平成24年度 盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業報告書 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 目 次 第1部 事業の概要 1-1 目的 1-2 平成24年度の事業内容 第2部 盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会 2-1 概要 2-2 研修会開催要領 2-3 研修会カリキュラム 2-4 科目別の内容  2-4-1 盲ろう者向けパソコン指導概論  2-4-2 パソコンキーボード操作概論  2-4-3 画面インターフェースを活用した指導1〜4  2-4-4 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション1  2-4-5 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション2  2-4-6 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション1・2  2-4-7 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション3・4  2-4-8 ブレイルセンスプラスの概説  2-4-9 ブレイルセンスプラスの演習1・2  2-4-10 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ  2-4-11 盲ろう者へのパソコンサポートの実際 2-5 受講者からのアンケート結果 2-6 考察 第3部 コミュニケーション訓練個別訪問指導 3-1 概要 3-2 募集要領 3-3 個別訪問指導報告(パソコン編)  3-3-1 Aさん  3-3-2 Bさん  3-3-3 Cさん  3-3-4 Dさん  3-3-5 Eさん  3-3-6 Fさん 3-4 個別訪問指導報告(ブレイルセンス編)  3-4-1 Gさん  3-4-2 Hさん  3-4-3 Iさん 3-5 受講盲ろう者へのアンケート調査  3-5-1 パソコンと点字ディスプレイ  3-5-2 ブレイルセンス 3-6 考察 第4部 まとめ 第1部 事業の概要 1-1 目的  当協会が、20年間かけて取り組んできた「盲ろう者向け通訳・介助員養成事業」「同派遣事業」は、障害者自立支援法の施行により、都道府県地域生活支援事業として、平成21年度よりようやく全都道府県に移行することができた。  しかしながら、各地域において同事業を円滑に運営していくためには、なお課題が多い。すなわち、<1>同事業を各地域で支えるための組織「盲ろう者友の会」等の組織強化、<2>サービスの地域格差の是正、<3>盲ろう者自身のコミュニケーション手段の開発と能力の向上に取り組む必要がある。  本事業は、盲ろう者向けパソコン指導者の拡充を図るとともに、盲ろう者へのコミュニケーション訓練個別訪問指導を通じて、パソコン等情報機器を活用することで、<3>の課題を解決しようとするものである。本事業によって盲ろう者のコミュニケーション能力を向上させ、社会参加の促進を図ることは、個々の盲ろう者が有する能力および適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営む上で、ぜひとも必要である。 1-2 平成24年度の事業内容  本事業は、次の二つを柱に実施した。 <1>盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会の開催  盲ろう者にパソコン等情報機器を指導する場合に、その盲ろう者の障害の程度やニーズを把握すること、それを受けて指導者として配慮すべき点や心構えとなる事項についての概論を皮切りに、盲ろう者がパソコンを活用する場合、画面を拡大して使用する方法、点字ディスプレイの表示を頼りに使用する方法の二つに大別されるが、この二つの方法を中心に、各種スクリーンリーダーやアプリケーション、また、点字情報端末ブレイルセンスプラスの操作方法ならびに指導法、さらに、パソコン等情報機器を使いこなせるようになった後も、サポートが重要になることなども含めて、講義と実習を組み合わせたカリキュラム編成で実施した。  今年度は、マウスを使わずキーボードのみでパソコンを操作する方法を紹介した「パソコンキーボード操作概論」や、パソコンと点字ディスプレイの接続方法を詳しく取り上げた「パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ」といったカリキュラムを新しく導入し、昨年度同様、盲ろう者の間で普及しつつあるブレイルセンスの指導に十分な時間を確保して実施した。(第2部に詳述) <2>コミュニケーション訓練個別訪問指導の実施  下記に示す団体と連携して、コミュニケーション訓練個別訪問指導を希望する盲ろう者9人に対して、前期(6月〜8月)と後期(10月〜12月)の約6ヶ月間、パソコン等情報機器を貸与し、盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会を受講した指導者等を派遣して訓練を行った。これに併せて講師を派遣し、盲ろう者および指導者を対象に、貸与期間の初期・中期・後期に講習会を実施した。3ヶ月という短い期間ではあったが、すべての盲ろう者がメールを送受信できるようになった。また、インターネット上のニュースや天気等の情報を独力で入手できるようになったケースもあり、日常生活において、これまでにはない情報入手手段が得られたと言える。(第3部に詳述) *連携団体:福岡盲ろう者友の会、山口盲ろう者友の会、NPO法人しが盲ろう者友の会、ながの盲ろう者りんごの会、石川盲ろう者友の会、NPO法人千葉盲ろう者友の会、札幌盲ろう者福祉協会 第2部 盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会 2-1 概要  平成24年10月6日(土)〜10日(水)までの五日間、文京区本郷1―11−14「LMJ 東京研修センター」を会場に、「平成24年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」を開催した。  全国各地から、盲ろう者団体関係者をはじめ、実際に盲ろう者へのパソコン指導を行っている方、盲ろう者へのパソコン指導を志す通訳・介助員の方等々、受講者11人(内盲ろう者一人、聴覚障害者一人を含む)の参加があった。  五日間、講義と実習を通して、盲ろう者がパソコン等情報機器を活用することの有用性をはじめ、盲ろう者へのパソコン指導の心構えや注意点、必要な機器および各種ソフトウェアの紹介等、また、点字ディスプレイを使用してパソコンを利用する盲ろう者(点字ユーザー)、残存視力を活用してパソコンを利用する盲ろう者(画面ユーザー)の二つのタイプを想定してのカリキュラムを組んで実施した。  パソコンのOSは「Windows7」とし、点字ユーザー向けのスクリーンリーダーでは「FocusTalk V3 for Braille」(以下、FocusTalk for Braille)に加え、点字表示に完全対応している「PC-Talker 7」と「BrailleWorks」を取り上げた。また、点字情報端末ブレイルセンスについては、特に健常の指導者にとってはパソコンと本質的には同じものであるが、インターフェースは点字が基本ということもあり、操作方法ならびに指導法において、ややハードルが高くなってくること等を鑑み、十分な時間を取って講習と実習を行った。  今年度の特徴は、マウスを使わずキーボードのみでパソコンを操作する方法を紹介した「パソコンキーボード操作概論」や、パソコンと点字ディスプレイの接続方法を詳しく取り上げた「パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ」といったカリキュラムを、昨年度まで行っていたパソコン操作における「盲ろう疑似体験」等に代わって行ったことである。いずれも、指導者としての基礎知識の強化となった。 2-2 研修会開催要領 平成24年度「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」開催要領 1.目的 本研修会は、盲ろう者向けパソコン指導者の養成を図り、もって盲ろう者がパソコン等情報機器の操作を学ぶ機会を拡大し、情報バリアフリーおよび社会参加の推進に資することを目的とする。 2.主催 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 3.日程 平成24年10月6日(土)〜10日(水)五日間 4.場所 LMJ 東京研修センター 〒113-0033 文京区本郷1―11−14 小倉ビル TEL:03-5842-6690 http://www.lmj-japan.co.jp/tokyo.htm 5.研修対象者  次の条件を満たす方 ・盲ろう者福祉に熱意があり、盲ろう者に対してのパソコン指導を志す方、もしくは学校・団体・個人等で指導に従事している方。 ・日常的にパソコンを活用し、メーラーのアカウント設定ができる方。 ※点字ディスプレイに表示されている点字を読むことが可能な方が望ましい。 6.受講定員 10人程度(障害は不問、盲ろう者枠2人予定) 7.カリキュラム 別途検討中 ※(別添2)「平成24年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会カリキュラム」参照 8.研修目標 ・盲ろう者を正しく理解する。 ・盲ろう者に合ったパソコン環境を選択・構築できる。 ・盲ろう者のニーズを汲み取り、その盲ろう者のコミュニケーション手段・必要なユーザーインターフェース等を考慮した上で、適切な指導ができる。 9.研修料 3千円(交通費・宿泊費・食費は自己負担とする) 10.受講証交付 一定時間の研修を受けた方に対しては受講証を交付する。 11.申し込み方法 (別添3)「平成24年度盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会受講者申し込み方法・諸注意」参照 12.申し込み締切 平成24年8月24日(金)必着 13.申込先 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 新宿区早稲田町67 早稲田クローバービル3階 TEL:03-5287-1140  FAX:03-5287-1141  E-mail:info@jdba.or.jp 2-3 研修会カリキュラム 平成24年度「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」カリキュラム 10月6日(土) 9:10〜 9:20 受付 9:20〜 9:30 開講式 9:30〜11:00 盲ろう者向けパソコン指導概論(高橋信行) 11:10〜12:10 パソコンキーボード操作概論(白井康晴) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:50 画面インターフェースを活用した指導1(高橋信行) 15:10〜16:40 画面インターフェースを活用した指導2(高橋信行、大河内直之、白井康晴、森下摩利) 10月7日(日) 9:00〜10:30 画面インターフェースを活用した指導3(高橋信行) 10:40〜12:10 画面インターフェースを活用した指導4(高橋信行、大河内直之、白井康晴、森下摩利) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:50 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション1(大河内直之) メーラー「VoicePopper」、ネット検索ツール「サーチエイド」 15:10〜16:40 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション2(大河内直之、高橋信行、村岡寿幸、森下摩利) メーラー「VoicePopper」、ネット検索ツール「サーチエイド」 10月8日(月・祝) 9:00〜10:30 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション1(渡井秀匡) 10:40〜12:10 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション2(渡井秀匡、白井康晴、村岡寿幸、森下摩利) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:50 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション3(渡井秀匡) メーラー「MyMail」、ニュース閲覧ソフト「MyNews」 15:10〜16:40 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション4(渡井秀匡、白井康晴、村岡寿幸、森下摩利) 総合読書システム「MyBook」、メーラー「VoicePopper」、ネット検索ツール「サーチエイド」 10月9日(火) 9:00〜10:30 ブレイルセンスプラスの概説(村岡寿幸) 10:40〜12:10 ブレイルセンスプラスの演習1(村岡寿幸、大河内直之、白井康晴、森下摩利、渡井秀匡) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜16:40 ブレイルセンスプラスの演習2(村岡寿幸、大河内直之、白井康晴、森下摩利、渡井秀匡) 10月10日(水) 9:00〜12:10 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ(森下摩利、大河内直之、渡井秀匡) 12:10〜13:20 昼食 13:20〜14:20 盲ろう者へのパソコンサポートの実際(森下摩利) 14:30〜15:00 質疑応答(大河内直之) 15:00〜15:10 閉講式 2-4 科目別の内容  以下、カリキュラムに従って、講義内容、実習内容を示す。 2-4-1 盲ろう者向けパソコン指導概論 高橋 信行 1.盲ろう者とは  盲ろう者の分類方法はいくつかある。一つは、障害の程度を元に分類する方法である。   (1)障害の程度による分類 −−−−−− →図は省略。 −−−−−−  ここでは、視覚機能と聴覚機能によるマップを作成する。  横軸に「視覚機能」をとり、左端が「晴眼」、右端を「全盲」とする。縦軸に「聴覚機能」をとり、上端を「健聴」、下端を「ろう」とする。  健常者(よく聞こえて、よく見える人)は、マップの左上に位置する。  視覚障害者(目が不自由で、よく聞こえる人)は、マップの右上に位置する。  さらに、視覚障害者は、視覚の活用が可能な「弱視(ロービジョン)」と、視覚障害が重篤で視覚の活用が困難な「全盲」とに分けることができる。  聴覚障害者(よく見えて、聞こえない人)は、マップの左下に位置する。  聴覚障害者には、音声言語の活用が可能な「難聴」と音声言語の活用が困難な「ろう」に分けることができる。  盲ろう者(目が不自由で、耳も不自由)は、マップの右下に位置する。  盲ろう者の中には、4つのグループを区別できる。  その1つ目は、視覚障害の程度が重篤で、視覚の活用が困難であり、さらに音声言語の活用が困難な「全盲全ろう」である。  盲ろう者の中の2つ目のグループは、視覚の活用が困難で、音声言語の活用が可能な「全盲難聴」である。  盲ろう者の中で、3つ目のグループは、視覚の活用が可能で、音声言語の活用が困難な「弱視ろう」である。  盲ろう者の中の4つ目のグループは、視覚の活用が可能で、音声言語の活用が可能な「弱視難聴」である。  このように「盲ろう者」は、障害の程度により、4つの状態があり、それぞれ情報の活用方針が全く異なるので、注意が必要である。 (2)経歴による分類 もうひとつの分類方法は、「障害を受けた経歴」による分類である。この「経歴による分類」は「障害の程度」と同様、盲ろう者を理解する上で重要である。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− <1>盲ベースの盲ろう者の特徴 障害の経歴:初めは目が不自由、後に耳も不自由になった。 コミュニケーション手段:点字系、音声。 音声言語:獲得済み。 <2>ろうベースの盲ろう者の特徴 障害の経歴:初めは耳が不自由、後に目も不自由になった。 コミュニケーション手段:触読手話、弱視手話。 音声言語:獲得していない場合が少なくない。 <3>先天性の盲ろう者の特徴 障害の経歴:生まれつき目と耳が不自由であった。 コミュニケーション手段:学校教育により異なる。(盲学校に通えば点字、ろう学校に通えば手話) 音声言語:獲得していない場合が少なくない。   <4>その他の盲ろう者の特徴 障害の経歴:大人になるまで目も耳も健常であった。 コミュニケーション手段:音声や手のひら書きを用いることが多い。点字や手話は使えないことが多い。 音声言語:獲得している。 2.『障害』別に見たPCの操作方法 (1)健常者は、スタンダードなPCの使い方をする。 (2)聴覚障害者(難聴、ろう)は、健常者同様、スタンダードなPCの使い方をする。ただし、PCから出力される音響情報は、利用に制限があるか、不可である。 (3)弱視者は、画面表示の最適化(配色、文字の大きさ、コントラスト、マウスポインタ)して、画面を活用して操作する。 入力:キーボードおよびマウス 出力:画面出力    (4)全盲者は画面表示を使わない。スクリーンリーダーの音声を活用してPCの操作を行う。 入力:キーボード 出力:スクリーンリーダーの音声    (5)弱視難聴、弱視ろうの盲ろう者では、画面表示を最適化(配色、文字の大きさ、コントラスト、マウスポインタ)した上で、画面を見ながら操作する。 入力:キーボードおよびマウス 出力:画面出力 ※使い方は弱視者と同様だが、教え方や配慮事項が異なる点に注意。    (6)全盲難聴の盲ろう者は画面表示を使わない。スクリーンリーダーの音声を活用してPCの操作を行う。ただし、聞き取り精度が低いので点字ディスプレイを併用する場合もある。 入力:キーボード 出力:スクリーンリーダーの音声、点字ディスプレイ、両者の併用。    (7)全盲全ろうの盲ろう者は、画面表示もスクリーンリーダーの音声も使用不可である。点字ディスプレイを使用する。 入力:キーボード 出力:点字ディスプレイ 3.盲ろう者に対するPC指導上の配慮事項 (1)経歴別の留意事項(日本語が入っているか?)  盲ベースの盲ろう者、その他の盲ろう者では、既に日本語を獲得済みである。一方、先天性の盲ろう者、ろうベースの盲ろう者では、日本語を獲得していないことが少なくない。  このことは指導する際のコミュニケーションのあり方、PCからの出力の理解に影響を及ぼす。 (2)経歴別の留意事項(点字の習得)  障害の程度が「全盲全ろう」である場合、PCからの出力は点字ディスプレイで受けることになる。したがって点字を習得していることは必須である。盲ベースの盲ろう者では、点字を習得済みである。先天性の盲ろう者、盲ベースの盲ろう者、その他の盲ろう者では、PC指導の前提として点字の習得から始める必要がある。 (3)コミュニケーションのスピード  点字、手話、要約筆記、手のひら書きなど、その盲ろう者にとって最も適したコミュニケーション手段を用いて指導する。最大コミュニケーション速度を確認しておく。最大コミュニケーション速度を超えると急激にパフォーマンスは低下する。 (4)伝えることのできる量  最大コミュニケーション速度を超えないように注意しながらコミュニケーションをとっていく。 (5)伝えることのできる量に制限がある (6)伝える内容は見通しをもって精選・取捨選択 (7)「待つこと」は最大の支援  盲ろう者はコミュニケーションに時間がかかり、見えない聞こえない状態で状況を理解することに時間がかかるなど様々な点で「時間がかかる」。学習内容を理解し、獲得し、変容を遂げるためには「待つこと」が指導上必要不可欠。 (8)伝えることのできる概念  日本語を獲得しているか?理解の基礎となる概念はどの程度獲得済みか?表現の仕方に工夫が必要。 (9)一度伝えたことを取り消すことは容易ではない (10)使える感覚の活用  保有感覚(少しでも残っている感覚を活用)。視力、聴力、触覚の活用(振動、ファンの風、DVDトレイのイジェクト、etc) (11)用語の一貫性  一つのことを表すための用語は一貫して同じ用語を用いる。混乱を避け学習効率を上げる。 (12)達成感や楽しさで駆動していく  トレーニングを「苦痛」と感じるか「楽しい」と感じるかは、トレーニングが成功するか否かに関わる重要な問題。「楽しさ」を創出していくために、達成感、ほめられる、指導内容が良く理解できる、学習する順序、指導方法が適切であるといったことが重要である。 (13)一人ひとりの使い方・指導法  盲ろう者は一人ひとり、状態やニーズが異なる。一人ひとりの使い方がある。一人ひとりの指導法がある。 4.所感  盲ろう者に対するパソコン指導法を学ぶためには、まず全体を概観し、学習内容の位置づけを適切に理解する必要がある。本講義はその役割を担う時間である。受講者にとっては既知の内容も含まれていたと思うが、全員が熱心に受講し、それぞれの経験に基づく知識の整理をしつつ、盲ろう者の種別ごとのPC操作法、配慮事項などについて理解を深めていただけたと思う。 2-4-2 パソコンキーボード操作概論 白井 康晴 1.概要  Windowsパソコンの操作は専らマウスで行われるが、これには視力を要するので、点字ユーザーはほとんど行うことができない。  一般の人にはあまり知られていないが、マウスを使わなくてもキーボードで行える操作、スクリーンリーダーによって追加された操作について紹介した。 (1)共通の操作 ・前後左右の項目・文字へ移動 ・グループ、列などの大きめの項目間移動 ・設定画面などのタブシートの切り替え ・選択を決定し、次へ進む ・チェックボックス、項目の選択などのオン/オフ切り替え ・作業を中断する (2)メニューとウィンドウの操作 ・スタートメニューの開閉 ・メニューバーのアクティブ化 ・ショートカットメニューの開閉 ・ウィンドウの切り替え (3)文字編集画面でのカーソル移動 ・行頭・行末へ移動 ・文頭・文末へ移動 ・カーソルによる範囲選択 (4)BrailleWorksによって追加される、点字ディスプレイからのパソコン操作について (5)スタートメニュー、またはショートカットキーによるプログラムの起動 2.効果  受講者の目をマウスからキーボードに向かせることを意図して行ったが、 ・60分という時間では実習までは交えることができなかったこと ・プレゼンするには材料の準備が不足していたこと 等により、十分に意図した内容を伝えられる講義とはならなかった。 2-4-3 画面インターフェースを活用した指導1〜4 高橋 信行 1.はじめに (1)本講義の構成 1.はじめに 2.ロービジョンの理解 3.GUIの最適化の視点および具体的方法 4.各アプリケーションの指導上のポイント 5.指導上の配慮事項 (2)本講義が対象とする盲ろう者の範囲  横軸に視機能を、縦軸に聴覚機能をとって、障害の程度による盲ろうマップにおいて、講義の指導対象となる範囲は、弱視難聴、弱視ろうの盲ろう者です。 −−−−−− →図は省略。 −−−−−− (3)全盲とロービジョンの相違点  本講義では、できるだけ「弱視」という用語を避け「ロービジョン」という用語を使うようにしています。全盲とロービジョンの違いを理解してください。PC操作において、全盲者に対しては、できるだけ視力を使わないで操作することを指導しますが、ロービジョン者に対しては、視力を活用して操作することを指導します。 −−−−−− 全盲とロービジョンの違い →図は省略。 全盲:点字を使用。画面を使わないPC操作 ロービジョン:墨字を使用。画面を活用したPC操作 ・同じ盲ろう者でも、全盲とロービジョンでは、PC操作においても、日常生活においても全く異なる方向性 −−−−−− 2.ロービジョンの理解 (1)ロービジョンとは  ロービジョンとは、眼鏡やコンタクトレンズ等で矯正しても、なお学習・日常生活に支障が生じる状態をいいます。概ね身体障害者手帳2〜6級が該当すると考えられます。  盲ろう者において、平成16、17年度に行われた調査で、60.4%の盲ろう者が画面を使ってPCの操作をしていると回答していますから、盲ろう者の半分以上の方は画面を活用している、あるいは活用できると考えられます。  PCの操作習得の難易度について考えます。全盲者ではキーボードのみで操作し、スクリーンリーダーや点字ディスプレイを使ってPCからの出力を受け取りますが、そうした画面を使わない操作方法は難易度が高いだろうということは想像できると思います。これに対して、画面を見ながらマウスを使って操作する方法は、習得のためのハードルが低いでしょう。ですから、GUIを最適化するなどして、ロービジョンの盲ろう者がGUIを活用したPC操作ができるようになるのであれば、GUIの活用にチャレンジする価値があると思います。 (2)ロービジョンの代表的な見えにくさ <1>白濁および羞明  白内障では白濁や羞明が起こります。通常水晶体は透明ですが、白内障では濁りが生じることで曇って見えることになります。老人性の白内障では水晶体が周囲から濁るのに対し、症候性の白内障では中心部から濁るため、比較的初期から症状が出ます。 −−−−−− 白濁と羞明 水晶体:透明でレンズの役割をする 正常:濁りのない水晶体 老人性白内障は周囲から濁りが出てくる 症候性の白内障は中心部より濁りが出てくることが多い −−−−−− <2>屈折異常  ピントが合わないという症状を引き起こす原因はいくつかあります。水晶体を調節する毛様体筋の異常、眼球の前後径の異常、水晶体の弾力性の異常や欠損などが挙げられます。 <3>中心暗点  中心暗点は、視野の中心部が見えないので視力が出ない、顔や目線を対象物からそらす仕草が目立つといった状態がみられます。  中心暗点の原因となる疾患はいくつかありますが、その一つに黄斑部変性があります。網膜のもっとも解像度の高い部分は他の部分より黄色く見え、この部分を黄斑部と呼んでいます。黄斑部が編成すると、視力低下が起こります。 −−−−−− 黄斑部の変性による中心暗点 →図は省略。 −−−−−− <4>視野狭窄  視野とは見える範囲をいい、正常な視野は、上が60゜、下が70゜、外側が100゜、内側が60゜です。 −−−−−− 正常視野(右眼) →図は省略。 −−−−−−  視野狭窄を起こす原因は様々ですが、網膜が求心性に変性を起こすことで、視野狭窄がみられます。 −−−−−− 網膜の求心性による視野狭窄 網膜の周辺部から中心部に向かって変性が起こる。 →図は省略。 −−−−−− 代表的な視野障害 −−−−−− 視野障害の種類 ・視野狭窄  求心性視野狭窄では、周囲から中心に向かって、視野が狭くなる。 ・暗点  視野の中に見えない部分があるものを「暗点」という。緑内障は、弓状暗点、網膜色素変性症は、輪状暗点。 ・半盲  脳腫瘍や脳血管障害で視路が障害されると、両目において、片側の視野が欠損する。 ・沈下  網膜の反応性が低下した状態を「沈下」という。暗点に至る前状態と考えられる。 −−−−−− 3.GUIの最適化の視点および具体的方法 (1)コントラスト・配色の最適化  コントラストは輝度の高い部分と低い部分との差を示しています。マイケルソンコントラストがしばしば使われます。マイケルソンコントラストの計算法を示します。 −−−−−− コントラストとは ・明るい部分と暗い部分との差 マイケルソンコントラスト=(明るい−暗い)÷(明るい+暗い) コントラスト感度=1÷マイケルソンコントラスト →図は省略。 −−−−−−  「コントラスト感度」はコントラストの逆数で表します。どれだけ低いコントラストで対象物を識別できるか、ということですね。我々は視力検査をする際、真白の背景に真黒のランドルト環の高コントラスト条件で、どれほど細かい切れ目を識別できるか?を計っているわけですが、しかし、日常生活で我々が目にするものはほとんどの場合曖昧なコントラスト条件です。つまり視力検査で得られた視力と我々が日常生活で求められる視力は著しく乖離しているということです。そこで、コントラスト感度を考慮した視力評価が必要になるわけです。  空間周波数におけるコントラスト感度を指標として、<1>ロービジョン者が見ることのできる範囲、<2>晴眼者が見ることができるがロービジョン者は見ることのできない範囲、<3>晴眼者もロービジョン者も見ることのできない範囲が存在します。ここで、問題にするのは<2>の範囲であり、この部分をいかに<1>に持っていくか、ということが重要になります。 (2)コントラストポラリティ効果。  晴眼者、求心性視野狭窄型ロービジョン者、視力低下型ロービジョン者を被験者として、フォントサイズを徐々に小さくしながら読字速度を計測します。その結果、晴眼者の例では、8ポイント以上の文字サイズでコントラストにかかわらず、ほぼ一定の読字速度を維持しています。求心性視野狭窄者の例では、18から49ポイントのサイズの範囲で有意に早い読字速度が得られています。視力低下型の例では文字サイズが大きければ大きいほど、早い読字速度が得られています。白文字黒背景において最も速くなっています。 −−−−−− ロービジョンと晴眼者のギャップ →図は省略。 −−−−−− 【実習】ハイコントラスト設定 【実習】文字サイズの設定 【実習】ディスプレイの輝度・コントラスト調節 −−−−−− 臨界文字サイズとは 計測値を元に最適な文字サイズを求める。 ・CPS(臨界文字サイズ) Critical Print Size  最大の読書速度を保って読むことのできる最小の文字サイズ ・MRS(最大読書速度) Maximum Reading Speed  最大の読書速度を保っているときの平均読字数 単位 CPM ・RA(読書視力)Reading Acuity  文字として知覚できなくなる視力 単位 logMAR −−−−−− (3)視力低下型ロービジョン者に対する支援の在り方  視力低下型ロービジョン者に対しては、文字を拡大することが有効です。 −−−−−− 視力低下型LVに対する支援 ・読書曲線  文字サイズが大きいほど読書速度が速い。  最大読書速度は低い傾向にある。 →図は省略。 −−−−−− (4)視野狭窄型ロービジョン者に対する支援  視野狭窄型ロービジョン者に対しては、文字を拡大するのではなく、適切な大きさにすることと、オブジェクトを見つけやすくする支援が有効です。 【実習】拡大鏡(スタートメニューからの起動) 【実習】拡大鏡(ファイル名を指定して実行)  【実習】老眼マウス (5)マウスポインタの視認性を高め、マウス操作をしやすくする  マウスポインタの視認性を高める支援方法は、ロービジョン者のマウス操作の向上にどれほど役に立っているのでしょうか。実際にこれらのツールを使いながらパフォーマンスを評価しましょう。 【実習】マウスポインタの設定 【実習】あんだーまうす君 【実習】でかポインタ 【実習】tarzanMouse    ロービジョンの盲ろう者で、「あんだーまうす君」を使った時とそうでない時でのマウスカーソルの軌跡を示しています。「あんだーまうす君」を使わない時では、マウスを発見するまでに時間を要して無駄な動きが見られます。これに対して、「あんだーまうす君」を使った場合では、速やかにターゲットに移動してクリックすることができていることがわかります。 −−−−−− マウスポインタ軌跡の比較 →図は省略。 −−−−−− 【実習】ZoomTextを使ってGUI環境のカスタマイズ 4.各アプリケーションの指導上のポイント  この節では、いくつかのアプリケーションを取り上げて、そのアプリケーションにおける指導の要点をかいつまんで説明していきます。 (1)Microsoft Word  [Ctrl] + マウスホイールで表示倍率をリアルタイムに調節できます。全体を閲覧するときは縮小して、細部を見るときは拡大率を上げるということが簡単にできます。ロービジョンの盲ろう者には必須の操作テクニックになります。  拡大率を上げたときに問題となるのが、表示部が画面からはみ出して横スクロールが必要になることです。このことはパフォーマンスを著しく低下させるので、オプション設定でアウトライン表示における横スクロールを発生させない設定をすることが重要です。 (2)Microsoft Excel  [Ctrl] + マウスホイールの操作で表示倍率をリアルタイムに調節することができます。 (3)Internet Explorer  文字フォントをゴシック体などの見やすいフォントを選択します。  Webサイト側で背景色や文字色を指定してる場合は上記の設定が反映されないので、Internet Explorerのユーザー補助機能において、Webサイト側で指定したフォントサイズや色などを使わない設定にします。  さらに高度な支援方法としてユーザースタイルシートを使う方法が挙げられます。ロービジョンの盲ろう者の見え方に応じて作成したユーザースタイルシートを使って全てのWebサイトを盲ろう者に適したスタイルで表示させることで、Webサイトの視認性向上が期待できます。 (4)Voice Popper  ロービジョンの盲ろう者がVoice Popperを使う際の、画面表示の設定について、配色とフォント、フォントサイズの設定ができます。 5.指導上の配慮事項 (1)部屋の照度  明るすぎても暗すぎても操作に支障をきたします。窓からの光は逆光になったり画面に映り込みをおこさないように注意する必要があります。 (2)タッチタイピングの習得  盲ろう者がPCを操作できるようになるためには、タッチタイピングあるいは点字入力のスキルは必須です。本人も指導者も、その重要性を理解して焦らずじっくりと練習に励むことが大事です。 (3)「待つこと」は重要な支援  盲ろう者にPCの指導をおこなう上で最も重要なことの一つとして「待つこと」を挙げたいと思います。指導者は盲ろう者のペースに応じて、盲ろう者が様々な学習事項を処理するのに必要な時間として「待つこと」が重要です。 2-4-4 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション1 大河内 直之  本講義では、スクリーンリーダーにFocusTalk for Brailleを選択して点字環境を構築し、また点字入力機能を利用する場合の設定や操作について概説した。 1.FocusTalk for Brailleの設定  主に点字環境で利用することを踏まえて、FocusTalk for Brailleの説明を行なった。 (1)自動起動設定  盲ろう者がパソコンを利用する際、スクリーンリーダーは、パソコン起動時に自動起動することが必須である。そのことを確認したうえでFocusTalk for Brailleの自動起動設定を学習した。 (2)起動と終了のショートカット  FocusTalk for Brailleは、起動[Alt]+[Space]+[F6]、終了[Alt]+[Ctrl]+[F6]のようにショートカットがあらかじめキーに割り当てられている。そのことを確認した上で、もし何かのトラブルが起きた際、盲ろう者がこのショートカットを利用してスクリーンリーダーの再起動を行ない問題が解決できる場合があることを紹介した。ただし、パソコン購入時にはIntelのグラフィックドライバなどが上記ショートカットを専有している場合があるので、その機能をOFFにする必要があることも併せて説明した。 (3)点字設定  FocusTalk for Brailleを一度初期設定に戻した上で、点字設定について以下の基本的な項目を確認しながら設定を行った。 ・点字ディスプレイの機種選択:ブレイルテンダー46 ・COMポートの選択:COM1 ・通信速度:9600bps ・点字表示のON/OFFの選択:ON ・点字出力文字(かなor点漢字):かな ・カーソル表示:アンダーライン  COMポートの選択については、インストール時にデバイスマネージャー等でポート番号の確認が必要であること、また現状FocusTalk for Brailleは32ビットのみ対応であり、64ビットでは点字出力ができないことを補足した。 2. FocusTalk for Brailleの6点入力機能について (1)点字入力の意義  点字入力は、点字環境でパソコンを利用する盲ろう者にとって、パソコンのキーボードと点字ディスプレイの手の動きを最小限に留め、比較的効率的に文書編集作業が可能な機能である。まずはそのことを説明し、単にローマ字入力が難しいために点字入力が利用されているわけではないことを強調した。 (2)FocusTalk for Brailleにおける点字入力の現状  FocusTalk for Brailleにも点字入力機能があり、設定画面からそのON/OFFが可能である。しかしながら、現状では一部の文字の入力(数字の後の濁点が入力できない等)に不具合があり、次のバージョンアップでの改善を待っている状況である旨を説明した。また、ひらがな→カタカナ→アルファベット等の切り替え方法が、一般的な点字入力と異なっており、これについても次バージョンでの対応になることも補足した。  ※講義では、PC-Talker付属のKTOSを使って実習を行った。 2-4-5 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー FocusTalk for Brailleとアプリケーション2 大河内 直之  本講義ではFocusTalk for Braille上で利用しやすい、メール・ニュース閲覧ソフト「VoicePopper」と、ネット検索ソフト「サーチエイド」について学習した。主に実習を中心とし、それぞれの課題に取り組みながら実際の操作や設定を体験した。 1.VoicePopperのメール機能  メールが盲ろう者にとって非常に重要な連絡・コミュニケーションツールであることを踏まえて、以下の課題に取り組みながらVoicePopperのメール機能を学習した。 (1)実習の課題 <1>VoicePopperの起動と終了 <2>メールを受信して本文を読む <3>受信したメールに返信する <4>受信したメールのアドレスをアドレス帳に登録する <5>アドレス帳を使って新規メールの作成と送信をする <6>アドレスを手動入力して新規メールの作成と送信をする (2)注意事項  初心者の盲ろう者にとって、メールアドレスなどアルファベットを読み書きすることは非常に難しい作業であるため、まずはメールを受信し、そのメールに返信する、また受信したメールのアドレスをアドレス帳に自動登録するという手順での覚え方が重要であることを説明した。 2.VoicePopperのニュース閲覧機能 (1)実習の課題 <1>「アサヒ・コム」の「社会」の1番目の記事を読む <2>「産経新聞」の「事件」の3番目の記事を読む <3>「読売オンライン」の「経済」の5番目の記事を読む <4>「NHKニュース」を「モジュールのダウンロード」からダウンロードし「主要ニュース」の2番目の記事を読む <5>最新の円ドル・円ユーロ相場を調べる(どの新聞を使ってもかまいません) (2)注意点  同じ記事を一般のブラウザで閲覧すると、広告や余計なリンクが邪魔になって点字ディスプレイのユーザーには非常に使いづらいことを説明したうえで、メールと同じ操作性でネット上のニュース記事が読めるということがいかに重要であるかを確認した。 3.サーチエイドの機能  基本的にVoicePopperと操作性が同じであることを確認したうえで、同様にネットを検索する課題に取り組んだ。 (1)実習の課題 <1>「東京都足立区新田」の読み方を調べる <2>「東京都文京区本郷1-11-14」の郵便番号を調べる <3>課題<2>の郵便番号を使ってその場所の天気予報を調べる <4>「新宿」を17:40に出発すると「箱根湯本」には何時に到着するかを a)1番早いルートで b)乗換回数の少ないルートでそれぞれ調べる <5>「新宿〜高尾間」の最安片道料金を調べる <6>18:33東京発「ひかり525号(新大阪行)」の停車駅を調べる (2)注意点  ネット上の情報を点字ディスプレイのみで検索することは、ニュース閲覧以上に余計なリンクやタスクが増えるため、点字の上級者でも非常に難しい。そのことを共有したうえで、サーチエイドのように情報が整理され表示されることで、盲ろう者が自力で必要な情報に簡易にアクセス可能になることを確認した。 2-4-6 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション1・2 渡井 秀匡  本講義では、高知システム開発株式会社のWindows7対応のスクリーンリーダー「PC-Talker7」と点字出力ソフト「BrailleWorks」の組み合わせで、音声ガイドや点字ディスプレイを頼りにパソコンの操作する盲ろう者にとって使いやすい設定方法を概説し、実際にパソコンを操作しながら明らかにした。 1.PC-TalkerとBrailleWorksの利点と課題  PC-Talkerは現在視覚障害者にもっとも普及しているスクリーンリーダーで、サポートが受けやすいことや、付属している点字入力ソフトKTOSが安定して動作する等の利点があることから、音声ガイドおよび点字ディスプレイを頼りに操作する初心者の盲ろう者にお勧めしやすいスクリーンリーダーであることを紹介した。しかし、同社は自前のアプリケーションへの対応に力を入れており、市販のアプリケーションへの対応は望めない。とはいえ、自前のアプリケーションは同機能の他のアプリケーションに比べて割高であるため、新しいアプリケーションを導入するに当たってはコスト面の問題に留意したいことを補足した。これらの利点や課題等を踏まえた上でPC-TalkerとBrailleWorksの使用法を確認した。 2.音声関係の設定  難聴の盲ろう者や点字出力に影響する音声ガイドに関する設定の概説を行った。 (1)音声基本設定  特に難聴の盲ろう者が音声ガイドを活用する場合、聞きやすい声音や読み上げスピードの設定への変更が必要であることを確認した。 (2)英語音声の設定  初期設定ではネイティブな音声エンジンを使用しているが、難聴の盲ろう者に限らず健聴の人でも慣れない人は聞き取りにくいため、チェックをすべて外すことを推奨した。 (3)音声ガイドの設定  「メニューの説明文をガイドする」や「項目の操作をガイドする」は矢印キーを操作するたびに詳細に読み上げて煩わしく感じることもあるため、チェックを外しておくことを推奨した。また「項目のショートカットキーをガイドする」についてはユーザーの操作方法によってチェックを外した方が良い場合もあることを紹介した。 3.点字出力関係の設定  PC-TalkerやBrailleWorksをインストールした状態では点字の出力はされないことを理解し、ピンディスプレイの設定の概説を行った。 (1)ピンディスプレイの設定  ユーザーの点字の触読能力にあわせて下記の項目の設定変更を確認した。 ・ピンディスプレイを使用する ・カーソルの表示方法 ・ステータスセルの表示方法 ・点字メッセージ表示時間 (2)ピンディスプレイ機器の変更  接続されている点字ディスプレイの機種や通信ポートにあわせて設定の変更をする必要があることを確認した。 4.その他 (1)点字ディスプレイの対応状況の紹介 (2)パソコン起動時の点字表示の確認 (3)PC-Talkerの起動や終了、点字出力のオン/オフ等のショートカットの確認 2-4-7 点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション3・4 渡井 秀匡  本講義では、PC-Talkerとの組み合わせでメールの送受信や情報収集等ができるアプリケーションの使い方や設定を概説し、その後課題を提示しながら実習を行った。 1.Myシリーズの操作方法や点字ディスプレイの使い方  MyMailやMyNews等のMyシリーズの基本的な操作方法は共通であることを理解し、その操作ルールを確認した。また、点字ディスプレイの点字表示やスクロールの操作方法を確認した。 2.MyMailの実習  電話やファックス等が利用できない盲ろう者にとって、メールは独力で外部との連絡が取れる有効な方法であることを理解し、MyMailでメールの送受信の実習を行った。 (1)主な設定 <1>メール本文を開く時の動作設定   受信ボックス等のメールを選んでエンターキーを押すと本文が開くが、音声読み上げに追随して点字表示が自動的に流れてしまい読みにくい問題がある。それを対処するための設定や使用方法を確認した。 <2>メール番号を読み上げる設定   盲ろうのユーザーの場合、メールの管理がしやすいようにメール一覧ではメール番号を付けると良いので、その設定方法を確認した。 <3>送受信の設定   作成したメールの送信方法の設定を変更することで操作が簡略化できることを確認した。 (2)実習の課題 <1>マイメールの起動と終了 <2>メールの受信、本文を表示させる <3>受信したメールに対して返信する <4>受信したメールのアドレスをアドレス帳に登録する <5>新規メールの作成と送信 3.MyNewsの実習  テレビやラジオ等の情報入手が難しい盲ろう者にとって、インターネット上にある新聞や天気予報等の情報サイトに簡単な操作でアクセスできるMyNewsを活用することにより、独力で情報収集ができることの理解を深めながら実習を行った。 (1)注意事項  記事本文を点字ディスプレイで読む場合は、タブキーを押して開く必要があることを確認した。 (2)実習の課題 <1>毎日新聞の社会面の3番目のニュース記事を調べてください <2>東京の明日の最低気温を調べてください <3>「オスプレイ」に関するニュースを調べてください 4.MyBookの実習  主にサピエ図書館の利用方法を中心に、点字図書データの検索やダウンロード等の実習を行った。 (1)実習の課題 <1>サピエ図書館で点字図書の人気のある順、5位のタイトルの内容を表示させる <2>サピエ図書館で点字図書のタイトル・著者名検索より、夏目漱石で検索し、「心」を選んで表示させる <3>「点字データ」という名前で本棚を作る <4>点字図書データを本棚に保存する <5>点字図書データをブレイルメモに保存する 5.VoicePopperやサーチエイドの利用について  VoicePopperはニュース閲覧機能のみを利用するのであれば、PC-Talkerとの組み合わせで問題なく使えるので、コストを抑えるためにMyNewsの代わりに使用できることを紹介した。また、サーチエイドとPC-Talkerとの組み合わせについては、キーワード入力で入力した文字しか表示されないという問題があるが、工夫をすることでインターネット補助ソフトとして使えることを紹介した。 2-4-8 ブレイルセンスプラスの概説 村岡 寿幸 1.ブレイルセンスの概要  ブレイルセンスは6年ほど前に発売された点字情報端末である。点字ユーザーでも音声ユーザーでも使いやすいように設計されており、盲ろうの点字ユーザーは、普段音声をオフにし、点字ディスプレイのみで使用することが多い。  ブレイルセンスは、発売当初機種は1種類だけであったが、その後、新しい機種「ブレイルセンスプラス」が発売され、さらに小型化された「ブレイルセンスオンハンド」が加わった。そして、2013年5月にブレイルセンスプラスをアップグレードする形で「ブレイルセンスU2」が発売された。ブレイルセンスプラスとブレイルセンスU2の大きさは同じであるが、各種ポートの位置が変更されており、また処理能力も大幅に向上している。  ブレイルセンスが発売される以前、盲ろう者はモバイル用の機器として、ノートパソコンとブレイルメモ24を併用していたが、これは大変重く、持ち運びに適しているとは言えなかった。またパソコンは電源を入れてから起動するまでに時間がかかるため、利用したいときにすぐに利用できず不便であった。その点、ブレイルセンスは点字ディスプレイが内蔵されているため、持ち運ぶのも1台でよく、また電源を入れるとすぐ起動するため、パソコンと比べるとモバイル機器として非常に便利である。 2.ブレイルセンスの特徴  ブレイルセンスは、、点字タイプライター等の利用経験がある盲ろう者にとっては容易に利用することが可能である。しかし、点字およびパソコンの経験が少ない盲ろう者にとっては難易度が高い。特に、アルファベット点字が大きなハードルとなる。盲ろう者がよく利用するメール機能においても、差出人名が英語表記であったり、またメールアドレスのみが表示されていたりすると、アルファベット点字が苦手な盲ろう者には、誰から来たメールなのかが判別しにくくなる。  またブレイルセンスプラスやU2には小型の液晶画面が搭載されており、支援者等がブレイルセンスの状態を確認することができる。しかし、小型のオンハンドでは、この液晶画面が省略されており、別途オプションで外付けの液晶画面を購入する必要がある。  さらに、プラス・U2とオンハンドの決定的な違いは、点字ディスプレイのマス数である。プラス・U2は32マス、オンハンドは18マスの点字ディスプレイを搭載する。オンハンドは、価格が約38万円であるため、ほぼ日常生活用具の給付額内で購入が可能であるが、マス数が少なくスクロール操作が多くなるため、初心者には使いにくい。その点、マス数の多いプラス・U2はスクロール操作が少なく使いやすいが、58万円と高額であるため、日常生活用具の給付制度を利用しても、およそ20万円の自己負担金が発生する。 3.盲ろう者が利用できるブレイルセンスの機能  ブレイルセンスにおいて、盲ろう者が利用できる機能は、電子メール、RSSリーダーを使っての新聞記事やブログ、天気予報の閲覧、ワードプロセッサーを使ってのWord、テキスト、点字等各種文書の処理等さまざまである。また初心者には難しいが、ウェブブラウザーを使って、ホームページを直接閲覧することもできる。ただし、データ量の多いホームページは読み込みに時間がかかるため、ブレイルセンスオリジナルのブラウザに加えて、クイラックブラウザも併用すると便利である。  その他、盲ろう者には次のようなアプリケーションが利用できる。 ・サピエオンライン:視覚障害者向け電子図書館「サピエ図書館」から点字やデイジー形式の図書をダウンロードして読むことができる。 ・電子辞書・センスディック:一般のepwing企画の辞書と、点訳された辞書「センスディック」が利用できる。 ・スケジュール帳:盲ろう者が予定を自分で入力してスケジュール管理をすることができる。 ・バーコードトーカー:飲み物やお菓子など商品についているバーコードを使って商品名等を点字で知ることができる。ただし、実際に「ポテトチップス」で試してみたところ、商品名は取得できたものの、賞味期限は取得することができなかった。  それ以外には、電卓機能・時計機能等も盲ろう者には便利である。  ただし、これら機能については、指導する盲ろう者が使いやすいかどうかを十分に判断しながら各機能を紹介する必要がある。 4.ブレイルセンス利用時のネットワーク環境  インターネットに接続する際、ブレイルセンスプラス・U2は有線・無線の両方の接続に対応する。それに対して、オンハンドは無線接続のみの対応である。したがって、どちらの機器を購入するかによって、ネットワーク環境にも考慮が必要である。つまり、オンハンドを購入する盲ろう者の自宅等に、無線LAN環境がない場合は、同時にその環境構築の支援も必要となる。  一方、ブレイルセンスはモバイル機器であるため、モバイル環境におけるインターネット構築も重要である。ブレイルセンスが発売された当時は、データカードをつかったダイヤルアップ接続が主流であり、ブレイルセンスでもCFスロットに同カードを挿入して接続を行っていた。ダイヤルアップ接続は、電波の状況が悪かったり、速度が遅かったりしてあまり使い勝手がいいとは言えなかった。  現在は、無線LAN接続によるモバイルルーターが一般的になり、接続も安定している。NTTドコモやEモバイル等携帯電話の会社が提供するサービス(契約制)と、Bモバイル等の会社が提供するサービス(前払い性・つど払い性)に分かれる。Bモバイルは安価だが、クレジットカードがないと利用できない等不便な面もある。銀行引き落としを利用する場合は高額になることが多い。また公衆無線LANサービスを利用する方法もある。  とにかく、これらサービスにはさまざまなプランがあり、支援する盲ろう者とよく相談し、またその盲ろう者の利用頻度をよく見極めてから、各プランの中から選択しないと、高額な通信料が発生してしまうことがあるため細心の注意が必要である。 5.盲ろう者にブレイルセンスを指導する際の注意点  ブレイルセンスは、Windowsをベースに作動する機器である。そのため、パソコンのWindowsにおけるキーボード操作と操作方法が類似している。例えば、コピーは、パソコンでは[ Ctrl ] + [ C ]、ブレイルセンスでは[ Enter ] + [ C ]である。そのため、普段マウスでパソコンを利用している支援者は、こうしたWindowsの基本的なキーボード操作をしっかりと把握しておくことが重要である。また[ Enter ] + [ C ]のように、キーボードの同時押しという方法は、最初のうち慣れない盲ろう者も多いので、そうした点も考慮して指導する必要がある。 2-4-9 ブレイルセンスプラスの演習1・2 村岡 寿幸  本講義では、ブレイルセンスプラスの実習を行った。 1.方法  受講者を2名から1名の6グループに分け、協会職員1名を含んだ計6名の講師を各グループに配置し、下記の課題にあるステップに従ってグループごとに実習を行った。受講者には一人1台のブレイルセンスプラスおよびU2を配布した。 2.実習の課題 ステップ1:各部の名称 ステップ2:基本操作 ステップ3:オプション設定 ステップ4:時計の表示と設定 ステップ5:バッテリー、ネットワーク状態の確認など ステップ6:メールの送受信       メールの受信       返信メールの作成と送信       差出人のアドレスをアドレス帳に登録する       新規メールの作成と送信 ステップ7:バックアップ、復旧方法 ステップ8:乗り換え検索 ステップ9:簡単スケジューラ ステップ10:スタートメニューのカスタマイズ ステップ11:その他(サピエ、ウィキペディア、点字辞書等々) ステップ12:インターネット接続、メールアカウント設定 3.所感  ブレイルセンスは受講者にとって最も難しい機器であり、そのため、きめ細やかな指導ができるよう、講師1名に対し受講者2名ないし1名という小グループで実習を行った。指導内容の差が出ないよう、あらかじめ段階的な課題を用意し、そのグループの進行に合わせて指導を進める形とした。  結果は、早く進んだグループやなかなか進まないグループがあり、指導法も、講師に自由に質問しそれに講師が答える形で進むグループや、講師の判断でステップの順番を変更したグループもあった。また、液晶ディスプレイや音声出力を使わず点字ディスプレイの表示のみを頼りに実習に取り組んだ受講者もいて、個性豊かな実習となった。それが結果的には受講者の満足度を上げたようだった。  この実習は4時間半行われたが「とても時間が足りない」というのが、本講義を終えての受講者の反応であった。受講者自身がブレイルセンスを操作することに精一杯で、盲ろう者への指導法を身に付けるには至らない様子であった。普段より気軽に触れることのできない機器だけに、ブレイルセンスの講習は更なる工夫が必要だろう。  しかし、受講者が体験した段階的な課題は、実際に盲ろう者へブレイルセンスを指導する際に応用できるものである。また、「ブレイルセンスは難しい、わからない」という実感は、指導を受ける盲ろう者の心理でもある。  地域の指導で、この実習の経験を活かしてもらえることを期待している。 2-4-10 パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ 森下 摩利 1.講義概要  本講義では、点字インターフェースのシステム構築において基礎となる「点字ディスプレイの接続」を中心に指導を行った。点字ディスプレイのUSBドライバーのインストールからスクリーンリーダーの点字出力設定までを講義と実習に分け指導した。 2.講義 (1)接続方法  点字ディスプレイをパソコンに接続するには次の4つの方法があることを説明し、実際に各ケーブルや点字ディスプレイを使って受講者に示した。 <1>USB接続(パソコン → USBケーブル → 点字ディスプレイ)  USBドライバーのインストールが必要。ブレイルテンダー(BT46)はUSBによる電源供給が可能である。 <2>シリアル接続(パソコン → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ)  パソコン側にシリアル(RS-232C)ポートがある場合、リバース(クロス)という種類のシリアルケーブルで接続する。※ストレートという種類では接続できない。 <3>シリアル/USB接続(パソコン → 変換アダプター → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ)  パソコン側にシリアル(RS-232C)ポートがなく、またUSB接続が不安定な場合など、シリアル(リバース)ケーブルとシリアル/USB変換アダプターを使って接続する。 <4>Bluetooth接続  Bluetooth内蔵の点字ディスプレイで利用可能。パソコン側にBluetoothアダプター(外付けまたは内蔵)が必要である。 (2)USBドライバーのインストール  USB接続が現在は一般的であることを説明し、USBドライバーのインストール方法について説明した。   <1>USBドライバーのインストールファイルの入手方法  各点字ディスプレイ付属のCDより入手するか、点字ディスプレイのメーカーのホームページよりダウンロードする(ただしインターネットに接続できる環境にあることが条件)方法がある。 <2>パソコン側のUSBポートの決定  決められたUSBポートでしか使用できないので、あらかじめ接続するUSBポートを決めておく。 <3>インストール  <1>で入手したインストールファイルを実行しウィザードに合わせてインストールする。 <4>点字ディスプレイと<2>で決定したパソコン側のUSBポートとをUSBケーブルで接続する <5>インストールできたかどうかの確認  パソコンの<コントロールパネル>から<デバイスマネージャー>を開き、<ポート>にUSBドライバーの名前が表示されるかどうか確認する。ここでポート番号(COM番号)を覚えておくとスクリーンリーダーの設定で便利である。 (3)スクリーンリーダーの設定  各スクリーンリーダーの講義にならい点字出力設定をし、点字が表示されるかどうか必ず確認するよう説明。 (4)うまく接続できない場合  (1)〜(3)を行っても点字出力できない場合は次の方法を試すよう説明した。 <1>スクリーンリーダーの設定を確認する。 <2>USBドライバーがインストールされているかどうかデバイスマネージャーで確認する。 <3>USBドライバーを再インストールする。(アンインストール後、再度インストール) <4>点字ディスプレイの通信速度を確認する。 <5>他の接続方法を試みる。 (5)アンインストール  インストールファイルを実行しアンインストールを選択、ウィザードに合わせてアンインストールを行う。<コントロールパネル>の<プログラムと機能>からはアンインストールしないよう注意した。 3.実習  講義を行った上で次の課題を提示し実習を行った。なお、実習に使用した点字ディスプレイはブレイルテンダーとブレイルメモ32である。 (1)KGS株式会社のホームページから、使用している点字ディスプレイのUSBドライバーのインストールファイルをダウンロードする。  ※ブレイルテンダーはVer1とVer2の二種類があるので、ブレイルテンダー本体の裏に記載されているバージョンを確認しておくこと。 (2)USBドライバーをインストールする。 (3)各スクリーンリーダーを設定し、きちんと点字表示できるかどうかを確認する。 <1>FocusTalkを起動し、点字ディスプレイの設定を行う。 <2>FocusTalkを終了、PC-Talkerを起動し、点字ディスプレイの設定を行う。 (4)USBドライバーをアンインストールする。 (5)受講者同士で点字ディスプレイを交換(ブレイルテンダーとブレイルメモ32を交換)し、課題(1)〜(4)を行う。 (6)上記の実習を早く終えた受講者には、フォルダー表示、スタートメニュー表示、マウスのプロパティの各設定に進んでもらった。 4.所感  パソコンと点字ディスプレイの接続に関する講義は今年度初めて取り入れた内容であったが、受講者によって出来る人と出来ない人と差があり、パソコンを使い慣れている人にとっては難しくない課題であったように思う。しかし、点字ディスプレイのUSBドライバーのインストールは、プリンターなど一般的に使われている機器のドライバーのインストールと比べると難しくコツが必要で、丁寧に指導することができ良かったと思っている。  受講者には、各ソフトウェアの設定以外に点字ディスプレイやWindowsの設定も必要であることが実感を持って理解してもらえたのではないかと思う。 2-4-11 盲ろう者へのパソコンサポートの実際 森下 摩利 1.講義概要  ここでは、私自身の指導経験を元に、機器やアプリケーションの機能以外の部分で指導者として必要な知識や注意点、心構えについて講義を行った。 2.講義内容 (1)パソコン指導の目的を常に意識する  当初の目的が指導を続ける中で変わってくることがある。最初はわからなかった盲ろう者のニーズが信頼関係を築く中で見えてくることもある。また、その盲ろう者がどのレベルまで可能かどうかも見えてくるので、指導をしながらパソコンを学習する目的、目標を修正しつつ見極めていく必要がある。 (2)インターフェースの見極め  今まで画面インターフェースと点字インターフェースに分けて研修会を行ってきたが、実は以下のように二つ以上のインターフェースを併用する盲ろう者が増えている。 ・点字ディスプレイと拡大画面 ・点字ディスプレイと音声 ・点字ディスプレイと拡大画面と音声 ・キーボードをメインに使いながらインターネットの時だけマウスを使用  インターフェースは一つと決めるのではなく、効率よく使用し、盲ろう者がより負担にならない環境を整える必要がある。 (3)盲ろう者に各キーの名前をどう伝えるか。  キーの名前をそのまま覚えてもらうのが一番良いが、ろうベースの盲ろう者の場合は工夫が必要である。一つは手話サインを作る方法。エスケープは「左上の角」、スペースは「細長い四角」といった手話サインに置き換える。二つ目にキーの機能で伝える。エンターは「決定」、エスケープは「キャンセル」、スペースは「空ける、変換」など。三つ目にキーの場所で伝える。タブの場合は「左下端から上に四つ目」などである。 (4)言葉や手話、サインの統一  エンターは「決定」とするなど指導者と通訳・介助員で言葉や手話をあらかじめ決めておくことが必要である。  また、間違った操作をした時は背中などにバツを書くサインを決めておくとよりスムーズに指導できる。マルのサインは「今の操作で合っている。そのまま進んでもかまわない。」と多く合図をすることで安心して操作してもらえるので積極的に使いたい。 (5)操作手順と指導の準備  どのアプリケーションも操作手順は何通りか用意されている。例えば、メールを送信する際、ショートカットキーを使用する方法とメニューから選択する方法がある。その盲ろう者にはどちらが適切なのかよく考えて指導に臨む必要がある。一般的にはショートカットキーの方が簡単であると言われているがメニューから選ぶ方が他の機能への応用が効く。高度な機能を学習する可能性のある盲ろう者にはメニューの使い方を指導した方が良いだろう。また、両方を試してもらい本人に選んでもらうという指導法もあるが、逆に混乱する盲ろう者もいるので、あらかじめよく考え準備しておく必要がある。  すでに携帯電話のメール機能を使っている盲ろう者には、携帯電話の操作手順と照らし合わせて指導すると理解しやすい。 (6)指導上の注意  実際に指導する時は、特に全盲ろう者はコミュニケーションに両手を要するのでパソコンを操作しながら説明を聞くことができない。弱視ろう者や盲難聴者も画面や音声に集中している間はむやみに声をかけるのではなく、指導者が説明する時間と盲ろう者が操作する時間とをはっきりと分け、両者をなるべく短いインターバルで交互に行うことが望ましい。  各アプリケーションの構造はわかりやすく作られているものが多いが、最初からどのような構造になっているかを説明しても難しいので、一つ一つの操作を覚えてもらい、使っている内に理解を深めてもらうのが良いだろう。 (7)操作の起点を作る  盲ろう者が操作を間違えてしまった時は、間違えた操作のいくつか前の手順まで戻る方法もあるが、一度そのメニューを閉じる、またはアプリケーションごとに終了させ、最初からやり直すという方法も有用である。わからなくなった時にどこまで戻りやり直すかは盲ろう者それぞれ違うが、戻る場所、つまり操作の起点を作ることで「わからない時はここまで戻ろう」と何度も指導し、操作を間違ってもやり直せる方法を指導する必要がある。 (8)点字ユーザーには点字表示を基本とし説明する  点字ディスプレイにはパソコン画面の情報が1行しか表示されないため、次に進みたいメニューが上下左右どこにあるのか点字ディスプレイの点字を読んでいるだけではわからない。そういった状態で「もっと上にいって」という説明をしてもなかなか理解に繋がらない。画面表示を基に指導するのではなく、1行しかない情報から次にいかにアクセスするかといった視点で指導する必要がある。 (9)点字で操作することの困難を理解する  点字を習得している盲ろう者でも点字を使ってパソコンを操作するのは簡単ではない。  ひとつは、点字で墨字を書かなければならないことの困難である。点字では助詞の「は」は「わ」と、「へ」は「え」と記すルールがあるが、メールを書く時は「は」や「へ」というように墨字のルールに従わなくてはならない。しかし点字ディスプレイには点字のルールどおり表示されてしまうので戸惑う盲ろう者が多くいる。他に漢字の入力は高いハードルであり、導入はすべてひらがなで練習するのが良いだろうが、漢字かな混じり文への移行の見極めも重要である。  また、漢字の読みが間違って点字表示されることもあり意味が取れない場合もあので、丁寧に指導する傍ら、周囲の人に盲ろう者へメールを送る際は書き方に配慮してもらうよう、呼びかけることも必要である。 (10)操作手順、操作法は一つではない。  指導者によって指導する操作手順や操作法は異なる。例えば、Windowsをシャットダウンする方法で、スタートメニューからシャットダウンを選ぶ方法と、電源ボタンをシャットダウン機能に割り当て電源ボタンを押すだけでWindowsを終了させるという方法があるが、指導者一人一人の考え方があり、どちらを採用するかはそれぞれ違う。VoicePopperやサーチエイドの左右カーソルキーとエンターキー・エスケープキーも同様で、どちらを採用するかは指導者によって異なる。自分が指導する際はそれらのメリット・デメリットをよく考え指導にあったってほしい。 (11)他の機器との組み合わせ  もしその盲ろう者が携帯電話やテレビ、ラジオを活用できていれば無理にパソコンを覚える必要はないだろう。  また、パソコンにメールがきたかどうか即時に知りたいという希望もあるので、転送機能を使い携帯電話でもメールを受信するようにしておくとメールが送られてきたことをすぐに知ることができる。 (12)その盲ろう者に合ったマニュアルの作成  盲ろう者が操作手順を確認できるよう(盲ろう者が読める場合は)マニュアルを作成するのが良い。  本人に書いてもらうのが良いが、難しい場合は指導者が書く。できるだけ指導中に使った言葉を用いるようにする。 (13)アフターケア  指導の他にパソコンの購入や自宅のインターネット環境の構築なども指導者の役割である。また市区町村に補助制度がある場合はそれらの申請も必要である。これらがひととおり終わったとしてもパソコンサポートは定期的に行わなくてはならないため、できれば数名の支援者で継続的にサポートするのが理想である。 3.所感  指導者は機器やアプリケーションの指導法を学ぶだけでなく、盲ろう者の困難さを理解した上でどのように指導したら良いか、目的を達成するまでにどのように道案内をしたら良いかを考えることが重要である。60分という短い時間ではすべては伝えきれなかったが、パソコンの知識だけではなくその盲ろう者と向き合わなければ良い指導はできないということを理解してもらえたのではないかと思っている。 2-5 受講者からのアンケート調査 受講者: 11名   回答者: 9名 回答率: 80% 1.現在の勤務先及び職種 勤務先(複数回答あり) <1>視・聴覚障害者関係団体 0 <2>その他障害者関係団体 1 <3>視・聴覚障害者関係施設 2 <4>その他障害者関係施設 0 <5>社会福祉協議会 0 <6>都道府県 0 <7>市町村 1 <8>その他 3 無回答 2 職種(複数回答あり) <1>手話通訳者(手話奉仕員を含む) 3 <2>点訳奉仕員 0 <3>朗読奉仕員 0 <4>要約筆記奉仕員 1 <5>ガイドヘルパー 1 <6>ケースワーカー 0 <7>ホームヘルパー 1 <8>盲ろう通訳・介助員 6 <9>その他 3(学生、訓練など、WEBデザイナー) 2.これまでに障害者福祉関係の業務に携わった経験のある方の年数 <1>1年未満 1 <2>1〜3年 2 <3>3年以上 6 3.盲ろう者との関わりの状況について <1>現在、あなたは盲ろう者に接していますか (a)はい  9 (b)いいえ 0 <2>これまでに盲ろう者に接した経験がありますか (a)はい 9 (b)いいえ 0 <3>盲ろう者に接した年数 (a)1年未満 1 (b)1〜3年 2 (c)3年以上 6 無回答 1 <4>盲ろう者に接しているときの主な活動内容(複数回答あり) (a)生活相談・就業相談等 1 (b)買い物等外出・移動時の支援 5 (c)第三者との対話等のコミュニケーション支援 5 (d)その他 4 4.本研修会を受講した動機及び目的(複数回答あり) <1>動機 (a)自発的参加 5 (b)同僚・上司等の勧め 3 (c)その他 2 (友の会からの依頼、参加団体からの勧め) <2>目的 (a)学問的知識の補充 4 (b)実務に即した知識・情報の収集 8 (c)実務に即した技術の習得 5 (d)自己啓発・再動機づけ 1 (e)他の参加者との情報交換 2 (f)中央の情報収集 2 (g)その他 0 5.本研修会の運営等について ・開催時期や日数について 良い  7   普通  2   改善を望む  0 ・研修事務の進行等の対応 良い  8   普通  1   改善を望む  0 ・研修会場の設備・サービス   良い  7   普通  2   改善を望む  0 6.個々のプログラム及び全体について  1 = 参考になった  2 = 普通  3 = 参考にならなかった <1> <2> <3> 無回答 ・盲ろう者向けパソコン指導概論  9  0  0  0 ・パソコンキーボード操作概論  6  3  0  0 ・画面インターフェースを活用した指導  8  1  0  0 ・点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー(FocusTalk for Brailleとアプリケーション)  7  2  0  0 ・点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー(PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション)  7  2  0  0 ・ブレイルセンスプラスの概説・演習  8  1  0  0 ・パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ  8  1  0  0 ・盲ろう者へのパソコンサポートの実際  9  0  0  0 ・総合評価  8  0  0  1 <コメント> 5.本研修会の運営等について 〈開催時期や日数について〉 ・概要や基本操作を体験でき、参考になった。 ・暑くも寒くもない、秋に差しかかった時期は過ごしやすかった。 〈研修事務の進行等の対応〉 ・さまざまなサポートをしてくださり、ありがとうございました。 ・分からないこと、してもらいたいことは、きちんと伝えれば対応してもらえた。 〈研修会の設備・サービス〉 ・交通の便も良く、周囲の環境も便利な会場だった。 〈その他〉 ・ホテルと研修所が近くて本当に助かりました。 6.個々のプログラム及び全体について 〈盲ろう者向けパソコン指導概論〉 ・盲ろう者概論は、高橋さんもおっしゃっていたように、知っていることだとは思いながらも、その感覚におごることなく、そのつど耳にして初心を忘れないようにすることが大事だと感じました。 ・ロービジョンの見え方等について、わかりやすく説明していただき分かりやすかった。 ・とても分かりやすかったです。マップの中でどこに担当する盲ろう者が位置するか、コミュニケーション速度についてなど参考になりました。 ・改めて「PC」という視点から考えられたので、知っているつもりのお話でも新しい発見がありました。 ・盲ろう者の基本的な知識をきちんと整理した内容で、盲ろう者一人ひとりのニーズに合わせる必要があることを再確認できた。 〈パソコンキーボード操作概論〉 ・マウスを使わずキーボードだけで操作することは、実は結構できる!!と思っていたのですが、マウスパッドまで使えないとかなり苦しみました。一番初歩的な技術のようですが、今回の研修で一番、勉強になりました。 ・基本操作を分かりやすく説明していただき、その後の講座の基本ができました。 ・基本的な操作を分かりやすく教えて頂きました。普段はマウスの操作が多かったので、キーボード操作に慣れるようにしようと思います。 ・実践が少し入った方が分かりやすかったと思いますが、時間の都合上、仕方ないと思いました。 ・真似るだけで精一杯。 〈画面インターフェースを活用した指導〉 ・拡大鏡、老眼マウス、でかポインタ、あんだーまうす君、ターザンマウス、全て初めて知るものでした。それぞれのご希望に沿うように盲ろう者の方にお伝えしたいと思いました。 ・白濁と狭窄の体験ができて良かったです。様々な便利なソフトを比べることができ、それぞれの特徴が分かりやすかったです。 ・実技的な学習ができて良かったです。 ・疑似体験をしながら拡大鏡など、習ったキーボード操作で実行できた達成感が実感できたのが嬉しかった。 〈点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー(FocusTalk for Brailleとアプリケーション)〉 ・初めて耳にするものばかりでしたが、実技も多く、実際やってみることで勉強になりました。(「Voicepopper」「サーチエイド」) ・演習で実際にボイスポッパー、サーチエイドを使いながら、訓練に沿った手順を学ぶことができました。 〈点字インターフェースを活用したスクリーンリーダー(PC-Talker + BrailleWorksとアプリケーション)〉 ・Myシリーズ、こちらも実技が多く、実際にできたので大変勉強になりました。  (MyMail、MyNews、MyBook) ・実際の指導で必要な設定方法が盛り沢山で、とても勉強になりました。マイニュース、マイブックも演習できて良かったです。 〈ブレイルセンスプラスの概説・演習〉 ・村岡さん自身のご経験をまじえてお話し頂き、大変勉強になりました。ソーシャルネットワークなどの操作も可能で、幅広いブレイルセンスの世界や、それを使いこなせておられる実状などを知れて、情報量が増えました。 ・実際に操作して難しさを実感しました。これまで「便利である、すばらしい機器である」と思っていましたが、使いこなすのも、また技術が必要なのですね。そのような中、グループ講師の大河内さんから温かい励ましを頂きながら、演習をすすめ、訓練を受ける盲ろう者の立場も実感しました。「出来る」と思わせてくれることは大事ですね。 ・センスの具体的内容や現状も具体的に話されてイメージしやすかった。演習で画面を表示しないで、実際に点字を読みながらするのは良かったが、課題が半分くらいしかできなかったのは残念。 〈パソコン・点字ディスプレイの接続、スクリーンリーダーの設定方法を学ぶ〉 ・指導の仕方がとても分かりやすく、すごく勉強になったことと、ひとつの作業に対して、それに付随する操作や、その時のトラブル対応などまで教えて頂きました。本当に本当に・・・頭がパンクしそうです。 ・初期に必要な操作をイメージすることができた。幅広い知識が必要と再確認した。 ・インストール、アンインストールをテンダーとBM32で行うことができ、勉強になりました。 ・接続は簡単なようで難しいことが良く分かった。 〈盲ろう者へのパソコンサポートの実際〉 ・森下さんのお話にうなずくことの多い、とてもためになる時間でした。自分がセンスを使って分からなかった時、不安な気持ちをいつも忘れずにいようと思います。通じ合える、できる喜びを常に一緒に感じていけたらと思います。 ・実際の場面をイメージしながら聞くことができました。パソコンに頼りすぎることなく、生活の向上という視点で考えていきたいです。 ・これまでの訓練の事例を交えながら、様々な指導のヒントを教えて頂きました。パソコンができるようになることが最終目標ではなく、盲ろう者の生活を見据えて指導するということは、他にも(盲ろう者の支援について)当てはまると思いました。 ・実際の指導にあたっての考え方や具体例などの話が聞けて良かったです。 〈総合評価〉 ・指導の際は、楽しく出来ることを積重ねて習得できるように、皆さんから教えて頂きました。ありがとうございました。 ・とても勉強になりました!! 7.本研修について自由にお書きください。 ・参加する前は何名参加かもわからず、とても不安な気持ちでしたが、名前が覚えられるくらいの人数で、自分もみんなに覚えていただけ、まずそれが一番最初に安心しました。実は、沢山のソフトを学ぶ中で分からない言葉がほとんどで、まず「スクリーンリーダー」が何のことか分かりませんでした。私の理解が及ばなかったのだと思いますが、様々なソフトのどことどこが繋がっているのか、研修中ほとんど分からないままでした。最終日、ソフトを実際にダウンロード→インストールする作業で初めて、Focus TalkとPC-Talkerが似た機能を持つソフトでどちらも使うことはなく、盲ろう者がどちらかをダウンロードしているということがやっと最終日に分かりました。ホテルに帰ってマニュアルをじっくり読めば良いのでしょうが、集中力も持たず・・・マニュアルの一部分でも研修前にいただけていたら、参加するまでに少しの知識が得られて、5日間もより良いものになったかな、と少し思いました。もちろんカリキュラムを事前に見て、ネット等で勉強していけば良かったのかもしれませんが、すみません。それぞれの講師の方や、携わって来られている多くの方々が、これまで培ってこられた歴史に感謝して、我々はこれから沢山の方々にPCを使っていただけるよう、お手伝いをしていこうと強く感じました。ただそれは最終目標ではないので、常にその向こうにおられる盲ろう者の方をしっかり見て、今どんなお気持ちでいらっしゃるか、私はそれを汲んで接しられているか、常に向き合っていきたいと思います。一緒に学んだ仲間はかけがえのない人です。どんな時も、仲間がいれば頑張れたり、自分を見つめ直したりできるので、これからも多くの仲間とつながっていきたいと感じました。今回の研修に参加させていただき、本当にありがとうございました。5日間過ごしやすいように様々な配慮をしてくださり、大変貴重な経験をさせて頂きました。ありがとうございました。 ・広い内容を学ぶことができ、体験も多くできましたので、とてもありがたかったです。実際にソフトや機器を今後触る機会があまりないので、指導できるレベルまで知識を得られるか不安がありますが、地域で少しずつサポートに携わっていけたらと思います。良い機会を頂き、ありがとうございました。 ・とても内容の濃い研修会でした。まだ習ったことは定着には程遠いですが、今後の仕事に活かせるよう励みたいと思います。事務局の皆様、講師の皆様、本当にありがとうございました。 ・5日間ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。 ・5日間、講義には追いついていけず、ご迷惑を多々おかけしましたが、楽しい講座でした。ありがとうございました。 ・5日間お世話になりました。こちらで学んだ知識を今後、活かしていこうと考えています。ありがとうございました。 ・ソフトが色々出てきすぎて頭の中で整理が追いつきませんでした。最初にソフトの相関関係の資料や説明があると、もっと理解しやすかったかなと思いました。(予習・復習不足と言われるとイタイですが・・・) ・自分でメールできることは本当に嬉しいことです。自分でメールできる人は何気に思っていますが、もう今は「化石」のようになってしまいますが、「ミニファックス」というものがありました。ろう者が初めて自力で連絡が取れて涙していたことが目に浮かんできました。5日間と長い間、講師の皆様、協会の皆様お世話になりました。問題はこれから・・・どう取り組めばいいのか悩みもありますが・・・。 2-6 考察  盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会の実施は今年度で7回目となる。この間、新しいOSや点字情報機器の発売があり、1回目の本研修会と比べて内容は大きく変化している。変化せざるを得なかったのは、これらOSや機器の発売だけでなく、講師陣のノウハウをどのように伝えるべきか、その指導法の試行錯誤が行われてきたことも大きな要因である。  盲ろうという障害は多種多様であり、盲ろう者一人一人に合わせたパソコン環境の構築と指導法を五日間で効率よく学んでもらうため、どのようなカリキュラムが良いのか講師の中で議論を重ねてきた。結果、盲ろう者向けパソコン指導概論や、画面インターフェース・点字インターフェースの各指導法を基本とし、その他、昨年度までは、盲ろう者のパソコン利用に係る疑似体験を行ったり、受講者同士でのグループ討議を行ったりと、工夫したカリキュラムを取り入れてきた。しかしながら、どの年の研修会でも反省点として挙げられるのは、受講者が持ち得ている知識や経験の差があり、それらに十分に答えていないということであった。受講者は大きく二つのタイプに分けられた。日頃より盲ろう者に接することが多く、盲ろう者へのパソコン指導を切実に感じてはいるが、あまりパソコン技術に詳しくない支援者。一方は、盲ろう者と接する機会はあまりないが、パソコンや障害者向けのソフトウェアや機器に関する知識や技術を身に付けている者である。盲ろう者向けパソコン指導者にはどちらの要素も重要であり、これまでこの研修会に受講された方々には、それらをよく理解していただけたと思っている。  しかし、理解に繋がったものの、実際に指導に結び付くような研修会を実現できているかどうかは正直難しいところである。五日間という限られた時間の中で、盲ろうという障害の特性と、パソコン等情報機器の知識や指導技術を伝えることはそう簡単ではない。  今年度の受講者アンケートには「研修会の最終日にスクリーンリーダーの意味がわかった」という感想や「どのソフトとどのソフトが関連しているかわからない。ソフトの相関関係の説明がほしい」といった意見が寄せられた。研修会を運営する側は、受講者の「わからない」をきちんと理解する必要があると強く感じた次第である。  その一方で、あえて講習の必要がないだろうと思っていたが今年度初めて試みた『パソコンキーボード操作概論』では、「今回の研修で一番勉強になった」との感想があり、また『盲ろう者へのパソコンサポートの実際』では「パソコンに頼りすぎることなく(盲ろう者の)生活の向上という視点で考えたい」という感想もあり、受講者の視点に近づくことができ、尚且つ、盲ろう者のパソコン指導における本質を伝えることができ、この7年間の歩は確実な前進を遂げているのではないだろうか。  本研修会はこうした課題を抱えているものの、盲ろう者の生活向上のためにはパソコン等情報機器は欠かせない存在となってきており、盲ろう者向けパソコン指導者の養成は年々必要性が高まってきている。指導者間のネットワークを広げる意味でも、本研修会への期待は大きく、今後より一層の発展が必要であろう。 第3部 コミュニケーション訓練個別訪問指導 3-1 概要  日ごろパソコン等情報機器に触れることの少ない盲ろう者に対して、一定期間パソコン等情報機器を貸与し、その期間中に講習および日常的な個別訪問指導を実施することで、コミュニケーションツールとして、またはインターネットを通じての情報収集ツールとして体験してもらい、今後の日常生活において、パソコン等情報機器を活用していくきっかけとなるよう実施した。  訓練期間は、概ね6月〜8月(前期)と10月〜12月(後期)の約6ヶ月間で、9人の受講盲ろう者を対象とし、同時に、地域の指導者となりうる通訳・介助員や盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会の受講者等を数名ずつ募り、訓練を進めた。また、訓練の足がかりとなるよう、本事業企画委員を講師として各地域へ派遣し、受講盲ろう者ならびに地域の指導者に対し、6〜8回の講習会を開催した。  パソコン等情報機器は、Windows7搭載のノートパソコン、点字ディスプレイ、各ソフトウェア、ブレイルセンスプラス・オンハンド、その他周辺機器を、受講盲ろう者の希望に合わせて準備、貸与した。  訓練は、メールの送受信等を中心に行い、機器を返却した後も訓練や指導が途切れてしまわないよう、購入方法の支援、自宅のインターネット環境の整備も含めて行った。 3-2 募集要領 平成24年度「コミュニケーション訓練個別訪問指導」受講者募集要領 1.目的  パソコン等情報機器を活用した盲ろう者へのコミュニケーション訓練を実施することにより、盲ろう者のコミュニケーション能力の向上を図り、社会参加の促進に寄与することを目的とします。 2.コミュニケーション訓練内容  受講盲ろう者に、一定期間パソコン等情報機器を貸与し、メールの使用法・ホームページ等からの情報収集法等について、その機器の使用方法等も含めての講習を行います。 3.受講対象者  盲ろう者で、パソコン等情報機器の活用に意欲のある方。  ただし、パソコン等情報機器をお持ちでなく、これまでに活用した経験のない方を優先します。 4.募集人数と訓練期間 前期:平成24年6月〜8月(3ヶ月間) 4人 後期:平成24年10月〜12月(3ヶ月間) 4人 5.訓練対象機器 ・ノートパソコン(Windows7)+点字ディスプレイ(ブレイルテンダーあるいはブレイルメモ32)(スクリーンリーダー、画面拡大ソフト等をインストールしたもの) ・ブレイルセンスプラスまたはブレイルセンスオンハンド(点字情報端末) 6.訓練期間中の講習ならびに指導体制、その実施方法  訓練期間開始時、訓練期間中に、全国盲ろう者協会より講師を派遣し、パソコン等情報機器のセッティング、操作方法等について講習を行います。(期間中6回程度)  この講習には、受講盲ろう者に加え、地元でその盲ろう者へのコミュニケーション訓練を実施できる指導者(盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会受講者、パソコンボランティア、盲ろう者向け通訳・介助員等)に参加していただきます。  指導者は受講盲ろう者に対して、訓練期間中(概ね週1回、5時間程度)の指導ならびにサポートを行っていただきます。  受講盲ろう者には、当協会より「コミュニケーション訓練利用券」を60枚(1ヶ月20枚)交付します。  受講盲ろう者は、コミュニケーション訓練個別訪問指導(サポート)終了後に、「コミュニケーション訓練利用券」を1時間につき1枚として、指導者に指導時間数分手渡していただきます。  指導者は、月ごとに「コミュニケーション訓練利用券」に所定の「コミュニケーション訓練指導実績報告書及び指導内容報告書」を添えて、当協会へ提出していただきます。  当協会は、請求のあった指導者ご本人の振込口座へ、謝金および交通費を送金します。  訓練期間終了時に、受講盲ろう者には、アンケート調査を実施させていただきます。 7.申し込み方法  (訪問別紙2)「平成24年度コミュニケーション訓練個別訪問指導受講申し込み方法・諸注意」をお読みいただいた上で、(訪問別紙3)「平成24年度コミュニケーション訓練個別訪問指導受講申込書」に必要事項をご記入いただき、3月31日(土)までに、当協会に郵送またはファックス等で提出してください。 8.受講可否の決定  本事業実施の決定後(4月中旬から5月中旬頃)、申込書を参考にして、当協会にて受講の可否を決定し、決定通知書を送付します。また、受講決定者には、受講期間、初回の講師派遣による講習の日程等を相談させていただきます。 9.連携団体としての提出書類のお願い  助成団体との関係から受講が決定した場合、その盲ろう者が所属する友の会には、本事業への連携団体として登録していただく必要があります。つきましては、受講決定とともにお知らせするご案内に沿って、確約書の提出をお願いすることになりますのであらかじめご了承下さい。 10.申し込み・問合せ先 社会福祉法人全国盲ろう者協会 〒162-0042 新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL:03-5287-1140  FAX:03-5287-1141 E-mail:info@jdba.or.jp (担当:橋間信市) 3-3 個別訪問指導報告(パソコン編)  9名の受講盲ろう者の内、6名に対してパソコンの指導を行った。  なお、貸与したパソコンにはすべて次のソフトウェアをインストールした。 インストールしたソフトウェア PC-Talker7(KTOS)、BrailleWorks、MyMailIII、VoicePopper、サーチエイド、ZoomText、でかポインタ、あんだーまうす君、老眼マウス 3-3-1 Aさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 60歳代 (3)障害の程度 弱視難聴 (4)受障歴 聴覚 先天性難聴 視覚 先天性弱視 (5)コミュニケーション方法 受信 音声 発信 音声 (6)点字の触読 不可 (7)使用文字 拡大文字 (8)パソコン等の経験 以前よりWindowsXPにてメールやインターネットを利用 (9)志望動機 Windows7のパソコンに買い替えたため、新しいOSの操作性の勉強、ならびに、友の会の会報作成のためエディタ等の操作を学びたい。 (10)希望機種 パソコン(画面拡大・音声) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 大河内直之 (2)地域の指導者および通訳・介助員 3名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン デスクトップ型パソコン(Windows7) その他 PC-Talker7、MyMailIII、NetReader、MyWordIIIII (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 なし 出力機器 なし 点字情報機器 なし 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年6月13日(水) 13:00〜17:00 第2回 平成24年6月14日(木) 9:00〜12:00、13:00〜15:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン 本人所有のデスクトップ型パソコン(Windows7) ソフトウェア 本人所有のPC-Talker7、MyMailIII 通信機器 自宅のインターネットを利用 (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>WindowsXPとWindows7の基本的な違いについて説明 <2>MyMailを利用した添付ファイルの送受信と保存 <3>Myシリーズの画面拡大機能の使い方 地域の指導者に対して <4>PC-Talkerの基本的な仕組み <5>Wordファイルとテキストファイルの違いについて <6>添付ファイルと本文貼り付けの使い分けについて (5)成果  すでに、XP環境で、PC-Talkerを利用してメールやインターネットを利用されていた方だったので、Windows7の導入は非常にスムーズだった。パソコンの起動、スタートメニューの操作、アプリケーションの起動と終了、パソコンの終了の手順も、XPとの違いを一度説明しただけですぐに理解し、順調に操作することができた。  今回の講習の主な目的は、友の会の会報の仕事ができるようになることだったので、これまであまり利用していなかった添付ファイルの利用について講習を行った。送られてきた添付ファイルをそのまま開いて読む方法と、マイドキュメント等に保存して読む方法の二つを説明し、最初少し混乱はあったものの、2・3度手順を繰り返すことで習得することができた。 (6)課題  これまでも、支援者から送られた添付ファイルをたまに読むことがあり、それがスムーズに読めるようになる必要があるとご本人は強く思っていた。もちろんそのことも大事だが、同時に添付ファイルやWordファイルが盲ろう者には使いにくいものであることも、支援者を含めて共有していく必要があると感じた。 (7)所見  WindowsXPにて、MyMailやMyWord等一通りのソフトウェアを使いこなしている方だったので、Windows7との違いを説明するだけで簡単に理解し、操作することが可能だった。また、購入したパソコンについても、ご近所の電気店の方がPC-TalkerやMyシリーズのインストール、スタートメニューのカスタマイズ等、ご本人がこれまで利用されていた環境にかなり近い環境構築を行ってくださっていたので、こちらで初期設定をする必要が全くなかった。また、光サービスのインターネットにも加入されており、ネットワーク環境も整っていた。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年7月20日(金) 13:00〜17:00 第4回 平成24年7月21日(土) 9:00〜12:00、13:00〜15:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン 本人所有のデスクトップ型パソコン(Windows7) ソフトウェア 本人所有のMyMailIII、MicrosoftWord、MyRoot(体験版) 通信機器 自宅のインターネットを利用 (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>MyMailの添付ファイル取り扱いの続き <2>MyEditを使っての文書の閲覧、編集 <3>MyRootの体験 <4>MicrosoftWord等の画面環境の整備 地域の指導者に対して <5>Wordファイルからテキストファイルの保存方法 <6>添付ファイルと本文貼り付けの使い分けについて <7>MicrosoftWord等の画面環境の整備 (5)成果  残存視力の活用が可能であるため、MyEditやMyMailの拡大機能を利用して、文書を読む方法を紹介し、自分で見やすい文字サイズを選択・設定することができるようになった。また、コンピュータの簡単操作センターの操作を紹介し、白黒反転機能や拡大鏡による文字の拡大機能などを紹介した。他、交通情報を調べたいとのことで、MyRootの体験版をダウンロード・インストールし、乗換検索などを体験した。今後購入するかどうかを検討するとのこと。 (6)課題  画面環境の設定については、講師が全盲であることから、なかなかご本人の実感を踏まえた設定ができず、結果的に支援者の手を借りての設定となった。環境はかなり改善できたと思われるが、その設定方法等具体的なやり方について、支援者に丁寧に説明する時間が取れなかった。 (7)所見 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年8月23日(木) 13:00〜17:00 第6回 平成24年8月24日(金) 9:00〜12:00、13:00〜15:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン 本人所有のデスクトップ型パソコン(Windows7) ソフトウェア MyMailIII、MyEdit、NetReader、MyRoot 通信機器 自宅のインターネットを利用 (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>NetReaderのお気に入りページのカスタマイズ <2>NetReaderを使ったホームページ閲覧 <3>MyMailの復習 地域の指導者に対して <4>実際の指導方法 <5>お気に入りページの設定方法 (5)成果  NetReaderによる、ホームページの閲覧を前提に、お気に入りページをご本人の希望を聞きながら設定した。またその方法を支援者と共有し、今後ご本人が一人でできるよう取り組んでいただくこととした。  また、MyMailの添付ファイルの取り扱い、MyEdit等をつかった拡大画面環境による文書の閲覧等を復習した。復習の際は、講師が指導するのではなく、地域の支援者に実際に指導をしていただいた。非常に順調に操作ができるようになったため、今後新しいことにも取り組んでいただきたい旨をお伝えして講習を終了とした。 (6)課題  ご本人は非常にモチベーションも高く習得も早いため、もっといろいろなことがやりたかったのではないかと思う。実際はあまり時間がなく、会報作成のための、最低限の操作にとどまってしまったことが少し残念であった。ただ、地域の支援者の指導もできるようになってきたため、今後のサポートに期待したいところである。  画面の設定については、講師が全部を把握しきれておらず、支援者にもすべてを伝えきれなかった。これについては、今後に向けて講習方法等を工夫したいと思っている。 (7)所見 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年8月8日(水)〜平成24年9月10日(月) (2)指導回数 全10回 (3)指導時間 全50時間 (4)指導者数 3名 (5)主な指導内容(抜粋) 8月10日(3回目) ・ショートカットキーの確認。 ・転送メールの操作。 8月17日(4回目) 会報の作成。印刷の文字を大きくしたいとの事。後日大河内氏に教わる。 8月21日(5回目) ・Word文書の作成。ポイントや字体の変更など。 ・拡張子の意味の確認。 ・ショートカットキーの一覧表を作成。 8月29日(7回目) ・添付を開く、読む、印刷の練習。 ・マイブック、マイニュース、ネットリーダーの復習。 9月3日(8回目) ・マイブックで青空文庫を読む。 ・マイメールで添付されたファイルを開いてマイワードに貼付、編集。 ・Wordで会報を作成。 9月6日(9回目) ・会報の編集で、範囲指定、切り取り、貼り付けの練習。文頭、文末、行頭への移動の練習も行った。 ・メールにファイルをうまく添付できず。次の指導者引き継ぐ。 9月10日(10回目) ・Word文書の作成、保存。 ・添付メールの方法。 ・ショートカットキーの確認。 3-3-2 Bさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 30歳代 (3)障害の程度 弱視難聴 (4)受障歴 聴覚 先天性。両耳100デシベル以上。 視覚 左目は全く見えず、右目は少し見える程度。右目の視力0.02。視野は約10度。 (5)コミュニケーション方法 受信 接近手話 発信 手話、音声。 (6)点字の触読 可 (7)使用文字 拡大文字。拡大読書器も使用。 (8)パソコン等の経験 以前経験はあるが忘れてしまい、それ以後ほとんど経験なし。携帯電話のメール機能を使っている。 (9)志望動機 インターネットを活用したい。ホームページを見たりメールをしたい。家族より今のうちにパソコン操作ができるようになった方が良いと薦められたのがきっかけとなり申し込んだ。 (10)希望機種 パソコン(画面拡大) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 高橋信行(第1、2、4、5回) 森下摩利(第3、6回) (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし。第5回より購入したノート型パソコン(Windows7)を使用。 その他 なし (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ 点字情報機器 なし 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1、2、4、5回 (1)期日 第1回 平成24年10月12日(金) 13:30〜17:00 第2回 平成24年10月13日(土) 10:00〜13:00 第4回 平成24年12月24日(月) 13:30〜17:00 第5回 平成24年12月25日(火) 10:00〜13:00 (2)実施場所 第1、2回 地域の福祉センター 第4、5回 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア MyMailIII、VoicePopper、MyNews、サーチエイド、InternetExplorer、MicrosoftWord、でかポインタ、あんだーまうす君、拡大鏡 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>コンピュータの各部名称と取扱の注意点、接続方法 <2>電源の投入 <3>Windowsの起動と終了 <4>視覚特性(視力、視野、コントラストポラリティ効果の有無)の確認 <5>適正文字サイズの決定 <6>マウスポインタの視認性の確認および支援ツールの決定 <7>マウス操作の基本 <8>キーボード操作の基本 <9>アプリケーションの起動と終了 <10>拡大鏡の起動と設定、操作方法 <11>メモ帳における文字入力 <12>タッチタイピング <13>メニューの利用方法 <14>VoicePopperの起動、終了 <15>VoicePopperを使ったメールの送受信 <16>サーチエイドの起動 <17>サーチエイドを使った検索および検索結果の閲覧 <18>InternetExplorerを使った検索および検索結果の閲覧 <19>Wordの基本的操作 地域の指導者に対して <1>パソコン講習における受講盲ろう者とのコミュニケーションの留意点 <2>機器の設置についての概要 <3>機器の接続方法 <4>支援するタイミングおよび待つことの重要性について (5)成果 ・コンピュータの設置・接続ができるようになった。 ・コンピュータの起動・終了ができるようになった。 ・アプリケーションの起動・終了ができるようになった。 ・ハイコントラスト黒の画面デザインを採用することで、視覚を活用したコンピュータ操作が可能であることが分かった。 ・マウスポインタの視認性を改善することで、マウス操作ができるようになった。 ・タッチタイピングに取組み、キー入力操作が向上した。 ・VoicePopperを使って、メールの送受信ができるようになった。 ・Wordを使って、基本的な文書作成ができるようになった。 ・InternetExplorerを使ってインターネット検索ができるようになった。 ・サーチエイドを使って、インターネット検索ができるようになった。 (6)課題 ・タッチタイピングをよく練習し上達したが、今後、入力スピードや正確さがさらに向上すると良い。 ・現在、キーボード操作とマウス操作を併用しているが、今後視力の低下することを考えると、徐々にキーボード操作のみによる操作に切り替えていく必要がある。 ・同じ理由により、点字の習得にも取り組んで欲しい。 ・インターネット検索については、InternetExplorerとサーチエイドの基本的な操作ができるようになったが、冗長な情報を含む検索結果から、自分の必要とする部分のみを効率よく見つけだせるようになって欲しい。 (7)所見  大変意欲的に取り組み、支援者の適切な支援が得られたこともあり、短期間で良い成果をあげることができた。今後も引き続き、地域の支援者のサポートを受けながら、スキルアップを図り、ITを活用した自立と社会参加に向けて努力して欲しい。 第3回 (1)期日 平成24年11月26日(月) 9:00〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア VoicePopper、でかポインタ、拡大鏡 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの送受信の復習 <2>新規メール作成の練習 <3>アドレス帳の登録(手動登録) <4>アドレス帳の登録(差出人登録) <5>アドレス帳の登録(本文にあるアドレスを登録) 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  高橋氏より引き継ぐ形で、まずメールの送受信の復習を行い、新規メール作成の指導を行った。  ご本人はフルキーのローマ字入力が可能で、画面上のマウスポインタ(でかポインタ)も視認できマウス操作も習得している。そのためマウスを中心とした指導を行うこととした。新規メール作成では上部にあるツールバーの「メール作成」をクリック、アドレス帳から宛先人を選ぶ際はダブルクリックするよう指導。すぐに操作することができた。  アドレス帳の登録では三つの方法を指導した。サインペンで紙に書いた文字を読むことができるので、メモを見ながらアドレスを直接入力することが可能である。差出人の名前やアドレスをすべて入力し登録する方法と、受信メールのヘッダーから登録する方法、本文に書かれたアドレスを登録する方法を指導した。どの方法もマウスを使ったが、場合によってはキーボード操作の方がやりやすかったかもしれない。どの方法もすぐに覚えることができた。 (6)課題  メールの本文を書く時に改行せずに書いてしまっていた。普段より携帯電話を使ってメールの送受信をしているので、その感覚で書いたものと思われる。メールの送受信に慣れてきたら本文の書き方も指導したい。  アドレス帳の登録ではマウスを中心に指導したが、画面の上部4分の1程度に拡大鏡を固定し拡大鏡を見ながら操作をしているので、キーボードの操作を覚えた方が目に負担がないかもしれない。マウスとキーボードをどのように使い分けたら良いかは今後の大きな課題である。 (7)所見  今回の講習会の後に、ご本人は他の事業のパソコン訓練を受けることになっている。その訓練終了後に再度この講習会を行う予定である。 第6回 (1)期日 平成25年1月10日(木) 9:00〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン 本人が購入したノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア VoicePopper(体験版)、でかポインタ、拡大鏡 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>無線LANの設定 <2>VoicePopperの購入手続き <3>VoicePopperのライセンス登録について <4>新しいマールアカウントの取得 <5>今後の機器購入について 地域の指導者に対して <6>メールの同時送信について (5)成果  他事業のパソコン訓練や高橋氏より引き継ぐ形で行った。すでにご自分のノートパソコンを購入され(その他の機器は未購入)環境設定も終わっていたので、協会より貸与を受けている外付けディスプレイやキーボードを接続し自宅で使えるよう最後の環境設定を行った。  ご家族がパソコンを使われているので、自宅には無線LANによるネットワーク環境があり、その設定と、すでにインストールされているVoicePopper(体験版)よりVoicePopperの購入手続きをご本人にやってもらい、支払い方法やライセンスの登録方法について説明した。サーチエイドの購入はご本人の希望もあり今回は見送ることになった。  今日まで使ってきたメールアドレスは訓練用のものだったので新たにメールアドレスを作ることとし、ご本人と相談しながら地域の指導者と一緒にアカウントを取得した。  今後はノートパソコン以外の機器の購入が必要で、購入するものを地域の指導者と改めて確認した。  第3回の講習会で課題だったマウスとキーボードの併用はとてもスムーズにできていて、以前より目の負担はないように思われた。ショートカットを活用したパソコンの操作は順調にできており、パソコン操作を十分に習得されている様子が伺えた。 (6)課題  この3か月間、本事業や他事業を含めしっかりとパソコン訓練を行うことができたようだ。ファイル管理もできるようになっており、高橋氏も書いているとおりスキルアップが大いに期待できる。  普段は携帯電話、FAX、拡大読書器を利用しており、テレビの画面も見ることが出来ているので、パソコンにどのような役割を期待するのかがまだはっきりとしていないが、プリンターも購入したいという希望があり、今後パソコンを使用しながら見出していけるのではないかと思っている。 (7)所見  地域の指導者と良い雰囲気で講習会を進めることができた。今後のパソコンサポートにとても期待している。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年10月13日(土)〜平成25年1月29日(日) (2)指導回数 全8回 (3)指導時間 全27時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月15日(2回目) 教わった通りにパソコンの操作をしたが、メールが送信できないと連絡があり、ご自宅へ伺った。パソコンを一度終了してもらい改めてルーターの電源を入れ直した。接続が悪かったのか、すべての電源を入れ直したら接続できた。また同じような状態になったら1から電源を入れ直してみようと伝えた。 1月12日(3回目) ・ボイスポッパーのライセンス登録、アカウント設定。 ・アドレス登録している皆さんへアドレス変更のお知らせをメール送信。 ・メールの本文を読むときに、コントロールとEでメモ帳を開き読む方法をやってみる。 1月15日(4回目) インターネット体験。サーチエイドとインターネットエクスプローラーを使って使いやすさを比べる。ウィキペディアやクックパッドを見る。 1月20日(5回目) ・家電量販店で外付けディスプレイ、外付けキーボード、マウスを購入。 ・ご自宅にてこれらを接続。 ・メールの送受信の確認。 ・インターネットに繋がるかどうか確認。 1月21日(6回目) ・メールで送られた添付ファイルを開く。 ・添付ファイルの保存。 ・その他様々なデータの保存。 ・メールの送受信の復習。 1月26日(7回目) 家電量販店で買い物。プリンターとパソコン用デスクを買う。 1月29日(8回目) ・プリンターの設置。 ・実際に印刷し、プリンターの使い方を指導。 ・ホームページなど色々なものを印刷した。 3-3-3 Cさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 70歳代 (3)障害の程度 弱視難聴 (4)受障歴 聴覚 40歳代より聴力の低下が始まる。補聴器を装着し耳の近く話せば会話が可能。 視覚 先天性の弱視 (5)コミュニケーション方法 受信 音声 発信 音声 (6)点字の触読 可(1秒に2文字程度) (7)使用文字 拡大文字 (8)パソコン等の経験 なし。携帯電話はらくらくホンの画面を見て使用している。 (9)志望動機  友の会の役員をしているが、携帯電話のメールでは文書や表などの添付ファイルを受信・閲覧することが難しく不便を感じていた。来期も引き続き役員をすることになり、今後ますますインターネットやメールが必要になると思い希望した。 (10)希望機種 パソコン(画面拡大・音声) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 森下摩利 (2)地域の指導者および通訳・介助員 3名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン デスクトップ型パソコン(知人より譲り受ける) OS WindowsXP (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード 出力機器 外付けディスプレイ 点字情報機器 ブレイルテンダー 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年7月6日(金) 13:00〜17:00 第2回 平成24年7月7日(土) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、BrailleWorks、MyMailIII、あんだーまうす君 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>パソコンと周辺機器の確認 <2>インターフェースの確認 <3>画面表示と音声出力の確認と設定 <4>Windowsの起動と終了 <5>MyMailの起動と終了 <6>メールの受信 <7>メールの返信(本文の編集) <8>新規メール作成 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果  弱視難聴ということで、画面・音声・点字の各インターフェースをどのように使い分けたら良いか、またはどのように併用したら良いかを判断するために、まずPC-Talkerの音声設定を行った。音声はあった方が良いとのことだった。画面は白黒反転の拡大表示設定にあらかじめしてあり、MyMailも同様に設定した。マウスを使う可能性もあるのでご本人と相談しあんだーまうす君をスタートアップに登録するようにした。点字ディスプレイは不要と判断し使わないことにした。  まずはWindowsの起動と終了の練習を行った。どの盲ろう者もそうであるがWindowsのスタートメニューからの終了が難しい。スタートボタンを押しタブを2回押し「シャットダウン」までカーソルを移動させるが「シャットダウン」にカーソルがあたっても色に変化がなく視認しづらい。唯一頼れるのが「シャットダウン」の説明が表示されるポップアップ表示だが、これが1〜2秒後に下部に表示されるため意識的に見ていないと見逃してしまう。「シャットダウン」に移動したという実感がすぐに持てないのがWindowsの終了を難しくしている一つの要因である。何度も練習を行ったが、なかなか慣れない様子であった。  次にMyMailの起動と終了の練習を行った。MyMailの終了からWindowsの終了がやはり難しく、これも何度も練習を行った。  メールの受信、返信(返事を書く)では、手順を短く指導するようにし一つ一つゆっくり行った。文字の入力方法は点字入力を採用したが、一文字ずつゆっくり入力されていた。何度かくり返し練習を行ったが独力でできるまでにはもう少し時間が必要であるように思われた。 (6)課題  操作手順を一つずつ指導すると確実に行うことができるが、一連の操作を覚えるには何度も繰り返して練習を行う必要があるだろう。オルトキーやタブキーの役割やスタートメニューの役割の指導法はとても難しく、ご本人にとっては手順を暗記するしかなく、そこが負担になってしまうかもしれない。パソコンが少しでも楽しいと思ってもらえるような指導法を心がけたい。  点字入力においては、点字の知識はあるが6点入力になかなか慣れない様子であった。緊張もあるようでなかなか進まないことに焦っているような様子が見られた。ご自分のペースで行うことが一番良いので、ゆっくり練習を積み重ねていってほしいと思っている。 (7)所見  地域の指導者が冗談を言いながらご本人を励ましている場面が多くあり、とても良い雰囲気で指導が進んだ。地域の指導者は3名とも点字にとても詳しいので点字入力の手厚い支援が期待できる。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年7月31日(火) 13:00〜17:00 第4回 平成24年8月1日(水) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、MyMailIII、あんだーまうす君 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの送受信の復習 <2>音声読み上げ停止について <3>新規メールの復習 <4>添付ファイルの確認 <5>WordやPDFの拡大表示について <6>サーチエイドの体験 地域の指導者に対して <7>パソコンの購入とインターネット環境について (5)成果  メールの送受信の復習を行った。緊張からか一連の操作を忘れてしまう場面もあったが、前回の講習会から今日までに地域の指導者とメールのやりとりをしていたようで、また、ご自身も何度も練習されたようだった。点字入力はゆっくりされていて、ご本人の思うように入力ができず地域の指導者より励ましの声を受け練習をしていた。  受信メールを開いた時に、本文が短いとそんなに気にならないが、長文だと本文を読み上げる音声が気になってしまうようだった。文字を読むには画面表示を頼りにしているので、音声が気になる時はエスケープを押し読み上げ停止にするよう指導した。  ご本人が友の会の役員をされていることから添付ファイルを受け取れると便利とのこと。そのため添付ファイルを開く練習を行った。MyMailは受信メール一覧では添付の有無を視認しづらく本文のヘッダーを確認するしかない。また、送られてきたメールがHTML形式だと添付ファイルが二つあるように思えてしまうのでその指導が難しかった。他に、「添付ファイルの保存」の画面を開くと「保存」と「開く」と2つの項目があるが、拡大表示していると「保存」と「開く」の項目名が画面からはみ出してしまい視認できない。ご本人には場所で覚えてもらうよう指導した。  Wordはコントロールとマウスのホイールを使い拡大表示するよう指導。問題なく操作され、Wordの文書をきちんと確認されていた。  サーチエイドで乗換案内等の体験を行った。 (6)課題  メールの送受信は操作を時々忘れてしまうこともあるが、普段より携帯電話でメールをされているので、操作方法が大きく違い、忘れてしまうのは当然のことと思う。パソコンを使う意義がご本人の中で見出されば操作を身に付けるのはそう難しくないだろうと思われる。講師としては無理にパソコンを覚える必要はないと思っている。パソコン以外の機器(FAXや携帯電話やテレビなど)で代用できているならばそれに越したことはないのではないだろうか。  こうしたこともあり、新しくパソコンを購入するのではなく、知人から譲り受けたというデスクトップパソコン(WindowsXP)でしばらく使うのが良いだろうと思っている。インターネット環境を整えるにしても月々の支払いとパソコンの利用が割に合わなければ経済的に負担がかかってしまうので、次回までに考えることとし、急いで購入や手続きを行わないこととした。 (7)所見  Wordの設定に時間がかかってしまい皆さんをお待たせしてしまったのが反省点である。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年8月31日(金) 13:00〜17:00 第6回 平成24年9月1日(土) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、MyMailIII、VoicePopper、あんだーまうす君 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの送受信の復習 <2>添付ファイルを開く練習 <3>VoicePopperを使ってニュースを読む体験 <4>指導後のパソコンやご自宅のインターネット環境について相談 地域の指導者に対して <5>指導する際の注意点 (5)成果  メールの送受信の復習を行った。未読メールは「未開封メール」のフォルダから読むが、既読メールは「受信ボックス」から探すことを改めて確認した。また、「受信ボックス」からも未読メールが読めることを説明した。1回目の講習よりスムーズに行えるようになっており、ご本人の努力と地域の指導者の地道な支援が講習をしながら伝わってきた。  添付ファイルを読む練習では、地域の指導者があらかじめWordやPDF、Excelを添付してメールを送っていたので、それらを開く練習を行った。開いた後はいずれもコントロールとマウスのホイールを使い拡大表示するよう指導。WordとExcelは白黒反転表示が可能だがPDFはできない。しかし白地に黒文字でも見ることができるようだった。WordとPDFは特に問題なく内容を確認できたが、Excelはやはり難しく、Excelだけでなく添付ファイルの管理の難しさを地域の指導者に説明し、出来る限り本文に貼りつけるか、ご本人がFAXで良いならば、それらの方法が良いことを説明した。  VoicePopperを使いニュースを読む体験を行った。VoicePopperを拡大表示させニュースを読むのは不便な面もあるが、ゆっくりではあるが読むことができていた。ご本人はテレビのニュースを見聞きすることができるので今回は体験に留めた。  今後のパソコン環境だが、ご本人との相談の結果、知人より譲り受けたというデスクトップパソコン(WindowsXP)でしばらく練習を続けることとした。その知人よりPC-TalkerXPやMyMailIIIをしばらく借りることとし、インターネット環境は地域の指導者が持っていたUSB型データ通信カードを借りることとした。 (6)課題  Windows7とXPでは操作方法が違うので、それは今後地域の指導者と一緒に練習してもらうことになった。  メールの基本的な機能は一通り学習することができたと思うが、パソコンを続けるにはある程度の経済的負担があるので、ご本人にとっての費用対効果を慎重に見極める必要があるだろう。 (7)所見  ご本人からはパソコンが体験できてよかったとの感想があり、また、地域の指導者の暖かい支援に支えられ、無事講習を終えることができた。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年7月12日(木)〜平成24年9月12日(水) (2)指導回数 全15回 (3)指導時間 全30時間 (4)指導者数 3名 (5)主な指導内容(抜粋) 7月12日(1回目)  目標「以下の繰り返しを一人で出来るよう次回の練習までに繰り返し練習」 ・パソコンの起動、終了。 ・マイメールを開く、閉じる。 ・受信メールを読む。 ・新規メールを作成送信。 ・キーの名前と場所の確認。 7月14日(2回目)  パソコンの起動、終了はずい分慣れてきたように思う。6点入力がなかなかスムーズにいかないので主に使うキーに膨らんだシールを貼り「め」を確実に入力できるよう練習をしてもらった。 7月25日(4回目)  うまく文字が入力できないので「メ」打ちを練習してみることにした。どんどんできるようになって20くらい続けて「メ」ができた。「すごいね」と言った途端に「テ」になった。気を緩めないようにすると、ほとんど「メ」となり、指の力の入れ加減が身体で理解できた様子。  3件ほど届いているメールに返事を書いてみる。BsキーとEscキーに関してはほとんど問題ないがAltキーを押して離すタイミングがうまく合わなくて何度も練習した。 8月3日(5回目) ・受信メールを開いて読む。 ・受信メールに対して返事を書く。(2件に1時間かかった) ・新規メールを作成する。 ・最後に未開封メール5件を読んだ。 8月11日(7回目)  受信メールの添付ファイルを開いて読んだ。  テレビで見た「そうめんかぼちゃ」について知りたいと言われたのでサーチエイドで検索した。最初googleではわかりにくかったので、国語辞典、漢字辞典、ウィキペディアで調べたが見つからず、もう一度googleで漢字に変換して調べ直し検索できた。 8月22日(9回目)  文章の入力も、途中のため息の回数がずいぶん少なくなった(ゼロではない)。かなり長いメールを2件送信して終了。一度一人で使っていて先に進めなくなったことがあって、少々自信喪失していたが、ちょっと元気を取り戻した様子。 8月27日(10回目)  点字での入力はずい分慣れてきたが、「こ」と「た」や「し」と「と」が逆になったりする。「ま」 はほぼ確実に入力できるようになった。 8月29日(11回目)  点字入力はほぼ間違いなくできるようになった。漢字変換もOK。受信メールから返信、新規メール作成も一人でできる。  ひたすらメールの練習をした。とても良い感じで進歩していると思う。 9月5日(12回目) ・受信メールを読む。 ・添付ファイルを開き、読んだ。 ・新規メールの作成。(9月の派遣依頼を送った) 9月10日(14回目)  デスクトップのパソコンでマイメールの練習をした。漢字変換ができず少々残念。  ほとんど一人で起動から送信、終了までできるし、メール本文も相当長く入力できるようになった。 9月12日(15回目)  前回終了後に設定を試してみたら漢字変換ができるようになった。  今日は最後なので、お世話になった人たちに一人でメールを作成。かなり長い文章をあまり時間をかけずに入力できるようになった。ありがとうございました! 3-3-4 Dさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 40歳代 (3)障害の程度 弱視ろう (4)受障歴 聴覚 先天性の聴覚障害 視覚 幼稚園の時、先生が視覚障害に気づく。視野 両眼10度、視力 両眼0.4。 (5)コミュニケーション方法 受信 接近手話、筆談、口話。接近手話は60センチくらい離れた方が見やすい。暗所(夜など)では触手話を使用。 発信 手話、筆談。声は出せるけど発音なし。 (6)点字の触読 不可。五十音のみを目視で判読。 (7)使用文字 墨字。裸眼でも近づければ文庫本が読める。眼鏡をかければ新聞も読める。 (8)パソコン等の経験 あり。10年くらい前に実家のパソコンで弟に教えてもらった。メールをしたり、ヤフーで検索をしたり、ホームページをみたり、文章を作ったりすることができる。ソリティアというゲームもやった。表やグラフを作った経験はない。 (9)志望動機 将来、今の仕事(クリーニング店でタオルをたたむ仕事)が、出来なくなった時の為に、パソコンを覚えたい。企画書などの文書作りや年賀状の宛名書きが出来るようになりたい。家計簿を作成したり、テレビ電話もできたらやりたい。 (10)希望機種 パソコン(画面拡大) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 高橋信行 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし。講習期間最終段階でノート型パソコン(Windows8)を購入。 その他 なし (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ 点字情報機器 なし 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1〜6回 (1)期日 第1回 平成24年10月28日(日) 13:00〜16:00 第2回 平成24年10月29日(月) 10:00〜12:00、13:00〜16:00 第3回 平成24年12月1日(土) 10:00〜12:00 第4回 平成24年12月1日(土) 13:00〜16:00 第5回 平成25年1月12日(土) 13:00〜16:00 第6回 平成25年1月13日(日) 10:00〜12:00、13:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア MyMailIII、VoicePopper、MyNews、InternetExplorer、MicrosoftWord、MicrosoftExcel、サーチエイド、あんだーまうす君、拡大鏡 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>コンピュータ各部の名称と取扱の注意点、接続方法 <2>電源の投入 <3>Windowsの起動と終了 <4>視覚特性(視力、視野、コントラストポラリティ効果の有無)の確認 <5>適正文字サイズの決定 <6>マウスポインタの視認性の確認および支援ツールの決定 <7>マウス操作の基本 <8>キーボード操作の基本 <9>アプリケーションの起動と終了 <10>拡大鏡の起動と設定、操作方法 <11>メモ帳における文字入力 <12>タッチタイピング <13>メニューの利用方法 <14>VoicePopperの起動、終了 <15>VoicePopperを使ったメールの送受信 <16>サーチエイドの起動 <17>サーチエイドを使った検索および検索結果の閲覧 <18>InternetExplorerを使った検索および検索結果の閲覧 <19>Wordの基本的操作 <20>Wordを使って、基本的な文書作成 <21> Excelの基本的操作 <22> Excelを使った住所録の作成 <23> Excelを使った伝票の作成 <24> Excelを使ったグラフの作成 <25> Excelを使った血圧計測結果の集計 <26> Excelを使った家計簿処理 地域の指導者に対して <27> パソコン講習における受講盲ろう者とのコミュニケーションの留意点 <28> 機器の設置についての概要 <29> 機器の接続方法 <30> 支援するタイミングおよび待つことの重要性について <31> 盲ろう者が新たに機器を購入する際のチェック項目 (5)成果 ・コンピュータの設置・接続ができるようになった。 ・コンピュータの起動・終了ができるようになった。 ・アプリケーションの起動・終了ができるようになった。 ・ハイコントラスト黒の画面デザインを採用することで、視覚を活用したコンピュータ操作が可能であることが分かった。 ・マウスポインタの視認性を改善することで、マウス操作ができるようになった。 ・タッチタイピングに取組、キー入力操作が向上した。 ・VoicePopperを使って、メールの送受信ができるようになった。 ・Wordを使って、基本的な文書作成ができるようになった。 ・Excelの基本的操作をマスターした。 ・Excelを使って、住所録を作成できるようになった。 ・Excelを使って、自動計算機能を持つ表を作成できるようになった。 ・Excelを使って、簡単なグラフがかけるようになった。 ・Excelを使って、家計簿管理ができるようになった。 (6)課題 ・タッチタイピングをよく練習し上達したが、今後、入力スピードや正確さがさらに向上すると良い。 ・現在、キーボード操作とマウス操作を併用しているが、今後視力の低下することを考えると、徐々にキーボード操作のみによる操作に切り替えていく必要がある。 ・同じ理由により、点字の習得にも取り組んで欲しい。 ・WordやExcelは基本的な機能について学習したが、受講盲ろう者が目標とする仕事への活用には、今後、更にスキルアップが必要である。 (7)所見 大変意欲的に取り組み、支援者の適切な支援が得られたこともあり、短期間で良い成果をあげることができた。今後も、引き続き、地域の支援者の支援を受けながら、スキルアップを図り、ITを活用した自立と社会参加にむけて努力して欲しい。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年11月11日(日)〜平成25年2月10日(金) (2)指導回数 全14回 (3)指導時間 全45時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 11月11日(1回目)  初回講習後、初めての訪問指導の為、ひと通り復習を行う。教わった内容をしっかりとこなしている。講師からはキーボード操作を中心に教わったが、本人は現在は十分にモニターが見えていることからマウスを多用。「将来、視覚が低下した場合でもキーボード操作を覚えておけばPCが使い易くなる」旨を伝えた上で、現時点では本人の希望と快適な学習環境を尊重し、そのままマウスを使用してもらう。 11月20日(3回目)  ズームテキストを紹介する予定だったが、本人の希望により高橋講師から届いていたメールへの返信を打つ。この際、思っていた以上に本人が文章作成に苦労していることを知る機会となった。今回は本人が集中して取り組んでいたため様子を見守ったが、文字変換については後日、基本的な語句や文節ごとに変換する方法を紹介した上で、本人と共にやりやすい方法を見つけ、入力の快適さの向上と負担軽減に繋がるよう努めたい。 11月25日(4回目)  検索サイトの使用では、指導者から例題を出して検索を進めてもらうなどした。その際ズームテキストの使用を紹介。設定を色々と変更してみたことで、本人も利便性に気付きとても良い反応が得られた。  この日、本人から学習目標について具体的な希望が出された。内容は、背景色やフォントの調整をはじめとする「盲ろう者が使い易いPCの設定」を自分で行えるようになりたいとのこと。これまで学習内容の希望が、やや漠然と多岐に渡っていたが、この目標を持ったことにより残りの期間、何を学習の基盤に据えていくかが本人・指導者共に見えてきた。 12月9日(6回目)  IEの文字配色の再設定、スクロールバーの幅、マウスポインタ、フォントを本人が使い易いように設定を行った。フォントは「大」にすることで各ウィンドウのメニューバーやダイアログの文字が大きくなり、見やすさが向上し、本人もとても喜んだ。  Windows7の拡大鏡を紹介。本人より非常に使い易いとのことで、その後HPの閲覧などを行った。本人は楽しみながら終始意欲的に取り組んでいる。 12月23日(8回目)  今日は高橋講師に学習成果の報告を兼ねて、12月2日に指導を受けたWordを使いクリスマスのメール作成を目標に取り組んだ。本人の思い入れのある景色を携帯で撮影したものをPCに送信、テキストに貼り付け、景色の説明と本人の思い出などを交えた文章を添えて、メールに添付ファイルとして送信した。12月2日以来、Wordの使用はなかった為、忘れていた操作の確認などしながら学習を進めた。 1月6日(10回目)  12月1日に教わった学習内容の復習を行った。操作方法はマウスだけでなく、将来の事を考慮しキーボードでの方法も一緒に行った。 ・Wordを開いて文書に画像を挿入。 ・文頭・文末、行頭・行末へのカーソル移動。 ・全範囲選択。 ・文字サイズの変更。 ・フォントの変更。 ・行の位置を変更。 ・パソコンの階層構造について説明。 1月20日(11回目)  本人がPCを購入した為、設定を行う。OSがWindows8になったので若干の戸惑いが見られたが、ひとつひとつ操作方法を確認しながら進めた。本人が分からない部分など、サポートの求めに応じる形で大半は指導者が行ったが、本人にもしっかり見てもらい、PCを使い始めるにはどのような作業が必要か、流れを知ってもらえるよう努めた。  ただ、指導者もWindows8を使うのが初めてだった為、OSに対する知識を身に付ける必要性を感じた。 2月4日(13回目)  本人の希望により、ネットでの商品検索から購入までを行った。これまでの様子から、あんだーますう君や拡大鏡、ページ内倍率の変更などが上手く活用できていないと指導者が感じていた為、今回はそのことを意識して取り組んだ。本人はそれらの方法があることはすでに理解済みのため「活用」の部分で非常に納得している様子だった。その後は本人のペースで上手く意識した活用を行いながら、希望商品の購入までを行って学習を終えた。 2月10日(14回目)  訪問指導最終日となった為、これまで学んだキーボードでのコマンド入力方法を、Wordを使用して一覧表の作成に取り組んだ。表のイメージを伝えた後は本人に自主的に自由に行ってもらい、指導者は求められる用語の確認など以外は見守りに努めた。本人のこだわりを形にしていく為に、随時、復習が自然と行われ、また新たな操作を学んだりと、結果的にとても充実した総合学習の時間となった。  最後は、今回の訪問指導の振り返りで学習を終えた。目標であった内容は概ね達成された。 3-3-5 Eさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 男性 (2)年齢 50歳代 (3)障害の程度 弱視ろう (4)受障歴 聴覚 先天性の聴覚障害 視覚 30歳代前半に視力が低下し始める。網膜色素変性症。 (5)コミュニケーション方法 受信 弱視手話、触手話、手書き。 発信 手話 (6)点字の触読 約6年前に盲学校の関係者より点字を教わった経験あり。点字を書くことはできる。 (7)使用文字 墨字。拡大読書器を使用。 (8)パソコン等の経験 なし。拡大読書器を使って携帯電話でのメールの送受信が可能。ろう学校時代にワープロ(親指シフト)の経験あり。 (9)志望動機 携帯電話でメールが使えているが、仕事に関するメールや長文のメールを読むには負担なのでパソコンを覚えたい。また、インターネットで盲ろう者に関する情報を得たい。 (10)希望機種 パソコン(画面拡大) 2.講師および指導者 (1)講習会講師 森下摩利 (2)地域の指導者および通訳・介助員 4名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし。第6回以降にノートパソコン(Windows7)や周辺機器を購入。 その他 ブレイルメモ24(点字を学習した際に購入。今は使っていない。) (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ 点字情報機器 ブレイルテンダー 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年10月13日(土) 13:00〜17:00 第2回 平成24年10月14日(日) 10:00〜16:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア KTOS、MyMailIII、でかポインタ、あんだーまうす君、メモ帳 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>インターフェースの調整 <2>Windowsの起動と終了 <3>メモ帳の起動と終了 <4>点字入力 <5>MyMailの起動と終了 <6>メールの受信 <7>メールの返信 <8>新規メール作成 <9>各機器の接続方法 地域の指導者に対して <10>キーの名称等について <11>指導の際のサインについて <12>携帯電話からメールする際の注意点 (5)成果  画面の背景は黒色、文字は黄色にし、文字サイズは72ポイント(メモ帳使用時)ぐらいが見やすいことがわかった。入力方法は、「でかポインタ」や「あんだーまうす君」でマウスが使えるもののキーボードで操作する方が負担が少ないとのことだった。文字入力は以前に富士通のワープロを学んだが親指シフト方式だったため、ご本人の希望もあり点字入力を採用した。  Windowsを終了させる時、スタートメニューの中のシャットダウンと書かれた箇所へカーソルを移動させるが、配色の変化がなく視認しづらいため、画面の最下部に表示されるシャットダウンの説明文を目印にエンターを押下するよう指導した。それでもわかりづらい様子だった。  点字入力では、約6年前に学習した点字を思い出しながら入力している様子だった。ご本人も言っていたが忘れている点字もあり、ゆっくりとタイピングしていた。  MyMailでは、メールを受信し返信するまでを一つの流れとし数回繰り返し練習を行った。講師や指導者とメールを通して簡単な会話ができ、それがモチベーションに繋がっているようだった。  MyMailでメールを送信した時に、画面には送信が確認できるメッセージが表示されないためわかりづらいようだった。送信できたかどうかは送信済みボックスで確認するよう指導したが、携帯電話と同じ感覚では使えず、講師としてもメーカーに改善を要望したい。  指導者に対しては、キーの名称やサインは指導者間で統一すると良いこと、携帯電話からパソコンにメールを送る際は件名を空欄にしないことと件名か本文の最初に自分の名前を入れることを指導した。 (6)課題  新規メール作成まで欲張って指導してしまったため、返信メールと新規メールの操作方法の違いが明確化できなかった。ご本人には次回までに受信から返信までを重点的に練習し、慣れたら新規メール作成の練習に入るよう伝えた。  点字入力では拗音が苦手のようで、次回の文章作成の際は意識して指導したい。  今回はマウスを使わない選択をしたが、場合によってはマウスを併用する方法も考えたい。 (7)所見  ご家族がご本人のサポートを積極的にしてくださるのでとても助かっている。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年11月17日(土) 13:00〜17:00 第4回 平成24年10月18日(日) 10:00〜16:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア MyMailIII、KTOS、でかポインタ 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>新規メール作成の復習 <2>新規メール作成と返信の違いを指導 <3>アドレス帳の登録方法 <4>複数の宛先への送信方法 <5>デリートの使い方 <6>記号、カタカナ、顔文字の入力方法 <7>Windowsの終了方法について確認 地域の指導者に対して <8>ユーザー辞書の登録について (5)成果  前回の講習会より約1か月あったがその間パソコンをよく使われていたようで、工夫をして使っている様子が伺えた。メールの送信方法はいくつかあるが、前回指導した内容とは違う方法をご自分で発見されていた。  受信したメールに返事をする際「メール作成」(新規メール作成)を使っていたので、「返事を書く」(返信)方法をもう一度指導した。「返事を書く」では宛先のアドレスの入力が不要なこと、引用文が本文の下部に残されているので内容を確認できることなどを説明した。ただ、「返事を書く」を実行する時オルトを押し下矢印キーを押すのだが、オルトを押した時点で画面上はほぼ何の変化もなく、ご本人にとっては操作が合っているのかどうか視認できず使いづらそうであった。後に「返事を書く」のショートカットがF4であることをご自身で気づき、講師としてはとても感心したが、オルトを使ってメニューより操作を選ぶ方法は様々な機能に応用できるので、今後も時々指導したいと思っている。  アドレス帳の登録方法は、「差出人をアドレス帳に追加」する方法と本文に書かれているアドレスをコピー・貼り付けし登録する方法の二つを指導した。特に後者は難しいと思われたがすぐに覚えることができた。操作手順が少々複雑なので何度か繰り返し練習を行った。  点字入力の応用として、記号、カタカナ(F7)の入力方法を指導した。地域の指導者の協力でIMEの顔文字辞書をオンにし、顔文字も入力できるようになった。  Windowsの終了方法では、スタートキーを押し右矢印キーを1度押す方法を前回指導したが、右矢印キーを長押し、または2度押してしまっていたようで常にスタンバイになっていたようだ。改めてシャットダウンの目印を確認し終了するよう指導した。 (6)課題  USB型データ通信カードとモバイル無線LANルーターの調子が悪く途中でネットが切れてしまうことが何度も起きた。どちらもファームウェアを更新するととりあえずは改善したが、今後も安定的に使えるかどうかが不安である。  メールの本文を入力している際に漢字変換をすると、その単語の上に漢字候補一覧のプルダウンメニューが重なって表示されてしまい漢字候補を視認できない。プルダウンメニューのサイズを最大にしているがそれでも小さく、元の単語の文字列も表示が重なっているため大変見づらい。メーカーに改善の要望を出したいと思っている。  ご本人より辞書登録したいとの要望があり、IMEの辞書登録を行った。地域の指導者に登録してもらい、今後も希望の単語があれば登録をお願いするよう伝えた。 (7)所見  ご本人はワープロの経験があり現在携帯電話も使っていることから、パソコンを使う感覚に早くも慣れているようだった。何度も繰り返すことで各キーの役割を自然と覚えることが出来るだろうと思われる。ただ、二日間にわたって集中し講習会を行うと身体の負担になってしまうのではないかということが不安である。次回は疲れの出ないように慎重に進めたい。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年12月8日(土) 13:00〜17:00 第6回 平成24年12月9日(日) 10:00〜16:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア KTOS、MyMailIII、でかポインタ、老眼マウス、サーチエイド、InternetExplorer 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>本文編集時の改行の問題について <2>漢字変換時の候補一覧が視認できない件について(老眼マウスの指導) <3>携帯電話から送られてきたメールの差出人名について <4>メールの送受信、新規メール作成の復習 <5>アドレス登録の復習 <6>でかポインタの便利な機能について <7>インターネットの体験 <8>パソコンの購入について 地域の指導者に対して <9>老眼マウスの設定方法 <10>携帯電話からメールを送る際の注意点 (5)成果  本文を編集する際の1行の文字数を最小値(30文字)に設定してあったが、30文字のところで改行コードが入ってしまうためメールを送られた相手は非常に読みにくい。1行の文字数を増やすと横スクロールが必要になり操作しづらくなる。ご本人や地域の指導者よりこのような指摘があり改善策を考えたが解決できず、メーカーへ要望することにした。  前回より課題になっている漢字変換の際の候補一覧が見づらい件について、当面は老眼マウスを使って確認してもらうことにした。マウスを軽く振ると老眼マウスがオンになり、数秒マウスを動かさないと自動的にオフになる設定にし、その使い方を指導した。なかなか慣れない様子であったが、オンやオフの設定は変更できる等、指導者に説明し今後見守っていくこととした。  携帯電話より送信されたメールを受信した場合、差出人名にはメールアドレスしか表示されずわかりづらいとのことだったが今は改善策がないことを説明した。指導者には件名や本文の最初の差出人名を入れてメールを送るよう説明した。  でかポインタを見失った際に中央に移動させる方法(スタートキーとシフトキーを同時に押す方法)と、ポインタが強調表示される方法(コントロールキーを2回押す方法)を指導した。  インターネットの体験を行った。ご本人は普段より拡大読書器を使い新聞を読んでいるため優先度はあまり高くないと判断し体験に留めた。一般的に使われているブラウザは画像があり見やすいが、視覚障害者や盲ろう者向けのブラウザは文章のみであることを説明、サーチエイドとInternetExplorerを短時間であったが体験してもらった。  パソコンとソフトウェアの購入について話し合いを行った。購入するもの、日常生活用具として給付を受けるもの、自宅のインターネット環境等について相談し、現在使用しているパソコンの返却期限を確認した。 (6)課題  地域の指導者より今後購入するであろうパソコンのシステム構築ができるかどうか不安であるとの意見があった。全6回の講習会の内、早い段階でパソコンを購入し、講師と指導者と一緒にシステム構築をするべきであったと反省した。今後もサポートを続けていきたいと思っている。  ご本人は携帯電話でメールができており、パソコンと携帯電話をどのように使い分けるかが今後の課題である。長文となるメールや友の会の活動に関するメールはパソコンで送受信するようになることが理想であるが、それにはMyMailの改善や、ご本人がもう少しパソコンに慣れる必要があるだろうと思っている。しかし、講師が思っていた以上にご本人は操作方法を早く習得し、エンターキーなどの役割は具体的に指導することなく自然と身に付け、指導は全体的にレベルの高いものになった。また、地元の視覚障害者と交流のある指導者がいることから、視覚障害者向けのソフトウェアに関する情報を入手しやすい環境であるため、ご本人のレベルアップは十分に実現可能であり、今後に期待したい。 (7)所見  Windows8の発売によりWindows7のパソコンが非常に入手しづらくなってしまった。結果、中古パソコンを購入することになったと指導者より連絡があった。Windows8のタッチ式ディスプレイは画面ユーザーにとって有効であると思うが、各ソフトウェアが未対応なためとても残念である。 第7回 (1)期日 平成25年2月28日(土) 10:00〜17:00 (2)実施場所 地域の福祉関連施設 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ご本人が購入したノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード、外付けマウス 出力機器 外付けディスプレイ ソフトウェア KTOS、MyMaiIII、でかポインタ、MicrosoftWord、InternetExplorer 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>新しいパソコンの画面の拡大率や配色の確認 <2>Word文書の閲覧方法 地域の指導者に対して <3>「ウィンドウの色」の設定 <4>MyMailの表示設定 <5>キャレット幅の変更 <6>でかポインタのスタートアップ登録 (5)成果  今回はご本人が地域の指導者と一緒に購入したノートパソコン(Windows7)の画面設定を、改めて指導者にやってもらうことにした。  基本的な画面設定やアカウント設定の方法はあらかじめ連絡してあったので、大まかな設定はできていたが、見えにくい箇所が何か所かあるようで、その設定を行った。  ウィンドウの色の設定では、各項目を一つ一つ変更しご本人に確認しながら行った。メモ帳やInternetExplorerのカーソル位置を示すキャレット幅が細く見えにくいとのことだったので太く変更し、でかポインタをスタートアップに登録した。以上、すべて指導者にやってもらった。  ご本人よりデスクトップに見えやすい時計を表示させたいとの希望があり、フリーソフト含め方法を探したが見つからず。地域の指導者に引き継ぐこととなった。  また、協会より送付されてきたDVDに収録されているWord文書を読みたいとのことだったので、地域の指導者と一緒に読み方を練習した。 (6)課題  画面設定に関してはほぼ課題を残さず終えることができた。あとはMyMailが改善されることをメーカーに引き続き要望し、ご本人が今以上にパソコンに慣れると良いだろうと思う。  普段より携帯電話のメールを使ったり拡大読書器で新聞を読むことができているので、パソコンではどのような利点があるかを使う中で気づいてほしいと思っている。  今はメール機能が中心だが、今後はファイル管理の習得も可能なのではないかと思っている。スキルアップに期待したい。 (7)所見  今後はご家族のサポートも期待できるかもしれない。地域の指導者とはもちろんのこと、ご家族やご本人とも連絡を取り合いながら様子を見守りたい。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年10月27日(土)〜平成24年12月24日(月) (2)指導回数 全10回 (3)指導時間 全42時間 (4)指導者数 4名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月27日(1回目) ・パソコンを起動させ、スタートボタンからマイメールを選択。 ・送受信の練習。 ・未読メールを読み返信、新規メール作成送信。 ・マイメールの終了、パソコンの終了。  マイメールを終了させるときのオルト+F4と、新規メールで使うF2が混乱することもあった。対策としてシールを貼った。 11月4日(2回目)  前回シールを貼っていただいたので操作が楽になったと思う。ゆっくりだが、ほとんどキーの位置は確認できていた。しかし、新規メール作成でアドレス帳を開く時、やはりF4と混乱してしまう。迷いながらもメールが出来るようになった。  マイメールで入力した文字がカタカナになっていたので変換キーでひらがなに直した。  次回教えてほしい事は、繰り返し入力する文章の登録方法、同時送信の仕方、アドレスの登録の仕方、受信メールから返事を書く方法。  後半になると、練習が一日だったので疲れてきたのか、キーを探すのに時間がかかり位置の間違いも増えたが、アドレスの追加方法など次の指導内容を楽しみにしている。 11月10日(3回目)  今日指導に行ってみると、かなり操作も慣れて、点字入力とメールの送受信を楽しんでいるようだった。アドレスの登録をして新しい人にメールを送りたがっていた。私自身もまだ2回ほど森下先生に教わっただけなので、いろいろパソコンを操作してみたがやはり登録できず、本人はがっかりしている位だった。 11月23日(4回目) ・メールアドレスの登録・削除。 ・新規にアドレスを登録した人へメールの送信。 ・受信メールから返事を書く。  これらを繰り返し練習する。  本人より「本日の目の見え方が光をとても吸収してしまい、モニターが明るすぎるので照度を下げることはできないか?」と言われた。指導者で試みたが黄色(文字色)の照度を下げることができなかった。次回の講習会で教えてもらいたい。 12月2日(7回目)  オルトキーの押すタイミングの問題なのか、力の入れ方が弱いのか、オルトを使った作業の時にうまく動作せず時間がかかった。漢字の候補一覧が見えにくいので大きくする方法があれば知りたい。 12月15日(8回目)  IEを使ってのインターネット検索を練習した。マウスを思うように動かすことができず休みながらゆっくりとやってもらった。マウスの使い方がまだ自信がなくやりにくそうだった。マウスの使い方がもう少し慣れるとホームページも楽に開けるようになるかと思った。老眼マウスは使いにくく消していた。  IEの文字を大きくしているので長い文章は読むのに大変のようだった。  繰り返し練習することで、文字入力がしやすいよう画面をスクロールすることもでき慣れてきたと感じた。 12月22日(9回目)  すべての復習をした。メール等のやり方はスムーズにでき楽しんでやっていた。インターネットではヤフーなど開いても一番見たいところがわかりづらいため困っていた。サーチエイドは分かりやすいが、疑問に思ったところから次へ開くことができず、またヤフーに入るなどいろいろ試みた。 3-3-6 Fさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 20歳代 (3)障害の程度 弱視ろう (4)受障歴 聴覚 先天性の聴覚障害 視覚 先天性の網膜色素変性症があり、2009年頃から眼球振盪を伴った視力低下と視野狭窄が始まる。 (5)コミュニケーション方法 受信 触手話、五十音式指文字、マジックなどで濃く書いた拡大文字による筆談、指点字、手書文字。 発信 手話、五十音式指文字、音声。 (6)点字の触読 可(2秒に1文字程度) (7)使用文字 拡大文字 (8)パソコン等の経験 見えていたころに使ったことがある。携帯電話でのメールなどの経験もあり。 (9)志望動機 視力の低下に伴い、2年ほど前から点字の訓練を受けており、現在も、2週間に1度の訓練を継続中。今後は、点字でパソコンが使えるようになり、コミュニケーションや情報入手をしたい。 (10)希望機種 パソコンと点字ディスプレイ 2.講師および指導者 (1)講習会講師 白井康晴 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし その他 ブレイルメモ24を所有しているが未使用 (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 入力機器 外付けキーボード 出力機器 なし 点字情報機器 ブレイルテンダー ソフトウェア PC-Talker7(KTOS)、BrailleWorks、MyMailIII、MyNews、サーチエイド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年11月10日(土) 12:30〜16:30 第2回 平成24年11月11日(日) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 点字情報機器 ブレイルテンダー ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、BrailleWorks、MyMailIII 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>パソコンの各部名称の確認 <2>パソコンの起動 <3>MyMailの操作 ・起動 ・メールの受信 ・返信メールの作成 ・差出人をアドレス帳に登録 ・新規メールの作成 ・終了 <4>パソコンの終了 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <1>キー操作  ウィンドウズ、矢印キーは、点字ディスプレイ側のものを使用し、タブ、バックスペースはパソコン側、エンターは適宜どちらを使っても良いように説明したが、うまく使いこなせているようだった。  ノートパソコンのキーボードでも操作しにくそうではなかったので、外付けキーボードは使用しなかった。  キーボードの端にないので探しにくいタブキー、オルトキーには印のシールを貼ったが、ホームポジションには、この機種ではキーボードの真ん中に赤いトラックボールがあって探す目安になることもあり、特に印は付けなかった。慣れるに従って、目で赤い印を探すことなく、ホームポジションのキーに手が行くようになった。キーに付いている突線も確認できているようだ。 <2>メールの受信  メールを開いて本文の内容を読むのに、タブキーではなくエンターを使用してしまうことが何度かあったが、次第に慣れていった。 <3>文字入力  仮名のみでの入力としたが、仮名遣いが点字の慣習に従って変換されて表示されてしまうので、ひらがなではなくカタカナを使用した。  点字入力での文字入力だが、仮名遣いは墨字の慣習に従って書いた方が良いことを、自ら質問し、すぐに理解した。  説明する前から、自らバックスペースの位置を尋ね、文字を修正できた。 (6)課題  文字入力中は、ほぼ全面的に目を使って、MyMailの「拡大6」の文字を見ているので、本格的にメールを書くようになった時、目の疲れが心配だ。 (7)所見  パソコンや携帯電話のメールなどの使用経験があるためか、メールの送受信の概念(「送受信」コマンドを実行することでネットに接続して新しいメールが届くこと、送信や受信別に一覧が分かれていること)、矢印キーによる項目移動(行き過ぎたら反対の矢印を押して一つ戻る、下の方の項目には上矢印キーを押した方が速くたどり着ける)等、こちらが説明しなくても既に分かっているようだった。  点字でカナだけで読むと「送受信」「未開封」のような、日常あまり使わない漢語の予想がつかないことが何度か見られたが、漢字を見せて説明することですぐに納得できた。  点字や音声ではどうやって漢字を入力するのか非常に興味を持っていて、漢字の説明が表示されるという話に感心していたが、点字を読む量が相当に増えるので、今のところは漢字での入力は労力がかかり過ぎるように思われる。  2日に渡る集中的な講習なので目の疲れはかなり感じていたようだが、「楽しい」と常に積極的で、どんどん課題をこなしていった。  電源のオン・オフの確認、一覧中の選択されている項目の位置などは目で確認することもあったが、点字でも読み取れていた。文字入力中の目の使い過ぎは気になるが、画面との併用で早く画面構成やプログラムの概念を理解すれば、パソコン使用の増加とともに増して来る目の疲れを防止するためにも、触覚の使用にだんだんシフトして行くだろうと期待している。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年11月24日(土) 12:30〜16:30 第4回 平成24年11月25日(日) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン ノート型パソコン(Windows7) 点字情報機器 ブレイルテンダー、本人所有のブレイルメモ24 ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、BrailleWorks、MyMailIII 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>前回の復習 <2>ブレイルメモ24の電源の入れ方、キーの位置説明 <3>MyMailの操作 ・受信ボックスの利用 ・送信ボックスのメールの再編集 ・新規メールの作成(アドレス入力から、本文入力からの2つの始め方) ・メールの削除 ・アドレス帳内のアドレスの削除 <4>漢字変換を使った文字入力 <5>点字表示のみを頼りにしたパソコン操作 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <1>ブレイルメモ24への移行  前回は、協会から貸与している「ブレイルテンダー」を使用したが、点字を読むのがそれほど速くない現段階では、本人所有の「ブレイルメモ24」を使う意味もあるのではないかと思い、体験してもらった。  頭で考えると点字表示が少ないのは不安だったようだが、コンパクトにパソコンと並べられることもあり、違和感はなかったようである。  2日間そのまま使用した。次回も使用するつもりである。 <2>受信箱・送信箱等の使い分け  携帯でメールをしていた経験などもあるせいか、内容を説明しなくても、それぞれのボックスの意味は分かっていたようだ。(送信待ちのメールが入る「送信ボックス」、送信の終わったメールが入る「送信済みボックス」の2つがあるので、その「役割」ではなく「名称」に混乱していた) <3>文字入力  アドレス帳は「読みがな」のみが点字では表示されるのだが、読みがなしか登録されていないアドレスは、画面の名前欄に何も表示されないのが気になるというので、「名前」の欄にも入力を行うことにした。  元のメールにあらかじめ名前が付されている場合には自動的に入力されるので、その表示で問題を感じていないようだが、ドコモの携帯など、名前が送信されて来ないものの場合は、自分で名前を入力したいとのこと。自から「どうやって漢字は入力するの?」と質問して来た。  KTOSの漢字変換モードへの切り替えを教えると、その後の、スペースキーによる変換、エンターによる確定動作は説明なしで1人でこなした。 <4>点字表示のみでの操作  操作をほぼ間違えずにできるようになり、30分ほど講習時間が残ったので、画面を隠して、点字のみを読みながらの操作を体験してもらった。  メニューのどこにいるか迷った時、文字を入力する時などはやはり画面を見たがったが、実際には、かなりスムーズな操作で、 ・受信箱内の特定のメールに対して返信するという課題をやり遂げた。本人も「思っていたより使える」と感じたとのこと。 ・自分の名前を漢字変換で書くという課題もやり遂げた。カナのみの熟語例「キョダイノ ダイ」等から漢字を想像することにはかなり苦心していたが、表示されている熟語を紙に書き直して漢字で示せば即座に理解した。「日本語をたくさん知っていないと点字での漢字変換は難しい」と身を持って感じたようである。 (6)課題 (7)所見  前回の講習から2週間が経過しているが、その間パソコンを触ることはなかったようで、1日目は、いくつかの操作の混乱が見られ、思っていたよりは復習に時間がかかった。  送信ボックスからはメールを「ただちに送信」できないこと、アドレス帳内では、通常のオルトキーで開けるメニューからはアドレスを削除できないこと等、こちらの未確認事項により、操作法の変更を強いてしまう場面がいくつかあった。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年12月22日(土) 12:30〜16:30 第6回 平成24年12月23日(日) 9:00〜16:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア パソコン 貸与を受けているノート型パソコン(Windows7)、新しく購入したノート型パソコン(Windows7) 点字情報機器 ブレイルテンダー、ブレイルメモ24 ソフトウェア PC-Talker7、KTOS、BrailleWorks、MyMailIII、MyNews、InternetExplorer、サーチエイド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>MyMailの復習 <2>MyNews <3>InternetExplorer <4>サーチエイド <5>新しく購入した本人所有のパソコンの操作 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <1>MyMail  操作を間違えることはほとんど無くなった。  操作を間違えたりメニューコマンドが見つからなかった時も、自分で考え直して、最初からやり直したり、他のことを試みたりすることができた。 <2>ウェブページの検索  ページの検索補助ツールとして、 ・新聞のニュース記事を集めるMyNews ・横断的なページ検索を行い、結果をコンパクトに表示するサーチエイドの使い方を経験した。 矢印キーでたどってエンターを押して行くだけなので操作に戸惑うことはないが、 ・点字をたくさん読まなければいけないこと ・文章語なども含めた様々な語が出て来るので、それらを仮名だけで読んで語の意味を想像しなければならないこと ・更に仮名点字の表示には、漢字の誤変換された表示もかなり含まれるため、自らそれを修正しながら理解しなければならないこと(点字を誤読しているのか、表示が間違っているのか、知らない日本語が出て来たのかの区別がつかないので、混乱) ・まだ覚え切れていないアルファベットの点字も頻繁に登場する 等の困難が一挙に押し寄せてくるため、疲労するばかりで、意味を理解してページの内容を楽しむ、という段階ではないようだ。  皆がやっているのと同じようにやってみたいという憧れもあったようなので、PC-TalkerのIE点字化機能も使ってページ閲覧を経験してもらった。  あまりに余分な情報が多く、読んでも読んでも検索結果にたどり着けず、ページ検索の大変さを痛感したようだ。 <3>新しいパソコンへの移行  前回の講習からの一か月の間に、新しくWindows7のノートパソコンを購入し、役所の補助を受けてソフトも購入、以前から家にはインターネット接続環境があったので、練習と同じように使えるように、ソフト類のインストールや設定等を行った。  実際に使える訳ではないが、見て本人が安心できるよう、画面をハイコントラストに、アイコンや文字の拡大などの設定を行い「でかポインタ」も設定した。  電源ボタンの形状に最初は戸惑っていたが、ほとんどの操作は点字ディスプレイ側で行えることもあり、操作に混乱することはほとんど無かった。  「サーチエイド」は「型が一致しません」というエラーが出て途中で止まってしまうため、新しいパソコンでは練習できなかった(作者に確認したところ、原因は分からないとのこと。セキュリティソフト等をアンインストールするなどして、うまく動くように試行錯誤していただくよう、地域指導者に後をお願いした) (6)課題  点字の読み速度の一層の向上と、仮名のみの日本語文章への慣れ。 (7)所見  パソコンや携帯メールの使用経験があるためか、メール、インターネットの概念や、機械の操作法のイメージができ上がっているので、操作法そのものの習得は非常に早かった。  点字のみでウェブページの検索を行う場面になって、「使う」ことではなく「読む」というところで初めて困難と言えるものにぶつかった感じである。先天ろうでありながら、こちらが驚くほどに日本語を巧みに使いこなしているし、漢字の知識も豊富だが、それでも読むことには大きな苦労が伴うようだ。  多少なりともウェブ検索が楽にできる「サーチエイド」が、彼女のパソコンでは現状動いていないのは残念である。多くのアプリケーションを使っている訳でもないので、この1つぐらいは何とか動いて欲しいものである。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年12月6日(木)〜平成25年1月31日(木) (2)指導回数 全12回 (3)指導時間 全33時間 (4)指導者数 4名 (5)主な指導内容(抜粋) 12月6日(1回目)  前回の指導後、全くパソコンに触れていないという事だった。起動したのに接続できない状態が2度続いた。3度目にようやく繋がった。確認を求めてこちらの様子を伺う事はあったが、ほぼ一人ですすめられた。メールを読む時は点字ディスプレイを使用されるが、書く時は画面を見ておられる。今回はカタカナであったが、いずれは漢字かな混じり文にしたいとの事だった。 12月10日(2回目)  受信メールからの返信、新規メール作成の練習を行った。メールを書く時はどうしても画面を見ておられるが、自分から画面を見ずに入力すると言い挑戦された。書き間違いについてもすぐ気づき訂正された。作成する文章は、句読点は使用されているが、もう少し短くした方が相手も読みやすいと思う。この事はこちらから伝えるのが良いのか、気が付かれるのを待つのが良いのか? 1月10日(6回目)  一人でPCを開けることはされていなかった。メールは2通を読み、各々に返事、新規の方をアドレス帳に登録。操作については全て自分でされるが、返事を書く時にフリーズ状態になる事が3回あった。この時に自分で対処が出来ないので一人でPCを開けることがないのではないだろうか。  マイニュースで記事を読む時、点字だけでイメージがつかめず。画面で漢字を確認して納得された。 1月21日(8回目)  前回、宿題で一人でメールをしてもらうようにしたら、友の会と私宛にメールを出された。これでメールに関しては自信を持たれ、今日受信したメールの返信は一人で出すという事だった。  わからない事(アドレス帳の編集、名前の登録)を白井先生宛てにメールで質問された。  メールの削除の方法を指導、すぐに理解され、日が経ったものは順次削除するとの事だった。 1月24日(9回目)  アドレス帳の編集について白井先生より回答をもらったので練習をした。シフトとF2の場所を確認した。  マイニュースで、地方紙を勧め、地元のニュースを楽しんだ。メールに関しては自信を持たれ、返信は後で一人ですると言われた。 1月31日(12回目)  メールを受信し返信する練習。マイニュースの練習。  インターネットの練習では、ヤフーよりグーグルを選び検索したが、本当に調べたいところまで辿り着くのが大変だった。終了の仕方を何回か練習した。  画面の文字を大きくしてほしいという事であったが、出来る範囲で最大化はした。これ以上はわからなかったので、友の会を通じ視覚障害者センターへ繋げてもらうことにした。  これからも一日一回はパソコンを開き、メールチェックとマイニュースを読みたいということであった。 3-4 個別訪問指導報告(ブレイルセンス編)  9名の受講盲ろう者の内、3名に対してブレイルセンスの指導を行った。 3-4-1 Gさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 70歳代 (3)障害の程度 全盲ろう (4)受障歴 聴覚 難聴で10歳ごろ聴こえにくくなり、ろうとなる。 視覚 40歳代後半に視力が低下して現在はほとんど見えない。 (5)コミュニケーション方法 受信 触手話、五十音式指文字、手書き。 発信 手話 (6)点字の触読 約20年前に点字図書館で点字を教わり、現在は点字での読み書きは可能。 (7)使用文字 点字 (8)パソコン等の経験 50歳ごろパソコンで文字入力の練習した経験あり (9)志望動機 近くに住んでいる家族や派遣事務所等に独力で連絡を取ったり、知り合いの盲ろう者と情報交換ができるようメールを覚えたい。 (10)希望機種 ブレイルセンス 2.講師および指導者 (1)講習会講師 渡井秀匡 (2)地域の指導者および通訳・介助員 2名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし その他 なし (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス、ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年6月9日(土) 14:30〜17:50 第2回 平成24年6月10日(日) 9:00〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>オプション設定のチューニング <2>本体の確認 <3>ブレイルセンスの起動と終了 <4>スタートメニューの選択 <5>電子メールの起動と終了 <6>メールの受信とメール本文の読み方 <7>返信メールの作成と送信 <8>バッテリー残量の確認と現在時刻の確認方法 地域の指導者に対して <9>キーの名称等について <10>音声出力や画面表示のオン/オフの方法について <11>オプション設定のチューニングや復旧方法について <12>指導のポイント (5)成果 <1>プラスとオンハンドのどちらが使いやすいか、両方試してもらったが、点字表示マス数の多いプラスで学習することになった。 <2>オプション設定のチューニング ・メッセージ表示時間は慣れるまで7秒に設定。 ・音声出力は必要ないのでオフに変更。 ・画面は指導者に見てもらいたいので表示されるようオンに変更。 ・左手の指で点字を読むため、右スクロールは表示送りと表示戻しに、左スクロールは上矢印キーと下矢印キーに割り当てた。 ・コントロール情報は紛らわしいとの話があったのでオフに変更。 ・無線LANで接続することになったので無線LANはオンに変更。 <3>スタートメニューの選択  スクロールキーでスタートメニューのプログラムを選択する方法を採用したが、使わないプログラムは表示されないようメニュー管理より設定をした。ファイル管理から番号を付けて覚えてもらった。 <4>コマンドの実行  スペースキーと点字キー、あるいはエンターキーと点字キーの組み合わせで入力する方法は、しばらく慣れず上手くいかなかったが、繰り返し練習することで初日の後半にはコツを掴んだ様子であった。コマンドの覚え方は英語ではなく日本語で、メールの受信は「エンターとツ」、返信のメール作成は「エンターとチ」というように覚えていった。 <5>メールの読み方  最初のうちはタイトル一覧と本文の違いがなかなか伝わらず、説明を変えながらようやく伝えることができた。  メールの選択時にどのメールを選んでいるのか分からずうろうろしてしまうことがあったので、タイトルの後に表示されるメール番号を目安に、その番号が選択しているタイトルの終わりというように覚えてもらった。また、1行の長さによっては必ずしも点字表示部に収まるとは限らないので、表示送りとして下スクロールを押してもらったが、そのキーの役割を下矢印キーと混同してしまうことがあった。 <6>返信メールの作成  漢字変換は難しいとのお話があったので、点字を打つ感覚でひらがなで入力してもらい、助詞の後や単語と単語の間などは1マス空ける方法で入力してもらった。 <7>指導者に対して  ブレイルセンスのメール一覧はタイトルで表示されるため、ご本人にメールを送る場合、タイトルに自分の名前を入れるようお願いした。講習は楽しい話を交えながらご本人の理解度に合わせてゆっくり進めて構わないことを伝えた。 (6)課題  今回は初めての学習だったので、いろいろな操作方法を試し、どの方法が操作しやすいかをご本人に選択してもらおうとしたが、かえって混乱してしまうことがあった。今回でそういったことがわかったので、次回からは思い切ってこちらで良いと思われる操作方法で進めていきたいと考えている。 (7)所見  地域の指導者のお二人がとても勉強熱心で、ご本人との信頼関係も厚いので、今後のサポートに期待したい。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年7月15日(日) 14:30〜18:00 第4回 平成24年7月16日(月) 9:00〜12:30 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの受信とメール本文の読み方の復習 <2>返信メールの作成と送信の復習 <3>バッテリーの残量確認と現在時刻の確認方法の復習 <4>送信前のメールを確認する方法 地域の指導者に対して <5>オプション設定のバックアップ方法 <6>点字出力のオン/オフの方法 <7>今後の練習について (5)成果 <1>〜<3>復習について  前回の訪問から今回の訪問までの間、講習をほとんど実施できなかったようなので電子メールの復習をした。  受信メール一覧で何のメールを選んでいるのか分からなくなっていたので、今後は件名に名前と送信日を書いてメールを送ってもらうようにした。そうすれば、その都度F3キーを押して日付や差出人まで移動しなくても選択しているメールが何なのか分かって良いとの結論に達した。  本文を読み進めていった時、本文の終わりがよく分からないとの指摘があった。本文が終わって右下スクロールを押し続けていると、点字カーソル(7、8の点)だけが表示されるようになるので、それを目安に文章が終わったと判断してもらうようにした。 <4>時々メールの送信ができているか心配になることがあるとの話があり、ちゃんと送信できるか確認する方法を学習した。フォルダの選択でStorageboxを選んでメール一覧を出してメールが0件であれば送信できていることが確認できることを指導した。 <5>講習会をやりながらオプション設定を変更することがあるので、地域の指導者より変更後にバックアップの更新をしたいとの話があった。バックアップフォルダの作成からバックアップするまでの操作方法を指導者に説明した。 <6>講習会中に突然点字出力がオフになって音声のみになったことがあったので、ワンタッチで点字出力ができる方法があるかとの質問があった。バックスペースキー+F3を押すことで点字出力のオン/オフの切り替えができることを確認した。 <7>今後の練習について  協会から送られてきたマニュアルは大量に書かれていて自分の知りたい箇所にたどり着けないことや、打ち出された点字があまり読めないとの話があった。話し合った結果、ご自分で点字を打ってマニュアル化することになった。  協会より貸与したブレイルセンスプラスはバッテリーが早く減ってしまうようなので、ACアダプタを接続し使ってもらうこととした。  電子メールをマスターするまでは指導者の二人が交代で少なくとも週に1度は講習を行えるよう調整することになった。  しばらくは指導者のお二人が交代しながらメールを毎日ご本人に送り、メールの受信と本文を読む練習をしてもらうことになった。 (6)課題  独力でブレイルセンスの操作をするのはまだ不安のようなので、講習会以外はご家族の協力が必要であると感じた。 (7)所見  同居しているご家族にマニュアルを渡して、しばらく練習を見守っていただくことになった。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年9月16日(日) 14:30〜18:00 第6回 平成24年9月17日(月) 9:30〜13:00 (2)実施場所 受講盲ろう者自宅 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>RSSリーダーでYahoo天気の閲覧 <2>RSSリーダーで毎日新聞の閲覧 <3>ブレイルセンスの購入についての相談 地域の指導者に対して <4>RSSリーダーに登録する方法 <5>アカウント設定の方法 <6>他のブレイルセンスへの移行作業について <7>今後のサポートについて (5)成果 <1>〜<2>RSSリーダーは情報を読むためのソフトと理解してもらい、「Yahoo天気の情報を読む」方法、「毎日新聞のニュースを読む」方法というようにそれぞれの操作手順ごとに覚えていった。  Yahoo天気では見出し一覧で1週間分の天気と気温を知ることができるが、やはりメール一覧の選択と同じく混乱してしまったので、見出し一覧の選択はしないことにした。見出し一覧を出したらさらにもう一度エンターキーを押してホームページを読み込んでから見出しジャンプのコマンド(バックスペースキー+エ)を2回押して「今日の天気」、さらに見出しジャンプのコマンドを押して「明日の天気」に移動し、それぞれの見出しのところで下スクロールキーを押して天気の詳細を確認する方法で覚えてもらった。降水確率の表示が煩雑になっていたので、説明して理解してもらった。  毎日新聞の見出し一覧では見出しのタイトルが違うので混乱することなく選択することができ、記事本文も確認することができた。 <3>ブレイルセンスの購入について  友の会の事務局の協力を得て市の担当者と交渉し、前向きに補助を出せるよう考えたいとの返事があったとのことだった。引き続き事務局と相談しながら申請してもらうことになった。 <4>〜<5>購入予定のブレイルセンスを現在使用しているブレイルセンスと同じ環境にしたいとの希望があったので、指導者にデータを移行する方法を説明した。  アカウントの設定、バックアップしておくべきフォルダやファイルの場所やコピー等、操作方法を確認した。 <6>今後のサポートについて  ネット環境については、すでにご家族がADSLを利用されていることが分かったので無線LANの親機を購入して接続することになった。また、指導者より引き続き週に1度ぐらいのペースで指導していただけることを確認した。 (6)課題  ブレイルセンスの申請に時間がかかりそうなので、実際に購入できるまでの間、覚えたことを忘れないようブレイルセンスの貸与期間を延長する必要があると感じた。 (7)所見  地域の指導者の協力でメールの送受信やRSSリーダーでの情報収集ができるようになり、一定の目標は達成できたと思われる。今後も引き続き派遣事業等を利用して支援していただけるとのことだった。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年6月17日(日)〜平成24年9月22日(土) (2)指導回数 全21回 (3)指導時間 全44時間 (4)指導者数 2名 (5)主な指導内容(抜粋) 6月17日(1回目)  電源オン/オフの方法、時刻の確認および表示オフ、バッテリー残量の確認および表示オフ。これらはご本人1人でできた。電子メールでは、エンターとツを同時に押すのがまだ慣れていない様子。受信メールを選択してから電子メールを終了するまではサポートが必要で、操作手順はまだ曖昧のようだ。 7月1日(3回目)  電源をオフにする時、必ず点字表示が消えることを確認してからキーロックする事を再確認した。電子メールでは、エンターとツの同時押しが難しいようなので、次回エンターキーにシールをつけてみることにした。メールの本文は、本文の最後の行から表示されるので、文の初めから読むようサポートが必要。 7月22日(4回目)  電源オン/オフ、バッテリー残量の確認、時計の確認はサポートなしで操作できる。電子メールの操作方法は説明しながら繰り返し練習した。13件のメールが届いていたので本文を読み5、6件に返信。文章入力はサポートなしで出来る。「タイトル一覧」が十分に理解できていないようだ。完全に覚えるまで、短時間でもいいので日にちを空けないで指導日を設ける。  メールの送受信を楽しんでいるので私たちの励みになります。 7月29日(7回目)  電子メールの送受信を繰り返し練習する。出来るだけ1人で操作してもらうようにした。間違った操作や分からない時はすぐにサポートしないで、しばらく見てからサポートするようにした。返信はだいたい1人で出来るようになったが受信操作にサポートが必要。自信を持つともっとスムーズに出来るようになると思う。 8月10日(9回目)  しばらくの間、指導に行けなかったため復習を中心に行った。指導後半にはご本人1人で操作してもらい、私は出来るだけ見守るようにしていた。ご自分で操作手順を確認できるように「操作手順の点字翻訳版を作成してはどうか?」とご家族とご本人から提案あり。用語など少し噛み砕いてサポートしながら作成する事になった。 8月29日(11回目)  メールを受信して返信する操作はほぼサポートなしで出来た。指導者がメールで送信した返信操作手順をご本人が読みながら点字翻訳を作成した。ほぼサポートなしで操作出来るようになったが、時々機器が固まったりバッテリー切れになったりするので1人ではトラブルの対処が難しい。 8月30日(12回目)  操作はだいたい覚えており、ほとんどサポートがなくても問題はないかと思う。ただ、受信した際に未読メールを飛ばしてしまう事もあり、未読のメールが残っているかどうか確認が必要と伝えた。  ブレイルセンス本体がフリーズする事があった。リセットボタンで対処してもらう事にしている。この操作はご本人も覚えていた。 9月3日(14回目)  メールを受信して返信を繰り返し練習。ご本人より自分からメールを送る方法はどうするのかと聞いてきたので、次回から新規メールの作成と送信の操作練習に入る予定。 9月5日(15回目)  新規メールの作成と送信では、今日は指導者が2人だったので、1人がご本人に新しい練習の内容を説明、その間にもう1人が3件のアドレスを登録した。新規メール作成は初めてなので少し混乱しているようだった。 9月6日(16回目)  未読メールを読み飛ばしてしまうことがあったのでスクロールで確認するよう伝える。新規メールの方法は予想以上に覚えていた。ご自身で操作手順を点字翻訳する事で、それを見ながら1人で操作できた。今は便宜上、タイトルに送信者名と日付を入れてメールを送信しているが、今後のことを考えると確認できるようになった方がいいと思い、「今、覚えなければならない」ではなく「今後覚えていきましょう」程度に指導した。 9月14日(19回目)  ご自宅に訪問した時ケアマネの方が来られていて、ご本人が電子メールの操作を行って見せているところだった。その方はとても驚くと同時に感心していた。  次回の講習会の内容を説明、とても楽しみにされている様子だった。 9月22日(21回目)  新規メール作成ではスムーズに出来ていた。メールの自由度が広がり楽しそうだった。RSSリーダーの練習ではご本人の希望により天気予報を中心に行った。ただ情報量が多いので「読まなくても支障のない文」と「読む必要のある文」との区別が難しい。慣れの問題と思うので、今後繰り返し練習するとスムーズになるのではないか。降水確率の「%」で少々詰まったが、後半には点字表記を覚えたので今後は問題ないと思う。  9月末にブレイルセンスを一旦返却するので、練習できない、忘れてしまうのでは?メールのやりとりが出来ない等、ご本人より寂しさが伝わってきた。今後のサポートも力を入れて安心して勉強できるようにしていきたい。 3-4-2 Hさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 女性 (2)年齢 70歳代 (3)障害の程度 全盲ろう (4)受障歴 聴覚 先天性のろう 視覚 網膜色素変性症のため40代後半から視力低下 (5)コミュニケーション方法 受信 触手話 発信 手話 (6)点字の触読 可(点字ディスプレイ1行32マスを10秒程度) (7)使用文字 点字 (8)パソコン等の経験 8年ほど前よりパソコンにて点字入力を学習 (9)志望動機 ブレイルセンスにてメールの送受信ができるようになりたいというのが主な志望動機 (10)希望機種 ブレイルセンス 2.講師および指導者 (1)講習会講師 大河内直之 (2)地域の指導者および通訳・介助員 6名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし その他 なし (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス、ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年10月23日(火) 12:30〜15:30 第2回 平成24年10月24日(水) 9:30〜12:00、13:00〜15:00 (2)実施場所 友の会事務所 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス、ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>ブレイルセンスプラスとオンハンドの全体説明 <2>それぞれの電源スイッチの違いの説明 <3>ロックスイッチの位置の違いの説明 <4>6点入力及びブレイルセンスショートカット入力の練習 地域の指導者に対して <5>ブレイルセンスプラスとオンハンドの違いについて説明 <6>オプション設定の説明 <7>モバイル無線LANルーターのトラブル対処方法の説明 (5)成果  まずはブレイルセンスプラスの全体的な説明を行い、続いて点字入力の練習を行った。これまでパソコンを使って練習していたとのことで、非常にスムーズに点字を書くことができた。また非常に慎重に入力されるので、間違いがほとんどなかった。  したがって、すぐに、電子メールの受信操作を行ったところ「エンター+ツ」等ブレイルセンスのショートカット入力がなかなかうまくできなかった。地域の指導者の「ご本人の手に対してプラスのキーが大きすぎるのではないか」との助言に基づき、オンハンドに変えてみたところ、何とかショートカットの入力ができるようになった。ご本人もオンハンドの方が使いやすいとのことだったので、オンハンドを使って講習を進めることとなった。  電源のオンとオフ、ロックのかけ方、電子メールの受信および本文確認がゆっくりではあるがオンハンドでできるようになった。 (6)課題  ご本人への講習に時間が取られてしまい、指導者に対するオプション設定等の説明があまり丁寧にできなかった。またルーターの電波受信状況が芳しくなく、すぐ切断されてしまい、何度も再起動を行わなければならなかった。その対処方法についても、詳細な説明ができず、トラブルが起きたときは電話連絡いただくことをお願いして、今回の講習を終えた。 (7)所見  手話ベースの盲ろう者で点字もあまり得意ではないということだが、大変几帳面で丁寧に操作される方なので、進行はゆっくりであるが、確実に習得できている。おそらく、電子メール以外の機能については本講習会で取り組むことは時間的に難しいが、電子メールの利用だけは確実にできるように進めて行きたいと思う。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年11月12日(月) 9:30〜12:00、13:00〜15:00 第4回 平成24年11月13日(火) 9:30〜13:00 (2)実施場所 友の会事務所 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>電子メールの受信の復習 <2>メールの返信 <3>バッテリー残量の確認方法 地域の指導者に対して <5>ブレイルセンスのフリーズ時の解決方法 → リセットスイッチによる再起動 <6>バッテリー切れ等により初期設定に戻ってしまったときの対応方法(バックアップ/オプションの説明) (5)成果  機械トラブル等で、前回以降あまり復習ができていないとのことで、まずはメール受信の復習を行った。2、3度繰り返してほぼこちらの指示がなくても本文を読むことができた。  続いて、受信したメールに返信する操作を行った。「エンター+チ」で返信メール作成画面を開き、漢字変換は使わず、「日本語モード」にて本文を作成。「エンター+ノ」で送信という操作の流れをスムーズに習得できた。  ゆっくりではあるが、受信・返信の操作が確実になったので、数人の指導者の携帯電話を相手に、メールを受信し、そのメールに返信するという練習を何度も行った。  他、「ファイル管理」や「電子メール」等メニュー画面で「スペース+カ」を押すと、バッテリー残量が確認できることを学習した。 (6)課題  前回、指導者に設定等の説明があまりできず、結果今回の講習の間に、バッテリー切れ等によるブレイルセンスプラス、オンハンド共に設定初期化が起きてしまい、そこから復旧できなかった。したがって、今回はご本人が帰られた後の30分程度を使って、時間の許す指導者のみであるが、現在の設定のバックアップ方法と、初期化時の復旧方法の実習を行った。 (7)所見  地域の指導者がブレイルセンスを触ることがなかなかできず、実際に学習することが難しい。その結果、トラブルが起きてしまったときに回復ができず、復習ができないことが起きてしまった。今回は、ご本人のオンハンド以外に3台のブレイルセンスがあったので、ご本人と同じ操作をしていただき、また講師の支援者にそのフォローをお願いするという方法で、極力ブレイルセンスに触っていただくことを心がけた。 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年12月10日(月) 9:30〜12:00、13:00〜15:00 第6回 平成24年12月11日(火) 9:30〜12:00、13:00〜15:00 (2)実施場所 友の会事務所 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの受信、返信の復習 <2>アドレス帳を使ってのメール送信 <3>時刻、日付の確認 地域の指導者に対して <4>受信メールからのアドレス帳作成方法 <5>バックアップ/復旧オプションの復習 (5)成果  前回以降、地域での講習において、メールの受信と返信が確実にできるようになったとのことだった。復習の意味も含めて、再度メールの受信とそのメールに対する返信の操作を行った。順調にできるようになっていることがわかった。  次に、こちらからメールを送りたい人をお聞きし、あらかじめアドレス帳を作成したうえで、新規メール作成の操作を学習した。アドレス帳を呼び出す操作に最初少し手間取ったが、後は返信メールの応用ということを理解されて、3度目にはこちらから指示しなくても次の操作に移りメールを送信することができるようになった。その後も講習終了まで、アドレス帳を使った新規メール作成および送信の操作を繰り返し学習した。  また、最後に時刻と日付の確認方法を学習した。 (6)課題  アドレス帳をご自分で作成するところまでは時間が足らず、講習ではできなかった。そのため、指導者に対して受信メールからアドレス帳を登録する方法を説明した。  他、今後のオンハンドやモバイル無線LANルーターの購入については、こちらも時間がなく詳細な相談をすることができなかったので、地域の指導者と継続的に相談しながら取り進めることとなった。 (7)所見  モバイル無線LANルーターにUSBで接続しているデータ通信カード「L-02C」に不具合があることが、他の委員より情報提供されたため、講師がL-02Cのファームウエアのアップデートを行った。しかし、そもそも講習場所の電波状況が良くないようで、大きな改善にはつながらなかった。ちなみに、地域の指導者宅でテストしたところ、順調に接続できたとのことだった。 第7回、第8回 (1)期日 第7回 平成25年2月27日(水) 12:30〜16:00 第8回 平成25年2月28日(木) 14:00〜20:00 (2)実施場所 友の会事務所 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスオンハンド 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>メールの受信の復習 <2>受信したメールへの返信の復習 <3>アドレス帳を使って新規メールの作成と送信の復習 地域の指導者に対して <4>初期状態に戻ってしまった際の復旧方法の再確認 <5>現在の設定情報のバックアップ方法の再確認 <6>入力モード(全角・半角)の切り替え方法の再確認 <7>「送信完了」等、メッセージ表示時間の切り替え方法 <8>内蔵ディスプレイのオン/オフ <9>音声のオン/オフ <10>無線ルーターの設定方法(家庭用のLANで利用する場合) (5)成果  ご本人に対しては、これまでの講習で行ってきた、メール受信・受信したメールへの返信・アドレス帳から送信したい人を選んでのメール送信の三つを繰り返し実施していただいた。たまに次の操作がわからなくなる時はあるものの、ほとんど指導者の指示がなくても自分で一連の操作を行うことができるようになった。ご家族や周囲の通訳・介助員との連絡手段として、電子メールの活用が十分できるものと思われる。  指導者に対しては、ブレイルセンスオンハンドの設定がどうしてもできないとのことだったため、オンハンドを使ってオプション設定とユーティリティ設定を中心に、ご本人にあった環境設定の方法を再確認した。特に、音声のオン/オフ、画面のオン/オフについては、ショートカットキーやコマンドを覚えていただき、少しでも音声や画面を使って設定等ができるような方法を提案した。結果、基本的な設定については、地域の指導者がサポートできるような体制を確立することができた。 (6)課題  オプション設定、ユーティリティ設定、電子メールのアカウント設定等は、日常的にブレイルセンスを利用・操作している人でないと覚えることがなかなか難しい。それらの設定を速やかに行うための、指導者に対する個別的支援がさらに必要であると感じた。設定等に関するマニュアルも存在するが、そのマニュアルを読みながら個々のケースに合わせて設定を行うことが難しく、今回もご本人の環境に即した簡易マニュアルを作成することとなった。 (7)所見  ブレイルセンスオンハンドを購入したいとのことであったが、地域の日常生活用具の給付額が20万円程度と、他の地域と比べて低いことから、購入を保留し、現状は友の会にあるブレイルセンスプラスを利用して、定期的な学習を行うとのことであった。ただ、それだとご本人が日常的にメールを利用することができないため、他の方法も検討したいとのことであった。したがって、今後とも継続的に連絡を取り合いながら購入に向けた支援を行うこととなった。 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年10月30日(火)〜平成25年1月31日(木) (2)指導回数 全10回 (3)指導時間 全22時間 (4)指導者数 4名 (5)主な指導内容(抜粋) 11月7日(2回目)  操作を忘れているとのことで電子メールの受信・返信の練習をする。 ・受信メールの操作練習。指導者および通訳者の携帯から受講者宛てにメールを送信し、受講者がこれを受信する練習を繰り返し行う。 ・返信メール操作練習。指導者および通訳者のメールに返信する練習を繰り返し行う。(通訳者の携帯を借り、バイブレーターの振動を感じる) ・新規メールの操作練習。登録されている通訳者のアドレスにメールを送信する練習を行う。  前回よりしばらく練習を休んだため、覚えていることが少ない。次回のために操作手順を、通訳者には墨字で受講者には点字で渡すようにする。 11月20日(4回目)  電子メールの基本練習をする。  時には楽しそうなメールやおいしいもののメールを送ってみる。  なかなか覚えられない状況で、本人も少し疲れが出ている様子。それでも楽しみながら真剣に覚えようとしている。 12月4日(5回目)  指導者および通訳者からのメールに返信する練習を繰り返し行う。通訳者の携帯を借り、携帯電話のバイブレーションが非常に楽しみのようで、相手に届いたことが分かり嬉しそう。  自分で購入する方法を尋ねられる。ルーター等をドコモショップで確認してくることにする。市役所で本人負担などを尋ねて次回返事をする。  本人が自宅にブレイルセンスを持ち帰り練習することとなった。 12月18日(6回目)  前回本人よりいただいた質問に対し以下のとおり回答する。 ・ドコモショップでは携帯電話はほとんど0円。ルーターについては月5千円くらい。 ・市役所では、品物が例えば40万円なら上限20万円の補助が出て、残りは自己負担になる。  自宅で持ち帰り練習した結果は、うまく起動せず練習できなかったとのこと。機器を点検すると初期化されていたようでした。(復旧しました) 1月9日(7回目)  お正月明け最初の電子メールの基本練習をする。受信方法はお正月の間に忘れた部分がある。  初期化からの復旧を詳しく確認する。大河内氏に連絡を取り再度詳しくお尋ねした。頻繁に無線が繋がらなくなるため違う方法も聞く。 1月23日(8回目)  オンハンドンの調子が悪く、ブレイルセンスに有線LANを接続して使用する。 ・受信メールの基本練習。 ・返信の操作練習。 ・新規メールの送信操作練習。 1月29日(9回目)  新規メールの送信操作練習では通訳者の方のアドレスにメールを送る練習をする。返事が届くのが楽しみのようです。  操作の手順を覚えられなくて途中で手が止まることがある。これからもまだ練習が必要です。 1月31日(10回目)  前回と同じく電子メールの基本練習をする。  本人は点字の読み書きができているが、機械的操作をしたことがないため戸惑っているところがあるようだ。今後は、電子メールの他の内容もたくさんあるので、使いこなせるとさらに楽しくなると思います。 3-4-3 Iさん 1.受講盲ろう者について (1)性別 男性 (2)年齢 40歳代 (3)障害の程度 弱視ろう (4)受障歴 聴覚 幼いから聴こえなくなった。 視覚 30歳代に網膜色素変性症により視力低下と視野狭窄が始まる。 (5)コミュニケーション方法 受信 触手話、五十音式指文字、手書き文字 発信 手話、五十音式指文字。 (6)点字の触読 可(2〜3秒に1文字程度) (7)使用文字 拡大読書器で白黒反転で読む。点字は2011年4月から2012年8月まで読み書きの訓練を受けた経験あり。 (8)パソコン等の経験 あり。30代にWindows98のノートパソコンとズームテキストの組み合わせで使ったが故障。経済的な理由で現在は携帯電話でメールを送受信している。 (9)志望動機 携帯電話でメールを送受信しているが、メールの本文が見えにくくなり、拡大読書器を使って携帯電話のディスプレイの文字を読み取ったり編集の操作しているが、外出先でメールが出来ず不便さを感じている。そんな時にブレイルセンスのことを知り、携帯電話の代わりにしようと考えた。 (10)希望機種 ブレイルセンス 2.講師および指導者 (1)講習会講師 村岡寿幸 (2)地域の指導者および通訳・介助員 6名 3.機種・環境 (1)本人が所有している機器・ソフトウェア パソコン なし その他 なし (2)協会より貸与した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター 4.講習会報告 第1回、第2回 (1)期日 第1回 平成24年10月16日(火) 13:00〜17:00 第2回 平成24年10月14日(水) 10:00〜12:00、 13:00〜16:00 (2)実施場所 地域の福祉センター (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>ブレイルセンスプラスの各部名称の確認 <2>起動方法 <3>キーの操作方法 <4>メインメニューの確認 <5>メールの受信 <6>メール本文の開き方、閉じ方 <7>差出人をアドレス帳に登録 <8>アドレス帳を開く方法 <9>新規メールの作成 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <3>キー操作  パソコンのキーボートよりキーの数が少なく、カーソルキー(矢印キー)がどれか分かりにくいようだった。キーの数が少ないため、点字キーとエンターキーを同時に押したり、点字キーとスペースキーを同時に押したりするショートカットキーがたくさんあることを説明した。 <5>メールの受信  受信を実行すると「サービス名?」と表示されるので戸惑うようだった。構わずエンターを押すように指導した。受信コマンド(エンター+ツ)を繰り返し練習し覚えるようになった。 <6>メール本文の開き方、閉じ方  メールの本文を開く方法は二つある。1)受信リストにある未読メールでエンターを押し、すぐに本文を開いて読む。2)未読メールのタイトルでF3を数回押してヘッダー(受信日時、差出人名あるいはアドレス、メール本文の順に表示される)を確認して本文に入って読む。  この二つの方法から良いと思われる方を選んでもらった。  地域の指導者の携帯電話やスマホやパソコンからメールを送り、何通か受信し、本文を読む練習を繰り返し行った。 <7>差出人をアドレス帳に登録  メールを受信、受信メールから差出人のアドレスを登録するという一連の流れを指導。差出人アドレスの登録を実行すると、「名前」と表示され、その後ろに人名ではなくメールアドレスが表示されてしまいわかりにくいが、構わずバックスペースですべて削除し、人名を入力するよう指導した。  アドレス帳に登録できたかどうかを確認するには、新規メールを開き、アドレス検索のコマンド操作でアドレス帳を開き、上下矢印キーで名前を確認するよう指導した。 <9>新規メールの作成  新規メール作成コマンド(エンター+ソの次に、エンター+ニ)の順でアドレス帳開き、送信先(宛名)を選択し、エンターを押し、「本文」と表示されたらメッセージを書き始めるよう指導。 入力はひらがなのみとし、誤字はバックスペースキーで削除するよう指導。送信コマンド(エンター+ノ)を押して送信するよう指導した。 (6)課題  地域の指導者の6名は、普段パソコンや携帯電話やスマホの画面を頼って操作しているが、ブレイルセンスプラスのディスプレイは小さすぎて見づらかったようだ。音声をオンにしても画面のレイアウトを思い浮かべるのは難しいようだった。  コマンドを入力する時も表示される点字もアルファベットが多いが、点字のアルファベットに慣れていないようだったので、気にせず操作を続けられるようになると良いと思う。  今回ご本人のメールアドレスとしてgmailを用意したが、メールを受信した際、相手のメールアドレスの文字の配列のせいなのか、自動的に迷惑メールと認識されてしまうことがあり、その指導者のメールはブレイルセンスで受信できない、ということが起こった。そのため、gmailのウェブメールの迷惑メールフォルダを開き、その指導者のメールを選択、「迷惑メール解除」の設定を行った。そうすると受信できるようになった。  上記のような方法を指導者に説明したが、gmailのウェブメールを開くにはログインIDとパスワードを指導者が把握する必要があり、それは良くないのではないかという意見があった。ご本人が行うのが一番良いだろうが難しいと思われるので、様子を見ながら指導を試みたいと思う。 (7)所見  ご本人が、ブレイルセンスの操作を体験しぜひアルファベット点字の読み書きを覚えたいと言っていた。今後も頑張ってほしいと思う。 第3回、第4回 (1)期日 第3回 平成24年11月27日(火) 13:30〜17:00 第4回 平成24年11月28日(水) 9:30〜12:00、13:00〜15:30 (2)実施場所 地域のレンタル会議室 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 USB型データ通信カード、モバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>オプション設定について <2>データのバックアップ方法 <3>前回の復習 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <1>オプション設定について  必要な設定項目のみ、その役割や変更方法を指導した。  盲ろう者が一人で操作する場合は、音声出力とディスプレイ表示をオフに切り替えるよう指導した。(指導者と一緒に練習する場合は、音声出力とディスプレイ表示にオンを切り替える) <2>データのバックアップ方法  バッテリー残量がゼロになるとオプション設定は初期設定に戻ってしまい、再度設定し直すのは大変なので、設定内容のバックアップの方法も指導した。 <3>前回の復習  前回の講習会後、新規メール作成の練習をしようとしたがアドレス帳の開き方が分からず、もっぱら返信の練習を繰り返していたとのことだった。そのため、今回は改めて新規メール作成から送信の操作手順を指導した。 (6)課題  センスプラスのバッテリー残量がゼロになると初期設定に戻ってしまい、無線LANの設定は「オフ」となり、モバイルルーターとの接続が出来なくなる。前回の講習会から今日までの間に指導者と一緒に練習をしたようだが、初期設定に戻ってしまい、そのためモバイルルーターに繋がらずメールの送受信が出来なかったようだ。指導者の一人がセンスプラスを持ち帰り、オプション設定を調べたところ、無線LANがオフとなっていると分かりオンに切り替えたとのことだった。 (7)所見 第5回、第6回 (1)期日 第5回 平成24年12月18日(火) 13:30〜17:40 第6回 平成24年12月19日(水) 9:30〜12:00、13:00〜15:30 (2)実施場所 レンタル会議室 (3)指導した機器・ソフトウェア 点字情報機器 ブレイルセンスプラス 通信機器 ご本人が購入したモバイル無線LANルーター (4)講習内容 受講盲ろう者に対して <1>ブレイルセンスのバージョンアップについて <2>無線LANの設定について <3>電子メールの設定について <4>クイックブラウザで天気予報を閲覧 地域の指導者に対して 受講盲ろう者と同じ (5)成果 <1>ブレイルセンスのバージョンアップについて  協会より貸出しているブレイルセンスは、今回で講習会が最後になることから返却しなければならない。そのため、地域の友の会が所有しているブレイルセンスプラスを借りることとした。  友の会のブレイルセンスプラスは2010年の時のバージョンで古く、最新ファームウェアのダウンロードをしようとしたがモバイルルーターでは時間がかかってしまうため、講師が持っていた最新ファームウェアのファイル(SDカードに保存)を用いてアップデートを行った。また、電子メールのサービスマネジャーの設定を行った。 <2>無線LANの設定について  ご本人がドコモのモバイル無線LANルーターを購入されたので、友の会のブレイルセンスとの接続を試したがなかなか接続出来なかった。途中で断念し、指導者の一人がご本人のモバイル無線LANルーターとブレイルセンスを持ち帰り、再度設定をしてもらった。翌日、無事に接続することができ、念のため数回送受信のテストをし問題ないことを確認した。 <4>クイックブラウザで天気予報を閲覧  ご本人から天気を確認したいとの希望があり、インターネットの天気予報のサイトをクイックブラウザに登録。クイックブラウザを実行するとその地域の天気予報が表示されるように設定した。 今日、明日、明後日の天気予報が確認できるようになった。 (6)課題  ファームウェアのダウンロードやアップデートの方法はマニュアルに記載がなく、メーカーのホームページを見るしかない。  サービスマネジャーでのメールアドレスとパスワードの入力や、無線LAN設定でのネットワークキーの入力はすべてが英数のみとなっているが、盲ろう者が独力で入力するのは難しい。指導者も難しい場合があるようで、英数モード入力では基本が小文字のアルファベットになっているが、大文字のアルファベットの入力方法が分からなかったり、あるいは英数モードで数符を使って数字を入力し、続いてアルファベットを入力する場合の方法が分からなかったようだ。  その他、マニュアルを読んでも分からない場合は、メーカーに電話しサポートを受けると良いことをアドバイスした。 (7)所見 5.指導内容報告 (1)指導期間 平成24年10月30日(火)〜平成25年1月8日(火) (2)指導回数 全6回 (3)指導時間 全15時間 (4)指導者数 5名 (5)主な指導内容(抜粋) 10月30日(1回目)  内蔵ディスプレイの表示がオフになっていたので、指導者は音声(早口)のみを頼りに、ご本人の点字読み取りを確認しつつ進行状況を把握した。練習内容は以下のとおり。 ・ブレイルセンスの電源を入れる。 ・バッテリー残高の確認。 ・時計表示の確認。ご本人より時計の表示がおかしいとのこと。24時間表示に変更してほしいとのことだったので、変更方法を指導者が調べた。 ・モバイルルーターの電源を入れる。  メールの練習をしようとしたらネットに繋がらず。電波状況が悪いのかと思い、電波の受信状況を機器を持ち歩き移動して観察。それでも繋がらなかった。本人より、機器のバッテリーが切れて自宅で充電したとの報告を聞いたので、オプション内容が初期設定に戻ってしまったのではと、指導書を頼りに取り組んだがうまく解決できず。東京へ電話して解決手段を指示していただいた。まず内蔵ディスプレイをオン、無線LANをオンにしてくださいとのこと。時間切れで指導時間内では解決できず。 11月7日(2回目)  まず、指導者より前回生じた問題と結果について概要報告した。  練習は以下のとおり。 ・モバイルルーターの電源をオン。電波受信が安定し、電波ランプが青色に落ち着くのを2分以上待つ。 ・ブレイルセンスの電源をオン。 ・メールの受信、未読メールを読む。全19メールの内、13から19までが未読と確認できた。7件の未読メールを読み終えるのに1時間かかった。送信する人はマス空けをしない方が良いことがわかった。 ・新規メール作成。アドレス帳を開いたら登録されているのは全国盲ろう者協会だけだった。登録しておいたアドレスは消えてしまったのか? ・アドレス帳の内容を確認。 ・改めてアドレスを登録する。  以上、ご本人がやりました。 11月21日(3回目) ・新規メール作成の練習。指導者3人へのメール送信成功。 ・返信メールの練習。指導者2人への返信メール送信成功。  最後に本人が、今日参加できなかった指導者へメールの送信を家からやろうかなとつぶやいていた。その夜、その指導者より本当にメールが届いたとの連絡があり、感激の瞬間が到来。 12月11日(4回目) ・カーソルの移動方法。タッチカーソルを使うと便利と指導。 ・カーソルが2マス分あることに疑問を持たれたので、記号や数字の時は2マスになることを説明。 ・日付の点字表示について、1日は「ツイタチ」、2日は「フツカ」となるので表示方法を変えてほしいとの要望があり。点字のルールであることを説明した。日付を点字用紙に打ち、後日ご本人に渡すことになった。 12月22日(5回目)  インターネットに繋がらないとの報告で原因を探る。ご自分のモバイルルーターを購入後、自宅で使うのは初めてでインターネットに繋がらないとのこと。原因は、ルーターの電源のオン/オフの方法が協会から借りたルーターとタイプが異なり、左右にスライドさせ切り替えるタイプのスイッチと押すタイプのスイッチの違いであった。これは適切な練習を積む必要がある。ルーターのスイッチを押して1分程度待つことを指導した。 1月8日(6回目)  「無線LANが繋がらないから繋がるようにしてほしい」と本人より訴えあり。内蔵ディスプレイには「無線LANオフ」と表示されていた。オンに切り替える操作をするが表示はオフのままである。本人に「オフとなったのはいつから?」と聞くと「ずっとオフだった」とのこと。年末年始の間に本人と指導者とメールの送受信ができていたのでおかしいなと思い、試しにその場で携帯電話からメールを送ってみるとブレイルセンスはメールを受信した。ブレイルセンスの表示異常とし、インターネットで天気予報を読む練習を行った。  天気予報の閲覧では、各地の天気予報などへ進むための構造などを把握できるようになり、皆で拍手。本人の手話も顔も活気があり良かった。  無線LANの表示についてはメーカーに問い合わせることにした。 3-5 受講盲ろう者へのアンケート調査 3-5-1 パソコンと点字ディスプレイ 受講盲ろう者:6名  回答者:6名 回答率:100% 1.このたび3ヶ月の間、パソコン(点字ディスプレイ含む)を貸与させていただきました。 この期間についてお伺いします。 ア.長い 0   イ.ちょうどいい 4   ウ.短い 2 <コメント>  ウ.短い ・5〜6ヶ月間ぐらいは勉強する時間が欲しかった。 ・半年位あれば、ゆっくり出来ると思います。 2.今回のパソコン(点字ディスプレイ含む)の貸与期間中に、以下の事項の中で訓練を受けたものはどれになりますか?また、その訓練中に感じたこと(難しかった、分かりやすかった等)を、具体的にご自由にお書きください。(複数回答可) ア.キーボードからのフルキー入力 2 イ.キーボードからの点字による6点入力 3 ウ.入力における漢字への変換方法 3 エ.メールの受信方法 5 オ.メールの送信方法 5 カ.ニュースの閲覧方法 3 キ.サーチエイドによる種々の検索方法 5 ク.ホームページの閲覧方法 3 ケ.ホームページの検索方法 4 コ.アドレス帳への登録方法 5 <コメント> ・内容は難しかったが、興味があったので面白かったです。 ・ワード、エクセル、ショッピング、個人設定(コントロールパネル)メモリスティックの使い方、他。 ・始めは難しいと言っていましたが、先生や通訳の人達のおかげで、使えるようになりました。 ・短期間で、アドレス登録、検索方法など覚える事が多く大変だった。 ・パソコンで使われるいろいろな用語の説明がわかりやすくて、基本的なことが理解できた。 3.今回の貸与期間を終了した後、引き続きパソコン(点字ディスプレイ含む)を使ってみたいと思いましたか? ア.はい 6   イ.いいえ 0   ウ.回答なし 0 4.3で、「ア.はい」とお答えになった方へ。今後パソコン(点字ディスプレイを含む)を使ってどのようなことをしたいと考えていますか?具体的にご自由にお書きください。 <コメント> ・もう自分専用のパソコンを買ってメールのやりとりやインターネットのフル活用をしています。 ・買い物など生活に役立てることも学び、とても勉強になりました。 ・今後も使っていきたいため、自分のPCを購入しました。 ・実際に働けるかどうかではなく、今回の学習がとても楽しく「もしかしたら、盲ろうの私でも、頑張って勉強したらパソコンを使う仕事にも就けるかな?」と今まで想像したこともなかった。新しい希望や期待を感じられたことが、とても嬉しかったです。 ・続けてパソコンを使いたいけど、今はインターネットの環境が難しい。今は日記、メモ代わりに使用。 ・メールの送受信、ホームページ検索、協会からの機関紙の文書データを読む、年賀状作成、写真アルバム、社会の情報、通信カタログ。 ・ホームページがどんどん利用できるようになりたい。自分も作ってみたい。現在会報を担当しているので、もっと幅を広げて、いろいろなことが出来るようになりたい。 ・パソコンを貸与していただいた後、ノートパソコンを購入して先生にソフトをインストールしていただきました。今回は、先生やみなさんのおかげで楽しく学習ができ、パソコンも扱えるようになりました。本当にお世話になりました。ありがとうございました。 3-5-2 ブレイルセンス 受講盲ろう者:3名  回答者:3名 回答率:100% 1.このたび3ヶ月の間、ブレイルセンスを貸与させていただきました。 この期間についてお伺いします。     ア.長い 0   イ.ちょうどいい 2   ウ.短い 3 <コメント>  ウ.短い ・ニュース、天気予報の学習が十分に出来ないので6ヶ月間は必要と思います。 ・6ヶ月は欲しい。 ・6ヶ月くらいあれば良いと思います。 2.今回のブレイルセンスの貸与期間中に、以下の事項の中で訓練を受けたものはどれになりますか?また、その訓練中に感じたこと(難しかった、分かりやすかった等)を、具体的にご自由にお書きください。(複数回答可)     ア.入力の際の漢字への変換方法 0 イ.メールの受信方法 3 ウ.メールの送信方法 3 エ.ホームページの閲覧方法 0 オ.ホームページの検索方法 0 カ.アドレス帳への登録方法 1 キ.スケジュール管理(予定帳)の使用方法 0 <コメント> ・初めての経験でしたので、機器の名称、機能を理解するのが難しかったです。先に細かく指導して頂き、理解してから操作方法の学習を始めると理解しやすかったと思います。 ・メールの送受信操作は、時々間違いもありますが、大体出来る様になりました。 ・天気予報の操作は覚えましたが、今日の天気の表示は分かりやすいのですが、明日、あさって、一週間と長くなると、とても分かりにくいです。 ・ニュースの操作方法は覚えましたが、読むために、電子機器を長く使うと手の「しびれ」が起こる心配があるので避けています。 ・最初はちんぷんかんぷんで、わかりにくかったが、3ヶ月後には何とかわかるようになった。アドレス帳への登録は、まだアルファベットが分からないので、自分で登録ができない。メールを受信した人のアドレスを登録する方法はわかった。[RSSリーダー]で、天気や新聞を読むことが出来るようになった。 ・イ、ウ、カについて練習しましたが、まだ自分一人だけでは操作が難しい状況です。 3.今回の貸与期間を終了した後、引き続きブレイルセンスを使ってみたいと思いましたか?      ア.はい 3   イ.いいえ 0 4.3で、「ア.はい」とお答えになった方へ。今後ブレイルセンスを使ってどのようなことをしたいと考えていますか?具体的にご自由にお書きください。 <コメント> ・歌詞を調べたい。辞書を使いたい。 ・ニュースとは違った身近な情報を知りたい。 ・関係している行事連絡が出来ると良い。 ・機器のトラブルが起こった時の対応に困ります。(今は通介員に来てもらい対処しています) ・SDカードに情報を読み込みたい。 ・カレンダーを使って予定の管理をしたい。 ・メモ機能を使いたい。 ・定期総会の式次第や挨拶などを情報として入れたい。 ・インターネットをもっと活用したい。電車の時刻表の検索、地域の情報、自分の趣味の車の事を調べたい。 ・全国の有名なところを調べて、旅行に行きたい。 ・楽しい情報を集めたい。 ・家族や通訳・介助員、友の会事務所との連絡に使えるようになればいいと思います。 3-6 考察 1.パソコン指導の考察  今年度の個別訪問事業の受講者は9名で、その内6名がパソコンを希望した。  6名のパソコン環境は、出力デバイスから見ると、拡大率や配色等カスタマイズされた画面のみを頼って操作するユーザーが3名、そうした画面をメインとしながら音声出力も必要とするユーザーが2名、画面はある程度見えるものの視力低下のため点字ディスプレイを選択したユーザーが1名である。入力デバイスで見ると、フルキーのみが1名、フルキーとマウスの併用が2名、点字入力のみが1名、点字入力と一部の操作だけマウスに頼る、点字入力とマウスの併用は2名だった。  6名全員が残存視力があり、画面と音声や点字を組み合わせたり、キーボードやマウスを組み合わせる利用法が半数以上を占めた。ちなみに6名の内、盲ベースの盲ろう者は音声を併用している2名で、後の4名はろうベースとなる。  ここ最近、このような入力、出力ともに二つ以上のインターフェースを併用する盲ろう者が目立つようになってきた。そのため、盲ろう者のパソコン指導の基盤となるシステム構築ではインターフェースの見極めが非常に重要である。「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」では画面インターフェースと点字インターフェースに大別しカリキュラムを組んであるが、どちらか一方だけ知っていれば良いというわけではなく、指導者となる者は盲ろう者のパソコン利用について総合的な知識が必要であるということがよくわかる。  他に、ソフトウェアから見ると、スクリーンリーダーはPC-Talkerが2名、PC-TalkerとBrailleWorksが1名、使用しない者が3名。メールソフトではMyMailが4名、VoicePopperが2名であった。  点字入力を採用する場合や、将来視力低下が進行し点字ディスプレイの利用をせまられる可能性が高い場合は、高知システム開発(株)が提供している、入力、出力ともに点字に対応しているPC-Talkerと、PC-Talkerに完全対応し画面表示のカスタマイズも可能なMyシリーズを選択せざるを得ない。Windows7上で動作するもう一つの点字対応のスクリーンリーダー、FocusTalk for Brailleは一部不具合があり、今後の改善に期待しているところである。しかし、PC-TalkerやMyシリーズは決して安くなく、経済的な負担を考慮し、尚且つ、点字入力やスクリーンリーダーに頼らない場合は、VoicePopperは画面表示のカスタマイズも可能であり手頃で使い易い。また、VoicePopperはニュースリーダーの機能も備えていることから、メールソフトはMyMailを、ニュースリーダーとしてはVoicePopperを採用する講師もいて、その工夫された指導に注目したい。  他に、指導したソフトウェアとしては、MicrosohtWordやMyEditやメモ帳などのエディター、InternetExplorerやNetReaderやサーチエイドなどのブラウザー(簡易ブラウザー)、また、表計算ソフトのMicrosohtExcelに至った受講者もいて、レベルの高さが伺える。受講者アンケートには「今後はホームページを作りたい」という意見もあり、ここ数年でレベルが上がってきている実感と、それに伴い、指導も高いレベルを求められるようになってきたことを痛切に感じる。 2.ブレイルセンス指導の考察  受講者9名の内、3名がブレイルセンスを希望した。  3名の内2名がろうベースの全盲ろう者で2名ともパソコンの経験がほとんどない。1名がろうベースの弱視ろうで、パソコンの経験があり、拡大読書器を併用して携帯電話のメール機能を使用しているが、外出時のことを考えてモバイル機器としてのブレイルセンスを希望した。  パソコンの受講者とは対照的で、全盲ろうの盲ろう者が半数を占める。全盲ろうでパソコンの経験が少ない場合は、出力、入力ともにインターフェースは点字のみとなるため、どちらにも点字が採用されているブレイルセンスは全盲ろうの盲ろう者を中心に急激に普及している。  しかし、ろうベースの盲ろう者にとって点字はハードルが高く、ことにブレイルセンスの操作となるとアルファベット点字を使わなければならず、そこが指導の難しさである。ブレイルセンスの指導にあった3名の講師は、アルファベット点字を日本語点字に置き換えて指導するなどの工夫をしていたことがわかる。  この事業で使用したブレイルセンスは、ブレイルセンスプラス(以下、プラス)とブレイルセンスオンハンド(以下、オンハンド)の2機種であったが、2名はプラスを、1名はオンハンドを希望した。点字表示部の点字マス数が、プラスは32マス、オンハンドは18マスで、オンハンドの方が小型で持ち運びには便利だが、マス数が少ないことからスクロールボタンを多く押さなくてはならず、それが情報機器に慣れていない盲ろう者には使いづらい面がある。一方プラスはスクロールなどの問題は軽減されるものの本体がオンハンドに比べて大きく、点字キーに充当する6個のキーと他のキーを同時に押す操作(手指を広げて押す操作)が必要で、小柄な女性の手には合わないという面がある。今回、指導にあたって2機種を用意し、実際に盲ろう者に触ってもらえたことは大きな意味があるだろう。  指導内容は、1名はメール機能を重点的に行い、2名がメール機能とRSSリーダーやクイックブラウザを利用したインターネットを学習した。点字で表示される文字列のみで情報を立体的に把握しなければならず、指導のペースは全体的にゆっくりである。地域の指導者にとっては、盲ろう者が今どのような操作をしているかが小さな液晶ディスプレイか音声にしか頼れず、また、広く普及しているパソコンとは違い、滅多に触れる機会のないブレイルセンスの指導ということで、指導者の努力と苦労が報告書を通じて伝わってきた。受講者の視点では、アンケートによると「講習時間が3か月は短い」と感じたのが3名と全員で「6か月はほしい」「もっといろいろな機能を覚えたい」という意見が強く、講習期間がパソコン、ブレイルセンスとも一律3か月というのは妥当なのかどうか今一度検討が必要だろう。 3.全体を通して  この個別訪問指導を通じて注目したいのは地元で行われた指導、サポートである。受講盲ろう者が操作を忘れないよう足繁く訪問、練習を行ったり、操作手順書を作成したり、機器購入のサポートをしたりと、講師ではなかなか及ばないきめ細やかなサポートが行われた。一つ一つゆっくりと学習する盲ろう者を見守り、1通のメールが送信できたことを共に喜ぶ姿勢と、その盲ろう者の喜びが、盲ろう者だけでなく指導者のモチベーションにも繋がっている様子が伝わってきた。その他、講習会の雰囲気作りを担ったりと地域の指導者の貢献するところは大きい。  ただ、パソコンにしてもブレイルセンスにしても、地域の指導者が十分に検証できるだけの環境と時間が許されていないのが現実である。講師不在の指導では、機器のトラブルや盲ろう者のニーズに十分に答えらなかったという場面がいくつかあったようだ。講習会以外でも講師と地域の指導者は連絡を取り合ってはいたが、今後は、地域の指導者が機器やソフトウェアをじっくり検証できる環境を用意することで、今まで以上の指導が期待できるのではないかと思っている。  パソコンや情報機器の利用がその盲ろう者の生活向上に繋がるためには、地道な指導とサポートが必要で、それを実現するには地域の指導者の存在は欠かせない。パソコンの指導経験者はどうしても都市部に集中しがちであるが、この事業は地方へ指導技術を届ける役割をも担っている。  今後は、講師間の情報共有をより強化し、指導者への申し送り書の整備等、さらなる講習会の効率化を図る必要があるだろう。これらの課題を念頭に、盲ろう者の社会参加の一役となるよう、本事業にはより一層期待するものである。 第4部 まとめ  今年度の盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業は、「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」と「コミュニケーション訓練個別訪問指導」の二つを柱とし行った。「盲ろう者向けパソコン指導者養成研修会」では11名の受講者が修了し、「コミュニケーション訓練個別訪問指導」では9名の盲ろう者を対象にパソコンや点字情報機器を指導、その9名を支える各地域の指導者に指導法やサポートを引き継ぐことができた。  この事業を通して感じることは、パソコン等情報機器の活用は盲ろう者の生活向上や社会参加に必要不可欠であることは明確であるが、その実現のために、安定的な指導ができる環境の整備が必要であるということである。  盲ろう者向けパソコン指導者研修会は五日間行われ、その間、受講者には盲ろう者が利用できるソフトウェアや機器を体験してもらったが、紹介できる機能はほんの一部に過ぎない。盲ろう者一人一人に合わせた指導を行うためには、指導者が実際に機器に触れ、各設定や操作性を検証し、そのつど指導計画を立てることが必要である。しかし、研修会が終わり地域に帰ってしまえば、それらの機器に触れる機会はほとんどないというのが現状である。  「コミュニケーション訓練個別訪問指導」は、対象となる盲ろう者が特定されていることから指導のポイントを絞りやすい。それでも、地域の指導者には、講師が講習会で示したこと以外の機能を検証する環境は許されておらず、総合的な指導が実現しにくい。  今後は、研修会のより効率的な運営や、講師の指導力の研鑚による指導者の養成はもちろんのこと、十分に検証できるデモ機の提供等、各地域での指導の環境整備が課題であろう。  この事業にまだ結びついていない盲ろう者は大勢おり、全国の盲ろう者がパソコン等情報機器を安定的に学習できる機会を、今まで以上に増やさなければならないと強く感じている。 (奥付) 書名:平成24年度盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業報告書 発行:平成25年3月15日 発行・編集: 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 03-5287-1140  FAX 03-5287-1141