他 4 4.本研修会を受講した動機及び目的(複数回答あり) @動機 (a)自発的参加 5 (b)同僚・上司等の勧め 4 (c)その他 0 A目的 (a)学問的知識の補充 2 (b)実務に即した知識・情報の収集 5 (c)実務に即した技術の習得 4 (d)自己啓発・再動機づけ 4 (e)他の参加者との情報交換 4 (f)中央の情報収集 2 (g)その他 0 5.本研修会の運営等について ・開催時期や日数について 良い  3 普通  4 改善を望む  0 ・研修事務の進行等の対応 良い  6 普通  0 改善を望む  1 ・研修会場の設備・サービス  良い  4 普通  2 改善を望む  1 6.研修会全体について   とても満足 7    満足 0    やや不満足 0    不満足 0 6−1.(設問6で「とても満足」「満足」を選んだ方へ)どのような点が良かったか ・役立つ情報が得られた 7 ・日頃の活動に役立った 7 ・スキルアップにつながった 7 ・他の参加者との交流・情報交換が図られた 7 ・抱えていた問題・不安の解消につながった 5 ・その他 5 〈その他の具体的理由〉 ・5日間で、本当にたくさんの内容を教えていただきました。私にはまだまだ足りませんでしたが、講師の皆様やスタッフの皆様のおかげで、いろいろな角度で盲ろう者とPCソフト、指導法について学べ、たいへん有意義でした。 ・盲ろう者の大変さがよく分かりました。 ・音声、画面、点字ユーザーすべてを網羅した研修会でしたので、様々な方をイメージできました。貴重なお話を色々と聞けて、有意義な時間を過ごすことができました。 ・非常に勉強になりましたが、私の頭の許容範囲を超えていて、これをどう今後に生かすか悩みます。ここで知り合えた人たちとのつながりを地元の盲ろう者のために生かすことも私の役目なのだろうと思いました。 ・点字ユーザーと画面ユーザーを対象としたPC講習は初めてだったので、たいへん勉強になりました。「PCの向こう側にいる盲ろう者を見る」ということを大切に、これからも微力ながら、地域の盲ろう者のPC利用に貢献したい。 7.個々のプログラムについて  1 = 参考になった 2 = 普通  3 = 参考にならなかった <1> <2> <3> 無回答 ・盲ろう者向けパソコン指導概論   6   1   0   0 ・パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法   4   3   0   0 ・パソコンキーボード操作概論   5   2   0   0 ・点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー(PC-Talker + BrailleWorksの指導法)   7   0   0   0 ・スクリーンリーダーPC-Talker上で動作する(アプリケーションの指導法)   7   0   0   0 ・画面インターフェースを活用した指導法   7   0   0   0 ・ブレイルセンスの概説   5   2   0   0 ・ブレイルセンスの演習   7   0   0   0 ・点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー   4   2   0   1 ・盲ろう者へのパソコン指導事例   6   0   0   1 <コメント> 8.本研修会の運営等について 〈開催時期や日数について〉 ・5日間の研修は大変でしたが、きちんと身についたかというと、まだまだ時間が足りないです。 ・スポーツ祭東京2013と重なる日程はやめてほしかったです。今年は56年ぶりに東京での開催だったので。 ・最初は長期だと思いましたが、内容を考えると必要だと思いました。 ・連休だったので子育て世代には参加しやすかった。 〈研修事務の進行等の対応〉 ・講師、スタッフのサポートが素晴らしく、難しいながらも楽しく臨むことができました。 ・適切な対応をしていただきました。 ・連休開催なので、参加決定の可否をもう少し早く知らせてほしかった。(宿泊、移動手段の確保の問題) 〈研修会の設備・サービス〉 ・冷房が強い面を除けば、たいへん快適でした。 ・駅から近くてよい。冷房が効きすぎるのは困った。 ・室温調整が部屋ごとにできるとよかったです。 ・主要駅からの徒歩圏内でありがたい。地方開催も今後は考えてくださると喜ばれると思います。 〈その他〉 ・緊急連絡先を教えていただきたかったです。(電車が止まった場合などどこへ連絡?) 9.個々のプログラム及び全体について 〈盲ろう者向けパソコン指導概論〉 ・盲ろう者が何を求め、必要としているかを心に留めて、PC指導をすることが大切という言葉が深く残りました。 ・たいへん分かりやすかったです。 ・すでに理解していることでしたが、再確認できました。 ・具体的な指導方法論を色々と学べて参考になりました。事例のお話を時々まじえてくださって、理解が深まりました。 ・盲ろう者にとってのパソコンが何なのか、あらためて教わった気がしました。 ・指導において短く一つ一つ説明していくという、大切なことを教わった。手話ベースの人と日本語ベースの人で、大きな差があることにあらためて気づいた。 〈パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法〉 ○講義 ・解説が大変分かりやすかったです。 ・画面ショットもなく、スラスラ説明されて、さあ実習と言われても難しすぎる。盲ろう者に教えるようにワンステップずつ説明→実習としていただいた方が分かりやすい。 ・丁寧にゆっくり指導していただきました。聞き取りにくい言葉もありましたが、スタッフがサポートしてくれました。 ・講義の速度がちょうどよかったです。実習を挟んで、フィードバックしながらできたので、分かりやすかったです。 ・説明はよく分かりました。使い方もよく分かりました。しかし、全て覚えるのはとても難しいと思いました。 ・ただUSBケーブルで繋げばよいというものではないことが分かった。 ○実習 ・ドライバーのダウンロード、インストールで、まごついてしまいました。プロジェクター画面で一緒に進めていただけると、もっと良かったかと。 ・ある程度パソコンを触れる人が受講しているから、そのあたりを考慮してほしい。昔の用語でなく、最近の用語を使ってほしい。(例:シリアル) ・パソコンの不具合があり、実習時間が短くなりましたが、スタッフが根気よく対応してくれました。 ・実際のピンディスプレイを触る機会が中々無いので、そちらが魅力でした。 ・実際にやってみると、思わぬ所で間違えたりした。(例:ドライバーのインストールのつもりが、ファームウェアのインストールをしていた) 〈パソコンキーボード操作概論〉 ○講義 ・やはり、解説が丁寧で分かりやすかったです。 ・目でも確認できるので、スタート画面の初歩的なことは、さらっと進んでほしい。対象が曖昧になっている感じを受けた。 ・キーボード操作は必須なので、勉強になりました。 ・ゆっくりしたペースで、分かりやすい講義でよかったです。 ・説明はよく分かりました。使い方もよく分かりました。しかし、全て覚えるのはとても難しいと思いました。 ・各種ショートカットキーは便利なものばかり。覚えるのが大変そう。 ○実習 ・たくさんのキーを覚える必要があるので、私自身の練習経験の必要性を強く感じました。 ・つぶやきのような話し方は眠くなる。しっかり自身をもった声でお話ししてほしい。聞こえない。 ・講師の説明通りに操作はできましたが、まちがって他のボタンを押したときの訂正が分からず、スタッフにサポートしてもらいました。 ・ショートカットキーを別刷りでいただけたらよかったです。 ・キーボードに印をつけた方がよい場所とか教えてくださったらうれしいです。 ・[ Ctrl ][ Alt ][ Shift ][ Fn ]キー。これらが頭の中で混乱してしまった。指導する際は、確実に対応したい。 〈点字インターフェースを活用したスクリーンリーダーPC-Talker + BrailleWorksの指導法〉 ○講義 ・お話しの組み立て、とても分かりやすくなっていて、大変勉強になりました。また、ロービジョンについても理解を深めることができました。 ・説明→実習と分かりやすく進んで、どんどん興味の湧くお話しでした。とても分かりやすくてよかったです。 ・講義のスピードもゆっくりで分かりやすく、休憩も適度にとっていただきました。 ・PC-Talkerを盲ろう者向けにカスタマイズするポイントが、次々出てきて参考になりました。 ・説明はよく分かりました。使い方もよく分かりました。しかし、全て覚えるのはとても難しいと思いました。 ・DVDトレイが開くかどうかで、PCの電源オン・オフを確認する方法は、分かりやすくてよい。 ○実習 ・ショートカットキーの種類が多く、使いこなすようになるには、やはり十分な練習が必要だと感じました。 ・ショートカットキーの一覧があればよかったと思います。 ・説明が終わった後、実習に入るので、メモしやすく画面を見ることもできてよかったです。 ・手順を順に書いたテキストがあれば助かります。 ・習得度に合わせて、変えた方がよい設定の紹介は参考になりました。 ・各種設定をうまくして使いやすい状態にすることの大切さを学んだ。実際に設定することで、理解も早くできた。 〈スクリーンリーダーPC-Talker上で動作するアプリケーションの指導法〉 ○講義 ・メール、ニュース、図書のアプリは、盲ろう者にとって大いに役立ちそうで、ぜひ、私も覚えて使えるようになりたいと思いました。 ・もっと聞いていたいと思いました。 ・重要なアプリケーションを伝えることも必須なので、参考になりました。 ・様々なアプリケーションの紹介は参考になりました。 ・説明はよく分かりました。使い方もよく分かりました。しかし、全て覚えるのはとても難しいと思いました。 ・ロービジョンの盲ろう者へのPC指導と設定について学べた。高齢者の方にも応用できそう。 ○実習 ・サポートの先生方に助けられての操作でしたので、操作を覚えるには至らず、不安です。 ・もっと操作したいと思いました。 ・他の講師やスタッフの方が、分かりにくい所や合っているかの確認をしていただき安心でした。 ・主要なものを概ね体験できたのはよかった。 ・MyNewsに天気予報があったので、これを地元の盲ろう者が使えたらよいと思いました。 〈画面インターフェースを活用した指導法〉 ○講義 ・パワーポイントとプロジェクターを合わせての丁寧な講義で、とても分かりやすかったです。内容も、ロービジョン者だけでなく、高齢者でも使えそうで、たいへん勉強になりました。 ・説明パワーポイントと操作画面があって、分かりやすかったです。 ・スクリーンに映し出しながら、ゆっくりとした説明で分かりやすかったです。 ・店頭で簡単に盲ろう者と確認できる方法をいくつも教えていただき、即使えそうでとても参考になりました。 ・専門的な話が多くて難しかったです。 ・Windows内にも色々な補助機能が付いていて驚いた。 ○実習 ・ショートカットの便利な使い方に、目からうろこでした。本当に分かりやすく、操作できました。 ・スクリーン上で操作方法を見せていただいてから、自分で操作するので、やりやすかったですが、少しもたもたしていると画面が変わって分からなくなることもありました。 ・実際にパソコンを触りながらできることが一番よかったです。 ・一般のPCで、ここまで色々設定ができるとは思いませんでした。 ・ショートカットキーをどのあたりまで教えたらよいのか、判断が難しそうだ。 ・ロービジョン体験もあり、内容の濃い実習だった。最適化の手順をしっかり守って対応したい。 〈ブレイルセンスの概説〉 ・少々分かりにくい部分もありましたが、具体的な盲ろう者のブレイルセンスの利用状況の説明がよかったです。 ・メールに使う記号については、一覧表にして受講生に渡してほしいです。 ・実際の体験も併せてのお話しは分かりやすかったです。 ・キー一つ一つをゆっくり丁寧に教えて頂けたのが、盲ろう者へ指導する際の方法論として大変勉強になりました。 ・難しかったですが、ブレイルセンスに関心を持っている盲ろう者がいるので、少しでも覚えたいと思いました。 ・できることと、できないことが分かり、ブレイルセンスのイメージが掴めた。 〈ブレイルセンスの演習〉 ・難しかったのですが、ブレイルセンスの面白さが体験できてよかったです。ただ、自宅や、ほかで今後触れる機会がないので、指導ができるかは不安が残りました。 ・きめ細かい指導はとてもよかったです。もう少し時間がほしかった。ここで触ったら、今後触るチャンスはないと思うので。 ・受講生に1台ブレイルセンスを使用させていただき、人数も少なかったので一人一人に対応していただきよかったです。複雑な操作も繰り返し指導していただきました。 ・なかなかゆっくり触る機会がありませんので、ゆっくりと自分のペースで触れたのがよかったです。 ・難しかったですが、ブレイルセンスに関心を持っている盲ろう者がいるので、少しでも覚えたいと思いました。 ・多くのメニュー、ショートカットキーなどを短い時間でマスターできるわけないのだが、つい一生懸命になり、講師の村岡さんに聞きまくってしまいました。ありがとうございました。勉強続けたいです。 〈点字インターフェースを活用したその他のスクリーンリーダー〉 ○講義 ・いろいろな読み上げ、点字ソフトがあり、複雑なことが分かりました。 ・分かりやすい説明でした。 ・どの方法が盲ろう者に合うのか?選択肢などよく分かりました。 ・スクリーンリーダーの現状の環境を、細かく分かりやすく解説してくださったので参考になりました。 ・NVDA、周辺アプリの機能がよく分かった。 ○実習 ・一通り体験できてよかった。特にVoice Popperやサーチエイドは、使いやすそうで面白かったです。 ・色々なソフトがあることが分かりました。メールを送れるので実感できました。 ・少しスピードが早かったですが、サポートしていただいたのでよかったです。 ・やむメールやNVDA等、実際に使用できたのはよかったです。触らないと分からないので、参考になりました。 ・Windows 8に対応していないアプリは、頻繁に「プログラムの終了」が出ていた。 〈盲ろう者へのパソコン指導事例〉 ・具体的な指導のポイントや、PC、ソフト、インターネット接続について、お話しが聞けてよかったです。 ・分かりやすいお話しでよかったです。 ・実際、何がその盲ろう者に合うか、その人の生活、またニーズに併せてよく考える必要があることがよく分かりました。 ・指導の実際の事例をうかがえたのはよかったです。相手に一番よい組み合わせを考えるといっても、イメージが今一つ掴めなかったのですが、今回のお話で随分具体的にイメージできるようになりました。Wi-Fiルーターについての話、参考になりました。 ・操作方法は、あまりコロコロ変えないようにすることで、盲ろう利用者のPC操作技術が安定するということが学べた。 7.本研修について自由にお書きください。 ・この講習だけでは、実際に、PC指導はできそうもないので、実際に盲ろう者へのPC支援の講座など、現場を見学させていただけるとうれしいと思いました。 ・もう少し時間が欲しかったです。聞いて操作するだけでいっぱいいっぱいでした。ご親切にご指導いただき、ありがとうございました。 ・@操作方法が分からない時、すぐにスタッフが対応していただいたのでスムーズに進めることができました。A講義の進め方、スピードはゆっくりで良かったです。実習はもう少しゆっくり説明してから、実際に自分でやってみる方が良かったです。でも、このたくさんの内容を消化するには、時間配分も仕方ないです。B実習時、講師の言う手順はできますが、まちがって別の操作をしたとき、元に戻す方法が分からず、そこで止まってしまいます。 ・ありがとうございました。 ・弱視の方でタブレット使用も可能な方が、今後いらっしゃるかもしれないと考えています。講習の中に組み込んでくださるとうれしいです。 ・長時間の研修でしたが、スタッフの皆様の心配りで終始気持ちよく過ごせました。受講生の皆様も、よい方ばかりで楽しく学ぶことができました。 ・講師の皆様、スタッフの皆様、5日間本当にありがとうございました。どの講座も大変分かりやすく、PC指導を普段していない自分にとっては貴重な研修でした。もっともっと学びたかったのですが、地元に帰ってから先輩方にも指導を受けたいと思います。この研修をきっかけに、盲ろう者のPC利用に少しでも貢献できたら・・・という気持ちでがんばっていきます。また機会があれば、ぜひ参加したいです。 2-6 考察  盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会は、平成19年度より開始しており、今年度で7回目となった。振り返ってみると、開始当時はパソコンのOSはWindows XPであったが、その後この7年の間にWindows Vista、Windows 7、Windows 8と進化を続け、本研修会もこの流れに追随する形で進めてきた。これに伴い、それぞれのOS環境下で盲ろう者にとってどのスクリーンリーダーやメールソフトなどの各種アプリケーションが使いやすいのかなどの観点で検証作業を続けてきている。OSのアップグレードありきで、その後にスクリーンリーダーをはじめとする各種アプリケーションが対応してくる現状では、極論するならば、その年、その年で推奨できるOSとスクリーンリーダー、各種アプリケーションが変わってきたといっても過言ではない。  さて、指導者として求められる条件は、盲ろう者の特性を理解していること、パソコン等ICT機器の指導ができることである。  受講者は大きく二つのタイプに分けられる。日頃より盲ろう者に接することが多く、盲ろう者へのパソコン指導を切実に感じてはいるが、あまりパソコン技術に詳しくない支援者である。もう一方は、盲ろう者と接する機会はあまりないが、パソコンや障害者向けのソフトウェアや機器に関する知識や技術を身に付けている者である。  前述したように指導者にはどちらの要素も重要であり、五日間という限られた中で、どのようなカリキュラムを組むことで、より効率的な指導者育成が可能となるのかが、最大の課題であり、この7年は、それに対する試行錯誤を重ねてきた。  今年度の研修会では、「盲ろう者向けパソコン指導概論」をはじめとして、Windows 8をベースに画面インターフェース、点字インターフェースを基本とするカリキュラム構成としつつ、点字インターフェースでは、フリーウェアとして開発が進められているスクリーンリーダーの「NVDA」等も取り入れて実施した。  本研修会は、技術進歩に伴いICT機器の環境が変わりゆくこと、受講者のそれぞれ持ち合わせている前提となる知識・技術に差があること、また、これに加えて、五日間という日程で、盲ろう者の特性をはじめとして、パソコンの画面インターフェース、点字インターフェース、点字情報端末というように、ともすると詰め込み研修となっていることも否定できず、何らかの方策が求められる。  これらを改善していくためには、研修時間を増やすこと、画面インターフェース、点字インターフェースごとに研修を細分化することなども含めて、今後検討していきたい。その他、過去の研修会受講者も対象として、フォローアップ研修なども検討していく必要があると考えている。  本研修会はこうした課題を抱えているものの、盲ろう者の生活向上のためにはパソコン等情報機器は欠かせない存在となってきており、盲ろう者向けパソコン指導者の養成は年々必要性が高まってきている。指導者間のネットワークを広げる意味でも、本研修会への期待は大きく、今後より一層の発展が必要であろう。 第3部 コミュニケーション訓練個別訪問指導 3-1 概要  日ごろパソコン等情報機器に触れることの少ない盲ろう者に対して、一定期間パソコン等情報機器を貸与し、その期間中に講習および日常的な個別訪問指導を実施することで、コミュニケーションツールとして、またはインターネットを通じての情報収集ツールを体験してもらい、今後の日常生活において、パソコン等情報機器を活用していくきっかけとなるよう実施した。  訓練期間は、概ね9月〜12月の約4ヶ月間で、4人の受講盲ろう者を対象とし、同時に、地域の指導者となり得る通訳・介助員や盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会の受講者等を数名ずつ募り、訓練を進めた。また、訓練の足がかりとなるよう、本事業企画委員を講師として各地域へ派遣し、受講盲ろう者ならびに地域の指導者に対し、6〜8回の講習会を開催した。  パソコン等情報機器は、Windows 8搭載のノートパソコン、点字ディスプレイ、各ソフトウェア、ブレイルセンスプラス・ブレイルセンスオンハンド、その他周辺機器を、受講盲ろう者の希望に合わせて準備、貸与した。  訓練は、メールの送受信等を中心に行い、機器を返却した後も訓練や指導が途切れてしまわないよう、購入方法の支援、自宅のインターネット環境の整備も含めて行った。 3-2 募集要領 平成25年度「コミュニケーション訓練個別訪問指導」受講者募集要領 1.目的  パソコン等情報機器を活用した盲ろう者へのコミュニケーション訓練を実施することにより、盲ろう者のコミュニケーション能力の向上を図り、社会参加の促進に寄与することを目的とします。 2.コミュニケーション訓練内容  受講盲ろう者に、一定期間パソコン等情報機器を貸与し、メールの使用法・ホームページ等からの情報収集法等について、その機器の使用方法等も含めての講習を行います。 3.受講対象者  盲ろう者で、パソコン等情報機器の活用に意欲のある方。  ただし、パソコン等情報機器をお持ちでなく、これまでに活用した経験のない方を優先します。 4.募集人数と訓練期間 前期:平成25年6月〜8月(3ヶ月間) 4人 後期:平成25年10月〜12月(3ヶ月間) 4人 5.訓練対象機器 ・ノートパソコン(Windows 8)+点字ディスプレイ(ブレイルテンダーあるいはブレイルメモ32)(スクリーンリーダー、画面拡大ソフト等をインストールしたもの) ・ブレイルセンスプラスまたはブレイルセンスオンハンド(点字情報端末) 6.訓練期間中の指導体制  訓練は、受講盲ろう者と、当協会から派遣する講師、地元の指導者の3者が連携して行います。 (1)講師について  訓練期間開始時および訓練期間中に、当協会より講師を派遣し、パソコン等情報機器のセッティングや操作方法等に関する講習を行います。講師による訓練期間中の講習は、約6回程度を予定しています。 (2)指導者について  地元で受講盲ろう者へのコミュニケーション訓練を実施できる方(盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会受講者、パソコンボランティア、盲ろう者向け通訳・介助員等)に、指導者として訓練に参加していただきます。指導者は受講盲ろう者に対し、訓練期間中、概ね週1回、5時間程度の指導ならびにサポートを行っていただきます。 7.訓練報告および謝金のお支払い方法  受講盲ろう者には、当協会より「コミュニケーション訓練利用券」を60枚(1ヶ月につき20枚)交付します。訓練(サポート)終了後、「コミュニケーション訓練利用券」を1時間につき1枚として、指導時間数に応じた枚数を、指導者に手渡してください。  指導者には、月ごとに所定の「コミュニケーション訓練指導実績報告書および指導内容報告書」と、受講盲ろう者から手渡される「コミュニケーション訓練利用券」の2点を、当協会へ提出していただきます。  後日、請求のあった指導者ご本人の振込口座へ、当協会より謝金および交通費を送金いたします。 8.アンケート調査  受講盲ろう者には、訓練期間終了時にアンケート調査を実施させていただきます。 9.申し込み方法 (訪問別紙2)「平成25年度コミュニケーション訓練個別訪問指導受講申し込み方法・諸注意」をお読みいただいた上で、(訪問別紙3)「平成25年度コミュニケーション訓練個別訪問指導受講申込書」に必要事項をご記入いただき、平成25年2月15日(金)までに、当協会に郵送またはファックス等で提出してください。 10.受講可否の決定  本事業実施の決定後(平成25年4月中旬から5月中旬頃)、ご提出いただいた申込書を参考に、当協会にて受講の可否を決定し、決定通知書を送付いたします。また、受講決定者には、受講期間、初回の講師派遣による講習の日程等を相談させていただきます。 11.連携団体としての提出書類のお願い  受講決定後、その盲ろう者が所属する友の会には、本事業への連携団体として登録していただく必要があります。本件は本事業助成団体との契約上、必須事項となります。つきましては、受講決定とともにお知らせするご案内に沿って、確約書の提出をお願いすることになりますので予めご了承ください。 12.申し込み・問合せ先 社会福祉法人全国盲ろう者協会 〒162-0042 新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL:03-5287-1140  FAX:03-5287-1141 E-mail:info@jdba.or.jp 3-3 個別訪問指導報告(パソコン編)  4名の受講盲ろう者の内、3名に対してパソコンの指導を行った。  なお、貸与したパソコンにはすべて次のソフトウェアをインストールした。  インストールしたソフトウェア:PC-Talker8または7(KTOS)、BrailleWorks、MyMailV、MyNews、MyRoot、VoicePopper、サーチエイド、でかポインタ、あんだーまうす君 3-3-1 Aさん 1.受講盲ろう者について (1)性別:女性 (2)年齢:50歳代 (3)障害の程度:全盲難聴 (4)受障歴 聴覚:幼少のころ高熱のため聴覚障害になる。通院により聴力が回復するも、その後聴力が低下。現在、耳かけ補聴器と集音器を使用している。 視覚:25年前から徐々に視力が低下。17年前に見えなくなった。現在明暗が分かる程度。 (5)コミュニケーション方法 受信:音声、指点字、点字による筆談。 発信:音声 (6)点字の触読 可 (7)使用文字 点字 (8)パソコン等の経験 携帯電話(らくらくホン)の音声を聴いてメールができる。パソコンは初めて。 (9)志望動機 耳が聞こえなくなる前に、パソコン(点字ディスプレイ)を学習したい。聞こえなくなってもメールなどでコミュニケーションができるようになりたい。 (10)希望機種 パソコン(点字ディスプレイ)。 2.講師および指導者 (1)講習会講師 九曜 弘次郎 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン:デスクトップ型パソコン(Windows 7) その他:PC-Talker7、MyMailV、NetReader、MyWordX (2)全国盲ろう者協会より貸与した機器・ソフトウェア (受講盲ろう者と地域の指導者に下記の機器を1セットずつ、計2セットを貸与) パソコン:ノート型パソコン(Windows 7) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成25年9月7日(土) 13:00〜16:00 第2回 平成25年9月8日(日) 12:00〜15:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 7) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker 7、MyMailV、KTOS 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @パソコン、点字ディスプレイ、データ通信カード各機器の説明と接続方法。 Aキーボードの配置と、よく使うキーの説明。 Bパソコンの電源の入れ方と、電源が入っているかどうかの確認方法。 CWindowsの起動。 DMyMailの起動。 Eメールの受信。 Fメールの読み方。 Gメールの返信。 HMyMailの終了。 IWindowsの終了。 地域の指導者に対して J指導の進め方について。 (5)成果  Windowsの起動と終了、MyMailでメールの受信と返信ができるようになった。  文字入力はKTOSを使い6点入力で行った。入力に関してはほぼ問題なく行えた。ただ、普段指点字を対面で読んでいるので、左右逆になっていることで少し困惑している様子だった。  普段携帯電話でメールをしているので、機器の操作や漢字変換については問題なく行えた。ただ本人の希望により、最初のうちは漢字変換を行わずひらがなで書きたいとのことだったのでそのようにした。  音声を併用した方が分かりやすいというので、PC-Talkerの音声を男性音(Show・VoiceText)のもっとも遅い速度であるスピード1にしたところ、音声を聞き取ることができた。男性音の方が聞きやすいとのことである。しかし、受講を希望された動機が「点字ディスプレイを学習したい」ということなので、できるだけ点字を読むように指導した。 (6)課題  資料には「点字の触読 可」とあったが、思ったよりも点字の触読に苦労しているようだった。特にアルファベットの点字が理解できず、途中でアルファベットが出てくるとそれに気を取られて、内容が分からなくなることがあった。点字の触読の練習が必要なのではと感じた。 (7)所見  最初キーの説明を行わずに、パソコンを起動してWindowsの終了操作を説明してしまったため、突然いろいろなキーを押すことになり混乱させてしまったようだった。最初に電源を入れる前の段階で、よく使うキーの説明をしておくべきだったと反省した。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成25年10月26日(土) 13:00〜16:00 第4回 平成25年10月27日(日) 9:00〜12:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 7) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker 7、MyMailV、KTOS 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @メールの受信と返信の復習。 AMyMailのアドレス帳への登録。 B登録したアドレス帳を使って新規メールの作成。 地域の指導者に対して C機器の故障によるトラブルについて。 DKTOSの左右キーの入れ替え方法。 (5)成果  漢字変換しながらメールの送受信が自力で問題なくできるようになってきた。操作に戸惑うこともなくなった。意図的に音声を消して点字表示のみで操作するなど努力している様子がうかがえた。 (6)課題 メールはだいぶできるようになったので、次回はインターネットなどにも挑戦したい。 (7)所見  今回は点字ディスプレイの故障、クロッシーのトラブルでインターネットに接続できなくなるなど、機器のトラブルが多く発生した。本人にお貸ししたパソコンがインターネットに接続できなくなったため、急きょ指導者のパソコンと交換することになった。そのためこれまでの講習会でアドレス帳に登録したアドレスや送受信したメールが無効になり、パソコン環境が変化したことで少し困惑している様子だった。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成25年12月7日(土) 13:00〜16:00 第6回 平成25年12月8日(日) 9:30〜12:30 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 7) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker 7、MyMailV、KTOS、VoicePopper 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @メールの受信、返信、新規作成の復習。 AVoicePopperを使って天気、地元の日報を閲覧。 Bサーチエイドを使って最寄駅から東京までの経路を探索。 C本人所有のパソコンについて確認。 DKTOSの左右キーの入れ替え。 E今後の学習の進め方について相談。 地域の指導者に対して F 点字ディスプレイ、ソフトウェアの購入について相談。 (5)成果  メールの送受信はほぼ問題なくできるようになった。  VoicePopperを使って天気を調べたり地元のニュースが読めるようになった。  サーチエイドを使って経路探索ができた。  本人のパソコンを見せてもらった。メモ帳で六つのキーの同時押しが認識することを確認したので、点字入力可能ではないかと思われる。  1回目から要望のあった、KTOSの左右キーの入れ替えが成功した。 (6)課題  サーチエイドの経路探索で、時間を指定するとき、10の位と1の位を分けて指定するところが分かりにくい様子だった。  点字やパソコンにも慣れてきたようなので、今後指導終了後もメールやインターネットでを活用してもらえればと思う。  メールアカウントの取得や機器の購入まではサポートできなかったのが心残りだが、今後地域指導者にサポートしていただくことにした。 (7)所見  今回で個別訪問は全て終了した。  受講動機である、点字ディスプレイを使ってメールでコミュニケーションできるようにしたいという目標は達成できたかと思う。  地域指導者は視覚障害者へのサポート経験をお持ちということで、今後も継続してサポートが受けられるのではないかと考えている。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成25年9月22日(日)〜平成26年1月18日(土) (2)指導回数 全18回 (3)指導時間 計60時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 9月22日(1回目) ・講習会の復習。 ・前回、キーを探すのに時間がかかったので、シールを貼った結果、楽にキー操作できるようになった。 ・マイメールの立ち上げ。自由に[上下矢印キー]でボックスがどのように並んでいるかを確認してもらい、一つ一つのボックス名と、役割を説明。 ・前回、ひらがなで文章を作成していたが、漢字変換を勧める。漢字の意味など、読み取りもスムーズにできる。 ・メールのツリービューで、[ Enter ]を押してしまい、文章(本文)が読み進んでしまう。開くときは[ Tab ]で開くと、1文字目にカーソルがあることが、操作を間違えることで理解できてよかった。 10月3日(4回目) ・MyMailVでのメール送受信の確認。 ・文字入力の習得。文字の訂正方法、[ BackSpace ]と[ Delete ]の使い方。 ・点字読みの習得。漢字変換、変換候補の呼び出し方法。 10月5日(5回目) ・前回行った指導の復習。 ・操作開始前の点検と、パソコンとピンディスプレイのセッティングの習熟。 10月15日(7回目)  携帯電話でのキー操作の違いと共通点、[ Enter ]の働きと使い方。 10月19日(8回目) ・行間中の文の挿入方法。 ・漢字変換前の読み上げ候補の説明。 10月24日(9回目)  [ Tab ]の働きと使い方、矢印キーの使い方。 11月2日(10回目) ・メールの受信について。受信メールの確認、カーソルの移動(タッチキーの使い方)。 ・受信したメールへの返信方法。 ・作成したメールの送信方法。 11月10日(12回目) ・メールの送受信。ネット環境が悪く、送受信ができない。 ・文章作成、点字入力、漢字変換はスムーズにできる。 ・アドレス帳の開き方、受信メールからのアドレス登録。 ・点字でのアルファベット入力ができないので、直接アドレスを入力できない。 12月7日(15回目) ・MyMailVでのメール送受信 ・受信メールを読む時、[ Tab ]でなく[ Enter ]で開くと、メール本文だけでなく、差出人のアドレス、日付等、アルファベットが点字で表記されるため、何が書いてあるか読めなくなる。 ・キー操作を間違えた時の、対処の仕方を確認してもらう。 ・VoicePopperを使って、インターネット、天気予報、乗り換え案内、ニュースなどを閲覧。 ・本人の「覚えたい」という姿勢が強く見られる。点字の読みも早くなり、漢字仮名交じり文も正確に変換している。 1月15日(17回目) ・MyMailVで受信メールの確認。 ・ニュースの閲覧。操作方法の確認(開始から終了まで)。 ・漢字識別読み上げの習熟 ・ピンディスプレイの読みとり練習。 ・漢字識別読み上げの習熟。 1月18日(18回目) ・MyMailVとVoicePopperの操作を復習。 ・携帯電話でのメール経験があるので、パソコンでのメールもスムーズにできたと思う。最後のメール送受信も、なんなくこなしている。 ・VoicePopperでは、ホームページのイメージを伝えて、郵便番号からピンポイント天気予報などを閲覧。点字だけではイメージがつかめないので、初めに音声で確認してから点字と音声を併用して閲覧した。 3-3-2 Bさん 1.受講盲ろう者について (1)性別:女性 (2)年齢:60歳代 (3)障害の程度:弱視難聴 (4)受障歴 聴覚:幼少期から聞こえにくかったが、極端に悪くなったのは約15年前。現在両耳とも80デシベル。 視覚:幼少期から暗いところは見えにくかった。網膜色素変性症と判明したのは30歳代の時。現在は白内障も重なっている。視野は10度以内。視力は右0.1、左0.15。 (5)コミュニケーション方法 受信:音声 発信:音声 (6)点字の触読 最近点字が読めるようになってきたとのこと。1行32マスを10秒程度。 (7)使用文字 墨字 (8)パソコン等の経験 以前に障害者向けの講習を受けたことがあるが、ほとんど覚えていない。普通の携帯電話のメールを、ルーペを使って視力で利用している。 (9)志望動機 点字が少しずつ読めるようになってきたので、点字ディスプレイを使ったパソコンを利用してみたいと思い応募した。 (10)希望機種 パソコン(点字ディスプレイ)。 2.講師および指導者 (1)講習会講師 大河内 直之 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン:なし その他:携帯電話。 (2)全国盲ろう者協会より貸与した機器・ソフトウェア (受講盲ろう者と地域の指導者に下記の機器を1セットずつ、計2セットを貸与) パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成25年9月16日(月) 13:00〜18:00 第2回 平成25年9月17日(火) 10:00〜12:00 13:00〜18:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker8、MyMailV、KTOS、MyNews、MyRoot 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・パソコンとブレイルテンダーの接続。 ・ルーターの設置。 ・パソコンの起動と終了。 ・スタートメニューからアプリケーションを起動。 ・MyMailによるメールの受信、返信、アドレス帳を利用した新規メールの作成。 ・MyNewsによる記事の閲覧。 ・MyRootによる記事の閲覧。 ・画面の調整(文字拡大、白黒反転の設定)。 地域の指導者に対して ・パソコンとブレイルテンダーの接続方法。 ・ルータートラブル時の対処方法。 ・MyMailVによるメールの受信、返信。 (5)成果  「以前の講習でやったことはほとんど覚えていない」とのことであったが、実際には基礎がしっかりしており、ローマ字入力なども非常にスムーズで、すぐにメールの送受信に入ることができた。パソコンとブレイルテンダーの接続、起動と終了、スタートメニューからMyMailの起動等、一連の動作も全く問題なく操作できた。   点字を始めたとのことであったが、点字ディスプレイを読むよりも、視力と音声で確認していることが多く、そのため、画面と音声をご本人が使いやすい環境に調整した。  2回の講習で、メールの受信、返信、アドレス帳を使った新規メール作成による送信ができるようになった。またMyNewsやMyRootにて、ご自分の興味関心のある記事を主体的に閲覧することも可能となった。 (6)課題  点字環境をご希望であったが、視力や聴力の活用も十分可能であるため、無理に点字ディスプレイを導入するのではなく、今後うまくこれら感覚機能を併用していくための方法を考えていく必要があると思われる。具体的には、現在Myシリーズの拡大機能と白黒反転の機能を使っているが、さらに画面環境で使える調整を行うべきであろうと考えている。  ルーターの電波感度が芳しくなく、断続的にネットに接続できないことがあった。いろいろと場所を変えて、何とかつながるポイントを見つけたものの、翌日メールが送れなくなったとの連絡がご本人より携帯電話のメールにて届いた。ルーターの再起動をお願いしてみたが、その後解決できているかは不明。2台のルーターのうち、調子の悪かった1台を持ち帰ってテストしてみたが、こちらでは正常につながっている。やはり電波状況があまりよくないのではないかと思われる。 (7)所見  友の会の広報誌の作成などの活動もなさっており、パソコンをもっと活用できればというお話もうかがった。視力が低下していくという不安もあるようで、点字を勉強なさっているとのこと。少しでも、友の会の活動と日常生活が楽になることを踏まえて、今後の講習を進めて行きたいと思っている。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成25年10月25日(金) 10:00〜12:00 13:00〜17:30 第4回 平成25年10月26日(土) 10:00〜12:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker8、MyMailV、MyNews、MyRoot 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・MyMailによるメールの受信、返信、アドレス帳を使った新規メールの作成及び送信の復習。 ・受信したメールからアドレス帳を登録する復習。 ・手動でメールアドレスを入力してアドレス帳に登録。 ・メールフォルダの作成とメールの整理。 ・MyRootを使って路線探索及び時刻表の検索。 ・スタートメニューの並べ替え。 地域の指導者に対して ・スタートメニューのカスタマイズ。 ・画面の調整。 ・ルーターの調整。 (5)成果  MyMailの操作については、ほぼ問題なく行えるようになった。また、任意のメールフォルダを作成し、受信したメールを自分なりに整理することもできるようになった。メールに関しては、実用レベルであると思われる。  MyNewsやMyRootについても、順調に利用することができており、こちらからほぼ指示しなくても主体的な情報入手が可能となった。  今後のパソコン購入については、ご家族とも相談しながら決めていきたいということを確認し、次回までに購入の方針について決めていただくこととなった。 (6)課題  基本的に、パソコン利用の際は、音声と画面の併用で、点字が補助的な手段となっている。画面や音声について、ご本人と相談しながらある程度のカスタマイズは行ったが、もっとよりよい設定があるのではないかと気になっている。次回は、その辺も含めて、もっと突っ込んで聞いてみたいと思っている。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成25年11月30日(土) 13:30〜17:00 第6回 平成25年12月 1日(日) 9:30〜12:30、13:30〜17:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker8、MyMailV 通信機器:ご自宅のインターネット (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・パソコンの購入と初期設定。 ・無線ルーターの購入と設定。 ・MyMailの添付ファイルの開き方。 地域の指導者に対して ・ソフト購入に際しての助成金申請手続きの手順。 (5)成果  今回の講習の直前に、ご自宅にすでにインターネット契約があることが判明した。「初心者」として申し込んだため、すでに契約があるとはなかなか言い出せなかったとのこと。またパソコン購入についても、そのことが引っかかっていて躊躇していた模様。全く問題がないことを伝えると、早速パソコンを購入することとなり、最寄りの家電量販店に出かけた。  東芝、NEC、富士通、ソニー、パナソニックと、順番に触って行き、協会から貸与されている東芝のパソコンに類似したものと、NECの同性能の機種の2機種に絞り込まれた。結局、キーの押しやすさや好みの色があったこと等から、NECのノートパソコンを購入することとなった。また、自宅のインターネットは有線のみであることから、無線ルーターも同時に購入した。  パソコンを購入したものの、まだPC-TalkerやMyMailを購入していないため、初期設定のみを行い、それらソフトの助成金申請についてご本人及び支援者に対して説明を行った。週明けにすぐ役所に問い合わせていただくこととなった。また、今回点字ディスプレイの申請は見送られた。  他、協会からの貸与パソコンにて、MyMailの添付ファイルの保存及び実行を行い、2回目にはスムーズにできるようになった。 (6)課題  購入したパソコンを設定する中で、Microsoft Wordの利用も考えておられることが判明した。したがって、さらに画面を重視して設定等を行う必要があると考えている。またご本人は点字利用も考えておられるようだが、パソコン利用時はほとんど点字ディスプレイに触っておらず、画面と音声を頼りに操作を行っているため、今回の購入リストから点字ディスプレイは外すこととなった。ただ、今後の視力の状況を踏まえて、どのような提案がベターなのかがまだ見えていない。 (7)所見  第5回目でパソコン購入となったため、今回の講習ではすべてのセットアップができなかった。したがって、各種ソフトが揃った時点で再度訪問し、セットアップを行うと共に、その方法について支援者とも共有したいと考えている。 第7回、第8回 (1)期日 第7回 平成26年1月12日(日) 9:30〜12:30、13:30〜17:30 第8回 平成26年1月13日(月) 9:30〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:購入したノート型パソコン(Windows 8.1) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:ブレイルテンダー ソフトウェア:PC-Talker8、MyMailV、Microsoft Word 2013、Internet Explorer、老眼マウス 通信機器:ご自宅のインターネット (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・MyMailの添付ファイルの開き方と保存。 ・Microsoft Word 2013のキーボード操作と画面調整。 ・Internet Explorerのキーボード操作と画面調整。 地域の指導者に対して ・MyMailの添付ファイル保存先フォルダの設定方法。 ・Windows画面調整方法。 ・老眼マウスの仕組み。 (5)成果  購入したPC-Talker及び関連ソフトのインストールを行い、続けて協会より貸与されているパソコンよりデータの以降作業を行った。また、検討していた点字ディスプレイ購入については、ブレイルメモスマート40が発売されるのを待って購入することとなった。  データ移行後は、すべて購入したパソコンで講習を行った。MyMailの添付ファイルの開き方及び保存の方法について講習を行い、スムーズに行うことができるようになった。(後日保存先のフォルダがDVDドライブになってしまうという現象に見舞われ、電話にてドライブ及びフォルダの設定方法について、支援者及び本人に追加講習を行った)  その他、Microsoft WordやInternet Explorerを音声と画面の併用にて利用したいというニーズがあり、キーボードによる起動と終了及び文字サイズの調節方法について学習した。Microsoft Wordについては、まだ視力があるときに、老眼マウス等を併用しての利用経験もあるため、今後音声と画面の併用環境については、支援者の協力も得ながら少しずつ習得していきたいとのことである。  最後に、ご本人のいちばん見えやすい画面設定及び文字サイズを調整して講習を終了した。 (6)課題  貸与されたパソコンより、購入したパソコンのスピーカーの性能が悪く、最初は聞こえないかもしれないという不安があった。結局、補聴器のマイクの置き方を工夫することで、十分聞き取れることが分かった。しかし、店頭で検討する際、きちんと音を確認することも必要であったと大いに反省させられた。  視力や聴力の状況が今後どう変化するかで、現状の音声と画面の併用環境も見直しが必要になるかもしれないと考えている。そのため、点字使用も視野に、点字ディスプレイの購入も検討しているが、大きな環境の変更に際してはさらなる支援が必要であるように思う。とにかく、今回の講習では、音声・画面・点字とすべて併用して進めたため、どれも深く掘り下げることができなかったように感じている。こうした環境の盲ろう者へのサポート方法を、もっと工夫していかなければならないと思っている次第である。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成25年10月5日(土)〜平成26年1月31日(水) (2)指導回数 全6回 (3)指導時間 計60時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月5日(1回目) ・インターネットに接続できなかったので、講師に連絡して電話で指導していただいた。最終的には玄関で接続できたが、別のルーターが送られてくることになった。ネットワークの接続が悪かった為、スムーズに進められなかった。特に午後から接続状況が悪くなる。そのため、今回はキーボードの位置に慣れることと、操作手順の確認を重点に学習した。 ・パソコンのメール送受信にあたっての操作手順の確認。操作手順はだいたい覚えているが、キーボードの位置に慣れていないので、目印に付けた点字シールを読む時に他のキーに触れてしまう。点字シールの代わりに色々な絵柄の凸面シールを貼り、分かりやすくした。何回か繰り返して、キーボードの位置に慣れるように練習した。 ・2台のパソコンで送受信。受信ボックスからの返信でメールのやり取りをした。 ・新規メールの作成は、途中でインターネット接続状況が悪くなり、できなかった。 ・読んでいく中での色々な機能の使い方の確認、文字の拡大、カーソルキーの移動(矢印キー、文頭へ移動)。 10月14日(2回目) ・パソコンメールの「受信」「受信ボックスからの返信」「新規メールの作成」を何回か繰り返し練習した。操作手順はだいたい覚えた様子。キーボードのタッチも、前回の学習の時に、キーボードの凸面シールを貼ったので、割合スムーズにできている。シールを貼っていないキーボードは、まだ慣れていないが、これから練習をしていく中で慣れてくると思う。 ・MyNewsの操作手順の確認。 ・MyRouteの操作手順の確認。1回だけ起動してみた。インターネットの接続ができなかったので、操作手順の確認を行った。 1月5日(3回目) ・今までの総復習(操作手順の確認)をした。分からない、または、あいまいなところは、操作手順メモを見ながら一つ一つ確認しながら行い、ほぼクリアできた。 ・MyMailVについて。新規メールの作成、受信ボックスからの返信。受信したメールからアドレス帳に登録、アドレスの新規登録と修正。ボックスの新規作成、受信したメールをボックスへ移動、ボックスの削除。 ・スタートメニューの並び替え ・MyNewsでのスピード調整の操作確認、文字の大きさの調整の操作確認。 ・MyRouteの起動。 1月23日(4回目) ・新しく購入したパソコンでの操作手順の確認。 ・USBメモリの取り付けと外し方。講師から携帯メールで指示を頂いていたのを見ながら、操作した。 ・ドキュメントからUSBメモリへの保存。 ・アドレス帳の登録(受信したメールから登録)、直接入力による新規登録、削除、修正。 ・何度も繰り返し練習をした。新しいパソコン(Windows 8)を使うのが初めてなので、使い方がよく分からないのと、まだ、キーボード操作に慣れていないため、操作をしている時に、どこかのキーに触れてしまうのか、急に画面が変わってしまい、戸惑うことが多かった。 1月29日(5回目) ・MyMailVのアドレス帳に登録されたかどうかの確認操作では、アドレス帳の氏名を50音順に並べたかったが、うまくいかず残念。 ・添付ファイルの保存。添付ファイルをUSBメモリへ保存する操作、保存したドキュメント内のファイルの名前を変更する操作もできた。 ・メールを作成し、添付ファイルを挿入して送信する練習をしたが、「現在のフォルダ」を音声で自分が送信したい添付ファイル名を言うまで、下矢印キーを押したが、なかなか音声が聞き取りにくい。最終的には送信できた。 ・メニューバーの文字は、サイズを大きくしてもらったが、リボンの文字や絵は小さくて見にくいというので、別の紙に手描きで拡大表示した。 ・ワードの文章作成の復習。字体とフォントの設定はクリア。ページレイアウトで、ユーザー設定により、余白を[ Tab ]と下矢印キーで変更する練習。 ・前回はキーボードの操作がまだ慣れず、他のキーに触れてしまうことが多かったが、今回はミスの回数が減った。ショートカットキーの位置を覚えきれていないが、慣れてくれば色々新しい操作に挑戦するだろうと期待できる。 1月31日(6回目) ・これまでの内容の後半部分の総復習と、訓練中に利用者が知りたがっていた新しい操作法を指導した。 ・メモ帳の出し方の操作。メモ帳のある場所というより、アクセサリがどこにあるのかを探すのに、かなり時間がかかっていた。 ・操作中に、ミスタッチのため日本語音声読み上げが英語に変換されてしまった。ナレーターの設定変更にたどり着くまで、さらに時間がかかったが、ようやく[ Windows ]+[ c ]で戻せた。 ・画面拡大縮小、文字拡大縮小のショートカットキーに用いる[ + ]と[ - ]の使い方の復習。スムーズに操作完了。 ・インターネットで必要な資料の検索方法。入力すると漢字変換例がたくさん出てきて、字が大きく見やすいので「便利!」と喜んでいた。 ・インターネットにより必要な資料の全印刷、及び範囲指定印刷。必要な画面の印刷方法はいくつかあるが、ファイルを表示→開く→印刷が利用者は慣れているので、その方法を一つ一つ確認しながら操作した。 3-3-3 Cさん 1.受講盲ろう者について (1)性別:男性 (2)年齢:50歳代 (3)障害の程度:弱視難聴 (4)受障歴 聴覚:40年前、両耳の手術を3回受け徐々に聴力が低下。右は聞こえず、左に補聴器を装着。 視覚:緑内症のため40歳代前半から徐々に見えにくくなった。現在は、右は見えず、左目の左上で見ている。白濁あり。 (5)コミュニケーション方法 受信:音声 発信:音声 (6)点字の触読 不可 (7)使用文字 墨字。拡大読書器を使用。新聞の見出しの大きさなら読める。 (8)パソコン等の経験 あり。仕事で20年くらい前に使用していたが、それ以降経験がなくほとんど忘れてるとのこと。ワープロの経験も有り。 (9)志望動機 家族の介護を抱え、外出の機会に制限があるため、メールで仲間とコミュニケーションができるようになり、インターネットで情報を見られるようになりたい。 (10)希望機種 パソコン(拡大画面) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 高橋 信行 (2)地域の指導者および通訳・介助員 3名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン:なし その他:なし (2)全国盲ろう者協会より貸与した機器・ソフトウェア (受講盲ろう者と地域の指導者に下記の機器を1セットずつ、計2セットを貸与) パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 外部入力機器:なし 外部出力機器:なし 点字情報機器:なし 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成25年10月28日(月) 14:00〜17:00 第2回 平成25年10月29日(火) 10:00〜13:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 7) 入力機器:なし 出力機器:なし ソフトウェア:拡大鏡、でかポインタ、あんだーまうす君、tarzanMouse、メモ帳 通信機器:なし (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @パソコンの各部名称の確認。 A電源の投入。 Bハイコントラスト表示の設定。 C文字サイズの設定、操作方法。 D拡大鏡の起動と設定、操作方法。 Eマウスポインタの視認性の確認および支援ツールの決定。 Fカーソルの太さの調整。 Gメモ帳の起動方法。 Hホームポジションの確認とローマ字入力の指導と練習。 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 @パソコンの各部名称を一通り理解できた。 A電源を投入できるようになった。 Bショートカットを用いて、ハイコントラスト表示に設定できるようになった。 C文字サイズを変えながら、適切な文字サイズを模索した結果、100ポイントであることが分かった。 DWindows拡大鏡を起動し、表示モードの変更、表示倍率、拡大部の移動などの方法を理解した。 Eマウス操作支援ツールを一通り試し、各々の使い方や特徴について理解できた。 F文字カーソルを太くし、見やすく設定できた。 Gメモ帳を起動と終了操作ができるようになった。 Hホームポジションに指を置き、ローマ字入力にて、文字入力することのやり方を理解した。 (6)課題 ・メモ帳で日本語入力がスムーズにできるようになること。 ・支援者の指導でメールの送受信ができるようになる。(できる範囲でよいので) ・支援者による操作でtarzanMouseのショートカットをスタートアップに入れること。 ・ノートパソコンのディスプレイでは小さいので、外付けの24インチディスプレイを用意する。 ・ノートパソコンのキーボードは使いづらいので、外付けのキーボードを用意する。 ・ノートパソコンのマウスパッドは無意識に触れて予期しない動作をするので、外付けのマウスを用意する。 ・今後、支援者と密にメールで連絡を取り合い、効果的に指導していく。 (7)所見  真面目に意欲的に取り組めた。  Windows拡大鏡で拡大することで文字を判読できるが、Windows拡大鏡を使ってスムーズにPCの操作ができるかどうかは今後の慣れや取り組みによるだろう。  現在、文字入力カーソルがどこにあるか、マウスポインターがどこにあるかを、効率的に認識できるようになると良い。  引き続きパソコンの操作ができるようになることを楽しみながら上達してほしい。  とにかく慣れることが大事なので、毎日少しずつでも触っていただきたい。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成25年11月30日(土) 11:00〜12:00、13:00〜17:00 第4回 平成25年12月1日(日) 10:00〜13:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ノート型パソコン(Windows 8) 入力機器:外付けキーボード、外付けマウス 出力機器:外付けディスプレイ ソフトウェア:NVDA、拡大鏡、でかポインタ、メモ帳 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @メモ帳の操作の復習。  ・ホームポジション  ・漢字変換  ・マウスの使い方  ・終了の方法  ・適正文字サイズの確認と決定 AスクリーンリーダーNVDAを使ってのメモ帳操作。  ・起動  ・入力  ・保存  ・フォルダ検索  ・終了 Bメールアカウント設定。 C今後の機器購入について。 地域の指導者に対して ・操作に時間がかかるため待つことの支援の重要性。 ・ショートカットキーのメリットについて。 ・スクリーンリーダーの音声が終わるまで指示、アドバイスは待つ。 ・専用用語は、一貫して同じ言葉を使う。 ・原則を指導する。 ・今回の復習を繰り返ししてもらいメモ帳を使ってなんでもできるようにする。 ・本人のやる気を維持していく。 (5)成果 ・メモ帳を起動して、文章を打てるようになった。 ・ホームポジションと漢字変換ができるようになった。 ・マウスの位置を掴むのが難しいので、拡大鏡を固定し、でかポインタを使用することで解決した。 ・文字フォントをMSゴシックに設定することで、文字の判別が改善した。 ・地域の支援者からスクリーンリーダーの要望が有り、ダウンロードし、ディスプレイを消して音声でのメモ帳の操作をした。よく聞き取れていたが、手順に迷ったところがあった。外付けマウスの操作に慣れてなく、長押しに注意するように指導した。ダイアログが出た時、[ Tab ]でフォーカスを移動しボタンの数を確認したことで、スクリーンリーダーの活用法がより理解できた。 (6)課題 ・協会から貸与されている機材は、年末を目途に返却することになるので、次回までに新しいパソコンを準備する。 ・ネット回線を用意しておく。 ・スクリーンリーダーの音声を聞きやすいように、相応のスピーカーを準備する。 ・拡大鏡を使うとフォーカスされてる所が分かるので、音声との併用に慣れてもらう。 ・[ Tab ]と[ Alt ]はよく使うので、キーボードに印を付ける。 (7)所見  ご本人、支援者共に熱心に取り組んでいる。  当初、拡大鏡とマウスを活用しての操作を予定していたが、思ったより難しそうであること、ご本人の視力に将来的な不安があり、できる限り画面を使わないで操作できるようになりたいという希望もあることから、スクリーンリーダーと画面を併用する形で進めていくこととなった。  次回は最後の指導となるので、環境整備を急いでもらうこととした。  支援者とはメールで連絡を取り合いながら、できるだけスムーズな支援ができるようにしていきたい。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成25年12月21日(土) 14:00〜17:00 第6回 平成25年12月22日(日) 10:00〜13:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ご本人が購入したノート型パソコン(Windows 8) 入力機器:外付けキーボード、外付けマウス 出力機器:外付けディスプレイ ソフトウェア:NVDA、拡大鏡、でかポインタ、tarzanMouse、メモ帳、イージーパッド 通信機器:ご自宅のインターネット (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @購入したパソコンのGUI最適化確認。 A項目の変更と音声スピードの変更方法。 Bマウスホイールの使用方法。 C聞きとりやすい合成音声の種類の確認。 Dホームページ閲覧デモンストレーション。 Eメールの受信。 F未読と既読の確認方法。 Gメールの返信。 Hアドレス帳の登録。 地域の指導者に対して @パスワード入力を設定しているが、必要なければ解除する。 A支援者がスムーズに指導できるように支援者もイージーパッドをダウンロードし、自宅のパソコンにインストールして使えるようにしておくことの必要性。 B購入したパソコンの速度が遅いことから、メモリの増設の指示。 (5)成果  支援者の早い対応のお陰で、パソコンの購入とインターネット接続環境が整えられ、ホームページ閲覧とメール送受信の指導ができた。  Yahooを使ってホームページの仕組みや楽しみ方が理解できた。  YouTubeで好きな歌手の歌を聞くという体験をしたことで、モチベーションを高めた。  100ポイントのサイズの文字が最も読みやすいと言うことで、拡大鏡を使わずそのサイズで操作できるメーラーを模索した結果、イージーパッドが最適であった。その結果、操作が簡単で文字の大きさも適合し、基本的なメール操作を一通りマスターすることができた。 (6)課題  キーボードの位置をまだ確実に覚えていない為、依然として支援者のサポートを必要とする場面がある。  パスワード入力の時、誤って[ NumLock ]を押し、オフにしてしまうので、ログインに手間取ることがある。今後、必要がなければ解除したほうがよい。  拡大鏡とスクリーンリーダーをうまく併用しながら操作に慣れてほしい。  購入したパソコンの速度が遅いので、メモリの増設をする。  メールの送受信がスムーズに行えるようになる。  メーリングリストに登録したので、メーリングリストの活用ができるようになり、全国の盲ろう者とメールを使ったコミュニケーションができるようになる。 (7)所見  ご本人、支援者ともに熱心に取り組めた。  特に最終回までの課題であった、パソコンの購入とネットワーク環境の構築がなされていたことは、意欲の高さの表れ以外何ものでもない。  いくつかのメーラーを試行した結果、イージーパッドが最適であったので、今後使いこなせるように取り組んでほしい。  ご家族の介護その他で、日常の外出が困難なだけにウェブを活用して、全国の盲ろう者、支援者との輪を広げていただき、地域の盲ろう者福祉の増進にますますご活躍されることを期待する。 第7回 (1)期日 第7回 平成26年1月18日(土) 9:30〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン:ご本人が購入したノート型パソコン(Windows 8) 入力機器:外付けキーボード、外付けマウス 出力機器:外付けディスプレイ ソフトウェア:NVDA、でかポインタ、メモ帳 通信機器:ご自宅のインターネット (4)講習内容 受講盲ろう者に対して @パソコン電源の切り方。 Aマウスの確認。 Bマウス操作タイミング。 Cメール読み書き操作確認。 Dメモ帳におけるファイルの開き方。 地域の指導者に対して @トラブルが起きた際、道筋を立てて考えることが大切である。 Aどうして良いか分からなくなり、混乱したときには、パソコンの電源を一度切って、再度電源を入れ直してから操作させること。 Bメールの送受信やメモ帳でのデータ入力など、同じ操作を繰り返し行うことで操作方法を定着させてほしい。 (5)成果 ・電源ボタンを押した時の挙動を、休止状態からシャットダウンするよう変更したことで、トラブルを少なくすることができた。 ・赤色のマウスポインタを希望されたので、赤でかポインタを使用することで視認性がアップした。 ・マウス操作の際、スクリーンリーダーを併用することで、対象オブジェクトが読み上げられるようになった。その結果マウス操作の利便性が高まった。 ・再度、メール操作の確認を行った結果、メール操作の確実性が高まった。 ・メモ帳でファイルを開く操作が困難であったが、キー操作によりファイル一覧を選択して開く方法を指導した結果、目的のファイルを開くことができるようになった。 (6)課題  トラブルが起こった時に、支援者がWindows 8に習熟していないため、解決が難しい。そこで現在の支援者以外に、アドバイスが受けられそうな人の協力を得たいところであるが、現在のところそれも難しいようである。  今後、パソコンボランティア等と連携できると良いと考える。 (7)所見  ご本人、支援者共に真面目に一生懸命取り組んで、一定の成果が得られた。一方、操作方法や指導方法の方向性がなかなか定まらず、キーボードのみで操作するのか、マウスを併用するのか、スクリーンリーダーをどの程度併用するのか、といったあたりは曖昧さを残した。  今後、更に視力が低下することも予想されるので、できるだけ、スクリーンリーダを主体としたキーボードのみの操作で慣れていただけることを期待する。そのためには、支援者が盲ろう者の操作方法を理解・実践できることが重要だろう。よって今後、目が見えて聞こえる支援者がそうした技術を身につけられるような指導プログラムの開発が望まれるところである。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成25年10月1日(火)〜平成26年1月19日(日) (2)指導回数 全19回 (3)指導時間 計60時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月1日(1回目) ・モニターに映るウィンドウが大きすぎるため、どこに何があるか分からず、スクロールできない。そのまま、スイッチの入れ方などの練習をする。元に戻す作業も色々したが、パソコンが動かなくなる。 ・メモ帳は[ n ]を押せば出るが、モニターの文字が小さかった。そこで、利用者が判読できる60ポイントに文字を拡大し、メモ帳を出して、ひらがな入力の練習をした。 ・キーボードのキーの位置が、どこにあるか分からず、操作が止まってしまう。来週、印を付ける予定。 ・音声を出したくて色々試したが出なかったので、キーボードに慣れるように文字打ちを繰り返す。 ・マウス操作は、無理とのこと。 10月22日(4回目) ・メモ帳の文字数の見やすさや、漢字変換のしやすさを考慮して、3行×7文字表示にするなど、画面設定を色々変更。 ・マウスは使わない方向で操作方法を模索するが、大変難しい。 10月29日(5回目) ・タックペーパーを貼ったキーについては、かなり位置を把握できるようになってきた。 ・メモ帳の画面変更を、さらに利用者が見やすいようにし、入力練習を行った。 ・入力する字の大きさは何とか見えるが、マウスを使って保存しようとすると、字が小さいためマウスが見えず、保存メニューを選択できないため、保存できない。マウスポインターを大きくする練習も幾度も行ったが、結果は変わらず。 11月12日(7回目) ・メールアドレスの設定を行う。Outlookの説明に従って行うが、できなかった。次週、もう一度試みる。 ・文書の新規作成、文書の保存、再保存、読み込みといった操作を、ショートカットキーを使用して幾度も練習。かなりの数の文書ができて、利用者のパソコンに対する不安が消えてきた。操作も上達している。 11月19日(8回目)  音声が出れば、利用者は、いま何の画面が出ているか確認しながら操作できる。音声がないと、これ以上の操作は、利用者にとって難しいと思うので、音声の出し方を講師に尋ねている。 12月3日(10回目) ・音声、および拡大文字での操作練習を行った。 ・最初、音声はスピードが少し速かったので、拡大文字の方が良かった様子。後に、音声の速度を遅くした。 12月17日(12回目) ・業者によるインターネット接続に立ち会った。メールの受信がうまくいかず、時間がかかった。 ・新しく購入したパソコンは使わず、メモ帳での新規作成、保存、読み込みなど、キーボード操作を重視しながら復習。 12月24日(13回目)  毎日繰り返しメールを送信することが練習になるが、少し違ったキーに触れて、利用者が色々押してしまうと、画面が止まってしまうことがある。指導は、これからが時間のかかる作業になっていくと思われる。 1月12日(16回目) ・メール作成、送受信の操作を復習。 ・間違った操作をしたとき、あせって色々キーを押してしまい、違う画面が出てきてしまう。そこから元の画面に戻れない。 ・まだ、メール操作を完全にマスターできていないが、利用者は意欲的に取り組んでいるので、寄り添って指導を続けたい。 1月17日(18回目)  明日、講師が指導に来られるので、聞きたいことや、設定を直してほしいところを一つずつ確認。その結果、@マウスポインターをもっと見やすくできないか、A間違ったキーを押した結果、画面が変になり、元に戻せなくなったときの対処法、以上2点を尋ねることにした。 1月19日(19回目) ・昨日の講師による講習内容を復習。 ・困ったときは電源ボタンを押して、パソコンを再起動させて元に戻す。 ・マウスポインターの色を赤くしてもらったことで、スムーズに操作できるようになり、インターネットもこれまでより読み進められる。しかし、複雑なページでは、どこにいるのか分かりづらくなる。サイトによって見やすさが異なるため、見やすいサイトを今後調べていく必要がある。 ・メールは、キー操作をしっかり習得できれば、十分コミュニケーションツールとして使える。 ・キー操作をきちんと覚えて、足りないところは音声とマウスを使っていけると良い。 ・今後も、利用者がパソコンを使いこなせるように、できるかぎりサポートしていきたい。Windows 8の指導書ができたら、そちらも参考にしつつ、今後も頑張っていきたいと思う。 3-4 個別訪問指導報告(ブレイルセンス編)  4名の受講盲ろう者の内、1名に対してブレイルセンスの指導を行った。 3-4-1 Dさん 1.受講盲ろう者について (1)性別:女性 (2)年齢:40歳代 (3)障害の程度:盲難聴 (4)受障歴 聴覚:20歳代から徐々に聴力が低下、現在右103dB、左90dB程度。 視覚:先天性の弱視。4年前に進行して現在は右目は手動弁、左目は光覚。墨字は読めないが、人影はなんとなく分かる程度。 (5)コミュニケーション方法 受信:音声、手書き文字。 発信:音声 (6)点字の触読 4年前に点字を習い、現在は日常的に点字での読み書きは可能。 (7)使用文字 点字 (8)パソコン等の経験 20歳ごろから会社でパソコンを使用した経験あり。現在はPC-Talkerで音声ガイドを聞きながらインターネットは可能。ただし静かな環境でないと聴き取れないため、使える時間帯が限られており、2、3日に1回程度しか使っていない。 (9)志望動機 騒がしい環境の中や外出中に、メールの送受信やインターネット、また、理療学校でのメモを取るのにブレイルセンスを活用したい。 (10)希望機種 ブレイルセンス 2.講師および指導者 (1)講習会講師 渡井 秀匡 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン:デスクトップ型パソコン(Windows 7)。 その他:なし (2)全国盲ろう者協会より貸与した機器・ソフトウェア (受講盲ろう者と地域の指導者に下記の機器を1セットずつ、計2セットを貸与) 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:小型液晶ディスプレイ 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 第1回 (1)期日 第1回 平成25年9月22日(日) 13:00〜17:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:小型液晶ディスプレイ 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・本体の確認 ・キー配置の確認 ・ブレイルセンスの起動と終了 ・メインメニューの選択 ・電子メールの起動と終了 ・モバイルルーターの使用法 ・メールの受信とメール本文の読み方 ・差出人や送信日時等の確認方法 ・返信メールの作成と送信 ・バッテリー残量の確認と現在時刻の確認方法 地域の指導者に対して ・キーの名称等について ・音声出力や小型液晶ディスプレイの使用法について ・モバイルルーターについて ・点字表示の内容について ・オプション設定のチューニング (5)成果  パソコンの経験があるため、各部名称を伝えるだけで各キーの役割を理解されていた。また、メールの送受信の一連の操作は比較的スムーズにできた。しかし、各コマンドを実行する操作、[エンター]や[スペース]を押しながら点字キーを入力する方法に戸惑っていた。後半にはスムーズに押せるようになっていた。  点字の触読はアルファベットの点字もスムーズに読めており、現在位置の状態を通知するコントロール情報も表示したままの方が良いということで、変更しなかった。  音声や警告音などは聴こえないため、オプション設定で音関係は鳴らさない設定に変更した。 (6)課題  受講盲ろう者の希望では、電車を利用する時、現在どの駅を通過しているのか分からなくなることがあるので、GPS機能も使ってみたいとのお話しがあった。取扱元の有限会社エクストラに確認したところGPSナビやGPSレーダーは衛星から位置情報を取得しているので、どうしても誤差が出てしまうため、移動中の現在位置の検索はお勧めできないとの回答があった。そのことをお伝えしたところ、GPS機能は諦めて他の方法を考えることになった。 (7)所見  日常生活の中でブレイルセンスを活用したいとの希望があったので、ニーズの高いものからできるかぎりたくさんのソフトを学んでいただけるように準備したい。 第2回 (1)期日 第2回 平成25年9月29日(日) 13:30〜16:30 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:なし 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・ハードリセットの方法 ・オプション設定の復旧 ・ネット接続の方法 ・無線LANのオン/オフの切り替え ・差出人のアドレスを登録する方法 ・アドレス帳の検索と登録方法 ・文字列のコピー&ペースト ・新規メールの作成と送信 ・送信済みフォルダや送信前フォルダの確認方法 ・メールの削除方法 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  ブレイルセンスが固まってしまったり、インターネットに接続できなくなったなどのトラブルが起きた時の対処方法を学習した。  1週間使ってみてバッテリーが早くなくなってしまうとの相談があった。メールの送受信やインターネットを使わない間は無線LANをオフにして使う方法を学んでもらった。  メール本文にメールアドレスが貼り付けられていることがあるので、その文字列をコピーしてアドレス帳に貼り付ける操作を覚えてみたいとの希望があったので、急きょ文字列のコピー&ペーストの操作方法を学んでもらった。  メール一覧やフォルダの選択を[スペース]+[ 1 ]の点と[スペース]+[ 4 ]の点で行う操作は、時々失敗するので、確実に選択できる方法がないのかという質問があった。そこで、オプション設定より、この操作キーを[左スクロール]に割り当てる設定に変更した。その後はメール一覧やアドレス帳の検索結果一覧の選択の操作がスムーズにできるようになった。 (6)課題  講習会を行っている福祉施設の部屋によってモバイルルーターでの通信がうまくいかなくなることがあったので、電波の届きやすい部屋に変更してもらった。 (7)所見  学校の授業でノートを取るのにブレイルセンスを活用したいとのお話があったので、次回はワードプロセッサーやファイル管理の使い方を指導したいと考えている。 第3回 (1)期日 第3回 平成25年10月6日(日) 13:00〜17:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:なし 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・メールの検索 ・基本文書の変更 ・ワードプロセッサーの操作 ・簡単スケジューラの操作 ・ファイル管理の操作 ・時計設定 ・クイックブラウザの操作 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  受信フォルダのメールが溜まって探すのに苦労しているとのお話があったので、メール一覧での検索の仕方を学習した。また、メール一覧の一番上への移動や一番下への移動などのショートカットも学習した。  学校のノートは自分が復習をする時に読むだけなので、ブレイルメモのように[エンター]なしでメモが取れるようにしてほしいとの希望があった。ワードプロセッサーの基本文書をテキスト文書から点字文書に変更することでブレイルメモのようにメモが取れるので、基本文書の文書の種類の変更の仕方を学習した。  オプション設定の基本文書の種類を点字文書に変更した後、ワードプロセッサーを起動して点字入力のみでメモが取れることを確認した。また、ワードプロセッサーで文字列検索による移動やファイルの保存方法、上書き保存などを学習した。  ファイル管理からワードプロセッサーで保存したファイルを開く方法、ファイルのコピーや削除の操作などを学習した。  その他に簡単スケジューラや時計設定、クイックブラウザでのGoogleの検索などを学習した。 (6)課題  時々思ったとおりの状態になっていないことがあり、混乱することがあった。操作が早すぎてキーが押されていないことがあったので、特にコマンドを実行する時は気持ちゆっくり目に操作するよう心がけてほしいと伝えた。  貸し出ししているモバイルルーターの電波状態が不安定なので、講習会を行っている福祉施設にある無線LANを借りたところ安定して通信ができるようになった。なお、通学中の電車の中や学校では問題なく使えているとのお話なので、エリアの問題があると考えられる。 (7)所見  ご本人はブレイルセンスの貸し出し期間中にいろいろ試してみたい気持ちが強いようで、いろいろ質問があり講習のペースが早くなってしまった。しかし、講習会終了後、どのソフトでどのように操作するのか分からなくなったと報告があったので、次回は復習を入れながら少し押さえ気味に講習を進めていきたいと考えている。 第4回 (1)期日 第4回 平成25年10月27日(日) 13:30〜16:30 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:なし 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・アドレス帳の修正 ・無線LANの設定 ・サピエオンラインの使い方 ・点字図書データの読み方 ・設定ファイルのバックアップ 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  アドレス帳に手動で登録をしてみたが、メールアドレスに入力ミスがあったので修正したいとの質問があった。ショートカットやコマンドが分からない時は[ F2 ]([ Alt ])を押すと、様々なコマンドが並んでいるので、あまり使わないコマンド等は[ F2 ]を押して探すと良いことを伝えた。  ご自宅でも貸し出ししているモバイルルーターでは通信ができなくなることがあるので、ご自宅にある無線LANの親機に接続してブレイルセンスを利用したいとの希望があった。無線LANの追加からの設定の仕方を学習した。  サピエオンラインを使って点字図書のデータをダウンロードしているが、自分の操作手順に間違いがないか確認してほしいとの質問があったので、実際に操作してもらった。ほぼ問題なくダウンロードできていたが、途中「デイジーに変換」のところで「はい」を選択したまま[エンター]を押していたので、デイジーを聞くつもりがなければ「いいえ」に変更したほうが余計なファイルを作らなくて良いことを伝えた。  オプション設定を変更することがあるので、オプション設定のバックアップの仕方を学習した。復旧とバックアップを混同しないよう注意をした。 (6)課題  相変わらず貸し出ししているモバイルルーターが不安定なので、時折メールの送受信ができず困ったとの相談があった。 (7)所見  地域のサポーターが熱心にご本人の希望を聞きながら対応してくださっているので、新しいソフトにもチャレンジするなど、日常的にブレイルセンスを活用しているようである。 第5回 (1)期日 第5回 平成25年11月24日(日) 13:30〜16:30 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ブレイルセンスU2、ブレイルセンスオンハンド 出力機器:なし 通信機器:USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・送るメールにデータを添付する方法 ・ブレイルセンスで作成したデータをUSBメモリにコピーする方法 ・センスこうたくんの点字辞書の使い方 ・センスこうたくんの点字編集機能の使い方 ・RSSリーダーの使い方 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  以前ファイル管理の操作を覚えてもらったが、時々うまくいかないので改めてファイルのコピーと貼り付けの方法を確認した。貼り付けのコマンド[エンター]+[ V ]と入力しなければならないところを[スペース]+[ V ]と入力している場面があったので、コマンドを実行する際のキーの組み合わせを間違えないように伝えた。  USBメモリーへのコピーの仕方を学習してもらったが、時々、現在どこにいるのか分からなくなることがあった。分かるところまで[バックスペース]を押して上の階層に戻ってもらい、再度深い階層に入るようにすれば良いのではないかとアドバイスした。  ブレイルセンスで取ったメモの点字データのファイルをパソコンのMyEditに読み込んで墨字印刷すると文字化けしてしまうとの質問があった。ワードプロセッサーで作成した点字ファイルbrlでは文字化けしてしまうことが分かったので、プログラムにあるセンスこうたくん(点字編集ソフト)を使ってbes形式で保存したファイルを、MyEditに読み込んだところ問題なく墨字印刷ができることを確認した。今後は授業のメモをワードプロセッサーではなく、センスこうたくんで取ることになった。  その他、電子メールでメールにデータを添付して送る方法、点字辞書でカタカナ語の検索する方法、RSSリーダーで地元の天気予報を見る方法の操作手順を確認し、2回目は独力で操作ができた。  ブレイルセンスを持ち歩いて使用することが多いので、極力軽いものが良いということで、性能的には劣るもののブレイルセンスオンハンドの購入を検討することになった。 (6)課題  協会のモバイルルーターは不安定なので、近いうちにご自分用のWi-Fiモバイルルーターの契約・購入をすることになった。  ご自宅では音声ガイドを聴きながらパソコンの操作をしているが、静かな環境でないと利用できないので、パソコンにブレイルセンスを接続して点字を読みながら使ってみたいとの希望があった。接続の設定や使い方は地域の指導者に引き継いで試してもらうことになった。  ご本人の障害等級は聴覚障害3級であるため、点字ディスプレイの補助が認められないとの相談があった。 (7)所見  次回は新しいWi-Fiモバイルルーターを導入してブレイルセンスの講習を進めていきたい。また、ブレイルセンスの購入についても相談したいと考えている。 第6回 (1)期日 第6回 平成26年1月18日(土) 13:00〜16:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器:ご本人が購入したブレイルセンスオンハンドU2ミニ 出力機器:なし 通信機器:ご本人が購入したWi-Fiモバイルルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して ・点字データのページ間の移動 ・自分用のデータのバックアップ方法 ・ファームウェアのアップデート方法 ・クイックブラウザが起動した時のページの設定 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 ・点字データのページ間の移動 サピエ図書館からダウンロードした点字図書データを読んでいる時、ページ単位で移動したいことがあるとのことで、ページ間の移動方法を学習してもらい、理解できた。 ・自分用のデータのバックアップ方法 万一ブレイルセンスが壊れてしまった時のために、個人データのバックアップ方法を学習してもらった。主に、アドレス帳のファイルaddress.dat、アカウント設定のファイルServiceData_new.hdb、無線LANの設定ファイルProfileList.dat、RSSリーダーの登録リストファイルRssList.datをSDカードにコピーする操作手順を覚えてもらった。その他簡単スケジューラやお気に入りなどを利用している場合はそれぞれのフォルダをバックアップしておく必要があることを伝えた。 ・ファームウェアのアップデート方法 ファームウェアのアップデートにはオンラインとオフラインの二つの方法があることを紹介したが、オンラインはネット環境によって失敗することが多いので、ファームウェアの圧縮ファイルをクイックブラウザ等でダウンロードして、本体付属のファイルをSDカードにコピーし、オフラインでアップデートする方法を勧めた。実際に、クイックブラウザでダウンロードする操作とSDカードへのコピー、アップデートの作業を覚えてもらった。 ・クイックブラウザが起動した時のページの設定 購入時はクイックブラウザを起動すると、ブレイルセンスの会社エクストラのホームページが表示されるため、Googleの検索ページが表示されるようにしてほしいとの希望があった。ホームのページ設定の学習をした。また、ショートカットが分からない時は[ F2 ]([ Alt ])によるメニューから各コマンドを確認できることを紹介し、その操作方法も確認してもらった。 (6)課題  希望されていたことのほとんどは学習できたと思われるが、GPS機能は使っていただくことができなかった。ご本人は現在地をブレイルセンスで確認したいとのことだったが、メーカーに確認したところ、誤差があるので正確な場所を知るために利用するのは避けたほうが良いとのお話だったので、そのことを説明したらご本人も納得して学習しなかった。 (7)所見  地域の指導者が熱心にサポートしていただけるので、今後も引き続き新しいアプリケーション等がリリースされてもサポーターによる支援が得られるものと期待できる。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成25年10月2日(水)〜平成25年12月29日(日) (2)指導回数 全12回 (3)指導時間 計60時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月2日(1回目) ・アドレス帳へのアドレス登録、修正、削除の操作の復習。 ・メールの新規作成。 ・アドレス帳に登録したメールアドレスからメール作成。 ・ワードプロセッサでの文書ファイル作成。 10月9日(2回目) ・ファイルのフォルダ間コピーがうまくできない。移動させたいファイルを選択する操作が抜けていた。移動させたいファイルが表示されたら、[スペース]で選択操作をした後に、コピー、フォルダ移動、貼り付けの操作をすればよいことを確認。その後は1人で操作できた。 ・グーグル検索での検索結果の表示以降の操作確認。 ・乗り換え案内の基本操作の確認。 10月16日(3回目) ・歌詞検索サイトでの検索文字の入力、および結果表示の確認。歌詞の部分がflashで表示されているため、読み上げられない。後日、別のサイトを探してみることに。 ・ツイッターで、ユーザーの検索とフォロー操作の確認。 11月6日(5回目) ・利用者から以下の質問があった。  @オンハンドの点字入力をPCで文字表示できるか?(Brlファイルをテキストファイルに変換)→オンハンドではできそうになく、MyEditで仮名表示できることを確認した。  Aオンハンドで入力したら無線LANでプリンターに送って印刷できるか?また、NVDAでオンハンドをPC用点字キーボードとして使いたい。→プリンターのUSB接続用ドライバーをホームページからダウンロードすればできそう。次回に持ち越しとなった。 11月13日(6回目) ・利用者から以下の質問があった。  @添付ファイルが読めない。エクセルファイルだからか?→PCに送って(USB等で)ワード等に変換し、そのままPC上で読むか、オンハンドに戻して読む。  Aアドレスが時々変わってしまい、送付できない。→アドレスの最後が削除されてしまっているようだった。講師からのアドレス修正のメールを参考にして修正。アドレスが消えないよう、検索方法を復習した。  B無線LANの状態の確認。オンになっているかどうか。オフになっている場合のオンにする方法。→クロッシーのSSIDが見えず、確認できなかった。  C操作途中でキーが利かなくなる。復旧の仕方を復習。 11月20日(7回目) ・利用者から、バスの時刻表検索をしたいとの要望があった。県のホームページから駅入力まで行くが、時刻表検索に辿り着けない。そのうちネットがつながらなくなる(クロッシーの点灯が消えており、何度かつなげようとしたが、だめだった)。 ・地域指導者のPCとオンハンドをつないで、スクリーンリーダーのターミナル機能に接続するとつながった。しかし、PCで入力し、オンハンドで読むのは、かなり大変そうだった。 ・国語辞書の検索操作。 11月27日(8回目) ・RSSリーダーへの登録操作の確認。サイトにログインしたいが、画像認証が出てきて先に進めない。ホームページごとのレイアウトの違いを確認。  ・乗り換え検索の復習。前回まで駅名入力ができなかったが、今回はスムーズに入力できた。時刻表のページで一部分が表示されない。 ・辞書検索の復習。問題なく検索できたが、漢字表記ができないので意味を開かないと、どの漢字を表わしているのかが分からない。ディスプレイには漢字が出ているが、点字では出ていないので、どれになるのかは一つ一つ開かないと決定できない。 ・ストップウォッチ、カウントダウンを試す。 12月20日(10回目) ・Wi-Fi機器の購入候補の説明、および購入方法の確認。 ・新しいオンハンド(U2ミニ)の機能確認。 ・新しいU2ミニに移行するための準備として、現行機器の設定データのバックアップ。PCにオンハンド内のフォルダを移す。 12月22日(11回目) ・Wi-Fi機器を購入しに行く。近隣には機種がなく、別の地域のドコモショップにて購入。購入機器の説明をし、重要事項説明、書類の書き方、ネットでの手続き方法を、利用者と確認した。 ・オンハンドとWi-Fi機器の電源オン/オフの操作を確認。 12月29日(12回目) ・U2ミニとルーターの設定。既に利用者宅の無線とU2ミニはつないで、ツイッターなどをしていた。ルーターの設定(パスワード等)を行い、無事U2ミニと繋ぐことができた。 ・メールアドレスとサーバーの設定。屋内、屋外でも無事に送受信できた。 ・バックアップデータより文書データ等を戻した。 ・各種操作確認(動作確認)。ツイッター、メール、ホームページ(クイックブラウザ)、点字データダウンロード(サピエ)、自作文書の読み込みなど。 3-5 受講盲ろう者へのアンケート結果 3-5-1 パソコンと点字ディスプレイ 受講盲ろう者:3名  回答者:3名 回答率:100% 1.訓練の内容全般について、ご満足いただけましたか。 ア.とても満足 1   イ.満足 2   ウ.やや不満足 0   エ.不満足 0 2.1で「とても満足」「満足」とお答えになった方へ。どのような点が良かったですか。以下の5択からお選びください。(複数回答可) ア.役立つ情報が得られた 2 イ.日頃の生活や活動に役立った 2 ウ.スキルアップにつながった 2 エ.抱えていた問題・不安の解消につながった 1 オ.講師や地域指導者との交流・情報交換ができた 3 <コメント> ・今後、点字の必要性を感じているので、点字ディスプレイの使い方が分かって良かったです。 ・講師の人柄の良さと技術、手話まで使われているので、皆は魅了されました。 いろいろな面で良い勉強をさせていただきました。楽しい方ですね。アフターケアも良くしてくださるので、助かっています。ありがとうございました。 3.このたび3ヶ月の間、パソコン(点字ディスプレイ含む)を貸与させていただきました。   この期間についてお伺いします。    ア.長い 0 イ.ちょうどいい 1 ウ.短い(どのくらいの期間があればよかったか具体的にお聞かせください) 1 エ.回答なし 0 <コメント> ・点字ディスプレイに慣れるためにも、1年は無理としても、せめて最低半年は貸していただければ嬉しいのですが。無理でしょうか? 4.今回のパソコン(点字ディスプレイ含む)の貸与期間中に、以下の事項の中で訓練を受けたものはどれになりますか?また、その訓練中に感じたこと(難しかった、分かりやすかった等)を、具体的にご自由にお書きください。(複数回答可) ア.キーボードからのフルキー入力 1 イ.キーボードからの点字による6点入力 1 ウ.入力における漢字への変換方法 2 エ.メールの受信方法 3 オ.メールの送信方法 3 カ.ニュースの閲覧方法 2 キ.ホームページの閲覧方法 2 ク.ホームページの検索方法 1 ケ.アドレス帳への登録方法 2 <コメント> ・良かったことは、@メール操作でアドレスやボックスの作成方法、Aいろいろなショートカットキーの操作方法、Bルートや時刻の調べ方、Cusbへの保存方法を学べたこと。 ・難しかったことは、@ネットを見るのに手数がかかりそう、Aパソコンを購入し、ズームテキストが合わないとのことで、老眼マウスを入れてもらったのですが、やはり使いにくい面もあるし、見づらい(拡大文字がメニューや文字の下に隠れている)、B期間中、協会のルーターが殆ど起動せず、メール交信ができなかったこと。 5.今回の貸与期間を終了した後、引き続きパソコン(点字ディスプレイ含む)を使ってみたいと思いましたか?  ア.はい 3   イ.いいえ 0   6.5で、「ア.はい」とお答えになった方へ。今後パソコン(点字ディスプレイ含む)を使ってどのようなことをしたいと考えていますか?具体的にご自由にお書きください。   <コメント> ・メールやインターネットを使って、色々な人と話したり、ニュースを読んだり、調べものをしたい。全国盲ろう者大会で知り合った人と、メールアドレス交換をしたい。電車やバスなどの時刻なども調べたい。そのほかの機能も教えてもらえたら、ぜひ勉強したい。 ・講習会をきっかけに、自分のパソコンを購入した。まだピンディスプレイ、スクリーンリーダーを購入していないので、地元の地域指導者とも連絡を取りながら購入を検討したい。インターネットへの接続は、この講習会で使った無線LANが便利だったので、同じ方式のものを使いたい。 ・会報や資料作成などに使いたい。 ・新聞が読めなくなったので、ネットやMyNewsを活用したい。 ・点字ディスプレイを早く購入して、点字機器での触読に慣れて、それで通訳を受けられるようになるのがこれからの夢ですが、さて、何年後になることやら・・・ですね。 ・今後、インターネットやメールなどパソコンでできることは、いろいろやっていきたいと思っています。 3-5-2 ブレイルセンス 受講盲ろう者:1名  回答者:1名 回答率:100% 1.訓練の内容全般について、ご満足いただけましたか。 ア.とても満足 1   イ.満足 0   ウ.やや不満足 0   エ.不満足 0 2.1で「とても満足」「満足」とお答えになった方へ。どのような点が良かったですか。以下の5択からお選びください。(複数回答可) ア.役立つ情報が得られた 1 イ.日頃の生活や活動に役立った 1 ウ.スキルアップにつながった 1 エ.抱えていた問題・不安の解消につながった 1 オ.講師や地域指導者との交流・情報交換ができた 1 <コメント> ・自分にとって必要不可欠であることが分かり、購入に際して家族を説得できました。市の補助がないためかなりの決断が必要でした。 3.このたび3ヶ月の間、パソコン(点字ディスプレイ含む)を貸与させていただきました。   この期間についてお伺いします。    ア.長い 0 イ.ちょうどいい 1 ウ.短い(どのくらいの期間があればよかったか具体的にお聞かせください) 0 エ.回答なし 0 4.今回のパソコン(点字ディスプレイ含む)の貸与期間中に、以下の事項の中で訓練を受けたものはどれになりますか?また、その訓練中に感じたこと(難しかった、分かりやすかった等)を、具体的にご自由にお書きください。(複数回答可) ア.キーボードからのフルキー入力 1 イ.キーボードからの点字による6点入力 1 ウ.入力における漢字への変換方法 1 エ.メールの受信方法 1 オ.メールの送信方法 1 カ.ニュースの閲覧方法 1 キ.ホームページの閲覧方法 1 ク.ホームページの検索方法 1 ケ.アドレス帳への登録方法 1 <コメント> ・入力における漢字への変換方法は慣れるのに時間がかかった。 ・メールの受信方法は分かりやすかった。 ・メールの送信方法は分かりやすかった。 ・ホームページの閲覧方法は目的の情報を得るのは大変。たとえば中央交通のバスの時刻表を見たくてサポーターさんとかなり頑張りましたがうまくいきませんでした。とにかくもっと点字を早く読める必要があると思います。 ・ホームページの検索方法は、検索はできてもその先が・・・点字力をつけねばと、反省。 ・アドレス帳への登録方法は慣れるのに時間がかかった。 ・スケジュール管理(予定帳)の使用方法は分かりやすかった。 ・ツイッターやサピエダウンロードは便利。はじめは分かりにくかったが慣れれば大丈夫でした。授業のノートもとっていますし、先生からデータをいただいたり、活用しています。ただ、無線LANがつながらなかったり、オンハンドが止まってしまったり。ほとんど使えない時期がありました。 5.今回の貸与期間を終了した後、引き続きパソコン(点字ディスプレイ含む)を使ってみたいと思いましたか?  ア.はい 1   イ.いいえ 0   6.5で、「ア.はい」とお答えになった方へ。今後パソコン(点字ディスプレイ含む)を使ってどのようなことをしたいと考えていますか?具体的にご自由にお書きください。 <コメント> ・オンハンドは私にとってスマホです。いつでも好きなことを好きなだけ。学校を卒業したら読書をしたり、仕事にも使っていけたらと夢はふくらみます。貴重なチャンスをありがとうございました。 3-6 地域指導者へのアンケート結果 地域指導者(代表者):4名  回答者:4名 回答率:100% 1.訓練の内容全般について、満足な指導が提供できたと思いますか? ア.とても満足 0 イ.満足 2 ウ.やや不満足 2 エ.不満足 0 2.(1で「とても満足」「満足」とお答えになった方へ)どのような点がよかったですか。具体的にお書きください。 <コメント> ・対象者が携帯電話(メール)の経験者であり何年も前から触点字を学習しており、比較的順調に進む事ができた。メール・点字も体験していない方にどう進めていけばよいのか。未体験ですが、(考えて)どう指導すればよいのか・・・。 ・指導訪問で受けた操作方法は、だいたい指導提供できたのではないかと思います。通訳・介助員は1名ではなく二人体制なので、曖昧な点など確認し補えるので良かったです。 3.(1で「やや不満足」「不満足」とお答えになった方へ)どのような点がよくなかったですか。具体的にお書きください。 <コメント> ・送られてきたパソコンでの対応は最後まで残念ながら駄目だったこと。買ったパソコンでするのなら、最初から自分自身で買ったパソコンでの指導を盲ろう者も願ったこと。Windows 8は私たちですら難しいのにノートでは盲ろう者には無理でした。結果的に私たちはこの9月〜1月まで何を伝えたのか・・・これからが本当の意味での指導をしていかなくてはなりません。 ・オンハンドの操作方法が分からないところが多々あったため、受講者の質問に的確に回答できなかったり、操作方法を確認するのに時間がかかったところが良くなかったと思います。 4.今回3ヶ月の間、受講盲ろう者と同じ機器を地域指導者にも貸与させていただきました。このことについてお尋ねします。 4−1.機器の貸与期間についてはいかがでしたか。   ア.長い 0 イ.ちょうどいい 2 ウ.短い(どのくらいの期間があればよかったか具体的にお聞かせください) 1 エ.無回答 1 <コメント> ・最初から、本人がパソコンを買う方が良い。 ・サポートの期間中、手元に実機があったのは、質問が出たときにすぐに操作を確認できてとても良かったと思います。 できれば、サポート開始1ヶ月前くらいに一度講習をやってもらって、そこから手元に持たせてもらって予習ができればよかったと思います。特に二人でサポートする場合は片方が持っている時には片方が実機での確認ができないので、あらかじめ予習ができているといないのではかなり違うと思いました。 4−2.盲ろう者への指導に当たって、地域指導者への機器の貸与の効果はいかがでしたか。 ア.とても満足 2 イ.満足 1 ウ.やや不満足 0 エ.不満足 1 4−3.(4−2で「とても満足」「満足」とお答えになった方へ)どのような点がよかったですか。具体的にお書きください。 <コメント> ・受講者と同程度のパソコンとその周辺機器をお借りして、同じ条件で行え、細かな助言ができた。 ・講師の指導を中心に据えて行えたので統一性がとれ、受講者の負担が軽減されたと思う。 ・訪問指導の後、自宅に戻ってから実際に機器の操作ができるので、指導内容を確認し操作方法をまとめる事ができたので良かったです。学習の時はこれを参考に進めて行きました。 ・細かい操作のところを確認しながらサポートできたので、その場で誤操作の訂正ができたのでよかったと思います。 4−4.(4−2で「やや不満足」「不満足」とお答えになった方へ)どのような点がよくなかったですか。具体的にお書きください。 <コメント> ・結局、指導の先生が使われて、動かなくなったり、違う場面が出たりで時間がとられ、私たちは大変苦労しました。なんとか、もとに戻して返しましたが・・・。 5.個別訪問指導は、当協会から講師を派遣し、盲ろう者に対する講習会を開催する中で、地域指導者にも学んでもらうスタイルを採っています。このことについてお伺いします。 5−1.今回の進め方は、全体的にみていかがでしたか。 ア.とても満足 0 イ.満足 3 ウ.やや不満足 1 エ.不満足 0 5−2.地域指導者のみを対象にした講習会を実施してほしいですか。 ア.はい(具体的な理由をお書きください) 4 イ.いいえ 0 <コメント> ・パソコンを盲ろう者に学んでもらうのは大変なことです。やはり健常者が学んでこそ・・・教えられるものだと考えます。盲ろう者には点字を読めない人がいます。パソコンの前に点字を読めるようにするなどの初期段階は必要な事ではないだろうか。 ・パソコン及びソフトウェアは年々進化しており、新しい情報を知りたい。指導法も機会があれば聞きたい。 ・受講盲ろう者によってそれぞれ機器や指導方法は違うと思いますが、指導する上での基本的な事、留意点などを学びたいと思います。 ・日ごろ触らない機器なので、その場でマニュアルを見ながらサポートをするのはかなり大変でした。事前に予習をすることで、オンハンドの操作サポートがスムーズにできると思います。 6.今後、今回受講の盲ろう者をはじめ、他の盲ろう者に対する指導・支援を継続していただけますか。  ア.はい 4   イ.いいえ 0 <コメント> ・盲ろう者が多くの人とのコミュニケーションを計る上、とても便利であると言えます。メールのやり取りは日常生活において楽しみであり、良い気持ちになることを知ったからです。 7.今回の個別訪問指導を終えて感じたことなど、自由にお書きください。 <コメント> ・今回は、私たち指導(講師も含み)する側の人達全員がWindows 8を理解していなかったゆえに、盲ろう者にうまく伝えたり操作に手間取ったため、本人がかなり疲れた。私もですが。個別指導はこれからが始まりだと思っています。メールの送受信は慣れましたが、やはりあせった時など違うキーを押してしまった為発生するパソコン画面にまだ対応しきれない為に、パソコンの音声速度や文字数が変わってしまい当人がパニックになりかける事もあるからです。普通に見えていればマウスでなんとかなることも、それができないゆえにキーボードをあせってあっちこち押してしまいます。私たちも改めて良い勉強になりましたが、教えることは大変難しいことを改めて自覚した。また、教えられる次の方があれば最初から当人の使い続けるパソコンを用意し、1段2段3段と一歩ずつ教えられるのではないかと感じている。今回その機会を与えて下さったことには感謝しています。 ・今回の受講者は意欲・目的意識をはっきりもって学習していたのでやりやすかったのではないかと思っている。今後対象者が色々な立場・条件を違えて参加されるのではないかと思われるので対処できる様に準備が必要ではないか・・・。 ・インターネットの接続がエラーになり、思うように学習ができませんでしたが、受講した盲ろう者の覚えが早く飲み込みが早いので、何とか期間内で終了できたと思います。貸与機器で講習を受け、受講盲ろう者がWindows 8を購入したので、新たにセッティングして頂きました。私の情報機器に関する知識・操作技術は微々たるものなので、Windows 8の操作方法が分からず四苦八苦しています。講師の方から指導を受けた内容に関しては何とか対処できるのですが、進めていく中で色々分からない事が出てきます。これから進めていく上でも盲ろう者向けパソコン指導Windows 8のマニュアル本があると助かります。参考になる何か良い本がありましたら、ご紹介ください。 ・今回、講師の方にはこちらの近くまで来て頂けたので、大変助かりました。ありがとうございました。個別指導についてはオンハンドのメーカーマニュアルが分かりにくいため、事前に予習しようと思っても、行き詰まることが多く、実際のサポートの際に苦労しました。 今回は講師の方が受講者の質問に応じて個別にマニュアルを作成してくださったので、それがとても役立ちました。この個別のマニュアルのようなもので、事前に操作の予習ができていれば、もっとスムーズに受講者のサポートができたのではないかと思います。 また、メールや、ツイッター、フェイスブック、サピエ図書館登録など事前設定が必要なものについての設定操作について具体的に事前に予習できればよかったと思います。特にサピエ図書館のIDは通常では取得できないので、事前にサポート用を用意してもらっているとありがたかったです。 また、ブラウザ操作では画像などが表示されないため、サイトの表示や入力に限界があったのですが、クイックブラウザ、ブラウザの制限事項などが分かりやすくまとまっているとサポートがやりやすいと思います。 3-7 考察  今年度のコミュニケーション訓練個別訪問指導は、4名の盲ろう者に対して、いずれも、地域指導者2名もしくは3名の協力の下、実施した。  4名の内、2名がパソコンの点字ディスプレイ利用、1名がパソコンの画面拡大利用、1名がブレイルセンス利用という構成であった。今年度は原則4ヶ月間の期間で、これら機器を貸与し、この期間中に講師を派遣することで講習会の実施、その合間は地元の地域指導者がサポートするという体制で訓練を提供した。  以下に、今回の事業を通じてのよかった点・反省点を踏まえつつ、今後に向けての課題を列挙する。 @盲ろう者へのアセスメントの必要性  前述のように、基本的には盲ろう者が希望するインターフェース環境・機器を貸与することで実施したが、訓練を開始してみると、パソコンと点字ディスプレイの組み合わせで訓練を希望していたものの、残存視力の活用が十分できることが分かり、画面拡大をベースに補助的に点字ディスプレイを活用する方向で指導を行ったケースや、同様に点字ディスプレイの活用を希望していたが、残存聴力の活用が十分できることが分かり、音声合成をメインとして補助的に点字ディスプレイを利用する方が望ましいケース等、当初の予定とは異なる環境で訓練を行った場面が見られた。  これらは、受講盲ろう者としては、視力、聴力を失う将来に備えて訓練をしたいという思いで本事業に申し込まれ、これ自体は大変良いことではあるが、残存視力や聴力を活用することで、より良い利用ができることも事実である。訓練に先駆けて、どのような障害状況なのかを評価した上で環境を熟考し、実際の訓練に入る必要があると考えられる。 A訓練期間の延長の必要性  この個別訪問指導開始以来、概ね3ヶ月間を、機器の貸与・訓練期間として実施してきたが、期間の延長を希望する声があることも事実である。3ヶ月程度で十分であったケースも数多くあるものの、一方で3ヶ月では十分とは言えず、盲ろう者本人はもとより、地域指導者の育成という観点でも期間が短いという意見がある。  期間を短くすることで一人でも多くの盲ろう者にこの機会を提供したいという思いと、反面、提供する以上は、よりきちんとした時間、支援体制を組むべきであるというジレンマがある。  しかしながら、前述したように、盲ろう者へのアセスメント、指導者の人材育成、学ぶための十分な期間を取るといった点をより重視しなければならないと感じているところである。 B地域指導者への機器貸与の有効性  これまで、訓練に当たって、盲ろう者のみに機器を貸与していた。しかしながら、地域指導者にしてみると盲ろう者のところにしか機器がなく、指導に当たっての事前検証や指導後のフォローについても、手元に機器・ソフトウェアがない状況では自ら試すこともできず、十分な指導が提供できないという声が寄せられていた。  そのため、今年度は、盲ろう者と同様の機器を指導者にも貸与することで、上記の課題を解決することとした。指導者からのアンケートをみると、概ね上記課題は解決できたと言ってよいであろう。一部、Windows 8環境下で初めて取り組むということで、十分に生かしきれなかったケースも見られたものの、指導者にも検証環境を提供することは、有効であったと考えられる。 C地域指導者への事前講習会の必要性  この個別訪問指導は、日ごろ地域ではあまり機器に触れる機会のない盲ろう者に、ある一定期間訓練を受け、実際に機器を利用してもらい、それをICT機器活用のきっかけにしていただく、また、この実践的訓練に同地域の地域指導者に関わってもらうことで、指導者の人材育成を図ることを目的として行っているものである。  これまでは、中央から派遣された講師が盲ろう者に対して指導をし、その指導の場に、地域指導者が通訳・介助等として関わることで内容を共有、地域指導者には日常的な指導・サポートをお願いするという体制をとってきた。しかし、地域指導者は、盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会修了者が携わる場合があるものの、それ以外の方々に十分な機会を提供できているとは言えず、地域指導者を対象とした事前講習の開催を検討していく必要があるだろう。 第4部 まとめ  今年度の盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業は、「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」と「コミュニケーション訓練個別訪問指導」に加え、「盲ろう者向けパソコン指導マニュアル―Windows 8編―」の作成というように、三つの柱で実施した。  盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会では8名の受講者が修了し、コミュニケーション訓練個別訪問指導では4名の盲ろう者を対象にパソコンや点字情報端末を指導、その4名を支える各地域の指導者に、指導法やサポートを引き継ぐことができた。  さらに、研修会における指導者養成のためのテキスト、また、個別訪問指導における手引書という位置づけで、「盲ろう者向けパソコン指導マニュアル―Windows 8編―」(別冊参照)も新たに作成した。  この事業を通して、パソコン等ICT機器の活用は、盲ろう者の生活向上や社会参加に必要不可欠であることは明確であり、その点において大変有意義な取り組みであることは言うまでもない。  一方で、これまでの取り組みを振り返る中で、次のような課題も見えてきている。  盲ろう者向けパソコン指導者研修会は五日間行われ、その間、受講者には盲ろう者が利用できるソフトウェアや機器を体験してもらったが、紹介できる機能はほんの一部に過ぎない。盲ろう者一人一人に合わせた指導を行うためには、指導者が実際に機器に触れ、各設定や操作性を検証し、その都度、指導計画を立てることが必要である。しかし、この限られた時間内で、パソコンの画面インターフェース・点字インターフェース、さらに点字情報端末の指導法を習得し、さらに指導者としての資質を養うことへの限界もうかがえる。本研修会では、盲ろう者の特性を踏まえた上で、パソコンや点字情報端末に関する操作性・指導法、さらには点字の知識というように、非常に高いスキルが求められている。その上、研修会が終わり地域に帰ってしまえば、それらの機器に触れる機会はほとんどないというのが現状である。  上記指導者養成研修会と並行して実施しているコミュニケーション訓練個別訪問指導においても、盲ろう者へのICT機器活用の機会提供、それを支える地域指導者の育成に一定の成果は挙げているものの、訓練期間、指導者育成の方法等、新たな課題も見えてきている。具体的には、地域指導者に対する事前講習会の必要性が浮かび上がってきている。  研修会については、指導者に求められるスキルは非常に高く、幅広い知識や技術をどのような形で提供していけるのかを、研修カリキュラムを細分化し、より良い研修会の在り方を模索していきたい。  また、個別訪問指導においては、何よりも地域指導者の育成が望まれる。指導者養成研修会修了者が地域指導者として関わるケースもあった。しかし、今以上に、指導者養成と個別訪問指導者育成をリンクした形で事業を展開できないか、そして、より効率的な指導者養成を図っていけないかを検討していきたい。  この事業にまだ結びついていない盲ろう者は大勢おり、全国の盲ろう者がパソコン等ICT機器を安定的に学習できる機会を、今まで以上に提供していけるような土台となる基礎を固めていかなければならない。 (奥付) 書名:平成25年度 盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業報告書 発行:平成26年3月15日 発行・編集: 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 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