平成24年度全国コーディネーター連絡会報告書 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会R〜 社会福祉法人全国盲ろう者協会 目次 1.概要 2.参加団体名簿 3.日程表 4.カリキュラム別の経過 5.盲ろう者からコーディネーターの皆さんへ 6.事前アンケート集計結果 全国コーディネーター連絡会 1.概要 (1)目的 派遣事業の実務を担当する各地域のコーディネーターが一堂に会し、各地域における事業実施の現状等について情報交換を行うとともに、今後の展望について協議することにより、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業の発展に寄与することを目的とする。 (2)日程 平成24年11月24日(土)から11月25日(日)2日間 (3)場所 新大阪ブリックビル 3階 貸会議室(A、B) 〒532−0003 大阪府大阪市淀川区宮原1丁目6番1 電 話:06−6397−1817 FAX:06−6150−2723 (4)全体概要 今年度の会議は、各都道府県から派遣事業を受託している32団体から、38名のコーディネーター等が受講した。4回に及ぶ企画委員会でプログラムを考案し、会議では、2日間にわたり討論が展開された。盲ろう者、ろう者、健常者という様々なコーディネーターが集まり、障害の有無を問わず、同じ立場での連携が持たれ、多くの成果をあげることができた。 (5)カリキュラム別の概要 @講演「コーディネーターに求めること〜盲ろう者の立場から〜」、「同 〜通訳・介助員の立場から〜」コーディネーターに求めることについて、盲ろう者と通訳・介助員という、それぞれ立場の異なる2名の講演者から、下記の項目について講演を行った。(盲ろう者の立場から) ・「新規登録の盲ろう者との面談の必要性について」 ・「通訳・介助員の得手不得手を見抜いたうえでのコーディネート」 ・「通訳・介助員を指名すること」 ・「コーディネーターの身分」(通訳・介助員の立場から) ・「コーディネーター業務を永続させるための方法」 ・「よき理解者になるための取り組み」 ・「自分の業務に自信を持つ」 【司会】 NPO法人兵庫盲ろう者友の会理事長 今川 裕子氏 【講演者】 NPO法人東京盲ろう者友の会理事長 藤鹿 一之氏 静岡盲ろう者友の会 今村 芸子氏 Aグループ討議 参加者38名を5グループに分け、「通訳・介助技術向上のための取り組み」「派遣事業における指名制」の2つのテーマについて討議を行った。その結果、導かれた結論を各グループの代表者が発表し、最後に、講師の藤鹿氏、と今村氏がコメントを寄せた。 【司会】 広島盲ろう者友の会 小原 和子氏 静岡県聴覚障害者情報センター 冨口 真佐志氏 B意見交換会 参加者、講師、それぞれが自由に各テーブルを行き来する方法で、自分の地域での悩み、他県での取り組み等を語り合った。 【司会】 今川 裕子氏 C情報交換 参加者同士が1日を通して、以下の内容について質疑応答を行った。なお、「コーディネーターの健康面について」と「通訳・介助員から提出される報告書のあり方について」は企画委員がテーマを提示し、参加者に意見を述べてもらった。 ・「コーディネーターの健康面について」 ・「聴覚障害のある通訳・介助員の情報保障について」 ・「施設に入所している盲ろう者への派遣について」 ・「盲ろう者掘り起こし時の派遣扱いについて」 ・「盲ろう者対象の保険加入について」 ・「活動時間について」 ・「派遣費総額のための取り組みについて」 ・「通訳・介助員から提出される報告書のあり方について」 【司会】 小原 和子氏 冨口 真佐志氏 2.参加団体名簿 都道府県 団体 北海道 札幌盲ろう者福祉協会 宮城県 みやぎ盲ろう児・者友の会 福島県 福島盲ろう者友の会(2名) 茨城県 社団法人茨城県聴覚障害者協会 栃木県 栃木盲ろう者友の会「ひばり」 群馬県 群馬盲ろう者つるの会 千葉県 NPO法人千葉盲ろう者友の会(2名) 東京都 NPO法人東京盲ろう者友の会 神奈川県 社会福祉法人神奈川聴覚障害者総合福祉協会(2名) 新潟県 新潟県身体障害者団体連合会 石川県 石川盲ろう者友の会 山梨県 山梨県立聴覚障害者情報センター 岐阜県 岐阜盲ろう者友の会(2名) 愛知県 名身連聴覚言語障害者情報文化センター 三重県 三重県聴覚障害者支援センター 滋賀県 NPO法人しが盲ろう者友の会 大阪府 大阪府障害者自立支援協会 大阪府 視覚・聴覚障害者センター 兵庫県 兵庫県立聴覚障害者情報センター 和歌山県 NPO法人和歌山盲ろう者友の会 奈良県 奈良県聴覚障害者支援センター 鳥取県 鳥取盲ろう者友の会設立準備会(2名) 岡山県 岡山盲ろう者友の会 広島県 広島盲ろう者友の会 山口県 山口盲ろう者友の会 徳島県 徳島盲ろう者友の会(2名) 愛媛県 NPO法人えひめ盲ろう者友の会 高知県 高知県聴覚障害者情報センター 福岡県 財団法人北九州市身体障害者福祉協会 長崎県 一般社団法人長崎県ろうあ協会 大分県 大分県聴覚障害者センター 沖縄県 沖縄聴覚障害者情報センター 参加団体…32団体 参加者…38名 3.日程表 11月24日(土) 9:00 受付 9:30 開会式 9:50〜12:00 講演 「コーディネーターに求めること〜盲ろう者の立場から〜」 講演者・・・藤鹿 一之氏 「コーディネーターに求めること〜通訳・介助員の立場から〜」 講演者・・・今村 芸子氏 12:00 昼休み 13:00〜17:00 グループ討議 「通訳・介助技術の向上のために取り組んでいること」 「指名制について」 18:00〜20:00 意見交換会 11月25日(日) 9:00〜12:00 情報交換@ 「コーディネーターや通訳・介助員の健康について」 「報告書の活用方法」 12:00 昼休み 13:00〜14:35 情報交換A 14:45 閉会式 4.カリキュラム別の経過 ************************* 講演 「コーディネーターに求めること〜盲ろう者の立場から〜」 「コーディネーターに求めること〜通訳・介助員の立場から〜」 講演者 藤鹿 一之(NPO法人東京盲ろう者友の会 理事長) 今村 芸子(静岡盲ろう者友の会) 司会者 今川 裕子(NPO法人兵庫盲ろう者友の会 理事長) ************************* 【藤鹿氏講演】 以下の3つのテーマに沿って、藤鹿氏から、コーディネーターに対する要望等について講演していただいた。 (1)「お願いしたいこと」 (2)「初めて派遣事業を利用したとき」 (3)「私の望む留意点」 講演の内容について、以下に会議録を記す。 (1)「お願いしたいこと」 初めて、盲ろう者向け通訳・介助員派遣を登録することになった盲ろう者とは、コーディネーター自身が直接面談をして、その盲ろう者がどのような人なのかを見てほしい。FAXやメール、電話だけでは、充分にその盲ろう者のことを理解することができないと思う。またコーディネーターの皆さんには、できるだけ交流会等に参加して、実際に、盲ろう者とたくさんコミュニケーションを取ってほしい。同じ盲ろう者でも、派遣の登録をした時と、登録1年後、3年後とでは、その盲ろう者の気持ちの持ち方や、障害の様子も変わってくる。そのため、常に同じ対応をしていてはコーディネートをしていて難しいことが出てくる。気持ちの移り変わりや、障害の程度(視力や聴力等)の変化もコーディネーターが実際に本人に会って確認をする機会があれば、その後の派遣のコーディネートがしやすくなると思う。 以上のことから、盲ろう者の心理の変化について4つに分類した。 @目と耳の両方に障害が出て、「盲ろう」になったとき A「盲ろう」という障害を受容できない状態のとき B「盲ろう」という障害を受容したとき C障害を受容して、積極的に社会参加し、派遣制度を利用できるようになったとき 私は、もともと弱視だったが、中学1年生の頃あたりから原因不明の難聴になり、少しずつ聞こえなくなった。幼少時から、すごくおしゃべりだったが、難聴になったことで、他者と会話をすることが難しくなり、だんだん話さなくなった。盲ろう者になった時に、すぐに「盲ろう」の状態を受容できる人はおそらくいないと思う。私は、盲ろう者になって、これまでのコミュニケーション手段を失った。その後、盲ろう者友の会に入ったことで、指点字が少しずつできるようになった。コーディネーターの皆さんは、これから、自分に適したコミュニケーション手段を持っていない盲ろう者の方と出会うことがあると思う。そのようなときには、盲ろう者本人とゆっくり話をして、本人にとって一番適切なコミュニケーション手段について一緒に考えてあげてほしい。 (2)「初めて派遣事業を利用したとき」 派遣登録をしたばかりの盲ろう者は、誰が自分の通訳・介助員として適しているのかが分からない。私も、初めの頃は、コーディネーターに通訳・介助員の派遣を依頼していた。これまで会ったこともない人に、突然通訳・介助の依頼をするのは不安だったからだ。私と同様に、初めて派遣を利用する際に、全く不安のない盲ろう者は、おそらくいないと思う。東京都では、初めて派遣を利用する盲ろう者に対して、人と上手く接することのできる通訳・介助員、また、派遣に慣れていない盲ろう者をうまく誘導することができる通訳・介助員をコーディネートできるよう、あらかじめリストアップして、コーディネートをしていたこともあったようだ。 私は、今回のような研修会等の場で、皆さんに、「スキルよりマインドが大切だ」と言っている。当然技術も大切だが、それ以上に、盲ろう者のことを理解する気持ちが大切だと話している。 通訳・介助員が盲ろう者の通訳・介助にあたる際に、「盲ろう者の意思を尊重する」ことが大切だとよく言われるが、私が、初めて派遣を利用した時には、自己決定や自己判断をすることができなかった。当時は、手引きを受ける時には、「手引きをしてもらうのだから白杖は必要ない」と、白杖を持たなかった。その時に、ある通訳・介助員から、「白杖を持った方がいい。白杖を持てば盲ろう者本人も安心できるし、手引きしている通訳・介助員も安心してサポートにあたることができる。また、他の通行人も、白杖を見れば、気を付けてくれる」とアドバイスをされた。その後、白杖を使うようになった。白杖を持たない盲ろう者もたくさんいるが、最初は皆、白杖に対して抵抗がある。そのような盲ろう者に、アドバイスのできる人を、東京都では最初に派遣するようにしている。私は、通訳・介助員としては未だ間もない新人さんにはいつも、「いっぱい失敗してもいいから、思い切ってやって」と言っている。失敗のない人間は成長しないというのが私の人生哲学である。 私は、100パーセント、通訳・介助員を指名するようにしている。通訳・介助は完璧にできたとしても、早起きが苦手な方もいる。そういう方には、早朝の通訳・介助はなるべくお願いしないようにしている。反対に、指点字通訳はあまりできなくても、朝が強い方には、早朝の通訳・介助を依頼して、ここ一番という時に、トップクラスの通訳・介助員に交代できるよう、自らでコーディネート(指名)をしている。 皆さん方は、普段の派遣コーディネートの際に、どの通訳・介助員をコーディネートすればよいのか、すごく悩まれていることと思う。組み合わせがうまくいかないこともあるので、切り札的存在の通訳・介助員を、あらかじめ何名か作っていた方がよいと思う。 私が初めて派遣を利用した当時は、指点字が使えなかったが、とても親切な通訳・介助をしてくれた人がいた。その方のおかげで、その後も派遣を利用して出かけたいと思えるようになった。最初につまずくと、「通訳・介助員とは二度と歩きたくない」と思ってしまう盲ろう者もいるかもしれない。 まだ派遣に慣れていない盲ろう者に、通訳・介助員のコーディネートをする時には、最低1名は通訳・介助に慣れている人を派遣するようにしてほしい。ただ慣れているだけではなく、気配りもできて、「スキルよりマインド」を大切にしている通訳・介助員を派遣してほしい。 (3)「私の望む留意点」 B盲ろう者は「視覚にも障害がある聴覚障害者」ではないということ。 派遣元が聴覚障害者団体の場合、本来の盲ろう者のニーズに沿った派遣ができていないところがある。 A盲ろう者に通訳・介助員の指名権を与えてほしいということ。 B盲ろう者と通訳・介助員との間でトラブルが起きた時には、しっかり双方の意見を聞くこと。 C地元の盲ろう者友の会と意見交換及び情報交換をすること。 コーディネーターは1人で悩まずに、友の会の関係者等に相談してほしい。 D盲ろう者のニーズに沿ったコーディネートをしてほしい。 歩行が困難な盲ろう者や、不便な場所に住んでいる盲ろう者のためにも、自家用車の利用を認めてほしい。 E他県での活動が認められるようになること。 全国どこにいても、同じ派遣サービスが受けられるシステムをつくる必要がある。 (藤鹿氏は、最後に、盲ろう者の課題について、また、コーディネーターに対し、日頃の感謝を述べた。) 「派遣コーディネーターは、ボランティアではない。コーディネーターには、その仕事に見合った手当てがなされるべきだと思っている。そのためには、盲ろう者友の会等地域団体が頑張って運動していかなければならないと考えている。ボランティアではなく、確固たる仕事として、派遣のコーディネーターができるようにと望んでいる。コーディネーターや通訳・介助員は、盲ろう者のために、日頃からよく頑張ってくれている。盲ろう者も、「コーディネーターや通訳・介助員の身分を守るのは、自分達盲ろう者の責務だ。」と思わなければならない。充分な手当てもなく、身分の保障も充分でない中で、盲ろう者のために派遣のコーディネートをされているコーディネーターの皆様に対し、心より感謝申し上げる。これから先も、大変なことがあると思うが、無理のない範囲で、地元の盲ろう者の力になってほしい。盲ろう者と一緒に歩んでいってほしい。いつもありがとうございます。 ****** 【今村氏講演】 以下の3つのテーマに沿って、今村氏より講演をしていただいた。 (1)「元気で長く続けてもらいたい」 (2)「通訳・介助者と盲ろう者のよき理解者になってもらいたい」 (3)「自分のコーディネートの仕事には自信を持ってやってもらいたい」 講演の内容について、以下に会議録を記す。 (1)「元気で長く続けてもらいたい」 コーディネーターは、通訳・介助者と利用者である盲ろう者、行政や派遣事務所をつなぐ大切な役割を担っていると思う。 コーディネートとは、1人ひとりの盲ろう者のニーズや通訳・介助者の力量、性格等を熟知したうえでしなければいけない、経験と信頼がものをいう仕事だと思っている。私達通訳・介助者が安心して仕事ができるのは、コーディネーターがいるからである。一朝一夕にできる仕事ではないので、だからこそ長く続けてほしい。こんなに大変な仕事、こんなに経験が必要な仕事であるのに、「長く続けてください」とは、とても言えない。それでも、やはり長く続けてほしい。そのためには、やはりボランティアではなく、正職員とはいかないまでも、常勤の嘱託ぐらいにはなってもらいたい。まだまだ社会的には、福祉の仕事はボランティアのようなもの、という考え方を持っている方が世間にはたくさんいる。やはり、世間に知ってもらわなければ変わっていかない。そのためには、盲ろう者自身にも、やはり自分達の命を預かる通訳・介助者の仕事がどんなに大変なのか、ということを自覚してもらうように働きかけることが大切だと思う。「ボランティアでいい。」などと言わず、正当な評価(賃金)が得られるように、盲ろう者と共に考えてほしい。 長く続けるためには、コーディネーター自身の健康(心と体)が大切となる。1人で、コーディネート業務をやっている方が多いと思う。自分の悩みを、誰と相談するか。自分の悩みは、どこに持っていけるのか。それらは非常に重要なことである。 コーディネーターには、通訳・介助者や利用者、行政、派遣事務所等の間をつなぐ大切な役割があると述べたが、派遣事務所の上司が、盲ろう者のことをあまり理解していないということもある。また、派遣元が盲ろう者について全く理解していないということもある。例えば、「遊びに行くのに派遣は認められない。」と言われたりすると、通訳・介助者がいなければ、盲ろう者は一歩も外に出られないということになる。見えて聞こえていれば、普通に遊びに行ったり、普通に温泉に行ったり、普通に買い物に行ったりできるが、それができないから、通訳・介助者と一緒にそれらをしに行く。理解のない派遣元等に対しては、盲ろう者が、当たり前の生活を送るために通訳・介助者が必要だ、ということを話して理解してもらう必要がある。社会的にも、まだまだ盲ろう者への理解が乏しく、盲ろう者が、いかに大変な生活を送っているのか、また、通訳・介助者がどのような場面で必要なのかといったことが理解されていない。通訳・介助者には、高いスキルが必要であり、手話ができれば弱視者の通訳・介助ができるか、というとそうではないし、ガイドができれば盲ろう者のトイレ介助ができるか、というとそうではない、ということを分かってもらう必要がある。このことについては、盲ろう者を巻き込んで、一緒に伝えていかなければ、コーディネーター自身がいくら声を大にして啓発しても、盲ろう者自身が動かなければ、コーディネーターだけが苦しむことになる。車の利用は認めない、と要綱に書かれているのなら、「車を使わないとどういうことが起こるのか」「コミュニケーションが取れないタクシーの運転手だったら、どうなるか。」それらをきちんと説明したうえで、派遣元の上司に納得してもらうようにすること。しかし、そのようなこともしなければならないとなると、ストレスが溜まってしまう。コーディネーターは、本当にストレスがたまる仕事である。 コーディネーターは、利用者と通訳・介助者の板ばさみになることも多々ある。 静岡県で派遣事業が始まるまでは、全国盲ろう者協会の派遣チケットを利用して、通訳・介助者の派遣をしていた。静岡県で派遣事業が始まる時、盲ろう者と、金券であるチケットのやり取りをしたくない、という通訳・介助者がすごく多かった。盲ろう者も通訳・介助者も1人の人間であり、気分が悪くなること、気に入らないこと、けんかすることもある。全国盲ろう者協会の派遣チケットを利用していた頃は、通訳・介助者にチケットを投げつける盲ろう者がいたり、通訳・介助に満足できなかったからとチケットを渡さない盲ろう者もいたりと、さまざまなトラブルがあった。反対に、「今日は親切にしてもらったので、余分に3枚多めにチケットを渡しますね。」という盲ろう者もいた。このような、お金(チケット)のやり取りを、盲ろう者と通訳・介助者との間で直接したくない、派遣事務所を通して行いたいということから、静岡県ではチケット制を使わないことにした。 クレームは、全て、コーディネーターに寄せられる。それら全てのクレームを、コーディネーターが背負い、コーディネーター自身が解決を図っていると思う。コーディネーターの仕事は、とてもストレスの多い仕事だ。 コーディネーター自身の悩みはどこで解決しているのか。今回のコーディネーター連絡会会議のように、年に1回、コーディネーター同士が集まり、悩みを打ち明ける場が持たれることは、とてもいい機会だと思う。コーディネーターは、通訳・介助者以上に守秘義務が課せられている。やたらに相談はできないため、話し合える仲間や情報交換ができる相手がいない人は、悶々とストレスを貯めていることと思う。コーディネーター業務を長く続けてほしいから、そのためには、コーディネーター自身の健康についてもよく考えてほしい。 静岡県では5月に「通訳・介助者の会」を設立した。設立には紆余曲折があり、「通訳・介助者だけ集まって何をするのか。」「盲ろう者のニーズや、盲ろう者の主体性を尊重するのが通訳・介助者なのだから、通訳・介助者だけ集り、何かをする必要はないのでは。」と、言われた。 通訳・介助者からの悩みや不安、コーディネーターだけでは解決しきれないこともたくさんある。通訳・介助者全体で話し合い、勉強して、良いことがあれば、盲ろう者友の会に持ってきてもらうようにもしている。通訳・介助者自身にも、もっと研鑽してもらいたい。 コーディネーターにも、1人の通訳・介助者として盲ろう者と関わってもらいたい。コーディネーターも通訳・介助をやると、自分自身の悩みも出てくるはずだからである。「自分が派遣元なのだ、ということではなく、仲間と一緒に問題解決をしていきたい。」との思いで、会を作った。 私自身コーディネーターをしていた時、コーディネーター研修会等で知り合った方や、全国盲ろう者協会、友の会の中で信頼のおける通訳・介助者に相談をしていた。相談ができる相手、一緒に仲間として頑張れる相手を見つけて、皆さん達もコーディネーターとして長く、頑張ってほしいと思っている。 (2)「通訳・介助者と盲ろう者のよき理解者になってもらいたい」 皆さんは、通訳・介助者の悩みや問題点をどのように把握しているだろうか。「報告書」もひとつの方法だと思う。今年、静岡県の報告書は変わり、時間だけではなく問題点を書く欄がとても大きく設けられるようになった。このことから、派遣元の上司が、通訳・介助者から上がってくる報告を読み、今まで不要だと思われていた派遣が、盲ろう者にとっては必要だったといったことが分かる等、とても良い効果が出てきている。報告書に挙がってきた内容を通して、通訳・介助者や盲ろう者の理解が得られるようになってきている。 盲ろう者友の会や利用者と、行政や派遣事業所が話し合いをする時には、いつも要求ばかりするのではなく、一緒に制度を考えていこう、一緒に良くしていこうという姿勢が大切だと思っている。そのパイプ役もコーディネーターの役割だと思う。関係者が仲良くやっていくことが、制度を良くしていくことにつながると感じている。 私は、盲ろう者向け通訳・介助者養成事業と派遣事業は一緒だと思っている。養成研修後に、実際に通訳・介助者を派遣する中で、通訳・介助者は育っていく。信頼関係も築かれていく。そういうことから、養成事業と派遣事業は一体のものがあると思う。コーディネーターの皆さんには、養成事業にも関わってほしいと思う。 聴覚障害者団体や視覚障害者団体との関係はどうだろうか。以前、「We love パンフ」の普及運動があった。盲ろう者団体、聴覚障害者団体、難聴者団体、その支援者、手話通訳士協会、要約筆記団体等さまざまな団体が関わり、情報コミュニケーション法設立のために活動した。静岡県でも、それら団体と一緒に活動をすることによって、盲ろう者に対する理解は深まったと思う。 (3)「自分のコーディネートの仕事には自信を持ってやってもらいたい」 通訳・介助者や盲ろう者からは、さまざまな不満も寄せられると思うが、コーディネートをする時には、それぞれの理由を持ってコーディネートをしているはずである。そのコーディネートに自信を持ってほしい。そして、自分のコーディネートにきちんとした説明ができるようになってほしい。 最後に繰り返しになるが、コーディネート業務は、通訳・介助者だけでなく、盲ろう者と通訳・介助者と派遣元をつなぐ大切な仕事である。「快適な環境」のもと、長く頑張って務めていってほしいと思う。 ************************* グループ討議 テーマ@「通訳・介助技術向上のための取り組み」    A「派遣事業における指名制」 司会者 小原 和子(広島盲ろう者友の会) 冨口 真佐志(静岡県聴覚障害者情報センター) ************************* 参加者をA〜Eの5グループに分け、2つのテーマに沿って、各都道府県の状況と問題点等についてそれぞれ話し合った。 テーマ@「通訳・介助技術向上のための取り組み」 グループ毎に話し合われたことは以下の通りである。 (1)Aグループ ・ほとんどの県で、現任研修を行っている。(養成講座の一環として講演等を行い、さらに、別に現任研修を行っている県もある) ・新人に対してフォローアップ研修を行っている県がある。 ・現任研修の参加者数が少ないことから、将来は義務化にした方がよいとの意見が出された県もある。 ・現任研修は、コーディネーターが全て運営するのではなく、盲ろう者友の会等地域団体の役員と相談し、計画を立てて実施している県がある。 ・養成講座終了後に、盲ろう者友の会等地域団体の交流会等に積極的に参加してもらい、通訳・介助技術の定着を図っている県もある。 ・養成講座終了後に実習を行い、盲ろう者から認められた後に、通訳・介助員としての登録が許可される県がある。 上記以外に、現任研修会を開くためには予算上の問題があるため、ある県では、参加者から500円程度の参加費を徴収し、研修会を開いている、という報告もあった。 (2)Bグループ ・現任研修を行っている。 ・地域によっては、現任研修の受講を義務化している県もある。 ・現任研修を開催することが難しいところは、養成講座で対応を図っている県もある。 ・養成講座以外の取り組みとしては、隣接する作業所のボランティアを通して、技術を向上するよう働きかけている県もある。 ・派遣をする際に、新規登録者はベテランと組むよう対応しているところがある。(通訳・介助について助言ができる盲ろう者に協力を求めることもある) (3)Cグループ ・養成講座を15時間開くだけでも精一杯の県もあれば、年64時間(週2回)開催している県もある。 ・現任研修については、年1回の開催、あるいは1度も開催できない県から、年5回開催している県まである。 ・「技術向上を目指す」ことを研修会プログラムに取り入れ、コミュニケーション技術に特化した研修を行っている県がある。(2年間、同じカリキュラムで実施し、全体で12時間以上参加があれば修了が認められる) ・模擬練習や、ロールプレイ等をするなど、きちんとした形での指導方法が確立されている県もある。 ・研修会を受講しなければ活動停止、登録抹消、あるいは見習いからやり直さなければならない県もある。 ・「技術向上は現場である」という考えから、盲ろう者が自分達で育てていくという意識を持ち、盲ろう者に怒られながら通訳・介助員が育っていくという県もある。 ・予算がなければ開催できないが、とにかく1日は開催できるよう頑張っている県もある。 ・現任研修会の場で、自分が思っている以上に実際の現場では、盲ろう者に通じていないかもしれない、ということを意識してもらうことが大事である。 上記以外に、現任研修会に参加する通訳・介助員はいつも同じ顔ぶれで、新しい人がなかなか定着しないのは義務化という拘束力がないためなのか、また、通訳・介助の謝金が手話通訳の謝金に比べて安いので、手話通訳に通訳・介助員が流れてしまう状況があるとの声も聞かれた。 (4)Dグループ ・現任研修会の受講が義務化されている県がある。(要綱に書かれているため、1年に1回は受講する。1年受講しなかった人は、2年目は2回受講する。3年続けて受講しなければ抹消になる) ・現任研修を全く開催していない県もある。 ・利用者がいる地域ごとに現任研修会を開いて、その地域に住んでいる盲ろう者のコミュニケーション方法を実践している県もある。 ・養成講座に外部講師を招いた時は、予算が足りなくなる問題もあることから、現任研修も兼ねて実施する県もある。 ・ロールプレイをしている様子を撮影したDVDを作って、現任研修会の時に学習している県がある。 (5)Eグループ ・養成講座では足りない分を、フォローアップ研修で補っている県もある。 ・現任研修や養成講座で学んだことを活かせる場がない。盲ろう者の掘り起こしが必要。 上記以外に、 ・現任研修の開催は日数や予算面で厳しい状況がある。 ・講師の確保が充分できていない県がある。 ・研修会の開催にあたり、参加費を徴収して県より指導が入ったという県があった。 ・「本当に研修が必要な人」が参加しないという問題がある。 ・研修会に出席することを義務化している県もあった。(義務化すると登録者が減るのではという懸念があったが実際は減っていないとのこと。) ・参加費を徴収すれば内容の充実が図れるが、参加費を徴収しないと参加しやすいという利点もある。そのあたりのバランスを考えないといけない。といった話も出された。 講師から、各グループで話し合われたことについて、以下の通りコメントをいただいた。 @今村氏 研修会を義務化しているという県があったが、受講するための条件にはどのようなものがあるのか、養成講座や現任研修会の内容等についてのアンケートを取り、実態調査報告書に載せられていればと思った。今回配られた実態調査報告書はよくまとめられているので、研修会当日ではなく、これら報告書等は事前に配布し、しっかり読み込んでから参加できるようにしてほしい。 A藤鹿氏 事前アンケートがあれば、グループ討議の時間を有効に使えたと思う。通訳・介助員のスキルアップのためにはどのようにしたらよいか、さらに話し合いを深めてほしかった。通訳・介助員のスキルアップのためには、モチベーションを上げることが大切だと考える。超一流の技術の持ち主であっても、モチベーションが上がらなければ結果を出すことはできない。技術は、最初はいまいちでも、モチベーションが上がれば徐々にスキルも身につき、良い通訳・介助員になれると思う。モチベーションを上げるためには、現任研修を開くことも大切だが、現場で実践を積むことがさらに大切である。また、盲ろう者が自分達で通訳・介助員を育てるという気持ちを持つことが大切だと思う。しかし、登録している盲ろう者が非常に少ないため、通訳・介助員が現場で実践を積む機会が持てないということも問題である。グループ討議では、「盲ろう者の発掘」、「盲ろう者に、どのようにしたら通訳・介助員を育成するという意欲をもってもらえるか」、「現任研修を受講する人を増やすためにはどのようにすればよいか」等についても、議論してほしかった。 ****** テーマA「派遣事業における指名制」 コーディネーター、盲ろう者、通訳・介助員それぞれの立場から、指名制のメリットとデメリットについて討議した。話し合われたことは、以下の通りである。 ※「指名」を認めるという意味は、盲ろう者から通訳・介助員の指名があった時は、必ずその通訳・介助員をコーディネートするということである。 (1)指名制を認めるメリット ・盲ろう者が安心して通訳・介助員をお願いすることができる。(特に医療関係への派遣は、信用できる人にお願いできる) ・盲ろう者の気持ちが尊重できる。 ・コーディネートの手間が省ける。 ・盲ろう者が自分で管理し、相性が合う人、コミュニケーションが通じる人、価値観が合う人を指名することにより盲ろう者のQOLが高まる。 (2)指名制を認めるデメリット ・通訳・介助員が1人に偏ってしまい、固定され、新しい通訳・介助員に広まらない。 ・同じ通訳・介助員に依頼が偏るため、健康の問題が起こる。 ・依頼されない通訳・介助員からクレームが出る。 ・盲ろう者が指名した通訳・介助員の技量が足りていない場合がある。 ・指名を認めないことにより、盲ろう者が派遣を利用しなくなる可能性がある。 ・盲ろう者と馴れ合いになり、盲ろう者の言うことをなんでも聞く通訳・介助員が「良い通訳・介助員」という見方をする人がいる。そのため、実際に手を出し過ぎてしまい、通訳・介助員の越権行為につながる。 ・一定の通訳・介助員だけが関わると、盲ろう者の考え方や性格が変わることもある。 ・派遣が終わって報告書が提出されないと、派遣の内容が分からず不透明な面がある。 ・通訳・介助員が盲ろう者を独占してしまう場合がある。 ・情報が少ない盲ろう者に対し、さまざまな角度から通訳・介助や情報を提供することができなくなる。 ・通訳・介助員が謝金をもらうために、盲ろう者に行事の参加を促すといった問題もみられる。 (3)デメリットを解決する方法 ・長時間に渡って派遣する場合には、盲ろう者に2人派遣が必要なことを理解してもらう。 ・指名されない通訳・介助員は、交流会などでコーディネートする。 ・盲ろう者に、「あなたの連れてくる通訳・介助員は技量が足りなくて会議が進みません」と、率直に伝える。 ・指名制を認めても、必ず派遣事務所を通す方法にとれば、派遣内容等についてコーディネーターが把握することができる。 ・盲ろう者が正しく利用できるよう説明をする。 ・通訳・介助員の技術や質を高めるための研修や、頸肩腕症候群の対応方法等について学習する。 ・盲ろう者に、長時間に渡り通訳・介助を受けることによって、盲ろう者だけでなく、通訳・介助員にも健康問題が生じてしまうことを説明する。 ・新しい通訳・介助員を入れていくようにする。新しい通訳・介助員が入れば、情報が入って盲ろう者の視野が広がる。 ・定期的に、盲ろう者、通訳・介助員、コーディネーター等が集まって話し合いを持つ。 (4)その他の意見 ・指名を認めるためには、メリット・デメリットを知ることが必要である。 ・コーディネーターは、盲ろう者と通訳・介助員の状況が分からないため、「このコーディネートで良いのか」と不安に思ってしまうことがある。 ・指名制度を無くしたり、減らすためには、環境整備が必要である。 ・通訳・介助員のレベルアップを図ること、また、通訳・介助員が足りている状況を作る必要がある。 ・コーディネーターは、盲ろう者がその通訳・介助員を指名する背景を知ることが大事である。 最後に、講師と盲ろう者から、各グループで話し合われたことについて、以下のコメントが寄せられた。 @今村氏 各県で盲ろう者向け通訳・介助者派遣制度が異なり、チケット制や申請制の違いもあるため、指名制の良し悪しについて唱えることは難しい。地域によっては、通訳・介助者の取り合いになったり、早い者勝ちで、重度の盲ろう者ほど依頼が遅れて通訳・介助者がいなくなり、外出できなくなったりするといった問題も、実際に起きている。盲ろう者が遠くに住んでいるため、依頼できる通訳・介助者が限定される、通訳内容によって通訳・介助できる通訳・介助者が減少する、特殊なコミュニケーション方法や、盲ろう以外の障害がある等さまざまな事情もあり、偏った人にしか依頼できない状況もある。指名制のメリットとデメリットについて理解したうえで、コーディネーターの目が届くところで実施されるのであれば、地域に合ったやり方がなされることがベストだと思う。 A今川氏 盲ろう者友の会の役員として、盲ろう者友の会の責任を強く感じた。コーディネーターは、1人でさまざまなことについて考えないで、盲ろう者友の会との関わりを太くもってほしい。盲ろう者友の会にいろいろなことをやらせてほしい。そして、盲ろう者の立場からは、指名制を認めてほしい。しかし、指名制にはリスクもある。仮に通訳・介助員の都合が合わなくなったとしたら、盲ろう者は家から出られなくなってしまう。また、1人の通訳・介助員との関わりが強すぎると、却ってトラブルが起きやすくなる。そういった例をいくつも見てきたので、簡単に解決することは難しい。コーディネーターの仕事の大変さがよく分かった。通訳・介助員のニーズ、盲ろう者のニーズを天秤にかけながら、よりよいコーディネートを心掛けてほしい。 B藤鹿氏 盲ろう者としては指名制を認めてほしい。ただ、今回の討議を聞いて、無条件で指名を認めるのは難しいと少し考えるようになった。東京は盲ろう者及び通訳・介助員が多いので、指名制は十分可能だと思う。特定の人しか活動できないと、その方に過重な負担がかかってしまうし、新しい人を育成できない。以前、ある県で、特定の人が、ある盲ろう者の通訳・介助をしていた。迎え2時間、現場で3時間、帰宅2時間の計7時間。7時間は過酷で、その通訳・介助員はとうとう体を壊してしまった。盲ろう者に、派遣の状況を理解してもらう必要がある。無条件で指名を認めてしまうと、このような問題が起きてしまう。特定の盲ろう者が、特定の通訳・介助員を指名しないようにするための対応策としては、交流会に参加してもらい、いろんな通訳・介助員と交流してもらうことだと思う。私も、盲ろう者友の会の交流会の時に、「この通訳・介助員は、最近指点字が上手になったな」と感じたら、「今度一度通訳をお願いできますか」と、直接依頼することがある。このように、盲ろう者には、通訳・介助員と接してもらう機会を作ればよいと思う。今すぐに結論は出せないと思うが、これからもコーディネーターの皆さんと一緒に考えていきたい。私としては、基本的には、指名制を認めてほしいと思っている。 ************************* 情報交換 テーマ @「コーディネーターの健康面について」 A「聴覚障害のある通訳・介助員の情報保障について」 B「施設に入所している盲ろう者への派遣について」 C「盲ろう者の掘り起こし時の派遣扱いについて」 D「盲ろう者対象の保険加入について」 E「活動時間について」 F「派遣費増額のための取り組みについて」 G「通訳・介助員から提出される報告書のあり方について」 司会者 小原 和子(広島盲ろう者友の会) 冨口 真佐志(静岡県聴覚障害者情報センター) ************************* 8つのテーマを設け、参加者全員で、各都道府県の取り組みや問題点について話し合った。 テーマ@「コーディネーターの健康面について」 聴覚障害者団体の機関誌に、「手話通訳者の中に、盲ろう通訳・介助を兼務している人が増えている。頸肩腕症候群が起きたら、どちらの活動がもとで起きたのか、それらを検証することが難しい」といった掲載がなされた。この内容からは、「手話通訳と通訳・介助とを兼務しないように」と言っているのではないかとも、捉えられることから、通訳・介助員の間では戸惑いと混乱が起きている。 上記の話を受けて、頸肩腕症候群について取り組んでいる県の参加者から、その取り組みについて発言があった。 ・「手話通訳者だけが頸肩腕症候群になるわけではない」と考え、県に健診のための予算化を申し出たが、未だ予算化されていない。しかし、「派遣事業の中で、受診してもよい」と言われ、手話通訳者の健診の時に一緒に受診できるように対応している。 ・頸肩腕症候群になった手話通訳者がいたことがきっかけとなり、聴覚障害者協会や手話通訳問題研究会と共に健康管理委員会を立ち上げた。その後、手話通訳者の健診が始まった。県で盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業が始まった時に、頸肩腕健診のための健診費も付いた。通訳・介助員用の問診票があり、希望者が受診している。 ・通訳・介助員の健診に、30,000円の予算が付いている。コーディネーターも受診している。盲ろう者は受診していない。 ・盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業の中から、独自で16,000円の予算を設けている。また、コーディネーターは、通訳・介助員の健康に注意してコーディネートをしている。健康問題について何かあれば、自己負担で健診等を受けてもらうようにしている。 上記以外に、参加者より以下の発信があった。 ・手話通訳業務に「重い・軽い」はないが、通訳・介助員は、通訳だけでなく、移動介助や情報保障等もあり、内容的に「重い」と捉えられる。 ・頸肩腕健診の問診票には、手話通訳と要約筆記で、それぞれチェックする項目がある。手話の問診票には、手話通訳以外の活動の有無を記入する欄があり、その欄には、盲ろう者への通訳・介助件数や時間、月の派遣数を記入している。 ・各県によって、頸肩腕健診についての実施状況が異なる。全国盲ろう者団体連絡協議会では、通訳・介助員の健康を守るために、県によって格差が生じないよう、早急に国に要望を出してほしい。 ・今の頸肩腕健診の問診表は、手話通訳がメインであり、通訳・介助件数を書く欄がない。通訳・介助員用の問診票があるとよい。 ****** テーマA「聴覚障害のある通訳・介助員の情報保障について」 ろう者の通訳・介助員に対しては、全体手話通訳が必要である。また、ろう者と聴者とペアで2人派遣をした際に、聴者の通訳・介助員が、ろう者の通訳・介助員に対して情報保障のための通訳をしなければならず、聴者の通訳・介助員は休憩をとることができない。 上記の問題を受けて、各都道府県で行われている対応策について、参加者から以下の発言があった。 ・2人体制の派遣で、ろう者に対する全体手話通訳がない時は、移動時や病院の待合の時に限り、ろう者の通訳・介助員が対応する。 ・盲ろう者友の会等地域団体や聴覚障害者団体の行事、県や市の講演会等には全体手話通訳を依頼する。 ・ろう者の通訳・介助員だけの研修会を開き、全体手話通訳の必要性を理解してもらっている。 ・ろう者の通訳・介助員自身が手話通訳の派遣元に確認し、盲ろうの派遣元及び手話通訳の派遣元と協力し、連携して派遣をしている。今のところ、全体手話通訳が設置されないところに、ろう者の通訳・介助員が派遣されたケースはない。 ・全体手話通訳のない講演等の場合、ろう者の通訳・介助員から市の手話通訳派遣を依頼してもらうようにしている。 ・ろうベースの盲ろう者は、ろう者の通訳・介助員を希望することが多いことから、ろう者の通訳・介助員を派遣する場合は、1人の盲ろう者に対して通訳者4人を派遣することがある。(手話通訳者2人と通訳・介助員2人で派遣) ****** テーマB「施設入所の盲ろう者への派遣について」 各都道府県での現状について、参加者から以下の発言があった。 ・派遣事業の要綱では、通訳・介助員の派遣は「県内在宅の盲ろう者」となっていたが、県と交渉した結果、「県内在住の盲ろう者」という文言に変えてもらった。これにより、施設に入所している盲ろう者について、基本的な支援は施設がするので、施設行事には派遣できないが、個人的な買物や、外出等の場合は、派遣が認められている。 ・施設内の派遣は認められているものの、「施設の長が認めるもの」に限られている。施設内への派遣回数は、徐々に減らされている状況である。 ・長期入院している高齢の盲ろう者に、通訳・介助員を派遣している。コミュニケーションが取れないほどに身体能力も落ちている状態である。本人のケース会議が持たれ、通訳・介助員の派遣が必要となり、週2回1時間半ずつ、「お話をする時間」という形で通訳・介助員を派遣している。 ・聴覚障害者関係の高齢者施設に入所されている盲ろう者に対して、きめ細かな支援ができていないことから、施設内の行事にも、通訳・介助員を派遣している。 ・特別なコミュニケーション手段を用いた盲ろう者であったことから、施設に入所している本人に対し、通訳・介助員を派遣している。 ****** テーマC「盲ろう者の掘り起こし時の派遣の扱いについて」 盲ろう者について、新たな情報があった時に、通訳・介助員の同行のもと、その盲ろう者宅を訪問するが、未登録の盲ろう者のため、訪問に要する通訳・介助謝金と交通費はどこから出せばよいのだろうか。 上記の問題を受けて、各都道府県でなされている対応策について、参加者から以下の発言があった。 ・盲ろう者の掘り起こしは派遣事業の中に含まれている。派遣事業の一環だから、当然、派遣事業費の事務費から支払われている。 ・県より、「盲ろう者の掘り起こしは派遣事業に入らない、盲ろう者友の会がすること」と言われた。盲ろう者友の会の会長等と一緒に、新たな盲ろう者宅に行くので、必然的に通訳・介助員が同行することになる。そこで、なんとかやりくりをしている状況である。 ****** テーマD「盲ろう者対象の保険加入について」 参加者から以下の発言があった。 ・車移動を認めている県は、「送迎サービス補償」に加入している。 ・車移動を認めていない県は、盲ろう者対象の保険に加入せず、通訳・介助員を対象とした福祉サービス総合補償の保険に加入している。 ****** テーマE「活動時間について」 各都道府県の状況は、以下の通りである。 ・通訳・介助員が自宅を出た時から、通訳・介助活動を終えて自宅に帰った時までを活動時間とする県もある。盲ろう者と会ってから別れるまでを活動時間とする県もある。 ・活動時間を5分、15分、30分で区切る県もある。 ・1件4,000円で計算している県もある。 上記の報告を受けて、参加者より、実態調査報告書に活動時間に関する詳細を記入できる項目を作ってほしい、との要望が挙げられた。 ****** テーマF「派遣費増額のための取り組みについて」 盲ろう者の登録が増え、派遣費が増えたとしても、県の指定管理を受けた団体が派遣事業を行うようになると、今後3年間は、盲ろう者に関する予算が上がることはない。盲ろう者に関する予算は増えないのに、登録者数が増えると、1人当たりの派遣時間が減ってしまう。このようなケースの場合、行政への働きかけはどうしているのか。 上記の問題を受けて、各都道府県でなされている働きかけ等の内容について、参加者から以下の発言があった。 ・毎年、県の担当者と予算編成の時期に話し合いをしている。盲ろう者友の会の顧問に、県議会議員がいるので、行政への働きかけ等について相談している。来年度は盲ろう者2人分の予算が増える予定である。 ・年度途中で盲ろう者の登録者数が増えた時には、盲ろう者友の会の理事と一緒に行政に出向き、その状況について説明し、補正予算を組んでほしい旨相談した。今年は補正予算を組むことは難しいと回答されたため、来年度の予算を組む際には、「人数に比例した形で立ててほしい」と依頼している。 全国盲ろう者協会が発行した実態調査報告書の中から、予算が大幅に増額されている大阪府に対して、「増額の背景、増額にあたりどのような交渉が行われたのか」といった質問が出された。それに対し、大阪府からは、「盲ろう者友の会等が行政と交渉した結果、平成24年度から、通訳・介助謝金の時間単価が、1,100円から1,450円になった。利用時間も750時間から1,080時間になった。当事者団体の交渉力、頑張りだと思う」との回答があった。 ****** テーマG「通訳・介助員から提出される報告書のあり方について」 各県が報告書を持ち寄り、その記入方法や、自県と他県との様式の違い、自県に取り入れたい記載方法等を学んだほか、さまざまな意見交換を行った。以下に、その主な内容を記す。 (1)盲ろう者が、サインや押印する報告書があるが、サインや押印するときに困っていること、注意することは何か。 ・盲ろう者にサインしてもらうことによるトラブルはないが、通訳・介助員が現場に報告書を持参し忘れてしまうことがある。忘れた時は、後日盲ろう者からサインをもらうことで対処している。提出締め切り日に間に合わない時は、先にFAXで提出し、後日差し替えるようにしている。盲ろう者からは、報告書に本人の名前を書いてもらい、押印してもらっている。 ・盲ろう者が印鑑を忘れた時は、後日押印してもらうようにしている。 ・チケットのどこかに盲ろう者本人の印鑑が押されていればよい。通訳・介助員の印鑑も必要で、報告書の提出と共にチケットも派遣事務所に郵送してもらっている。 ・盲ろう者に確認し、了承を得てから、通訳・介助員が報告書に代筆している。 ・印鑑は盲ろう者が押す。盲ろう者の中には、印鑑を押す意識が強い方が多い。 ・印鑑を通訳・介助員に渡す盲ろう者がいるが、そこは信頼関係で行っている。 ・印鑑を持ち出したくない盲ろう者には、事前に報告書の用紙を渡して押印して持ってきてもらい、業務終了後に、その用紙を通訳・介助員に渡している。 (2)サインや押印する報告書があるが、全盲の盲ろう者にもサインを求めているのか。 ・盲ろう者に責任と自覚を持って時間の管理等をしてもらうために、報告書にサインしてもらい、印鑑を押すようになったと聞いている。派遣終了後に、派遣時間について、派遣事務所に連絡してくる盲ろう者がいるが、派遣制度を自分が利用しているという意識を持っているのだと思う。 ・通訳・介助員がサインを代筆することに抵抗があるため、押印だけにしている。 ・通訳・介助業務が終わった時に、業務時間を確認して、「確認済」という意味で、報告書に印鑑を押してもらっている。印鑑を忘れた場合はサインしてもらっている。 ・派遣利用の時間制限はないが、利用時間を把握する意味もあり、毎月の利用時間を盲ろう者に報告している。その時に、印鑑を押した時間と報告書に記載されている時間数が違っていたことがあった。 ・コーディネーターは、報告書とチケットの数が合っているか確認している。通訳・介助員から、「チケットを多くもらったので、盲ろう者に返してほしい」と連絡をもらったこともある。 (3)通訳・介助の終了時間が延びた場合等、通訳・介助員から、正確な通訳・介助時間を報告してもらえるか分からない。盲ろう者から、通訳・介助活動時間についての報告をもらっている地域はあるのか。 ・盲ろう者から報告書をもらっている地域は、ゼロ県だった。 (4)ある県の通訳・介助活動報告書には、「盲ろう者の発言を引き出せたか」「通訳の環境はどうだったか」等の項目がある。記入方法が分からない通訳・介助員にとっては良い方法だと思う。これは、盲ろう者と通訳・介助員のコーディネートの際に使うのか、通訳・介助員が通訳・介助活動の際に悩んでいたのかを判断するために使用するのか。 ・手話通訳者の派遣と通訳・介助員の派遣の両方を担っているため、手話通訳者に対応した報告書の形式になっている。細かな質問項目があるのは、盲ろう者と通訳・介助員との関係を見るため、また、ろうあ者相談員とコーディネーターとの情報交換をする資料として使用するためである。今年の4月から事業が始まったため、この報告書の形式でよいのかは、まだ分からない。今後、変えていきたい。 (5) 自由記述という形で、反省や気づき、次回につなげたいことを書く欄があるが、無記入の人もいる。何か気になるときは、コーディネーターから、その通訳・介助員に尋ねるようにしているが、具体的な項目が設定されている地域では、記入することが義務化されているのか。 ・必ず記入する必要はなく、あくまでも報告書を書きやすくするために項目を作っている。また、自由記載でよいと説明している。そのため、全く書かない人や、項目に沿って書く人もいる。 ・「移動介助、コミュニケーション支援の具体的な内容」という項目については、必ず記入することになっているため、通訳・介助員には、その内容について具体的に記入するようお願いしている。 ・報告書作成費があり、1時間あたりの通訳・介助謝金の約半分にあたる770円を支払っている。そのため、こちらから記入するように指導できる。実際には、空欄で提出する人もいるが、記入必須にはしていない。 ・気づきの記入欄は狭いので、広く作りたいと考えている。 ・買い物等についての通訳・介助内容については、特に記載の必要はないかもしれないが、「特にありません。」と書かれた報告書が提出された時に、気づきの感性がない通訳・介助員だと思う。 ・自己反省を書く人が多いが、派遣窓口が知りたいのは、「盲ろう者がどのように過ごしたか」「社会的不利益を受けていないか」である。 ・行き先を記入する欄はないが、現時点では困っていることはない。 ・トラブルがあれば、コーディネーターから、通訳・介助員に尋ねることがある。 ・報告書が2枚ある。1枚目は必ず提出し、2枚目は病院等の通訳・介助時にのみ提出してもらっている。2枚目は通訳・介助員の判断のもと記入してもらっているが、コーディネーターから依頼して記入してもらうこともある。 ・内容や気づきを記入する欄を大きくしている。 ・現場の配置図などを書いてもらっている。面談の通訳・介助をしたときに部屋が狭く、無理な姿勢で通訳したため、体調を崩した通訳・介助員がいた。その時の状況を図で報告できるのもよい。 (6)「行って良かった」「楽しかった」「勉強になった」などの報告が多くて困っている。報告書の書き方の勉強会を行っているか。 ・養成講習会の時に、報告書の記入方法を説明している。 ・通訳・介助員を2人派遣するときは、先輩の通訳・介助員が書き方を指導することがある。 ・県の担当者が来て要綱を説明している。その時に、盲ろう者友の会のことや、報告書の書き方等について、細かく説明し、練習してもらっている。 ・交流会の時、個別に教えている。 ・事務所に来所した時に教えている。 ・養成講座で派遣制度を説明する時間がある。 ・現任研修でも実際の書き方を説明する時間を設けている。 ・派遣事業は自分達の団体が行っているが、養成・研修事業(養成講座・現任研修会)は別の団体が行っている。養成・研修事業を行っている団体に、報告書の書き方を勉強する時間を作ってもらえたらよいと思う。 (7)通訳・介助活動1件毎に記入する報告書と、月毎に記入する報告書がある。1件ずつ記入する報告書のメリット・デメリットは何か。 ・コーディネーターとしては早く報告書が欲しいので、通訳・介助を終えた後、すぐにFAX、郵送で提出してもらうようにしている。視覚障害の通訳・介助員にはメールで提出してもらっている。活動内容がすぐ分かり、チェックも速やかにできるので、事務処理上よいと思う。月毎にまとめたものが提出されると大変である。 ・報告書を提出する意味は、通訳・介助謝金の支払い等の事務処理と、自分の活動を振り返るためである。報告書を書くまでが仕事と考えているので、1週間以内に郵送してもらっている。FAXの場合、宛先を間違えて送ってしまう可能性があることから、守秘義務を守るために郵送でお願いしている。 ・気づきや反省点について記入する欄を多く設けている。書き方は、通訳・介助活動を始めたばかりの時に説明している。活動を振り返り、気づくようにしてもらいたいという思いがある。通訳・介助員は大変だが、よい通訳・介助ができるよう、報告書から学んでもらいたい。月毎の提出では、なかなか掴めないと思う。 ・事務処理上、月末に1ヶ月分まとめて提出されたものを処理することは大変である。報告書には、個人情報が凝縮されており、他の盲ろう者の活動が、周りに見られないように、1件1件扱っている。 ・1ヶ月分の報告書と、記録票がある。時間と内容を記入する欄の他、気づきや、今後役立てることを所感の欄に記入してもらっている。すぐ読みたいが、月毎にまとめて提出されるため、早く対応が必要な内容にすぐ気付けないことがある。 ・報告書には3行分しか欄がないが、たくさん記入する人もいる。買い物の時に、「前回の通訳・介助員と自分とでは、通訳・介助の方法が違ったようだ。自分は間違っていたのか」と反省の内容が書かれていた。月毎の提出では役立てにくい。 ・報告書は1週間以内に届くので、その日に読むようにしている。次の現場に活かせる内容があるため、読む我々が報告書を溜めるのはよくない。声かけや疑問には電話で答えるなど、書いてもらったことを活かすようにしている。 ・月毎に報告書を提出してもらっている。直接依頼の場合は、メールを使える人には、通訳・介助活動の翌日にメールで報告してもらっている。 ・月毎の方が、通訳・介助謝金の支払計算が楽である。 (8)コーディネーターが1人で相談相手がいないため、フィードバックできていない。他の県ではどうしているのか。 ・解決が難しい問題は、現任研修会で取り上げ、話し合っている。すぐにアドバイスしなければならないことは、全国盲ろう者協会等に聞いて対処している。皆で考えられる問題については、研修会を活用したらよいと思う。 ・報告書に上がってきたことで、アドバイスできることはその場で対応している。全体で考えた方がよいことは、研修会の中で取り上げて話し合っている。 ・盲ろう者相談員に相談している。専門の相談員がいることは、コーディネーターにとってありがたい。 ・通訳・介助員の悩み等については、現任研修会の事例検討の場で話し合っている。 (9)その他 ・高齢者の施設等に盲ろう者が入所している場合、引き継ぎノートを用意して、それを通訳・介助員が読んだり、治療等に活かしている。 5.盲ろう者からコーディネーターの皆さんへ 最後に、今川氏と藤鹿氏より、盲ろう者の立場から、以下の要望や激励、アドバイスが寄せられた。 今川氏より、以下の要望とアドバイスが寄せられた。 (1)今川氏のコメント コーディネート業務は、決して事務的な仕事ではない。通訳・介助員のこと、盲ろう者のことをよく理解していなければ、盲ろう者と通訳・介助員、その他の人達に対して橋渡しはできない。 (a)コーディネーターに望むこと 通訳・介助員は、盲ろう者が生活をする上で、なくてはならないものである。盲ろう者友の会の活動にも関わってくる、日常生活に密接したものである。コーディネーターは、通訳・介助員とも、盲ろう者とも、より深く関わってほしい。そして、盲ろう者のニーズに沿ったコーディネートをお願いしたい。そのためにも、盲ろう者友の会の交流会には積極的に参加してほしい。その際、そこでの通訳・介助員の支援活動の様子や、盲ろう者の様子を見ることができる。 (b)業務につまずいたとき 1人で抱え込まないで、相談できる人を作ってほしい。盲ろう者友の会とも関わりがあることだから、どんどん盲ろう者友の会のお尻を叩いてほしい。兵庫県は盲ろう者専属の相談員がいるが、相談員は本当に必要だと思う。2年前にやっと設置された。盲ろう者友の会のお尻を叩いて、県と交渉してほしい。近いうちにコーディネーター連絡会の組織が立ち上がり、そこでは、どんどん日頃困っていることや悩み等について相談できたらよいと思う。 (2)藤鹿氏のコメント 2日間の皆さんの姿を見て、感動した。研修会中、全力を挙げて討議するのは当然だが、休憩中も派遣事業の話などをしており、昨日の意見交換会でも、派遣事業や養成事業の話を熱心にしていた。会議以外の時間にも、真剣に語り合っていた。盲ろう者のことをこんなにも考えているのだと思い、本当にコーディネーターの皆さんに感謝している。皆さんのこの姿を、全国の盲ろう者に見せたいと思った。コーディネーターの健康面について、頸肩腕症候群が取り上げられていたが、それだけではなく、私が心配しているのは、心の疲れである。コーディネート業務について相談する人がいないため、1人で悩んでいると、本当に精神的に疲れてしまうと思う。私が以前企画委員をしていた5年前に、コーディネーターが閲覧できるMLを作る話があったが、まだできていないようだ。すぐに悩みを聞いてほしい時もあると思う。コーディネーター連絡会は、年に1回しか開催されていないため、悩み等について気軽に相談できる、コーディネーターのためのMLがあっても良いのではないかと感じた。このあたりも、今後検討してほしい。 6.事前アンケート集計結果 配布…38名 回答…36名 回収率…95% (1)「コーディネーターとしての経験年数は?」 現在コーディネーターではない ※現在の肩書き:友の会事務局        (派遣業務委託あり4名) 6名 1年未満 7名 1〜3年 4名 3年以上 19名 (2)会議の内容について  「講演の内容についてどうでしたか」 参考になった 26名 普通 5名 参考にならなかった 4名                     無回答有り 「参考になった」の具体的な感想 ・コーディネーターの苦労を理解してくれている盲ろう者がいると「頑張ろう」という気持ちになる。 ・盲ろう者と通訳・介助員のそれぞれの立場からよく分かった。講師からの感謝の言葉が大変嬉しかった。 ・講師の言葉が心強く思えて来週から頑張れそうである。 ・現在、自分が行っているコーディネートについて、そのまま良い点は伸ばし、改善した方が良い部分も分かり、参考になった。 ・盲ろう者とコーディネーターの立場では考えが違うと思った。 ・とても具体的で分かりやすかった。地元の通訳・介助員に伝えたいことが多かった。 ・ベテラン講師の話が聞けて良かった。 ・盲ろう者の葛藤を聞いて、それを心に留め、通訳・介助やコーディネートしたい。 ・盲ろう者の視点、通訳・介助員の視点、それぞれ参考になった。 ・具体的なアドバイスがあり、分かりやすかった。 ・共感する内容が多かった。 ・通訳・介助の手法を講師付き通訳・介助員から学ぶべき点が多々あった。 「普通」の具体的な感想 ・少し時間が足りなかったように感じる。 ・「通訳・介助者の会」の内容をもう少し詳しく聞きたかった。 ・大切な内容なので1日かけて話して欲しい。 「参考にならなかった」の具体的な感想 ・盲ろう者の立場での率直な意見や思いをもう少し掘り下げて聞く時間がほしい。 「グループ討議の内容についてどうでしたか」 参考になった 27名 普通 4名 参考にならなかった 4名                     無回答有り 「参考になった」の具体的な感想 ・実情はそれぞれだが、話し合い、様々な意見を聞くことができて参考になった。 ・地域によって、ばらつきがあることを知った。 ・テーマの提示によって、話し合いの深まりがある程度決まると感じた。 ・派遣数の違いに驚いた。県によって優遇されているところと、そうではないところの差があると感じた。 ・グループに分かれると話しやすい。 ・各県の詳細が分かった。運営ベース等が違うので、取り入れられるところは取り入れたい。 ・参加者が盲ろう者の気持ちを第1に考えていた。 ・全体の討議ではなかなか発言ができないが、個別でたくさん話ができた。いろいろなアドバイスがもらえた。 ・参加者と、それぞれの課題を共有することができた。 ・この形式だと意見も言いやすく質問もしやすい。 ・自分の地域で試してみたいと思えることがあった。 ・日頃、他県と話し合うことがないので勉強になった。 ・自身の地域では当たり前と思っていたことが、他県ではそうではなかったり、その逆もあったりと興味深かった。 「普通」の具体的な感想 ・質問の意図が掴みきれず、時間がもったいなかった。 ・1つのテーマに対する時間が短かった。「指名制」のテーマは直接依頼も含まれるか等、最初に詳しく説明してほしかった。 ・資料が当日配布だったので、読み込む時間がなく、討議の際に時間のロスがあった。 ・記録を担当したため、自分のメモが取れなかった。記録をしていると話が伝わりにくい。 ・進行役が事前に担当者と打ち合わせをした方が話を深めることができた。 ・確認をしないと話が進まない状況と、何を話して欲しいのか意図が分からず、1回目のテーマが終了した。 ・各県で抱えている課題は、全ての地域での共通課題だと分かった。 「参考にならなかった」の具体的な感想 ・具体的な工夫等について深く話し合いたかった。 「情報交換(午前)についてどうでしたか」 参考になった 22名 普通 9名 参考にならなかった 4名 無回答有り 「参考になった」の具体的な感想 ・課題が見つかり、参考意見もあったので今後に活かしたい。 ・全国から活動報告書を提出してもらったのは良かった。 ・要綱や状況は違うが、悩みは同じだと感じた。 ・常勤のコーディネーターが多いと感じた。常勤のコーディネーターと、仕事をしながら自宅でコーディネートしている場合では、内容の深さが違うと感じた。 ・報告書は盲ろう者の声であり、通訳・介助員の活動が見えるのも大切だと感じた。 ・地元に持ち帰り報告したい。 ・報告書の大切さについては、去年のコーディネーター連絡会で痛感して帰ったのにも関わらず、何も活かせなかった。今度こそ活かしたい。 ・雑談の中で貴重な情報を得ることができた。 ・通訳・介助員の健康について、もっと留意しなければいけないと思った。 「普通」の具体的な感想 ・時間が足りなかった。 ・各県に聞きたいことを各自に聞くので、議論が深まらないように思える。 ・頸肩腕症候群の資料について、もう少し説明が欲しかった。 ・報告書は見るだけではなく、参考資料として配布して欲しい。 ・記録を撮られていると思うと、踏み込んだ発言ができない。時には記録を止めてもいいのではないか。 ・「報告書の活用について」「ろう者の通訳・介助員の情報保障をどのようにするのか」について、どうするのがよいか、もっと話し合って欲しかった。 「参考にならなかった」の具体的な感想 ・事務処理と次につなげるための内容、フィードバック、結果、答えを参加者に話すだけでよいのではないか。色々な意見があっても深く話しにくいだろうと思った。 ・深い話の部分は少人数の方が聞きやすい。 「情報交換(午後)についてどうでしたか」 参考になった 22名 普通 9名 参考にならなかった 3名 無回答有り 「参考になった」の具体的な感想 ・各コーディネーターの疑問、質問がある程度解決できたのではないかと思う。 ・「施設入所者に対する派遣」は、自県では認められていないことだったので驚いた。今後考えていかなければならないことだと思った。 ・「保険について」は、あいまいにしか覚えていなかったので内容の見直しや、読み込みをしなければいけないと感じた。 ・各コーディネーターの様々な悩みを話せる良い機会だと思った。 ・自由に課題を出してもらう方法で意見交換することができたので、多くの情報を得ることができた。 ・自県と事情が全く異なる話が聞けてよかった。 ・自分だけではなく皆、いろいろな問題を抱えているのだと思った。 ・もっと皆と話がしたかった。 ・テーマを決めずに、参加者から出されたテーマに沿って話し合えたのは良かった。 ・事務処理内容については、大事なことだと思った。 ・コーディネーター連絡会の組織ができたらありがたい。 「普通」の具体的な感想 ・実態調査報告書を読んで分かるような内容は、情報交換から割愛してもよいのではないか。 ・各都道府県の現状を確認しながら進まないと意見が出ない雰囲気だった。 (3)会場について 良かった 25名 普通 8名 良くなかった 0                     無回答有り 会場についての感想 ・1日目は暑かった。2日目は少し寒かった。 ・事前に地図をもらい、分かりやすい会場で助かった。 ・駅からの道順が分かりづらく、駅構内でかなり迷ったので駅構内の地図ももらえれば助かる。 ・ホテルから近くてよかった。 ・トイレがきれいで使いやすかった。 ・トイレ等に点字が無いようだ。 ・セルフのコーヒーやお茶があればよい。 ・広くて清潔でゆったりしていてとても良かった。 (4)本会議の今後の企画・運営について 今後取り入れて欲しいテーマ ・派遣データを入力するパソコンソフトについて、各県どのようにしているか。(事務作業を減らすための工夫) ・コーディネーターの心の病みについて ・コーディネーターの身分(身分保障)について ・研修会の内容 ・守秘義務等の扱いについて ・謝金単価・交通費の計算方法等の統一化 ・コーディネーターが業務軽減のために取り組んだこと ・派遣の範囲(友の会交流会にも派遣するのか、スポーツにも派遣するのか) ・通訳・介助謝金の変動はあるのか。ある場合の下げ幅は。 ・派遣のモデル要綱 ・車の送迎での問題点(保険、駐車場、利用者トラブル、交通費の扱い等) ・トラブル解消について、クレーム対応について(事例検討をする) ・盲ろう者福祉の動向について ・他の障害を併せ持つ盲ろう者への通訳・介助は、どこまでか(範囲)、専門職としての役割は何か ・友の会のおしりの叩き方、盲ろう者自身にやる気になってもらうにはどうすべきか ・コーディネーターの役割を意識できる内容 ・コーディネーターの永続性を獲得するには「職業」として成り立たせないと難しい。「自宅でボランティア」というのでは永続性は難しい。国全体としての方向性が出るような話し合いができればよい。 ・各都道府県の実施要綱を資料にして意見交換をしたい ・7〜8名のグループ編成だとやりやすい。 今後会議に招聘すると良いと思われる講師 ・志藤氏(大谷大学) ・藤鹿氏には来年もお願いしたい ・触手話でコミュニケーションをとる盲ろう者 ・コーディネーターとして長期で活動している方 ・コーディネーターの永続性を獲得するために、国全体の方向性が出るような、全体を見渡せる良い知恵を出してくれる専門家 ・予算をアップできる方法について講演できる方 ・国の今後の盲ろう者福祉について、他の障害がある盲ろう者への通訳・介助はどこまでか、専門職としての役割、等について講演できる方 (5)その他 ・今後も連絡会を開催してほしい。 ・1年に1度の開催では足りない。 ・コーディネーター用のMLができるとよい。 ・実態調査報告書をもっと早い時期に配布してほしい ・新米コーディネーターとして、とても充実した連絡会だった。 ・来年度の開催地をできるだけ早く知らせてほしい。(予算の都合上、できれば年内には) ・各県の情報が分かり、大変役に立った。 ・グループ討議の時間を増やしたい。 ・「情報交換」も、2〜3グループに分け、最後に報告をする形式であれば、更に積極的な意見を求めるのには効果的である。 ・スクール形式での「情報交換」は緊張した。 ・宿泊料金の見直しをしてほしい。1泊6,000円くらいがよい。(連絡会参加の予算に限りがある) ・盲ろう者の社会資源の情報は団体名のみなので、活動内容が分かる情報がほしい。 ・情報交換のテーマ内容について、事前アンケートを取ると、さらに深く話し合えるのではないか。 ・初めての参加だった。業務を1人で担当していて、分からないことは1人で悩むことがあった。同じ悩みを持つコーディネーターの方達がいることを知り、失敗ばかりで毎日落ち込むことがあったが、少し元気になった。地元に帰って活かしたい。 ・盲ろう者の講演が1時間というのは驚いた。(もう少し時間配分を工夫してほしかった) ・名簿を配布しない研修会が増えている中で、名簿があり助かった。 ・参加者の中には、コーディネーターではない立場の人もいるので、その点が配慮してもらえると助かる。(事業体や仕事内容) ・活発に発言する方が多くて良かった。 ・「情報交換」に1日使うのは長すぎだと思った。 ・他県と情報交換をしながら、盲ろう者のためにより良い事業となるよう、再検討、再点検をしなければならないと痛感した。 ・様々なケースを知ることができ、大変勉強になった。充実した、有意義な会議だった。 ・参加者皆が、熱意を持って仕事をしていることに、元気がもらえた。自分もめげずに頑張ろうと思った。 ・コーディネーターの置かれている立場の違いに驚いた。 ・盲ろう者と深く関わるためにも、コーディネーターの身分保障の確立が大事だと思った。 ・日程表だけでなく、グループ討議や情報保障のテーマも事前に知らせてほしい。 ・アンケート集計の結果を早めに送ってほしい。 ・各県の活動報告書は、受付時にほしかった。ゆっくり見れば質問もできた。 ・情報交換の内容を、事前に資料としてもらえれば下調べができる。 ・コーディネーターだけでなく、盲ろう者友の会の事務局や盲ろう者友の会の情報交換もしてほしい。 ・テーマを設けて進行するのもよいが、さらに意見交換や情報交換ができるとよい。 ・意見交換のときに、隣に座っていた他県の方に何気なく質問したら、盛り上がり、そこでたくさんの情報が得られた。