平成23年度版 盲ろう者向けパソコン指導マニュアル 〜Windows 7編〜 平成24年3月 〜日本のヘレン・ケラーを支援する会〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 はじめに 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 理事長  阪 田 雅 裕  この『盲ろう者向けパソコン指導マニュアル』は、平成20年3月に「Windows XP」対応版として初版が発行され、翌21年3月には「Windows Vista」上での利用環境を加筆した改訂版が出されています。そして今回が3回目の改訂となるわけですが、今回の改訂の主眼は、言うまでもなく「Windows 7」への対応を加味した内容にすることでした。このように、このマニュアルは、パソコン環境の変化に合わせて、その都度、改訂を行わなければならない運命にあります。幸い、独立行政法人福祉医療機構のご理解をいただき、ここまで改訂作業を進めてくることができました。関係の皆様に有効にご活用いただければ幸いです。  平成18年(2006年)の国連総会において、障害者権利条約が採択されて以来、障害者の自主・自立ということが強く叫ばれるようになってきています。盲ろう者が主体性を発揮して、自主的に社会参加を果たしていくためには、自らの判断の根拠となる、より多くの正確な情報を得ることが必要です。そのためには、盲ろう者がいろいろな情報収集手段をもつことが必要になってきます。通訳・介助員を通じて得る情報も大切ですが、パソコンを使って直接情報を手に入れることができれば、盲ろう者はよりリアルな世界に身を置くことができ、自らの判断力を磨いていくことに役立つでしょう。  しかしながら、盲ろう者のために開発されたパソコンのソフトやハードはほとんどないのが現状であり、盲ろう者が単独でパソコン操作を取得することは極めて難しいのが現状です。また、近年公立の図書館や視覚障害者団体等で、盲ろう者向けのパソコン指導を実施しているところもありますが、必ずしも盲ろう者向けの適切な通訳・介助を伴った指導になっていないなど、問題点も多くあります。  このマニュアルは、そうした点を考慮して、盲ろう者にパソコンを教える際の指導者の手引き書として編纂されています。盲ろう者にパソコン指導をする際には、できるだけこのマニュアルに目を通して、盲ろう者の特性を踏まえた上で行っていただくようお願いしたいと思います。 目次 はじめに 第1章 盲ろう者とその概要 1 盲ろう者とは 2 盲ろう障害の特性 3 盲ろう者のコミュニケーション手段 4 盲ろう者の不便 第2章 パソコン指導における心構え 1 盲ろう者の電子支援技術に対するニーズ 2 盲ろう者のパソコン・点字情報端末利用の現状 3 盲ろう者向けパソコン等指導者の必要性 4 盲ろう者向けパソコン等指導者に求められる要件 5 盲ろう者のパソコン等指導の注意点 6 点字入力の有効性 7 その他心構え 第3章 点字ユーザーに対する指導法 第1節 点字ユーザーとは 1 点字ユーザーの特徴 1.出力 2.入力 3.ろうベースの盲ろう者のパソコン環境 2 点字の習熟度の確認 3 指導上の配慮事項 第2節 機器とソフトウェアを揃える 1 パソコン 1.デスクトップ型かノート型か 2.64bitと32bitについて 3.DVDドライブ 4.キーボード 5.キーボードを使いやすくするための工夫 6.マウスの取扱い 2 点字ディスプレイ 1.主な点字ディスプレイ 2.点字ディスプレイを選ぶ 3.接続の準備 3 スクリーンリーダー 1.FocusTalk for Braille 2.PC-Talker+BrailleWorks 3.その他 4 アプリケーション 1.VoicePopper 2.サーチエイド 3.MyMail 4.MyNews 5.MyBook 6.その他のMyシリーズについて 7.ALTAIR for Windows 第3節 機器とソフトウェアの設定、キー操作 1 Windowsの基本設定 1.Windowsの設定 2.スタートメニューのカスタマイズ 3.基本的なキー操作 2 スクリーンリーダーと点字ディスプレイ、他 1.FocusTalk for Braille 2.PC-Talker+BrailleWorks 3 アプリケーションの設定と注意事項 1.VoicePopper 2.サーチエイド 3.MyMail 4.MyNews 5.MyBook 6.ALTAIR for Windows 第4節 指導の実際 1 機器本体の各部名称とキー配置 2 Windowsの基本操作 3 アプリケーション 1.VoicePopper 2.サーチエイド 3.MyMail 4.MyNews 5.MyBook 6.ALTAIR for Windows 第4章 画面ユーザーに対する指導法 第1節 画面ユーザーとは 1 画面ユーザーの範囲 2 「見えにくさ」の理解 3 指導上の留意点 第2節 指導の実際 1 Windowsにおける設定 1.配色の設定 2.文字サイズの設定 3.ウィンドウ境界線幅の設定 4.マウスポインターの設定 2 画面の視認性向上に役立つソフト 1.拡大鏡 2.老眼マウス 3.でかポインタ 4.あんだーまうす君 5.tarzanMouse 6.ZoomText Magnifier 3 各アプリケーションにおける視認性向上のための設定 1.VoicePopper 2.MyMail 3.Internet Explorer 4.Firefox 5.Microsoft Word 6.Microsoft Excel 第5章 ブレイルセンス 1 ブレイルセンスの紹介 1.概要 2.対象となる盲ろう者 3.主な機能 4.ブレイルセンスプラスとブレイルセンスオンハンドの主な違い 5.主な仕様と価格 2 ブレイルセンスの基本操作 1.キーと電源スイッチについて 2.基本操作 3 ブレイルセンスの設定 1.オプション設定 2.ネットワークの設定 3.電子メールのアカウント設定 4.スタートメニューのカスタマイズ 4 ブレイルセンスの指導法 1.ニーズに合ったプログラムの選択 2.指導上の留意点 3.トラブルへの対処法 5 盲ろう者向けマニュアル(ブレイルセンスプラス) 1.基本操作 2.電子メール 3.乗り換え検索 4.簡単スケジューラ 第6章 インターネット環境の構築 1 盲ろう者を取り巻くインターネット環境の現況 2 固定環境におけるインターネット構築 3 モバイル環境におけるインターネット構築 第7章 アフターケア 1 アフターケアとは 2 パソコンサポートのネットワーク 第8章 ブレイルメモの紹介 1 ブレイルメモの概要 2 ブレイルメモの仕組み 3 ブレイルメモの種類 4 盲ろう者に利用できる機能 5 主な仕様 6 発売元・問い合わせ先 あとがき 第1章 盲ろう者とその概要 1 盲ろう者とは  盲ろう者とは、視覚と聴覚の両方に障害を併せもつ人のことをいいます。日本には、現在約22,000人の盲ろう者がいると推計されています。しかし、全国盲ろう者協会や各地の盲ろう者友の会が把握している盲ろう者数はわずか4%程度に留まっており、その生活実態はほとんど分かっていないというのが実情です。  視覚と聴覚に障害が重なるということは、それだけ遭遇する困難やニーズが多様で複雑になります。従って、盲ろうという障害は、単に「盲」+「ろう」ではなく、「盲」×「ろう」の障害と言われています。つまり、視覚障害者や聴覚障害者の困難が倍になるのではなく、二つの障害が重なることで、盲ろう者独自の困難やニーズが発生しているのです。そのため、単独の視覚障害者・聴覚障害者と比較して、その困難は10倍とも言われます。 2 盲ろう障害の特性  では具体的に、盲ろう者の独自性・多様性とはどのようなものなのでしょうか。  まず、障害の程度においては、@視覚と聴覚それぞれが全く活用できない 「全盲ろう者」、A残存聴力の活用は可能だが視力の活用ができない「盲難聴者」、B反対に残存視力の活用は可能であるが聴力の活用ができない「弱視ろう者」、C視力・聴力共に残存する「弱視難聴者」と、およそ4種類に分類して考えられています。  また、障害の程度に加え、その受障時期や順序によっても、a)生後早期にあるいは生まれながらにして盲ろうという障害を負う「先天性の盲ろう者」、b)聴覚障害であった人が失明して盲ろうとなる「ろうベースの盲ろう者」、c)視覚障害者であった人が失聴して盲ろうとなる「盲ベースの盲ろう者」、d)健常であった人が視力・聴力を失って盲ろうとなる「中途盲ろう者」等の違いがあると考えられています。  こうした条件・背景が複雑に絡み合っているということが、盲ろうという障害の特徴であり、その結果、盲ろう障害が故の様々な困難やニーズが発生しているのです。 −−−−−− <障害程度の図> ・全盲ろう=見えない+聞こえない ・弱視ろう=見えにくい+聞こえない ・盲難聴=見えない+聞こえにくい ・弱視難聴=見えにくい+聞こえにくい −−−−−− −−−−−− <受障時期の違いの図> ・視覚障害の受障時期(先天的〜乳幼児期)+聴覚障害の受障時期が(先天的〜乳幼児期)の方=先天的盲ろう者(盲ろう児) ・視覚障害の受障時期(先天的〜乳幼児期)+聴覚障害の受障時期が(〜成年または〜老年期)の方=盲ベース盲ろう ・視覚障害の受障時期(〜成年または〜老年期)+聴覚障害の受障時期が(先天的〜乳幼児期)の方=ろうベース盲ろう ・視覚障害の受障時期(〜成年または〜老年期)+聴覚障害の受障時期が(〜成年または〜老年期)の方=成人期盲ろう −−−−−− 3 盲ろう者のコミュニケーション手段  このような特性をもつ盲ろう者は、コミュニケーション方法についても多様です。現在、主に次のようなコミュニケーション手段が使われています。 (1) 指点字 盲ろう者の両手の人差し指、中指、薬指を点字タイプライターのキーに見立て、点字の仕組みを利用して、軽くタップして言葉を伝える方法。 (2) 触手話(触読手話)および接近手話 盲ろう者の手の中あるいは見えやすい位置で手話を表し、触読または視力でその手話を読み取る方法。 (3) 指文字 日本語の50音あるいはアルファベットを指の形で表現したものを、盲ろう者の手のひらに綴る方法。 (4) 手書き文字 盲ろう者の手のひらに文字を書く方法。 (5) 音声 盲ろう者の耳元あるいは補聴器のマイクに向かって盲ろう者の聞きやすい音量で話す方法。  盲ろう者のコミュニケーション方法が多様なのは、障害の程度や受障時期に起因しています。例えば、ろうベースの盲ろう者は、手話を主たるコミュニケーション方法として利用するのに対して、盲ベースの盲ろう者は、点字や音声を主たるコミュニケーション方法として利用します。従って、同じ盲ろうという障害をもつ当事者同士でも、異なるコミュニケーション方法を利用することから、直接話をすることができない場合もあります。 4 盲ろう者の不便  視覚と聴覚両方の感覚機能が活用できない盲ろう者は、それだけ大きな制約を受けて生活を強いられているということです。盲ろう者が抱える不便は主に、1)移動の不便、2)他者とのコミュニケーションの不便、3)情報入手の不便の三つに集約されると考えられています。この三つに不便を抱えているということは、盲ろう者が日常生活の中で自力で行える活動が極めて少ないということを意味しています。こうした不便を解消・軽減するために、通訳・介助員と呼ばれる支援者が各地で活動しています。これは、都道府県が提供する「盲ろう者向け通訳・介助員派遣制度」というサービスにより実施される人的支援です。この制度の充実により、盲ろう者の社会参加の機会は格段に広がりました。しかしながら、通訳・介助員を24時間365日確保することは、人材面・財政面から見ても現実的に難しく、またプライバシー保護や緊急時の対応等、現状の派遣制度では解決できていない課題も存在しています。そのため、現在の通訳・介助等の人的支援に加えて、独力で他者とコミュニケーションをとったり、遠隔地への連絡を可能とするための手段の確保が、盲ろう当事者やその関係者から強く求められています。 ●盲ろう者の三つの不便 (1) 移動の不便 (2) 他者とのコミュニケーションの不便 (3) 情報入手の不便 第2章 パソコン指導における心構え 1 盲ろう者の電子支援技術に対するニーズ  通訳・介助員派遣制度に加えて、盲ろう者の不便を解消・軽減する方法として期待されているのが、パソコンならびに点字情報端末といった電子支援技術の活用です。視覚と聴覚の両方に障害を併せもつ盲ろう者にとって、テレビ、ラジオ、新聞、電話、ファックスといった、視聴覚機能を利用する情報処理手段は、残存する視聴覚機能の活用が可能な一部の盲ろう者を除けば、ほとんど利用することができません。それに対して、様々な設定や環境に対応できるパソコンや点字情報端末は、多くの盲ろう者にとって大変有効な手段と言えます。従って、盲ろう当事者やその関係者から、これら電子支援技術に大きな期待が寄せられるのは必然的なことなのです。 2 盲ろう者のパソコン・点字情報端末利用の現状  このように、大きな期待が高まっている電子支援技術ですが、実は盲ろう者向けに開発されたハードウェア・ソフトウェアはほとんど存在していません。現在盲ろう者が利用可能なパソコンシステムや点字情報端末は、そのほとんどが視覚障害者向けに開発されたものです。盲ろう者はその中の一部の機能を利用するに過ぎず、その限定された機能の中で、情報へのアクセスを確保しているというのが実情です。  盲ろう者向け機器開発も、10年ほど前より企業や研究機関を中心に複数取り組まれてきました。しかしながら、その中から現実的な盲ろう者向け機器として製品に結び付いたものは皆無と言わざるを得ません。その理由として、盲ろうという障害のニーズが多様であること、また盲ろう者の実態が把握できておらず、具体的なユーザーの数が想定できないこと等が指摘されています。従って、盲ろう者向けの製品が登場するには、乗り越えなければならない課題が山積しており、まだ相当の時間が必要であると考えられます。  しかし、その製品化を待っていては、盲ろう者の今の生活を保障することはできません。従って、他の障害者向けのシステムでも、またその機能が限定的であっても、利用できるものは積極的に利用した方が、盲ろう者には有益です。そうした事情から、特に視覚障害者向けシステムに搭載される、点字や拡大機能といった、触覚・視覚インターフェースを盲ろう者は利用しているのです。 3 盲ろう者向けパソコン等指導者の必要性  視覚障害者向けに開発されたシステムは、当然ながら見えないことのみを対象にしたインターフェースであるため、盲ろう者にとっては決して使いやすいものではありません。視覚障害者向けシステムの特徴としては、音声・点字・画面拡大のそれぞれの機能が併用されていますが、とりわけ近年は音声に重きが置かれる傾向にあり、反対に点字の機能は限定的になってきています。  そのため、盲ろう者がそれらのシステムを利用するためには、様々な工夫や努力と、場合によっては特殊な設定が必要になります。従って、システム自体を充分理解しているパワーユーザーの盲ろう者でなければ、これらのシステムを自力で使いこなせるようにはなりません。また、システムを充分に理解しているユーザーであっても、点字環境のみでは初期設定等ができないシステムも増加してきていることから、特に全盲ろうのユーザーにとって独力での導入が極めて難しい状況にあります。  こうした状況下で、盲ろう者がパソコンや点字情報端末を利用できるようになるためには、これらシステムおよび点字の仕組みの知識があり、かつ盲ろう者のコミュニケーション特性を理解している指導者が必須となります。しかし、そうした指導者が極めて不足しているのが実情であり、それが盲ろう者の情報アクセスを阻む原因の一つとなっています。 ●盲ろう者の利用環境 (1) 弱視ろう・弱視難聴 → 拡大文字により画面を利用(画面拡大ソフト) (2) 盲難聴・全盲ろう → 点字利用(スクリーンリーダー・点字ディスプレイ) 4 盲ろう者向けパソコン等指導者に求められる要件  現在、盲ろう者向けパソコン等指導者として活動しているのは、そのほとんどが視覚障害をもつ通訳・介助員あるいはその周辺にいる人です。これは、前述した事情からも分かるように、視覚障害者向けシステムの当事者ユーザーである視覚障害者の中に、盲ろう者向け指導者としての要件を満たしている人が多いからに他なりません。では、盲ろう者向けパソコン等指導者の要件とはどのようなものなのでしょうか。  一つめは、基本的な視覚障害者向けシステムの仕組みを把握していることです。視覚障害者向けシステムといっても、基本は市販のパソコンを利用し、それに画面拡大ソフトウェア・スクリーンリーダー(画面音声化・点字化ソフトウェア)・点字ディスプレイ等を導入してシステムを構成しています。その構成を基本に、盲ろう者に利用できる機能を整理し、提供することが求められます。  二つめは、特に触覚を利用する盲ろう者に対して必要なことですが、最低限の点字の仕組みを知っていることです。残念ながら、全盲ろう者が触覚でパソコンを利用するためには、現段階では点字を利用するしか方法がありません。中途で失明し、日常的に手話を利用しているろうベースの盲ろう者であっても、点字を覚えてパソコンを利用しています。従って、全盲ろう者にパソコンを指導するためには、点字の知識が必要なのです。  しかし、この二つ以前に、盲ろう者のコミュニケーション手段を獲得していること、あるいは直接コミュニケーションがとれなくとも、そうした盲ろう独自のコミュニケーション特性を理解していることが必須条件と言えます。視覚障害者向けシステムの知識をもつ人はそれなりにいるにも関わらず、盲ろう者向けの指導者の数が増えないのは、このコミュニケーションの問題が大きいためです。 ●盲ろう者向けパソコン等指導者の要件 (1) 基本的な視覚障害者向けシステムの知識があること。 (2) 基礎的な点字の仕組みを知っていること。 (3) 盲ろう者のコミュニケーション方法を習得している、あるいはその特性を理解して いること。 5 盲ろう者のパソコン等指導の注意点  実際に、盲ろう者を前に、パソコン講習を始めてみると分かることですが、盲ろう者にそれら操作手順を教えるときには、盲ろうという障害があるが故の独自な注意点がいくつか存在します。  その代表的なものが、盲ろう者が操作しているときは説明ができない、反対に盲ろう者に説明しているときは盲ろう者は操作ができないということです。これは、音声をコミュニケーション手段とする盲難聴者を除けば、ほとんどの盲ろう者が手を使うコミュニケーション手段を利用しているということです。つまり、説明するときには手が塞がるため、操作ができず、操作しているときはその逆のことが起きるわけです。従って、盲ろう者に操作手順を説明するときは、一度にたくさんの手順を説明しても、なかなか覚えられなかったり、また操作していて誤操作が起きた場合もなかなか修正しにくいという実情があります。よって、まずは覚えられる範囲の1・2手順を説明し、その手順を実行して、さらにまた1・2手順を説明するという方法が極めて有効です。この方法により、じっくり手順を把握することができ、また自分の行った操作を一つ一つ確認する余裕が生まれるため、少し時間がかかり根気は必要ですが、最終的には盲ろう者が操作手順を獲得する現実的な手段と言えます。  もう一つ重要なことは、「はい」「いいえ」「ストップ」「もう一度」等のサインを決めておき、操作時の盲ろう者に伝えるということです。先に、「操作中の盲ろう者に説明はできない」と述べましたが、操作中に何も伝えないというのも、盲ろう者にとってみれば、これで正しいのであろうか、説明どおり手順が実行できているのであろうか、という不安が常につきまといます。よって、例えば、手順が合っていれば「はい」の意味で背中に○を書く、反対に手順が間違っていたら「いいえ」の意味で背中に×を書く、手順が間違っていたり、あるいはシステムの状態がおかしくなったときは、「ストップ」の意味で肩や腕を2度たたいて操作を中止するといったサインをお互いにしっかりと決めておき、講習を行うことが大切です。これにより、余分な説明の回数が減り、盲ろう者の疲労を軽減することが可能です。さらに、そうしたコミュニケーションをとりつづけることで、お互いの信頼関係も構築することができます。 ●盲ろう者のパソコン指導時の注意点 (1) 説明をしているときは操作はできない、操作しているときは説明ができない。 (2) 「1・2手順を説明 → 実際に操作」という方法を繰り返す。 (3) サインを決める。(はい、いいえ、ストップ等) 6 点字入力の有効性  後述するように、視覚障害者向けパソコン等システムの中に、「点字入力」あるいは「6点入力」と呼ばれる入力方法があります。これは、パソコンのキーの内、主に[ F ][ D ][ S ][ J ][ K ][ L ]の6個のキーを用い、そのキーを点字の仕組みに従って同時入力することで、日本語をはじめとした文字を入力する方法です。近年では、視覚障害者の中にも一般的な入力方法であるローマ字入力が普及し、またその入力を充分フィードバックできる音声合成システムが確立されたため、かなり限定的な機能になってきましたが、それでも根強く6点入力を支持するユーザーも存在しています。  元々、初期の視覚障害者ワープロシステムというものは、音声合成技術や点字ディスプレイが発達していなかったことから、自分の入力した文字が自分では確認できないものでした。そのため、確実に文字を入力するために、視覚障害者が利用している点字の仕組みを、入力方法に取り入れたと考えられています。  その「確実な入力方法」が、文字入力のフィードバックに点字ディスプレイを利用する盲ろう者には非常に便利なのです。つまり、点字ディスプレイ利用の盲ろう者は、入力する際も、入力された文字を確認する際も、手を使うことから、入力しているその瞬間はその文字を確認することができません。また、キーボードで入力した後、点字ディスプレイを確認するという操作を繰り返すことから、キーボードと点字ディスプレイの間を、手が常に往復するという作業を強いられます。これは大変不便なことで、画面を見ながら文字入力が可能な一般ユーザーとは比較にならないほどの時間と労力を要します。その労力を少しでも軽減する方法として、手を動かす範囲の広いローマ字入力よりも、限定的なキーを入力する点字入力が、点字ディスプレイ利用の盲ろう者には有効なのです。つまり、手を動かす距離が短くなればなるほど、点字環境における効率的なパソコン利用が可能なのです。 7 その他心構え  パソコンや点字情報端末は、様々な可能性を秘めています。そのことは、多くの盲ろう者にも認識されており、その期待も膨らんでいます。しかし、パソコン等指導で重要なことは、決して欲張らないということです。もちろん、盲ろう者の希望を聞くことは必要です。ただし、その希望をしっかり整理して、それを達成するにはどのようなことを覚えなければならないのか、またどのくらいのコストがかかるのか、丁寧に説明する必要があります。この説明をおろそかにすると、後々誤解が生じたり、場合によっては信頼関係を失うことさえあります。そうなると、ほとんどの場合不利益を被るのは盲ろう者です。そうした事態は絶対に避けなければなりません。その意味で、できることを整理し、確実なことから取り組むということを、盲ろう者と共有しながら進めることが大切です。  また盲ろう者のパソコン等指導ならびにサポートは、非常に根気のいる作業と言えます。とかく、導入段階では、かなりの時間を要するにも関わらず、なかなか手順が上手く実行できなかったり、今やっている手順の意味が分からなかったりして、達成感が得られないこともよくあります。特に、点字ディスプレイを利用する盲ろう者の中でも、中途失明により、点字を覚えたばかりの盲ろう者に対する指導にその傾向が見られます。その場合、挫折しそうになるのは意外と指導者の側です。盲ろう当事者は、何とか情報にアクセスする手段を確保したいという強い思いから、相当の困難にも立ち向かう覚悟をして取り組んでいる場合が多いのです。よって、そうした盲ろう者の覚悟を、指導者側がどれだけ受け止め、また向き合うことができるかが、盲ろう者がパソコンを習得できる一つのポイントになるものと考えます。 第3章 点字ユーザーに対する指導法 第1節 点字ユーザーとは  主に点字という手段でパソコン操作を行う盲ろう者のことを、ここでは「点字ユーザー」と呼びます。  全盲ろう者の場合、操作手段は点字のみに限られるでしょうが、弱視ろう者が補助的に画面表示を利用したり、盲難聴者が音声を利用する場合も考えられます。 1 点字ユーザーの特徴  点字ユーザーは視覚的な情報に頼ることができないため、画面の表示を見ることができないのはもちろん、キーボードを目で見て打つこともできません。  そのため、画面の情報(出力)の読み取り、キーボード入力(入力)共に非常に困難であり、それらの困難さをいかに解消できるかが、点字ユーザーのパソコン環境を考える際の大きなポイントになります。 1.出力 (1) 点字ディスプレイ  盲ろう者・視覚障害者用に開発されている、スクリーンリーダーやアプリケーションを使うと、画面の表示内容を点字に変換し、パソコンにUSBなどで接続した点字ディスプレイ(ピンディスプレイ)上に表示させることができます。  点字ディスプレイ上の点字は触読しなければなりませんから、点字ディスプレイの利用には、点字を触読できることが前提となります。 (2) 音声と点字ディスプレイの併用  スクリーンリーダーは、視覚障害者を主な利用対象者として開発されているので、画面の情報を、点字表示と共に合成音声で読み上げることができます。  情報を伝える際、音声の方が点字より高速な場合が多く、音声でのサポートがあれば、触読に慣れていない人の負担を軽減できることもあります。合成音声を聞き取るのに充分な聴力があれば、健聴の視覚障害者とほぼ同様の条件でパソコンを利用できる場合もあります。  しかし、何種類かある声質を変えたり、声の高さ・速さなどを調節しても、スピーカーを通して流される合成音声は、肉声に比べて非常に聞き取りにくいものです。日常会話では不自由なく音声が聞き取れる程度の難聴の盲ろう者であっても、点字ディスプレイを利用すべき場合も少なくありません。  点字ディスプレイは触覚的に情報を伝えるので、聞き間違いの起こりやすい音声より、情報を正しく伝えられます。 (3) 画面と点字ディスプレイの併用  視力がいくらか残っている盲ろう者の場合、画面を調整して見やすくすることで、細かい所までは確認できなくても、画面からのある程度の情報と点字ディスプレイからの情報を併用することで、パソコンをより確実に、場合によってはスピーディーに操作できるようになります。(画面の調整法については、第4章を参照) 2.入力  キーボードからの入力は、キートップに書かれている文字の読み取りが困難なので、手の感覚のみでキーを選び、打たなければなりません。 (1) タッチタイピング  手と視力に障害のないユーザーにも、キーボードを見ないで入力ができる方法として、タッチタイピング(ブラインドタッチ)の方式が広く使われています。これを使えば、指先の感覚だけでのキー入力が可能です。  アプリケーションによっては、ショートカットキーによる操作などが、6点入力だけでは扱いにくいものもありますので、将来パソコンをより幅広く使いこなすために、フルキー入力が必要となる場面もあるでしょう。フルキー入力の使用が予想される盲ろう者には、当初からフルキー入力を指導するという場合も考えられます。  しかし、「フルキー・ローマ字入力」の場合、26個のアルファベットキーの配置を覚え、ローマ字の仕組みを理解しなければなりません。「フルキー・かな入力」の場合は、かなをそのままワンタッチで打つことができますが、濁点・半濁点等を含め、50を超えるキーの配置を覚える必要があります。多数のキーに戸惑いを覚える盲ろう者も少なくありません。  これらのキーを正確に打てるようになるためには、指の動かし方のトレーニングが必要となります。初心者に対しては、点字入力から導入することを強くお薦めします。 (2) 点字入力  パソコンのキーボードを点字タイプライターに見立てて、6個のキーだけで文字入力ができる点字入力は、特に初心者にはよく利用されます。  点字ユーザーは、まだ触読は得意でなくても既に点字の形はよく覚えている場合が多いので、導入もスムーズです。  また、点字入力にはいくつかの方式がありますので、盲ろう者と相談して決める必要があります。 ●点字入力の指遣い  2種類の方式があります。いずれも点字タイプライターで使われている方式で、点字タイプライターの名前が由来となっています。 ≪パーキンス式≫ 1の点 左人差し指 F 2の点 左中指 D 3の点 左薬指 S 4の点 右人差し指 J 5の点 右中指 K 6の点 右薬指 L ≪ライト(カニタイプ)式≫ 1の点 右薬指 O 2の点 右中指 K 3の点 右人差し指 M 4の点 左薬指 E 5の点 左中指 F 6の点 左人差し指 V ●点漢字による入力について  通常は「かな」しか使われていない点字ですが、部首や読みといった漢字の要素を点字で表すことで、漢字も表現できます。上側に2点を追加した8点を使う「漢点字」と、6点だけで表す「6点漢字」の二つの方式があります。  点漢字を覚えていれば、かな漢字変換でその都度候補から選び出すことなく、ダイレクトに漢字を入力することができます。点漢字を点字ディスプレイに表示させれば、文字の説明を表示させなくても、どの漢字が用いられているか、すぐに分かります。点字に習熟した人の中のごく一部でしか使われていませんが、このようにとても便利なので、ぜひ使いたい!という盲ろう者もいます。 (3) その他  マウスの利用には視覚を用いることが前提となりますので、マウスが使えない点字ユーザーは、マウスと同様の操作をキーボードで代替しなければなりません。キーボード用に割り当てられている標準的な操作やショートカットキー(ホットキー)を覚え、駆使することになります。点字入力を使用すれば文字入力用のキーの数は減らせますが、そのような操作に必要となる[ウィンドウズ][Tab][Alt][Shift][Ctrl][ファンクション]といった特殊キーの配置は覚えなければなりません。 3.ろうベースの盲ろう者のパソコン環境  このように、点字の習得の有無が、パソコン利用に大きく関わっています。  子どもの時期から視覚障害をもつ盲ろう者(盲ベースの盲ろう者)の場合、多くの人が点字を習得しているでしょう。一方、早い時期から聴覚障害をもち、その後視覚障害になった盲ろう者(ろうベースの盲ろう者)は、点字を習得していない場合もあり、また、点字の仕組みは理解していても触読はできないといったように、習熟度に幅があります。  ろうベースの盲ろう者の場合、さらに、日本語の問題もあります。手話を母語としていますので、日本語によるパソコン操作(パソコン用語の理解、文書の読解・作成など)を苦手とする人は少なくありません。パソコン操作の学習に加え、「点字」と「日本語」の二つのハードルを抱えることになります。  点字については、パソコン指導の前の学習が必要です。日本語については、完全な習得に非常に時間がかかるばかりでなく、パソコンの指導に入る前から盲ろう者に多大な負担をかけることになってしまいます。より簡単な操作、難しいパソコン用語などに出会わなくても操作ができる環境を整えることが大切です。 2 点字の習熟度の確認  盲ろう者がどの程度点字を習得しているかを確認します。 ●チェック項目 (1) 点字歴  点字を学んだことがあるかどうか?  いつ点字を学んだのか?  独学か、点字教室か、生活訓練の中で学んだのか?  読書など、日常生活の中でどのくらい点字を使っているか? (2) かな点字とアルファベットと記号  かな、数字、アルファベットなど、どこまで勉強したか?  かな、数字、アルファベットをどこまで読むことができるか? (3) 触読の速さ   触読の速さを確認することでパソコン環境の難易度の参考になります。  最低限、かな点字が触読できるようになってからパソコン講習に入りましょう。 3 指導上の配慮事項  盲ろう者のパソコン指導は時間をかけゆっくり進みます。効率良く指導できるよう、また盲ろう者にあまり負担をかけないよう、指導側の配慮や盲ろう者とのルール作りが必要です。 (1) 講習中のサインを決めておく  盲ろう者への指導ではコミュニケーションのために手を使うことが多いため、操作中は説明ができず、こちらが説明している間は操作ができない、という問題があります。そこで、講習をスムーズに進めるためのサイン(合図)をあらかじめ決めておきましょう。 ●サインの例 a)操作中に問題があるときに、説明ができるように、「ストップ」の合図 → 1回たたく b)問題がないときや先に進めてよいといった「OK」の合図 → 背中に○を書く (2) 言葉の使い方にも注意  盲ろう者によって指導方法は異なります。盲ろう者の理解度に合わせて進めましょう。 a)盲ベースの盲ろう者には   音声言語の理解力を活かし、言葉による手順説明が有効。 b)ろうベースの盲ろう者には   画面構成が視覚的に描けるような空間的な説明が有効。 (3) 通訳・介助員へのサポート  講習中は、通訳・介助員を介さず講師と盲ろう者のマンツーマンで指導にあたることが理想的ですが、講師がコミュニケーション手段を充分に獲得できていない場合は、通訳・介助員を確保する必要があります。 (4) マニュアルの作成  指導した内容は、盲ろう者が自らの言葉で記録に残すことで、学習内容の定着が図られ、また復習のための最も良い手がかりにもなります。  しかし、盲ろう者にとって、講習の内容をその場で記録することが困難な場合もあります。書き残すためには日本語を駆使することが求められますので、それが苦手な人もいるでしょう。  その日に指導した内容や操作手順などを適宜マニュアル化して、提供することも有効です。 ●マニュアルの書き方  a)講習で説明した言葉で作成する。  b)指導した操作手順でマニュアル化する。  c)操作の途中に点字ディスプレイに通知されたメッセージを、一つ一つマニュアルに盛り込む。 第2節 機器とソフトウェアを揃える 1 パソコン  パソコンを初めて習う場合は、その盲ろう者にとってパソコンが本当に有用かどうかが分からないので、訓練施設などでパソコンの基礎操作を覚えるのが理想です。パソコンの利用に見通しがついたら、早めにご本人用のパソコンを購入し新しいパソコンに慣れてもらうのが良いでしょう。 1.デスクトップ型かノート型か  デスクトップ(据置)型のパソコンは低価格のものからあり、キーボードや画面を自由に選んだり付け替えたりすることができるので、盲ろう者がより使いやすいものを選ぶことができます。しかし、機器の移動がしにくいというデメリットもあります。  ノート型などの持ち運べるタイプのものは移動には便利で、トラブルが起きたときなどにも、機器を持っていってすぐに修理してもらえます。しかし、キーボードのキーが小さかったり、キーとキーの間が狭くて打ちにくい、画面が見にくい、内蔵スピーカーの音が聞きづらいといったことも起こり得ます。  ノートパソコンなどにも外付けで画面やキーボードは接続可能ですが、かなり使いづらい姿になります。 2.64bitと32bitについて  Windows 7搭載のパソコンには、64bitと32bitの2種類のパソコンがあります。現在は64bitが主流となっており、店頭でも、8割以上が64bitのパソコンです。  本章の「3スクリーンリーダー」で紹介している「PC-Talker」や「FocusTalk」は、基本的には64bitに対応していますが、一部のアプリケーションは対応しきれていません。点字ディスプレイを使用する場合、一部のパソコンとはうまく接続できない現象が報告されています。メーカー側は、最新のアプリケーションには適宜対応しているところです。もしどうしても心配な場合は、64bit・32bitの両方に対応したパソコンか32bitのパソコンを購入するようにしてください。  ただし、価格が若干高めになったり、機種が限定されたりします。   3.DVDドライブ  最近のパソコンは電源のオン/オフが触覚的には確認できないので、DVDなどのドライブを利用して電源のオン/オフを確認します。   ●触覚による電源の確認方法  電源が入っている状態でDVDドライブのトレイのスイッチを押すとトレイが出てくる。  電源が切れるとスイッチを押してもトレイは出てこない。  こうしたことから、DVDなどのドライブが内蔵されたものを購入できると安心です。 4.キーボード  点字入力での操作を想定している場合には、そのパソコンが点字入力可能かどうかも確認しておく必要があります。もし気に入った機器なのに点字入力ができないことが分かったら、別途点字入力が可能なキーボードを用意する必要も生じます。 (1) キーボードで直接確認  キーボードの中には、点字入力ができない機種があります。点字入力が可能かどうか(6個のキーの同時押しに対応できるか)は、以下のようにすると、電気店の店頭に並ぶ機器などでも簡単に確認できます。 ●キーボードの確認  メモ帳などのエディターソフトを開き、[ S ][ D ][ F ][ J ][ K ][ L ]の6個のキーを「同時に」押す。  画面に「fdsjkl」の文字がすべて表示されればOKです。(fdsjklの順番は問わない)  入力テストを3回行ったが3回とも6個のキーの反応が見られる。 → 点字入力できるキーボード  3回とも6個のキーの反応がない。 → 点字入力できないキーボード ※パーキンス式の場合です。ライト式の場合は押すキーが異なります。 (2) ホームページで調べる  点字入力が可能なキーボードについて調査したグループのホームページも参考になります。   パソコンサポート「ボイスネット」  【URL】http://www.voice-net.org/6tensupport/6ten.htm  いずれにしても、パソコンを選ぶときには、盲ろう者本人と店まで出かけ、できるだけ実際に機器を触ってもらってから購入することが大切です。 5.キーボードを使いやすくするための工夫 (1) キーにシールを貼る  主なキーに、印のための点を打ったタックペーパーや、分厚くて凹凸のはっきりしたシールなどを貼ることで、キーを探しやすくします。 ●シールを貼るキーの例  ・[ F ]と[ J ]  ・[Tab]  ・[Enter]  ・[Ctrl]  ・[Alt]  ・[ウィンドウズ] 等 (2) 使わないキーにガムテープなどを貼る  指の位置がなかなか安定しないような場合、使わないキーをガムテープで塞いだりすることで、操作が楽になります。キートップが外せるタイプのキーボードでは、プラスチック板や厚紙などで外した部分を塞ぐことができるので、より使いやすくきれいなキーボードにできます。 6.マウスの取扱い  点字ユーザーの盲ろう者がマウスを使うことはほとんどありません。マウスを使わないときは取り外しておきましょう。  ノートパソコンなどに搭載されているタッチパッドといったマウス代替用の機器類は、手がすぐに触れてしまう所にあるので、機能を停止しておきましょう。(停止方法はそれぞれの本体マニュアル等を参照してください)  機器にトラブルが起きたときなど、マウスを使わないと復旧しない場合も稀にありますので、マウスは本体の近くに置いておく方が安心です。 ※低い視力でもマウスを使いたいという場合の方法については、第4章を参照してください。 2 点字ディスプレイ 1.主な点字ディスプレイ  点字ディスプレイには優れた外国製のものもありますが、外国製の点字ディスプレイへの国内ソフトウェアの対応が遅れたこと、故障時のメンテナンス等の安心感から、ケージーエス株式会社(以下、KGS)製のブレイルテンダーやブレイルメモシリーズがよく使われています。  点字ディスプレイ上のキーは、点字表示の送りや戻しを行うだけでなく、タッチカーソルキーや方向キーを使ってカーソルを移動させたり、キーボード上の一部の特殊キーと同じ働きをさせることができたりします。点字を読んでいる手をわざわざキーボードへ移動せずに操作できるので大変便利です。点字入力キーが付いた機種もありますが、そのキーを使っての点字入力に対応しているスクリーンリーダーが今のところないのは、残念なことです。  パソコンと接続して使うだけのものもありますが、点字ディスプレイ単体で使用できる機能をもつものもあります。それらの機能については、ブレイルセンスシリーズは第5章、ブレイルメモシリーズは第8章で詳述します。  なお、各点字ディスプレイの価格は2012年2月現在のものです。 (1) ブレイルテンダー(BT46) KGS製 【インターフェース】シリアル、USB 【マス数】46 【特徴】USB接続の場合、パソコンからの給電のみで動作、点字入力キーを装備。 【外形寸法】400W×140D×24H[mm] 【重量】1.1kg  【価格】288,000円(非課税) (2) ブレイルメモ32(BM32) KGS製 【インターフェース】シリアル、USB、Bluetooth 【マス数】32 【特徴】単体で、点字の読み書きを行う点字電子手帳としても使用可能(内蔵メモリは6.5MB、USBメモリドライブも内蔵)。時計、カレンダー、計算機、チャット機能などが点字表示で利用できる。着脱型の充電池で16時間使用可。 【外形寸法】269W×129D×40H[mm] 【重量】1.0kg  【価格】357,000円(非課税) (3) ブレイルメモ24(BM24) KGS製 【インターフェース】シリアル、USB、Bluetooth 【マス数】24 【特徴】単体で、点字の読み書きを行う点字電子手帳としても使用可能(内蔵メモリは5MB)。時計、カレンダー、計算機、チャット機能などが点字表示で利用できる。内蔵型の充電池で20時間使用可。 【外形寸法】216W×164D×41H[mm] 【重量】1.0kg  【価格】250,000円(非課税) (4) ブレイルメモ16(BM16) KGS製 【インターフェース】シリアル 【マス数】16 【特徴】単体で、点字の読み書きを行う点字電子手帳としても使用可能(内蔵メモリは4MB)。時計、カレンダー、計算機、チャット機能などが点字表示で利用できる。内蔵型の充電池で30時間使用可。 【外形寸法】240W×160D×40H[mm] 【重量】1.0kg  【価格】176,000円(非課税) (5) ブレイルメモポケット(BMPK) KGS製 【インターフェース】USB(mini)、Bluetooth 【マス数】16 【特徴】USB接続の場合、パソコンからの給電のみで動作(AC電源と接続しての使用は不可)。単体で、点字の読み書きを行う点字電子手帳としても使用可能(内蔵メモリは3.5MB)。時計、カレンダー、計算機、チャット機能などが点字表示で利用できる。着脱型の充電池で8時間使用可。 【外形寸法】168W×80D×20H[mm] 【重量】300g  【価格】249,000円(非課税) (6) ブレイルメモ46(BM46)/ブレイルノート46X(BN46X) KGS製 【インターフェース】シリアル、USB、Bluetooth(BN46Xはシリアルのみ) 【マス数】46 【特徴】単体で、点字の読み書きを行う点字電子手帳としても使用可能(内蔵メモリは5MB)。時計、カレンダー、計算機、チャット機能などが点字表示で利用できる。着脱型の充電池で18時間(BN46Xは10時間)使用可。 【外形寸法】330W×160D×47H[mm] 【重量】2.0kg  【価格】販売終了 (7) ブレイルセンスプラス 韓国HIMS社製、有限会社エクストラ販売 【インターフェース】シリアル、USB、Bluetooth、有線・無線LAN、VGA等 【マス数】32 【特徴】パソコンの点字ディスプレイとしても使用できるが、Windowsベースの点字での入出力が可能なPDAである(日本語版はエクストラが開発)。様々なアプリケーションにより、時計やカレンダーの機能の他、メールの送受信、ウェブページの閲覧、文書(テキスト、点字)の読み書き等が可能。CF/SDカードドライブを内蔵し、USBメモリの使用も可。充電池は着脱型。 【外形寸法】250W×128D×39H[mm] 【重量】924g 【価格】580,000円(非課税・個人優待価格) (8) ブレイルセンスオンハンド 韓国HIMS社製、有限会社エクストラ販売 【インターフェース】シリアル、USB(mini)、Bluetooth、無線LAN等 【マス数】18 【特徴】パソコンの点字ディスプレイとしても使用できるが、Windowsベースの点字での入出力が可能なPDAである(日本語版はエクストラが開発)。様々なアプリケーションにより、時計やカレンダーの機能の他、メールの送受信、ウェブページの閲覧、文書(テキスト、点字)の読み書き等が可能。SDカードドライブを内蔵し、USBメモリの使用も可。充電池は着脱型。 【外形寸法】172W×90D×27H[mm] 【重量】425g  【価格】383,500円(非課税) (9) Focus 40 Blue(フォーカス40ブルー)   米国・フリーダムサイエンティフィック社製、有限会社エクストラ販売 【インターフェース】USB、Bluetooth 【マス数】40 【特徴】ホイールボタンで表示送りなどの操作が滑らか。パーキンス型の点字キー装備。点の高さの調節可。充電池(着脱型)で20時間使用可。 【外形寸法】318W×97D×25H[mm] 【重量】850g  【価格】258,000円(非課税) (10) 清華(セイカ)バージョン3 中国製、株式会社 日本テレソフト販売 【インターフェース】USB 【マス数】40 【特徴】USB接続の場合、パソコンからの給電のみで動作(AC電源と接続しての使用は不可)。 【外形寸法】330W×91D×25H[mm] 【重量】600g  【価格】148,000円(非課税) (11) 清華(セイカ)V5 中国製、株式会社 日本テレソフト販売 【インターフェース】USB、Bluetooth 【マス数】40 【特徴】USB接続の場合、パソコンからの給電のみで動作。USBメモリから点字文書を直接読み込んでの読書が可能。外付けの電池による使用も可能で、8時間使用可。 【外形寸法】330W×91D×25H[mm] 【重量】640g  【価格】198,000円(非課税) 2.点字ディスプレイを選ぶ  最適な点字ディスプレイの選択は、以下のような基準で行ってください。  点字ユーザーにとって最も大切な機器です。ちょっとしたキー配置や点の出方などで読みにくさを覚える人もいるので、頭の中だけで考えず、できるだけ実際に触ってもらいながら選ぶようにしましょう。 (1) 使っているパソコンに接続できるか?  点字ディスプレイ用のUSBドライバーがOSに対応できていない場合がある。  シリアルポートしか搭載されていない点字ディスプレイは、USBシリアル変換アダプターを使うことで、USBしかもたないパソコンにも接続できることが多い。 (2) 読みやすさは?  点の出方が強い方が良いか、ピン(点字の1点)の大きさ等。 (3) 据置型か、携帯型か?  一般的には、点字本の1行の長さ30マスぐらいの長さがある方が、表示送りの操作が減るので扱いやすい。  家の中だけではなく、外出先でもパソコンを使用する場合は、携帯型(24マス以下)を選ぶと便利。 (4) 点字電子手帳の機能を使うか?  点字ディスプレイとしてのみ使用するのか、点字電子手帳としても使用する(可能性がある)かどうか等。 (5) 購入費用は?  高額なものが多いが、日常生活用具等としての購入助成を受けられる場合がある。盲ろう者が住む市区町村で確認すること。 3.接続の準備  パソコンと点字ディスプレイは、USBやシリアルケーブルで接続することができます。Bluetoothによる無線接続で使用できる機種もあります。 (1) パソコン → USBケーブル → 点字ディスプレイ ※USBで接続する際には、各機種専用のドライバーをパソコンにインストールしてください。(OS別にプログラムが異なることもありますし、例えば同じブレイルメモシリーズであっても、機種ごとにドライバーが異なりますので、注意してください)各メーカーや販売店のホームページからダウンロードできます。 (2) パソコン → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ ※コネクタが大きいので場所は取りますが、ドライバーが要らないので、通信が不安定になりにくい接続方法です。 (3) パソコン → 変換アダプター → シリアルケーブル → 点字ディスプレイ ※シリアルポート(RS-232C)が装備されていないパソコンが増えています。シリアルケーブルでの接続をしたい場合は、USBシリアル変換アダプターを介して接続することになります。変換アダプターを使用してのUSB接続の場合にも、その変換アダプター専用のドライバーをパソコンにインストールしておく必要があります。 3 スクリーンリーダー  画面に写し出された情報を、点字に変換して表示させたり、合成音声で読み上げさせたりするためのソフトウェアを「スクリーンリーダー」と言います。  画面に文字として表示されているものに加え、必要に応じて、画面がどのような状態にあるか、自分がどのようなプログラムを使っているかといった状況説明も行われます。OS自体に機能を加えるものなので、そのOSの上で動作するアプリケーションも、基本的には点字化・音声化できます。  盲ろう者や視覚障害者を対象に開発されたソフトウェアなので、日常生活用具等としての購入助成を受けられる場合があります。盲ろう者が住んでいる市区町村で確認してください。  なお、各点字ディスプレイの価格は2012年2月現在のものです。 1.FocusTalk for Braille(フォーカストークフォーブレイル)  これまでFocusTalkは、視覚障害者が使うことを想定した音声の出力しかできないものでしたが、Windows 7への対応にあたり、点字使用の盲ろう者にも利用できる充分な点字による入出力機能を備えたスクリーンリーダーとなるよう、全国盲ろう者協会が開発に関わった製品です。 (1) 点字出力  点字ディスプレイ上で次の操作が問題なく行えます。 ●主な機能 ・Windowsの起動と終了 ・デスクトップ、スタートメニューの操作 ・メニューバーの操作 ・エクスプローラー上でのファイルのコピー&ペースト・削除等 ・文書、エディットボックスの編集  また、文書やファイルの範囲選択については、操作は可能ですが、一部点字での表示が分かりにくいので慣れが必要です。 ※2012年2月現在、点字ディスプレイ表示の送りがうまくいかない、リストビュー表示が消えることがあるなどの不具合が報告されています。随時プログラムの修正は行われますので、ホームページなどで最新情報をご確認ください。 (2) 点字入力  FocusTalk for Brailleはスクリーンリーダーソフトですが、点字入力機能も備えています。設定画面で「点字入力方式」を「6点入力」に設定することで、次の機能を使うことができます。 ●主な機能 ・パーキンス式のかな点字入力 ・ライト式のかな点字入力 ・かな点字による表示 ・点漢字による表示 ※2012年2月現在、入力できない記号があるなどの不具合が報告されています。随時プログラムの修正は行われますので、ホームページなどで最新情報をご確認ください。  【開発・販売元】株式会社スカイフィッシュ  【URL】http://www.skyfish.co.jp/  【価格】52,000円(税込) ※ピンブレイル(点字ディスプレイ出力エンジン)が別途必要になります。  【開発・販売元】ニュー・ブレイル・システム株式会社  【URL】http://www.nbs.co.jp/  【価格】18,900円(税込) 2.PC-Talker(ピーシートーカー)+BrailleWorks(ブレイルワークス)  FocusTalkとほぼ同等の価格・性能を有するスクリーンリーダーです。  株式会社アクセス・テクノロジーから販売されているVDMW△00(バージョンによって番号は異なる。Windows 7用はVDM700)と称されるスクリーンリーダーも、キー操作が異なるだけで、性能は同じものです。 (1) 点字出力  これまでのPC-Talkerは、音声と全く同じ内容を次々に点字ディスプレイにも出力するといったシンプルなものでしたが、2011年3月にオプションソフトとして発売されたBrailleWorksを組み込むことで次の機能が使えるようになりました。 ●主な機能 ・点字ディスプレイ上の方向キーによる項目間の移動 ・エディット画面内でのカーソル位置表示と、タッチカーソルによる画面上のカーソルの移動 ・点字ディスプレイの表示に合わせたカーソル連動 ・選択範囲の表示 ・日本語入力時の変換候補や文節の区切り等の表示 ・ステータス表示による各種情報の提示  点字出力だけでも文書編集等がかなりできるようになりました。 (2) 点字入力  PC-Talkerに付属している点字入力用アプリケーション「KTOS(ケートス)」を、PC-Talkerのインストール時に一緒にインストールすることで次の機能を使うことができます。なお、KTOS単体での販売は行われていません。 ●主な機能 ・パーキンス式のかな点字入力 ・パーキンス式の点漢字入力 ・かな点字による表示 ・点漢字による表示 ・矢印キー、頻用されるPC-Talkerのキーコマンドなどの、点字キー周辺キーへの配置換え ※他のスクリーンリーダー上でKTOSのみを単独で使うことは可能ですが、PC-Talkerとの併用を前提に開発されているので、設定画面、点漢字の直接入力などが適切に点字表示されないことがあります。  【開発・販売元】株式会社 高知システム開発  【URL】http://www.aok-net.com/  【価格】PC-Talker:39,900円(税込)  BrailleWorks:29,400円(税込) 3.その他 (1) JAWS for Windows(ジョーズフォーウィンドウズ)  いつでも画面の好きな所を確認できるレビュー機能等も搭載された、非常に高機能なスクリーンリーダーです。Microsoft Office等のビジネス向けアプリケーションまでも高度に使いこなせるような配慮が施されています。  スクリプトを作成して動作を細かく調整すれば、使いやすい環境の構築や、新たなアプリケーション、学校や職場などの特別なシステムへも対応できる可能性があります。  画面上の多くの情報を詳細に点字表示できるため、中〜上級ユーザーにとっては利用価値の高い製品です。しかし、その情報量の多さが、初心者や点字の苦手な盲ろう者にとってのハードルになり得るので、注意が必要です。  50カ国以上で使われ、その名前やプログラムアイコンの「サメ」が示すように、最強のスクリーンリーダーといっても過言ではありませんが、他のスクリーンリーダーに比べて価格が高いことから、購入を検討する際は、今後のパソコンの利用頻度や、活用度合い等も考慮すると良いでしょう。  また、就労を実現している盲ろう者や高等教育の課程にある盲ろう者にとっては、重要な選択肢となるでしょう。  【開発】米国・フリーダムサイエンティフィック  【日本語版開発・販売】有限会社エクストラ  【URL】http://www.extra.co.jp/  【価格】149,100円(税込) (2) Catwalk(キャットウォーク)  他のパソコンからのリモート操作への対応や、独自の画面解析機能等も搭載されており、他のスクリーンリーダーでは読めない情報も読み取れたりするので、今後の開発が注目されます。  【開発・販売】Kazusoft  【URL】http://www.kazusoft.com/ (3) NVDA(エヌブイディーエー)  インターネット上でプログラムを公開し、共同で開発・配布が行われています。インストール作業をすることなく、USBメモリやCDからプログラムを直接立ち上げることができます。世界的なプロジェクトの一部として、日本語版も開発されています。  【開発】NVDA contributors  【URL】http://sourceforge.jp/projects/nvdajp/ 4 アプリケーション  盲ろう者、特に点字ユーザーに使いやすく設計されているアプリケーションを紹介します。盲ろう者のニーズはもちろん、スクリーンリーダーとの組み合わせ、価格なども考慮しながら、適切なアプリケーションを選択しましょう。  なお、各点字ディスプレイの価格は2012年2月現在のものです。 1.VoicePopper(ボイスポッパー)  視覚障害者や肢体不自由者向けに開発されたバリアフリー型メーラーです。  矢印キーによるメニュー選択を基本とした分かりやすい操作方法を採用しています。スクリーンリーダーと連携しながら、できるだけメッセージを点字や音声として出力する設計になっていて、次のような機能を備えています。 ・メーラー ・インターネット上のページから必要な部分だけを切り抜いてメールと同じ形式で読むことができる、ニュースやRSSの閲覧機能 ・簡易ウェブブラウザ機能  スクリーンリーダーと組み合わせることでInternet Explorerなどの一般のウェブブラウザも使用可能ですが、ヘッダーやフッター、多くのリンク項目・宣伝広告などがページ内には溢れていて、目的の内容をたった1行の点字ディスプレイの表示で探すには、かなりの理解と慣れが求められます。触読にあまり慣れていない点字ユーザーには大変な疲労となります。アルファベットも頻出するので、さらに読みにくくなります。VoicePopperのように必要な部分を切り出してくれる機能は、点字ユーザーとインターネットの距離を縮めてくれます。  migemo辞書を追加することで、アドレス帳、フォルダ、メール本文中などの文字列を検索できるようになります。(かなや漢字でも検索できますが、入力はローマ字です。ローマ字、点字入力をする場合には、点字のアルファベットの習得が必要です) ※2012年2月現在、PC-Talker+BrailleWorks上での使用は、特にメール作成画面での不具合が報告されています。(ニュース閲覧や簡易ブラウザは使用できます)随時プログラムの修正は行われますので、ホームページなどで最新情報をご確認ください。  【開発・販売】桂木範オンラインソフト工房 【URL】http://homepage2.nifty.com/oss/  【価格】4,800円(税込) 2.サーチエイド  インターネット上の各種検索サービスを、簡単な操作で利用でき、必要な部分だけをコンパクトにまとめて表示してくれるネット検索ソフトです。  例えば次のような検索サービスを利用することができます。 ●検索サービスの例 ・Google ・電車の時刻表 ・郵便番号簿 ・国語辞典 ・タウンページ ・天気予報  VoicePopperの作者が開発しているので、基本的な操作手順は共通です。  【開発・販売】桂木範オンラインソフト工房  【URL】http://homepage2.nifty.com/oss/  【価格】8,800円(税込) 3.MyMail(マイメール)  盲ろう者・視覚障害者用に開発されたメーラーです。機能的にはVoicePopperのメーラー機能と同等と考えて良いでしょう。  高知システム開発は視覚障害者向けの独自ソフトウェアを開発してきた長い歴史があり、矢印キーによるメニュー選択、ファンクションキーによるコマンドの実行、点字入力の際には、点字キーと周辺キーだけで各種の操作ができるといった操作方式を継承してきていることから、視覚障害者の中には多くの愛好者がいます。そのせいもあって音声による操作を重視し過ぎているところがあり、自動的に読み続けてしまう音声を止める操作をしないと、点字ディスプレイでは内容をうまく読み取れないといった場合があります。(他の高知システム開発製のアプリケーションも同様です) ※MyMailを使用するにはPC-Talkerが必要です。  【開発・販売元】株式会社 高知システム開発  【URL】http://www.aok-net.com/  【価格】18,900円(税込) 4.MyNews(マイニュース)  VoicePopperのニュース閲覧機能と同等と考えて良いアプリケーションです。  内容はニュースに限りますが、サーチエイドのようなフリーワードによる検索機能もあります。  MyMailなどの他の高知システム開発製のアプリケーションと、メニュー構成や操作方法ができるだけ同じになるように設計されています。(矢印キーによる選択が基本なので、VoicePopperなどとも大きな違いはありません) ※MyNewsを使用するにはPC-Talkerが必要です。  【開発・販売元】株式会社 高知システム開発  【URL】http://www.aok-net.com/  【価格】21,000円(税込) 5.MyBook(マイブック)  点字文書、テキスト・PDF・Word・Excel・ドットブックといった様々な墨字文書、デイジーなどの音声図書を手軽に読むための読書アプリケーションです。  インターネット上のサービスも利用可能で、点字図書はサピエ図書館での検索とダウンロードに対応する他、青空文庫、理想書店などが検索できます。  集めた文書は、本棚に登録できます。読み終えた位置が記憶されるので、次回、続きからすぐに読めます。しおりも設定できます。  MyMailなどの他の高知システム開発製のアプリケーションと、メニュー構成や操作方法ができるだけ同じになるように設計されています。(矢印キーによる選択が基本なので、VoicePopperなどとも大きな違いはありません) ※MyBookを使用するにはPC-Talkerが必要です。  【開発・販売元】株式会社 高知システム開発  【URL】http://www.aok-net.com/  【価格】39,900円(税込) 6.その他のMyシリーズについて  PC-Talkerに同梱されているエディター「MyEdit」も含め、高知システム開発製のアプリケーションのほとんどは「My○○」と名づけられています。  ワープロソフトである「MyWord」、OCRソフトである「MyRead」といったものもありますが、サーチエイドとほぼ同等の機能をもつ、以下のようなアプリケーションも用意されています。 ○その他のMyシリーズ ・MyRoot(マイルート) 21,000円(税込)  店舗案内、鉄道の路線・乗り換え案内、観光ガイドを検索できる。 ・MyDoctor(マイドクター) 21,000円(税込)  医療・健康情報、病院を検索できる。 ・MyDic(マイディック) 21,000円(税込)  インターネット上の辞書、CD-ROMによる辞書(EPWING、電子ブック)を閲覧できる。  MyMailなどの他の高知システム開発製のアプリケーションと、メニュー構成や操作方法ができるだけ同じになるように設計されています。 ※Myシリーズを使用するにはPC-Talkerが必要です。  【開発・販売元】株式会社 高知システム開発  【URL】http://www.aok-net.com/ 7.ALTAIR for Windows(アルティアフォーウィンドウズ)  MS-DOS時代に開発された、CD-ROM検索やホームページ閲覧機能をも備えた高機能エディターである「VEGA」または「ALTAIR」、メーラーである「WMAIL」を統合し、Windows版の「ALTAIR」が誕生しました。ほとんどの操作がWindows版にも継承されているので、これらのアプリケーションを使っていた人たちにとっても移行がスムーズです。  点字出力や音声読み上げのために独自のエンジンをもっているため、スクリーンリーダーが無くても利用できます。  コマンドがファンクションキーなどにすべて割り当てられているので、メニューからの選択を経なくてもスピーディに操作できます。(このソフトウェアはMS-DOS時代からの長い開発の経緯があるため、Windowsではあまり使用しないようなキー操作もあります)  かなり高度な機能を備えている分、操作は多少複雑になりますが、この一つのソフトウェアで、日常のパソコン利用には充分間に合ってしまうでしょう。 ※2012年2月現在、一部のWindows 7搭載のパソコンで正しく動作しないという報告があります。随時プログラムの修正は行われますので、ホームページなどで最新情報をご確認ください。  【配布】公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会  【URL】http://www.normanet.ne.jp/~altair/  【価格】無料 第3節 機器とソフトウェアの設定、キー操作  Windows全般に関すること、前節で紹介したスクリーンリーダーやアプリケーションについて、指導者側が事前に設定しておかなければならないことや特性についてまとめました。盲ろう者の状況に応じて、適切な環境を構築・再構築してください。  よく使うキー操作についても、ここで紹介しています。 1 Windowsの基本設定 1.Windowsの設定  パソコンを購入しWindowsのインストール作業を済ませたばかりの状態では、各種プログラムの使い方、色々なサービスの勧誘広告などが自動的に動作するようになっている場合があります。これらのために、点字ディスプレイに余計な情報が表示されたりします。ウィンドウを閉じないと次に進めない場合も起こりえます。  また、プログラムのバージョンアップの通知などは、あるとき突然現われてフォーカスを奪ってしまい、操作が急にできなくなって盲ろう者を混乱させることもあります。  アップデートなどのメンテナンスは、月に一度ぐらい手動で誰かがやることにして、これら余計なものは、できるだけ取り外しておきましょう。  自動起動させたいユーティリティやアプリケーションは、スタートメニューの<スタートアップ>フォルダ内のショートカットファイル、レジストリの項目などとして設定されています。これらの項目を探し出して取り外すのは細かい操作になりますので、設定に自信のない人は、詳しい人と一緒に行うことをお薦めします。 2.スタートメニューのカスタマイズ  アプリケーションの起動に混乱がないよう、また、頻繁に起動するアプリケーションに素早くアクセスできるように、スタートメニュー項目を編集します。 (1) 表示を一定にする  Windows 7のスタートメニューは、使用頻度に従って、一番外側に表示される項目が変化するようになっています。点字ユーザーは、スタートメニューの項目を一つずつ確かめながら目的のアプリケーションや機能を探していきますから、同じ項目がいつも同じ順に並んでいる方が、多くの場合混乱がありません。  スタートボタンのショートカットメニューで表示される<プロパティ>にある<最近開いたプログラムをスタートメニューに保存し表示する>機能のチェックを外しておくと良いでしょう。 (2) 分かりやすい名前にする  アプリケーションの名前にはアルファベットが多く使われています。アルファベットを読むのが苦手な盲ろう者にとっては項目が非常に探しづらくなりますので、かなの名前などに盲ろう者が分かりやすい名前に変更すると良いでしょう。先頭文字を数字にするとアプリケーション名を覚えなくても済むので、それを好む盲ろう者もいます。  スタートメニューの<すべてのプログラム>の中から目的のアプリケーション名を選択してショートカットメニューを開くと、変更できます。 (3) アクセラレータキーを設定する  Windowsの一覧表示中では、項目名の先頭文字(VoicePopperなら"V")をアクセラレータキーとしてキーボードから入力すると、その項目までジャンプできる機能があります。メニュー項目を一つ一つ点字ディスプレイで読んでいく必要がなく、作業を軽減できます。  項目名を変更することで、この機能がより使いやすくなる場合があります。  先頭文字は、入力環境にもよりますが、一般的には半角のアルファベットや数字にしておくと使いやすいでしょう。 (4) 探しやすくする  使用するアプリケーションがそれほど多くない盲ろう者の場合は、その都度プログラムの全一覧から選ばなくてもよいように、スタートメニューの一番外側にいつも使うアプリケーションが表示されているようにしておくと便利です。  スタートメニューの<すべてのプログラム>を表示し、目的のアプリケーションの項目のところでショートカットメニューを開き、<スタートメニューに表示する>を選びます。  <スタートメニューに表示しない>を選べば、必要のない項目を非表示にできます。 (5) ショートカットキーのワンタッチで起動できるようにする  タスクバーに表示されているアプリケーションは、[ウィンドウズ]+並び順に応じた数字キー(テンキーは不可)のワンタッチで起動させることもできます。  <すべてのプログラム>で表示されるスタートメニューの項目からショートカットメニューを開くことで<タスクバーに表示する/しない>を設定できます。  また、デスクトップに並んでいる項目のショートカットメニュー内の<プロパティ>でショートカットキーを設定すると、設定したショートカットキーの入力で、いつでもそのアプリケーションを起動できます。スタートメニューに並んでいる項目をコピーすることで、デスクトップに新たな項目を加えることもできます。  使うアプリケーションが一つに限られている盲ろう者で、起動にどうしても手間取ってしまう場合には、そのアプリケーションを自動起動させる方法もあります。スタートメニューの通常の位置から<スタートアップ>フォルダに、項目をコピーします。 (6) Windowsの終了動作を設定する  終了動作に手間取ってしまう盲ろう者の場合、電源ボタンを押すだけでWindowsを終了できる設定にすることが有効な場合があります。(強制終了してしまわないよう、ボタンを3秒以上押さないことをしっかり指導しなければなりません)  <コントロールパネル>の<電源オプション>等から<電源ボタンを押したときの動作>を<シャットダウン>に設定してください。 3.基本的なキー操作  マウスで操作するものとばかり思われているWindowsですが、キーボードからもかなりの部分を操作することが可能です。画面を見ることのできない点字ユーザーは、このキーボードからの操作をフルに利用することで、パソコンが使えるようになるのです。  アプリケーションの操作では、開発者によってキー操作をどこまで認めているかは異なりますが、キーボードからもかなり操作しやすいように設計されているものもあります。ヘルプやマニュアルでよく探してみてください。  視覚障害者向けのパソコンの指導書には、多くの場合、詳細なキー操作が紹介されていますので、参考になると思います。 (1) 共通の操作 [矢印キー] … 前後左右の項目・文字へ移動 [Tab] … ループ、列などの大きめの項目間移動 [Shift]+[Tab]… ループ、列などの大きめの項目間を移動(逆順) [Ctrl]+[Tab]… 設定画面などのタブシートの切り替え [Shift]+[Ctrl]+[Tab]… 設定定画面などのタブシートの切り替え(逆順) [Enter] … 選択を決定し、次へ進む [スペース] … チェックボックス、項目の選択などのオン/オフ切り替え [Esc] … 作業を中断する (2) メニューとウィンドウの操作 [ウィンドウズ]または[Ctrl]+[Esc] … スタートメニューの開閉 [Alt]または[F10] … メニューバーをアクティブ・非アクティブにする(メニューバー内を[左右矢印キー]で移動してメニューの種類を選択し、[下矢印キー]でメニューを開く) [アプリケーション]または[Shift]+[F10] … ショートカットメニューの開閉 [Alt]+[Tab]… アクティブウィンドウの切り替え [ウィンドウズ]+[ D ]… デスクトップをアクティブにする [ウィンドウズ]+[ B ]… タスクバーをアクティブにする  各アプリケーションのボタン、メニュー項目などの横には、カッコで括られた下線付きの文字が表示されている場合があります。これはアクセラレータキーと言って、メニューを開いた状態でその文字をキーボードから入力すると、該当項目のところにジャンプできます。  例えば、メモ帳で[Alt]または[F10]を押してメニューバーをアクティブにしてから[ H ]を押すと、すぐに<ヘルプ>メニューを開くことができます。  またメニューバーから開く各メニュー内では、項目の右端の方にショートカットキーが表示されます。ショートカットキーによって、メニューを開かなくても、いつでもその機能を呼び出すことができます。(複数のキーを同時に押さなければならない場合が多いため、必ずしも押しやすいとは限りません)  あまり使わない操作は忘れてしまうので、メニューの中を一つずつたどっていくのが良いでしょう。  よく使うものは、ショートカットキーやアクセラレータキーを覚えることで、操作が素早く簡単になります。論理的に使い方を覚えず、とにかく操作手順を丸暗記したい盲ろう者にとっても、適切にショートカットキーを取り入れることで、覚える量を少なくできます。 ※通常メニューバーが表示されていないアプリケーションでも、メニューバーを表示させる機能をオンにすることによって、色々な機能を容易にキー操作で使えるようにできる場合があります。 2 スクリーンリーダーと点字ディスプレイ、他  USB接続用のドライバーなどのインストールが完了し、点字ディスプレイとパソコンの接続ができたら、スクリーンリーダーから点字出力が行われるように設定します。  ここでは、その他の有用な設定項目、基本的な操作法などについても触れています。 1.FocusTalk for Braille  Windows VistaはサポートOSになっていますが、Windows XPはサポート外となっているので、一部うまく機能しない場合があります。Windows 7では64bit版にも対応していますが、アプリケーションは32bit互換モードでの対応です。  点字ディスプレイ出力にはピンブレイルが必要ですので、FocusTalkと共に忘れずにインストールしましょう。  FocusTalkをインストールプログラムに従ってインストールすると、Windows起動時に自動起動されるようレジストリに登録されます。 (1) 点字ディスプレイを使うための設定 @FocusTalkの設定画面を開く。  ショートカットは[Shift]+[Ctrl]+[F6]。  タスクバーアイコンのショートカットメニューからも開ける。 A<点字設定>のタブを選択。 B<機種>の選択。 → 接続した点字ディスプレイの機種を選択。 C<出力先>の選択。  → 点字ディスプレイを接続したポートのCOM番号を選択。    複数の機器が接続されていて番号が分からない場合、<コントロールパネル>の<デバイスマネージャー>から確認する。 D<通信速度>の設定。  → 点字ディスプレイ側で設定されているのと同じ速度に設定。    点字ディスプレイ側の通信条件の確認・設定方法は、各点字ディスプレイのマニュアルを参照。 E<点字表示>を<オン>にする。 F<出力文字>の選択。  → 画面の情報を、通常の<かな>の点字に変換して表示するか、<点漢字>で表示するかの選択。    <かな>の点字の場合は、項目が少し離れた所にある<英字>の項目でアルファベットや数字列の表示方法が選択できる。通常は、英語の点字略字を使用しない<1級>を選択。    <点漢字>を選んだ場合は、次の項目で<6点漢字>か<漢点字>のどちらかを選択。 G<カーソル>の選択。  → 画面上のカーソルの位置を、点字ディスプレイ上にどのように表すかの選択。点字の下に下線を付けることで表す<アンダーライン>と、該当文字のピンが上下する<ブリンク>から選択。    文字を読むだけで良いような場合は<オフ>を選択することで、余分な点に煩わされずに読むことができる。 H<適用>を選んで設定を完了する。 (2) ブレイルテンダーとブレイルメモシリーズの接続について  ブレイルテンダーおよびブレイルメモシリーズの点字ディスプレイで、点字ディスプレイの設定を正しい機種名にすると、それぞれの点字ディスプレイのマス数に合った読みやすい点字表示が行われます。しかし、2012年2月現在、これらの機種とFocusTalkの接続は動作が不安定になることが多く、特に点字ディスプレイからのキー操作が正しくできない状態にあります。  そこで、機種名を<ブレイルノート46C/D>にすると、比較的安定することが分かりました。ブレイルメモシリーズより前にKGSが販売していた機種なので、これら旧機種の機能が使えるようになっています。正しい機種名でうまく動作しない場合には<ブレイルノート46C/D>を試してみてください。  しかしこの機能は、それぞれの点字ディスプレイを46マスの点字ディスプレイである「ブレイルノート46C/D」ということにして使っているので、ブレイルメモ32などマス数の少ない点字ディスプレイでは、46マス分送られて来たデータを、32マスと14マスというように、強制的に分割して表示させることになります。通常の表示の送りや戻しの操作に加えて、分割された46マスの内、どの部分を表示させるかという操作が必要になります。強制分割される部分は点字ディスプレイのマス数だけで決まるので、語の区切りの良いところで分割するワードラップの機能も働きません。  後述する(9)点字ディスプレイのキー操作では、各ブレイルメモシリーズの機種名を選択した場合のキー操作と、「ブレイルノート46C/D」を選択した場合のキー操作を紹介しています。参考にしてください。 (3) 音声出力停止起動  FocusTalkには、<音声出力停止起動>という機能があります。音声出力を必要としない盲ろう者には、点字表示のみが行われるようにすることで、知らない内に他人にメールの内容を聞かれたりする心配がなくなります。音声を出さない分パソコンへの負荷も軽くできます。設定画面の<マウスキーボード>のタブ内にあります。   (4) 点字入力の設定  <点字設定>タブで、<点字入力方式>を<6点入力>にし、使い慣れている打ち方を<6点入力方式>から選んでください。 ※一般に使われているものとほぼ同じ点字で入力できますが、記号類など詳しくは、FocusTalk for Brailleのマニュアルで確認してください。 (5) タスクトレイに格納  FocusTalkのウィンドウは、設定さえ済んでしまえばそれほど必要となるものではありません。盲ろう者の操作の妨げになる場合は、<タスクトレイに格納>機能で通常はウィンドウが表示されないようにできます。設定画面の<マウスキーボード>のタブ内から設定できます。 (6) 点字表示等の視覚化  <マウスキーボード>タブにはキーボードフォーカス、<IE>タブにはInternet Explorer用のブラウズ機能に使用される仮想カーソルを、画面上に強調表示する機能があります。どの部分を点字で読んでいるのか、キーボードで何を操作しているのかが視覚的に分かりやすくなり、指導に役立つ場合があります。また、<メイン>のタブには読み上げ履歴やステータスの一覧などがあるので、確認作業が簡単です。 (7) 音声の設定  音声出力を使用したい盲ろう者の場合は、<音声>のタブで、声質、音量、速さ、抑揚などが設定できます。SAPI対応の他の音声エンジンによる出力も可能です。  記号類などがたくさん聞こえて煩わしいような場合には、<読み上げ>タブで読み上げ方を調整してください。 (8) 覚えておくと便利なショートカットキー [Shift]+[Ctrl]+[F6]… 設定画面を開く [Shift]+[Ctrl]+[ O ]… 点字出力のオン/オフ [Shift]+[Ctrl]+[ D ]… 詳細表示のオン/オフ [Shift]+[Ctrl]+[無変換]… かな点字・点漢字表示の切り替え [Alt]+[無変換]… 点字入力とフルキー入力の切り替え [Shift]+[Alt]+[Pause]… 音声出力のオン/オフ [Ctrl]+[Alt]+[ A ]… アクティブウィンドウの通知 [Ctrl]+[Alt]+[ B ]… 起動タスク数の通知 [Ctrl]+[Alt]+[ C ]… 起動中の全タスクタイトル通知 [Ctrl]+[Alt]+[ @ ]… カーソル位置の通知 [Ctrl]+[Alt]+[ : ]… 日本語入力の状態 [Ctrl]+[Alt]+[ H ]… カーソル位置の文字の詳細情報 [Ctrl]+[Alt]+[ J ]… 現在の日付と時刻 [Ctrl]+[Shift]+[PageUp]または[PageDown]… 表示履歴を前・後に移動 ※点字入力時は、[Ctrl]や[Alt]などと他のキーを同時押しする操作は行えません。フルキー入力に戻してから行ってください。 (9) 点字ディスプレイのキー操作 a)ブレイルテンダー(BT46)  キーの位置は、ピンディスプレイ側の<左手読み>(右手操作)<右手読み>(左手操作)の切り替え、および<ディスプレイの設定>の割り当てによって変わります。 ア.機種名を「ブレイルテンダー」にした場合 ●<左手読み>(右手操作)の場合の主なキーの役割 [方向ボタン] … 各方向キーはパソコン上の矢印キーと同様 [右小指キー1] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右小指キー2] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [左小指キー2] … Alt(パソコン上の[Alt]と同様) イ.機種名を「ブレイルノート46C/D」にした場合 ●<左手読み>(右手操作)の場合の主なキーの役割 [左方向キー] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右方向キー] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [上方向キー] … パソコン上の上矢印キーと同様 [下方向キー] … パソコン上の下矢印キーと同様 b)ブレイルメモ32(BM32)  キーの位置は、点字ディスプレイ側の<右手操作>(左手読み)<左手操作>(右手読み)の切り替え、および<キー入力のレイアウト>の割り当てによって変わります。 ア.機種名を「BM32」にした場合 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [右方向ボタン] … パソコン上の矢印キーと同様 [F1] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [F2] … 古い表示履歴を表示 [F3] … 新しい表示履歴を表示 [F4] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [左小指キー2] … Alt(パソコン上の[Alt]と同様) イ.機種名を「ブレイルノート46C/D」にした場合 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [右小指キー1]または[左小指キー1] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右小指キー2]または[左小指キー2] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [上方向キー] … パソコンの上矢印キーと同様 [下方向キー] … パソコンの下矢印キーと同様 [F4] … パソコンの右矢印キーと同様 ●ディスプレイモードへの切替方法  ブレイルメモの起動時の設定が「手帳モード」になっている場合、パソコンの点字ディスプレイとして使うには「ディスプレイモード」にする必要があります。下の3個のキーを同時に押すことでモードを切り替えることができます。 [F1]+[F2]+[F3] … ディスプレイモード [F2]+[F3]+[F4] … 手帳モード c)ブレイルメモ24(BM24)/ブレイルメモ46(BM46)/ブレイルノート46X(BN46X)  キーの位置は、点字ディスプレイ側の<右手操作>(左手読み)<左手操作>(右手読み)の切り替え、および<キー入力のレイアウト><シフトキーのレイアウト>の割り当てによって変わります。 ア.機種名を「BM46」にした場合 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [各方向キー] … パソコン上の矢印キーと同様 [F1] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [F2] … 古い表示履歴を表示 [F3] … 新しい表示履歴を表示 [F4] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [左小指キー2] … Alt(パソコン上の[Alt]と同様) イ.機種名を「ブレイルノート46C/D」にした場合 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [右小指キー1]または[左小指キー1]   … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右小指キー2]または[左小指キー2]   … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [上方向キー] … パソコンの上矢印キーと同様 [下方向キー] … パソコンの下矢印キーと同様 [F4] … パソコンの右矢印キーと同様 ●ディスプレイモードへの切替方法  ブレイルメモの起動時の設定が「手帳モード」になっている場合、パソコンの点字ディスプレイとして使うには「ディスプレイモード」にする必要があります。下の3個のキーを同時に押すことでモードを切り替えることができます。 [F1]+[F2]+[F3] … ディスプレイモード [F2]+[F3]+[F4] … 手帳モード 2.PC-Talker+BrailleWorks  Windows 7の32ビット版と64ビット版は共通ですが、7、Vista、XPで、それぞれ異なるバージョンのソフトウェアが必要です。  手順に従いインストールすると、以降はパソコンの起動時に、レジストリに登録されたAOKメニューの起動を通じて、PC-Talkerも自動的に立ち上がる設定になります。点字入力を使う場合には、インストールプログラムの指示に従ってKTOSもインストールします。  PC-Talkerの動作が確認できたらBrailleWorksをインストールしてください。 (1) 点字ディスプレイを使うための設定 @スタートメニューの<マイアプリケーション>から<PC-Talkerの設定>画面を開く。  ショートカットは[Ctrl]+[Alt]+[F12]。  タスクバーアイコンのショートカットメニューからも開ける。 A<ピンディスプレイの設定>を選択。 B<ピンディスプレイを使用する>にチェックを入れる。 C表示する点字の種類。  → <表示する点字> <英語の点訳>で、必要に応じた各種の点字記号を選択、<かな点字> <1級>が標準。  その隣の<詳細表示>は、漢字などをかな点字で特定するために詳細な文字説明等を表示させるときのもので、<簡易読み>で通常は問題ない。 D<文書の表示モード>  → 画面の情報を点字本のようなレイアウトで表示する<点訳モード>が設けられている。長い文章を読み続ける場合などを除き<通常モード>にしておく方が、画面のレイアウトが把握しやすいと思われる。 E<ワードラップ表示>  → マスあけの所で行を移す慣習のある通常のかな点字では、ワードラップされている形が馴染みやすく、また読み取りの誤解も少なくなる。マス数の少ない点字ディスプレイを接続している場合は、1行が短くなり過ぎるので、<無効にする>に設定する方が読みやすくなる場合がある。 F<フォーカス時の初期表示>  → <コントロールラベルから表示>がお薦め。<カーソル項目を優先して表示>にすると、現在の設定内容がピンディスプレイの左端に表示されて設定内容を迅速に確認できるが、項目名を確認するには、ピンディスプレイの表示を行頭にスクロールさせることが必要。 G<カーソル>  → 画面上のカーソルの位置を点字ディスプレイ上にどのように表すかの選択。点字の下に下線を付けることで表す<ライン表示>(読みやすい)と、該当文字のピンが上下する<点滅表示>から選択。文字を読むだけでよいような場合は<表示しない>を選択することで、余分な点に煩わされずに読むことができる。 H<日本語変換注目文節>  → 漢字変換をするときのテキスト説明文すべてにアンダーラインを表示するかどうかの設定。余分な点字が表示されない<注目文節だけ表示>がお薦め。 I<ステータスセル>  → 各種の状態をコンパクトに表示するので上級者には有用なものだが、余分な記号が常に表示されるので、点字やパソコン操作に不慣れな盲ろう者には<表示しない>がお薦め。 J<点字メッセージ表示時間>  → PC-Talkerが発する追加情報が、設定した時間だけ表示され、その後画面上の表示に戻る。<制限しない>に設定すると、タッチカーソルを押したり次の操作をするまで表示が継続されるので、触読に慣れていない盲ろう者もゆっくり情報を読み取ることができる。 K<ピンディスプレイ機器の変更>  → 接続している点字ディスプレイに合わせて、機種と通信条件を設定。点字ディスプレイ側の通信条件の確認・設定方法は、各点字ディスプレイのマニュアルを参照。 L<設定>を選択。 (2) 音声をオフにする  パソコンの音声出力を必要としない盲ろう者には、点字表示のみが行われるようにすることで、知らない内に他人にメールの内容を聞かれたりする心配がなくなります。点字ディスプレイのみの出力にするためにPC-Talkerの音声出力を停止させたいときには、点字ディスプレイからの操作、またはパソコン本体側のミュートの機能で行ってください。(PC-Talker自体の音声出力を停止すると、アクティブウィンドウ名、日付や時刻といった情報が点字表示されなくなります) (3) KTOS  設定画面は、スタートメニューの<マイアプリケーション>の<KTOSの設定>で開くことができます(タスクバーアイコンのショートカットメニューからも開ける)。 @<点字キーの設定>を開く。 A<起動時の入力方式>を<点字キー>にする。 B<起動時の入力体系>  → 一般のかな点字のみを使用する場合も<六点漢字>に設定。 C<起動時の点字キー文字種>  → かな漢字変換を使って文字を書いていく場合は<半角カタカナ>。    <全角カタカナ>にすると、その都度[Enter]キーを押すことなくカタカナだけの入力ができる。    <全角ひらがな>にすると文章としては読みやすくなるが、「は」が「わ」、「へ」が「え」、「う」が長音に変換されて点字表示されるので、入力した文字との違いに戸惑いを覚える場合がある。 D<6点の周辺キーに割り当てられたコマンドを使用しない>  点字で入力するときに間違えて他のキーを押してしまうことが多い場合、チェックを外しておくと誤動作を防止できる。 E<Windows起動時にKTOSを自動起動する>  フルキーをほとんど使わない場合はここにチェックを入れておくと良い。  ※設定画面の一番下の方にあるので[Tab]か[下矢印キー]でカーソルを下まで送る必要がある。 ※一般に使われているものとほぼ同じ点字で入力できますが、記号類など詳しくはKTOSのマニュアルで確認してください。 (4) 音声の設定  <PC-Talkerの設定>画面内にある<カーソル文字の読み方>の中の<上下カーソル移動時1行読みする>にはチェックを入れておいてください。チェックが入っていないと、点字表示が正しく行われないことがあります。  音声出力を必要とする盲ろう者のためには、PC-Talkerの設定メニューに、音声に関する複数の項目があります。声質や音量、声の高さなどの基本的な設定の他、状況別に読み上げるもの・読み上げなくてよいもの、説明の順序などが設定できます。他のSAPI音声がインストールされている場合には、それらも声の種類の一覧に表示されます。  英数字部分を英語のネイティブ発音で読み上げてくれる機能は、多くの人には日本語の中では不自然に聞こえるでしょうから、<PC-Talkerの設定>画面内にある、<英語音声の設定>の項目をすべてオフにしておくと良いでしょう。 (5) 覚えておくと便利なショートカットキー (点字キーとの組み合わせによるキー操作は省略します) [Ctrl]+[Alt]+[F12]… 設定画面を開く [Ctrl]+[Alt]+[F4]… 点字出力のオン・オフ [Shift]+[変換]… 点字入力とフルキー入力の切り替え [ T ]… 全角文字での点字入力 [ Y ]… 半角文字での点字入力(半角でかなを入力した場合には、自動的に日本語変換入力になる) [ H ]… 日本語変換をしながらの点字入力 [Ctrl]+[Alt]+[ 1 ]… アクティブウィンドウ名の通知 [Ctrl]+[Alt]+[ 2 ]… 起動アプリケーション数とアプリケーション名の通知 [Ctrl]+[Alt]+[ 3 ]… ステータスバー情報 [Ctrl]+[Alt]+[ , ]… カーソル位置の通知 [Ctrl]+[Alt]+[ / ]… 切り替えキーの状態 [Ctrl]+[Alt]+[ 8 ]… 現在時刻 [Ctrl]+[Alt]+[ t ]… 現在の日付 ※[Ctrl]や[Alt]キーなどが押されているときは点字キーの機能は働かず、通常のフルキーボードとして動作します。 (6) 点字ディスプレイの操作 a)ブレイルテンダー(BT46)  キーの位置は、ピンディスプレイ側の<左手読み>(右手操作)<右手読み>(左手操作)の切り替え、および<ディスプレイの設定>の割り当てによって変わります。 ●<左手読み>(右手操作)の場合の主なキーの役割 [各方向キー] … パソコン上の矢印キーと同様 [右小指キー1] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右小指キー2] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [右小指キー1](表示送り)+右端タッチカーソル … 音声なし(点字出力のみ)・音声使用の切替 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル1] … 通常モードと点訳モードの切替 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル2] … カーソル表示の形式 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル3]… ステータスセル表示の有無と位置 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル4] … 表示する日本語点字の種類 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル5] … 表示する英数記号点字の種類 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル6] … 詳細読みの種類を切替 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル45] … カーソル文字の詳細表示 [右小指キー1](表示送り)+[タッチカーソル44] … 通常表示と詳細表示の切替 b)ブレイルメモ32(BM32)  PC-Talkerを使って操作する上で、ブレイルメモ32は各キーの役割をより詳細にカスタマイズすることができます。しかし、キーの役割の変更はパソコン上ではできず、点字表示部の点字を読みながら設定しなくてはならず、使い慣れていないと難しい面があります。  ここでは初期設定のキー操作を紹介しますが、必要なときはブレイルメモ32の操作マニュアルを参考に盲ろう者に合わせてカスタマイズしてください。 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [右方向ボタンの下方向キー] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右方向ボタンの上方向キー] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [右方向ボタンの右方向キー] … パソコン上の右矢印キーと同様 [右方向ボタンの左方向キー] … パソコン上の左矢印キーと同様 [F4]+[右端タッチカーソル] … 音声なし(点字出力のみ)・音声使用の切替 [F4]+[タッチカーソル1] … 通常モードと点訳モードの切替 [F4]+[タッチカーソル2] … カーソル表示の形式 [F4]+[タッチカーソル3] … ステータスセル表示の有無と位置 [F4]+[タッチカーソル4] … 表示する日本語点字の種類 [F4]+[タッチカーソル5] … 表示する英数記号点字の種類 [F4]+[タッチカーソル6] … 詳細読みの種類を切替 [F3]+[F4]+[タッチカーソル1] … カーソル文字の詳細表示 [F3]+[F4]+[タッチカーソル2] … 通常表示と詳細表示の切替 ●ディスプレイモードへの切替方法  ブレイルメモの起動時の設定が「手帳モード」になっている場合、パソコンの点字ディスプレイとして使うには「ディスプレイモード」にする必要があります。下の3個のキーを同時に押すことでモードを切り替えることができます。 [F1]+[F2]+[F3] … ディスプレイモード [F2]+[F3]+[F4] … 手帳モード c)ブレイルメモ(BM24)/ブレイルメモ(BM46)/ブレイルノート(BN46X) ※キーの位置は、点字ディスプレイ側の<右手操作>(左手読み)<左手操作>(右手読み)の切り替え、および<キー入力のレイアウト><シフトキーのレイアウト>の割り当てによって変わります。 ●<右手操作>(左手読み)の場合の主なキーの役割 [各方向キー] … パソコン上の矢印キーと同様 [右小指キー1]または[F1] … 表示送り(点字表示を文章の後方にスクロール) [右小指キー2]または[F4] … 表示戻し(点字表示を文章の前方にスクロール) [F4]+[右端タッチカーソル] … 音声なし(点字出力のみ)・音声使用の切替 [F4]+[タッチカーソル1] … 通常モードと点訳モードの切替 [F4]+[タッチカーソル2] … カーソル表示の形式 [F4]+[タッチカーソル3] … ステータスセル表示の有無と位置 [F4]+[タッチカーソル4] … 表示する日本語点字の種類 [F4]+[タッチカーソル5] … 表示する英数記号点字の種類 [F4]+[タッチカーソル6] … 詳細読みの種類を切替 [F3]+[F4]+[タッチカーソル1] … カーソル文字の詳細表示 [F3]+[F4]+[タッチカーソル2] … 通常表示と詳細表示の切替 ●ディスプレイモードへの切替方法  ブレイルメモの起動時の設定が「手帳モード」になっている場合、パソコンの点字ディスプレイとして使うには「ディスプレイモード」にする必要があります。下の3個のキーを同時に押すことでモードを切り替えることができます。 [F1]+[F2]+[F3] … ディスプレイモード [F2]+[F3]+[F4] … 手帳モード e)ブレイルセンスプラス / ブレイルセンスオンハンド [上下スクロール] … 点字表示を文章の後方・前方にスクロール [6]… 音声なし(点字出力のみ)・音声使用の切替 [バックスペース] … 通常モードと点訳モードの切替 [3] … カーソル表示の形式 [2] … ステータスセル表示の有無と位置 [1] … 表示する日本語点字の種類 [4] … 表示する英数記号点字の種類 [5] … 詳細読みの種類を切替 [エンター] … カーソル文字の詳細表示 [F2] … 通常表示と詳細表示の切替 f)Focus 40 Blue [左ホイール]または[左ロッカーバー] … パソコン上の上下矢印キーと同様 [左右シフト] … パソコン上の左右矢印キーと同様 [右ホイール]または[右ロッカーバー] … 点字表示を文章の後方・前方にスクロール [左パン] … パソコン上の[Esc]と同様 [右パン] … パソコン上の[Alt]と同様 [左選択] … パソコン上の[Tab]と同様 [右選択] … パソコン上の[Enter]と同様 [右端行操作ボタン] … 音声なし(点字出力のみ)・音声使用の切替 [行操作ボタン1] … 通常モードと点訳モードの切替 [行操作ボタン2] … カーソル表示の形式 [行操作ボタン3] … ステータスセル表示の有無と位置 [行操作ボタン4] … 表示する日本語点字の種類 [行操作ボタン5] … 表示する英数記号点字の種類 [行操作ボタン6] … 詳細読みの種類を切替 [行操作ボタン38] … 通常表示と詳細表示の切替 [行操作ボタン39] … カーソル文字の詳細表示 3 アプリケーションの設定と注意事項  アプリケーションは、パソコンを利用する盲ろう者にとって最も身近に感じられるソフトウェアです。使いやすさを追求するため、その時々の盲ろう者のスキルに合わせた設定変更が必要になってきます。  最初は支援者が行うことになりますが、いずれは盲ろう者自身で設定を変更できることが理想です。 1.VoicePopper (1) インストール a)ユーザーのタイプの設定  インストール後の最初の起動では、初期設定の画面が表示されます。途中で、ユーザーのタイプを尋ねられます。<全盲の人むけ>を選択することで音声出力や点字ディスプレイ出力が機能します。 ※<全盲の人むけ>以外のメニューを選択すると、音声読み上げや点字出力が停止する場合があります。 ※<全盲の人むけ>以外を選択した場合は、メインメニューの<オプション設定>から再設定してください。 b)メールアドレスなどの設定  インターネット接続プロバイダー(サービス提供事業者)からの契約書に基づいて、正しく設定してください。ポート番号や認証・暗号化に様々な方式が用いられるようになっています。SMTP認証でPOPサーバーと異なるIDとパスワードを設定するようになっている場合は、SMTP側の項目でもIDとパスワードを設定するのを忘れないよう注意しましょう。 c)ローマ字検索機能の組み込み  ローマ字検索機能を利用する場合には、migemo辞書ファイル「migemo-dict」を、VoicePopperのインストールフォルダにコピーします。  「migemo-dict」のファイルは「KaoriYa.net」からダウンロードできるバイナリパッケージの中に含まれています。  【製作】KaoriYa.net  【URL】http://www.kaoriya.net/#CMIGEMO ※パッケージに含まれる<migemo.dll>はVoicePopperに添付の<migemo.dll>とは異なるものなので、上書きしないようにしてください。 (2) 基本操作 a)[上下矢印キー]でメニュー内を移動し、[Enter]か[右矢印キー]で決定  サブメニューがあれば開き、なければ選んだコマンドが実行されます。 b)サブメニューから出るときは[Esc]か[左矢印キー] c)[Esc]を素早く2回押すことで、いつでもメインメニューに戻れる  階層構造のどこにいるのか迷ってしまう盲ろう者にも有効です。 (3) ツリービュー表示について  VoicePopperの初期状態では、メニューのツリービュー表示がオンになっています。このツリービュー表示がオンになっていると、FocusTalk上で使用する場合、一部のメニューが点字で表示されません。(2012年2月現在)  従って、点字環境で利用する場合は必ず次の操作を行い、ツリービュー表示をオフにする設定を行ってください。 @<オプション設定> A<表示の設定> B<ツリービュー表示設定> C<表示しない>で[Enter] (4) メール一覧の設定 a)日時表示の追加  メール一覧に送信日時も表示させたいときは、次の方法で設定できます。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<読み上げの設定> C<メール一覧の読み上げ設定> D<日時読み上げ設定> E<日時を読み上げる>で[Enter] b)表示順序  メールの並び方は、盲ろう者の好みに合わせて、新着メールを読み飛ばさないような順序を設定します。  受信箱などのメール一覧内のコンテキストメニューから設定できます。 @<メインメニュー> A<フォルダ選択> B<受信箱> C[Alt]か[アプリケーション]を押す。 D<日時ソート> <未読ソート>等を選択し[Enter] (5) メールの作成画面の設定  メールの返信の際、元のメールが引用されてしまうと、自分が入力した覚えのない文章の存在に混乱する場合があります。  使い方に慣れて引用文をうまく利用できるようになるまで引用を行わないようにできます。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<メールの設定> C<メール返信の引用文設定> D<引用文を付けない>で[Enter] (6) 起動方法の選択  VoicePopperを専らニュースリーダーとして使いたい場合には、メインメニューを飛ばして<ニュース関連>の画面から起動させることができます。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<その他の設定> C<起動直後のメニュー設定> D<ニュース関連メニュー>で[Enter] (7) 終了方法の設定  アプリケーションを終了させるときに<常にシャットダウンする>機能があります。当面他のアプリケーション使用の予定がない盲ろう者で、Windows終了操作に困難を覚える場合に便利です。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<その他の設定> C<終了方法設定> D終了方法を選択し[Enter] (8) ニュースの受信登録と自動受信設定  VoicePopperでは、他数のニュースソースの中から、受信登録されたニュースだけを自動で読み込みます。ユーザーの好みや興味に合わせて設定します。 a)登録方法 @<メインメニュー> A<ニュース関連> B<ニュースソース> Cニュースソースメニューのいずれかで[Enter] Dニュースカテゴリーメニューのいずれかで[Enter] E[Alt]か[アプリケーション]を押す。 F<このカテゴリを受信登録>で[Enter] ※複数のニュースを登録したいときは、同じ操作を繰り返す。  受信登録することで<ニュース受信>や<ニュースフォルダ>にて、メールの受信と同じ感覚でニュースを受信・読むことができます。 b)ニュース受信インターバル設定  <ニュース受信インターバル設定>で、適切なタイミングでニュースが自動受信されるように設定することができます。勝手に情報が更新されているといったことを避けるため、<起動時のみ>がお薦めです。 @<メインメニュー> A<ニュース関連> B<ニュース受信インターバル設定> Cニュースの受信方法を選択し[Enter] ※記事を切り出すためのモジュールが更新されたり、新しいページのモジュールが公開されることがあります。必要に応じてモジュールのメンテナンス作業を行ってください。  自らモジュールを作って新しく読めるページを増やしたり、モジュールを改善して、より読みやすいものにすることも可能です。 2.サーチエイド (1) インストール  インストール後の最初の起動では、初期設定の画面が現れます。初期設定の途中で、ユーザーのタイプを尋ね られます。ここで<全盲の人むけ>を選択することで、音声出力や点字ディスプレイ出力が機能します。 ※<全盲の人むけ>以外のタイプを選択すると、音声読み上げや点字出力ができなくなる場合もあります。 ※<全盲の人むけ>以外のタイプを選択した場合は、メインメニューの<オプション設定>で再設定可能です。 (2) 基本操作 a)[上下矢印キー]でメニュー内を移動し、[Enter]か[右矢印キー]で決定  サブメニューがあれば開き、なければ選んだコマンドが実行されます。 b)サブメニューから出るときは[Esc]か[左矢印キー] c)[Esc]を素早く2回押すことで、いつでもメインメニューに戻れる  階層構造のどこにいるのか迷ってしまう盲ろう者にも有効です。 (3) ツリービュー表示について  サーチエイドの初期状態では、メニューのツリービュー表示がオンになっています。このツリービュー表示がオンになっていると、FocusTalk上で使用する場合、一部のメニューが点字で表示されません。(2012年2月現在)  従って、点字環境で利用する場合は必ず次の操作を行い、ツリービュー表示をオフにする設定を行ってください。 @<オプション設定> A<表示の設定> B<ツリービュー表示設定> C<表示しない>で[Enter] (4) 終了方法の設定  アプリケーションを終了させるときに<常にシャットダウンする>機能があります。当面他のアプリケーション使用の予定がない盲ろう者で、Windows終了操作に困難を覚える場合に便利です。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<その他の設定> C<終了方法設定> D終了方法を選択し[Enter] (5) ネット検索のモジュールを検索ブックマークに登録  多数の検索メニューが用意されていてそのままでは探しにくいので、盲ろう者の興味に合わせて、検索ブックマークにモジュールを登録します。 @<メインメニュー> A<ネット検索> B登録したいモジュールを選択し[Alt] C<検索ブックマーク登録>で[Enter] ※検索環境を構築するモジュールが更新されたり、新しいモジュールが公開されることがあります。必要に応じてメンテナンス作業を行ってください。  自らモジュールを作って新しく検索できるページを増やしたり、モジュールを改善して、より使いやすいものにすることも可能です。  なおモジュールを削除する際、ネット検索メニューでは削除してよいかの確認ダイアログが表示されますが、検索ブックマークからの場合は確認なく削除されますので、注意してください。 3.MyMail (1) インストール  メールアドレスなどは、インターネット接続プロバイダーからの契約書に基づいて、正しく設定してください。ポート番号や認証・暗号化に様々な方式が用いられるようになっています。SMTP認証でPOPサーバーと異なるIDとパスワードを設定するようになっている場合は、SMTP側の項目でもIDとパスワードを設定するのを忘れないよう注意しましょう。 (2) 自動読み上げを回避するための設定  MyMailをはじめ、高知システム開発製のMyシリーズアプリケーションでは、一覧から本文を開いたときなど、自動的に音声読み上げが行われる場合があります。  自動読み上げ中は、点字ディスプレイにも次々と点字表示が行われてしまいますので、読み上げをその都度止める必要があります。  MyMailの起動後に以下の設定をすると、読み上げを行わせなくすることができます(一部機能制限が生じます)。 @<新規メール作成>以外の画面で、ショートカットメニューから<拡張機能オプション>を選択。 A<プレビュー画面へのタブキー移動を可能にする>にチェックを入れる。 (3) 受信メールに番号をつける  メール一覧に番号が付いている方が分かりやすいという盲ろう者には、次の方法で設定します。 @<環境>メニューから<メール一覧オプション>を選択。 A<起動時から番号付きで読み上げるようにする>にチェックを入れる。 ※点字ディスプレイにはメール情報の前に番号がつきますが、画面には表示されません。 (4) アドレス帳  操作メニューにある<並び替え>から、盲ろう者の使いやすい並び順を設定しましょう。  アドレス帳の<備考>欄に番号などを書き込んでおいて、並べ方を<備考順>に設定することで、決めた通りの順にアドレスを表示させることもできます。 4.MyNews (1) 一覧表示形式の設定  記事一覧に番号が付いている方が分かりやすいという盲ろう者には、次の方法で設定します。 @<環境>メニューから<ニュース一覧オプション>を選択。 A<項目を番号付きで読み上げる>にチェックを入れる。 5.MyBook (1) 自動読み上げを回避するための設定  MyMailをはじめ、高知システム開発製のMyシリーズアプリケーションでは、一覧から本文を開いたときなど、自動的に音声読み上げが行われる場合があります。  自動読み上げ中は、点字ディスプレイにも次々と点字表示が行われてしまいますので、読み上げを毎回止める必要があります。  MyBookの起動後に以下の設定をすると、読み上げを行わせなくすることができます(一部機能制限が生じます)。 @<環境>メニューから<図書オプション>を選択。 A<本文テキストをプレビュー表示する>にチェックを入れる。 (2) サピエ情報の登録  サピエ図書館を利用するには、あらかじめ最寄りの点字図書館(「視覚障害者情報センター」などと名乗っている所もあります)を通じてサピエの利用登録をし、割り当てられたIDとパスワードをMyBookに設定する必要があります。 @トップメニューの<サピエ図書館>を選択。 A<サピエIDとパスワード>を選択。 Bログインに使用するサピエIDとパスワードを入力する。 6.ALTAIR for Windows  インストールが終了したらALTAIRを起動し、メニューから各機能を設定します。ALTAIRのインストールフォルダ内にある<al.cfg>というファイルを、エディターなどで直接編集することでも変更可能です。 (1) 点字出力の設定  点字ディスプレイに点字を表示させるには、設定メニューの<点字設定>より行ってください。 (設定項目:変更箇所の順) 点字ディスプレイ機種:接続されている点字ディスプレイの型番を選択。 表示文字数:点字ディスプレイのマス数と同じでよいが、少ないマス数も設定できる。 ディスプレイ桁数:点字ディスプレイのマス数を入力。 ワードラップ:「有り」を選択。マス数の少ないディスプレイでは「なし」が読みやすい場合もある。 行番号表示:「なし」を選択。「有り」では、ディスプレイの右端に行番号が表示される。 点字のデフォルト表示:「する」を選択。 点訳モード1と点訳モード2:特に変更する必要なし。 点字・音声のデフォルト設定:「点字」または「ボイスと点字」を選択。 通信ポート番号:点字ディスプレイに割り当てられているCOMポート番号を入力。※<コントロールパネル>の<デバイスマネージャー>などから確認。 通信設定:通信設定「9600N81」の前半部分の「9600」などの数字を、点字ディスプレイ側の速度に合わせて変更。※速度の確認方法は、点字ディスプレイのマニュアルを参照。 第4節 指導の実際  ここでは、機器やWindowsの基本的な操作から第2節で紹介したアプリケーションを、点字ユーザーが使えるようになるための指導法を示します。 1 機器本体の各部名称とキー配置  全体的な形から細かい部分までじっくり触ってもらい、名称と配置を覚えてもらいます。  手話で指導する場合は、名称の代わりにサインを決めても良いでしょう。  名称は指導のときのコミュニケーションのために必要となるものですから、場合によっては、覚えにくい正しいカタカナ名称よりも、盲ろう者が分かりやすいものを使用することもあるでしょう。 (1) 全体構造の把握 ・パソコン本体 ・ディスプレイ ・キーボード ・点字ディスプレイ ・各ドライブ ・スピーカー ・マウス ・モデム ・各機器の電源 (2) キー配置の説明 ・各ファンクション(F1、F6などとそのまま呼ぶことが多い) ・[Esc](エスケープ) ・[半角/全角](日本語オン/オフ) ・[Tab](タブ) ・[Shift](シフト) ・[Ctrl](コントロール) ・[ウィンドウズ] ・[Alt](オルト) ・[Enter](エンター) ・[スペース] ・[アプリケーション] ・[BackSpace](バックスペース) ・[Del](デリート) ・[Ins](インサート) ・テンキー ・矢印キー(個別には右矢印キー、下矢印キーなどということが多い) ※キーは数も多いので、操作を覚えながらキーの位置も覚えていくというやり方がよく行われます。 ※キーの形の特徴、キーボードの端から何番目、隙間が空いている所からいくつ目、点字などで印が付いている所など、触覚的に確認しやすいヒントを探して説明するようにしましょう。 2 Windowsの基本操作  パソコンの起動や終了、スタートメニューの説明など、Windowsの基本操作をまず学習します。 (1) Windowsの起動 @各機器の電源が入っていることを確認。 Aパソコンの電源スイッチの探し方、押し方・押す長さ。  → 電源が入ったかどうかは、内蔵のDVDなどのドライブのトレイが出せるかどうかで、簡単に確認できます。  USBからの給電で動き、触覚で動きが分かる機器(一部の点字ディスプレイも該当します)であれば、それらの機器で確認することができます。 B起動までに時間がかかるので、しばらく待たなければいけないことの説明。 C準備が整ったことを点字ディスプレイの表示で確認。  → 点字ディスプレイの表示は、スクリーンリーダーだけでなく、各パソコンによっても異なる場合があるので、確認が必要です。 ※以降の操作は、独力での操作が確実になるよう、ひとまとまりの操作が終わった適切なところで点字表示を確認し、操作内容と結果表示をセットで覚えていけるように指導できるのが理想的です。 ※同じ操作でも、スクリーンリーダーによって点字表示は異なりますので注意してください。 (2) アプリケーションを起動する a)基本 @[ウィンドウズ]を押す。  → 点字ディスプレイに スタートメニュー などと表示される。 A[下矢印キー]を押す。  → 画面の左の列の一番上に表示されている項目に移動し、その項目が点字ディスプレイに表示される。 B目的の項目でなければ[下矢印キー]を押す。 → 一つ下の項目に移動する。 C目的のアプリケーションを見つけたら[Enter]を押す。  → アプリケーションが起動し最初の画面が表示される。 ※一番上の項目で[上矢印キー]を押すと一番下の項目に、一番下の項目で[下矢印キー]を押すと一番上の項目に移動するので、常に1項目だけを点字ディスプレイで見ている点字ユーザーは混乱する場合があります。慣れるまではどちらか一方の矢印キーだけを使うと良いでしょう。 b)応用  多数のアプリケーションを使用するようになってきた盲ろう者には、必要に応じてスタートメニューをフルに使いこなす方法を説明するのも良いでしょう。 ●アプリケーション名やファイル名を検索して起動する @[ウィンドウズ]を押す。 →  スタートメニュー などと表示される。 Aキーボードからアプリケーションの名前などを入力する。 → 目的の項目が表示される。 B検索に該当した項目が複数あって目的の項目が表示されなかった場合は、[下矢印キー]を押しながら目的の項目を探す。 C目的の項目を見つけたら[Enter]を押す。  → アプリケーションなどが起動して、最初の画面が表示される。 ●スタートメニュー内を移動する [ウィンドウズ]でスタートメニューを開いた後、次のようなキー操作ができます。 ア.[Tab]で、  右の列の一番上の項目 → 一番下の<シャットダウン>ボタン → 左の列の一番上 の項目 → <すべてのプログラム>のボタン → 検索ボックスの順で、各項目間を移動。([Shift]+[Tab]で逆順に移動) イ.[上下矢印キー]で、列内の項目を移動。アクセラレータキーを使えば、目的の項目までジャンプすることが可能。 ウ.サブメニュー(点字ディスプレイには サブメニューあり などと表示)のところで[Enter]キーを押すと、サブメニューが開く。 エ.<すべてのプログラム>内のツリーを開くのも[Enter]。閉じるときには[左矢印キー]。(ツリーが閉じているときには点字ディスプレイには プラス などと表示され、開いていれば マイナス となる) オ.ツリー中でも[上下矢印キー]やアクセラレータキーで項目間を移動できるが、矢印キーを押し過ぎたり、そのツリー内にないアクセラレータキーを押してしまうと、ツリーを出て他の項目に移ってしまう。ツリーからの出入りがあったことは点字ディスプレイでは確認しにくいので注意すること。 カ.開いているツリー中で[BackSpace]を押すと、そのツリーの一番上の項目名に戻る。 キ.[Enter]で、目的のアプリケーションなどを実行。 ク.<すべてのプログラム>の画面で[Esc]を押すと、スタートメニューの最初の画面に戻る。もう一度[Esc]を押すとスタートメニューが閉じる。 ケ.[ウィンドウズ]で、いつでもスタートメニューが閉じる。 ※[左右矢印キー]は、画面の状況によって動作が変わってしまうので、できるだけ使用しないことをお薦めします。 ●参考  操作中に間違って[ウィンドウズ]を押すとスタートメニューが開いてしまいます。  アプリケーション操作中に[Alt]と間違えて押してしまったような場合には、もう一度[ウィンドウズ]を押してスタートメニューを閉じてください。使用していたアプリケーションのウィンドウがアクティブになります。 ※[Esc]で閉じるとデスクトップがアクティブになるので注意してください。 (3) Windowsを終了させる @[ウィンドウズ]を押す。 → 点字ディスプレイに スタートメニュー 等と表示される。 A[Tab]キーを2回押す。 → <シャットダウン>に移動する。 B[Enter]を押す。 → Windowsが終了動作に入る。 C電源が自動的に落ちたことを、DVDドライブが開かなくなったこと等で確認する。 3 アプリケーション 1.VoicePopper (1) 基本操作  実際に動かしてもらいながら、メニューが階層構造になっていることも含め、全体構造をつかんでもらいましょう。 a)[上下矢印キー]でメニュー内を移動し、[Enter]で決定  サブメニューがあれば開き、なければ選んだコマンドが実行される。 b)サブメニューから出るときは[Esc] c)[Esc]を素早く2回押すことで、いつでもメインメニューに戻れる  階層構造のどこにいるのか迷ってしまう盲ろう者にも有効です。 ●参考 ア.メニュー項目間の移動は、メニュー番号を数字で入力することでも可能です。 イ.ショートカットキーを使えば、メニューに表示されていない項目を実行させることも可能です。 ウ.メニュー番号が付いているので、上下どちらの[矢印キー]を使って移動しても、どこにいるか比較的迷いにくくなっています。 エ.決定は押しやすい[右矢印キー]、また、メール作成の画面などを除いて[左矢印キー]で一つ前のメニューに戻れますが、Windowsの標準操作には馴染まないので、他のアプリケーションの操作の際などに戸惑う可能性があります。 (2) VoicePopperの終了 メインメニューの項目<終了>から終了させる。 ※ショートカットは[ Q ]。 (3) メールの送受信 a)受信から本文を読むまでの操作 @メインメニューの<受信>で[Enter]。 A<巡回受信>で[Enter]。 → メールが読み込まれる。 ※ショートカットは[ R ]。 B[Esc]でメインメニューに戻る。 C<フォルダ選択>で[Enter]。 D<受信箱>で[Enter]。 ※ショートカットは[ I ]。 E[下矢印キー]を押しながらメール一覧の内容を確認する。 F読みたいメールのところに移動したら[Enter]。 G本文が開くと行数が表示される。 H[下矢印キー]などを押すと本文の文頭が表示されるので、点字ディスプレイのキーを使って本文を読み進める。 I[Esc]で<受信箱>に戻り、次のメールを読みたいときには別のメールに移動する。 ※メール本文の表示中にコンテキストメニューを開く、または[Ctrl]+[上または下矢印キー]を押すことで、直接前・次のメールを読むこともできます。 ●参考 ア.メール一覧は下記のように表示されます。  メール番号 件名 差出人の名前  未読メールの場合は<未読:>の文字が挿入されます。  メール番号 未読: 件名 差出人の名前  添付ファイルがあるときは、最後に「ファイル名(添付)」が表示されます。  メール番号 未読: 件名 差出人の名前 添付ファイルの名前 イ.メール本文を読むときには、表示送りのキーだけでは行が替わらないので、行末まで読んだら点字ディスプレイの[下矢印キー]で次の行に移動してください。 ウ.メール本文の上にはヘッダー情報が表示されているので、[上矢印キー]などを使って上の方に移動すれば、本文を閉じなくても差出人や送信日付を確認できます。 ●点字ディスプレイの行末の表示について  点字ディスプレイで文章を読むときには、文の区切り、段落などが分からなくなることがあります。行末を表す記号として、マスの一番右下(8の点)、または、マスの右側縦一列の4個の点(4・5・6・8の点)を使った縦線が表示されるようになっています。  最初は煩わしいと思われるかもしれませんが、文の流れをつかむには大切なものですから、文章を読みながらだんだん慣れてもらうと良いでしょう。 b)返信メールの作成 @メール表示中に[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き[下矢印キー]で<全員に返信>に移動して[Enter]。 A本文を入力する。 B[Alt]で操作メニューを開く。 C[下矢印キー]で<送信>に移動し[Enter]。 D確認画面が表示されるので[Enter]を押して送信完了。  → 前に読んでいたメール本文の表示に戻る。 ●参考 ア.点字ディスプレイや音声を使ってVoicePopperを操作する場合、メニューバーという概念は基本的にありません。[Alt]または[アプリケーション]を押すことで開けるメニューは、コンテキストメニュー、または操作メニューです。 イ.本文や件名の編集に移動すると自動的に変換(日本語入力)がオンになります。 ●文字入力について  漢字を使ってメールなどを書くためには、通常、漢字変換を行いながらの入力操作が必要になります。点字入力を行う場合は、ローマ字入力よりかな入力の方が簡単かつスピーディーなので、MS-IMEなどは、かな入力に設定してください。  点字入力では、点字文書の表記に従ってつい「わ」や「え」での助詞の表記、長音の多用などをしてしまいますが、これでは漢字変換は行えません。普通文字の仮名表記で入力する癖が付くように、粘り強く指導しましょう。  変換しながらの入力で分かりにくいのは、キーボードから文字を入力すると、それらは変換用の文字列として扱われ、[Enter]で確定するまでカーソルの移動はその文字列内でしか行われていないということです。  確定することで、初めて文章内に文字が書き込まれます。また、[BackSpace]などで間違った文字を消していくと、変換用の文字が無くなった時点で本文の編集ができる状態に戻るので、押し過ぎると、せっかく書いた文章までもがいつのまにか消えてしまいます。  変換を続けていくときは、確定のための[Enter]を押さなくても、次の文字を書き始めた時点で自動的に確定が行われるのが普通ですが、本文に改行を入れたりカーソルを移動させたりするには、[Enter]を押して文字を確定した後でないとできません。  一貫した操作で漢字変換に慣れてもらうために、次に文字を打ち続ける場合でも、その都度[Enter]を押してもらうようにする方が良いかもしれません。  漢字変換を行う場合、一般的な操作では、[スペース]などで表示される変換候補の中から、マウスで目的の漢字を瞬時に選び出すことができます。点字表示などで利用する場合は、[スペース]を何度も押して、目的の漢字が出てくるまで一つ一つ確認していくという、地道な作業がしばしば必要になります。選ぶはずだった漢字を通り過ぎてしまうこともありますので、候補を逆向きにたどる方法も覚えてもらうようにしましょう。  変換用の文字を長めに入力すると、候補が「文節」と呼ばれる言葉の短いまとまりに分かれて表示される場合もあります。その場合は、[左右矢印キー]で文節を移動しながら、文節ごとに変換内容を決めていきます。  最近では連文節変換も充実してきていますが、間違いに気付いて前に戻って訂正するには手間がかかってしまいますので、1文節ぐらいずつ打ち込んで変換していく方が効率が良いようです。点字のマスあけをするあたりで変換するという説明をすれば、ちょうど良い長さになると思います。  打ち込まれるだろう文字を勝手に予測して表示する漢字変換プログラムもありますが、点字表示では結果を確認しにくいものなので、予測変換機能は使わないように設定しておきましょう。  文字を間違えたときは[BackSpace]を何度か押して、また入力し直すという操作を覚えてもらうだけでも充分です。どうしてもカーソル表示が邪魔になって文字の確認ができない盲ろう者でも、これだけの操作なら、カーソルを表示していない状態でもかなり安定して行うことができます。  慣れてきたら、カーソルを[矢印キー]や点字ディスプレイの[タッチカーソル]で自由に移動させ、位置が正しいことをカーソル表示で確認、[BackSpace]や[Del]も自由に使いこなしていけるように指導しましょう。 c)メール作成から送信までの操作 @メインメニューから<メール作成>で[Enter]。 ※ショートカットは[ W ]。 A本文を入力する。 B[Tab]を3回押して<宛先選択ボタン>に移動し、[Enter]でアドレスブックを開く。 C一覧から、目的のアドレスを[下矢印キー]で探して[Enter]。  ※ローマ字検索機能がインストールされていれば、ローマ字で宛先の相手を探すこともできます。 D選択画面が閉じると<宛先>の編集の欄に移動する。[左右矢印キー]を押せば、設定した宛先を確認できる。 E[Tab]キーを2回押して<件名>に移動し、件名を入力する。 F[Alt]で操作メニューを開く。 G[下矢印キー]で<送信>に移動し[Enter]。 H確認画面が表示されるので[Enter]を押して送信完了。  → メール作成の前に使用していたメニューに戻る。 ●参考 ア.メール作成の画面では、本文の状態から[Tab]を押すたびに以下のようにフォーカスが移動します。余裕のある盲ろう者には、[Tab]で項目間を巡回できることを確かめてもらうと良いでしょう。  → <差出人>の選択 → <宛先>の編集 → 宛先選択ボタン → <件名>の編集  → <署名>のチェックボックス → 本文 イ.新規メールの作成は、<アドレスブック>からメールアドレスを選択して[ W ]で開始することもできます。 ●ローマ字検索について  ローマ字検索機能をインストールすれば、アドレスブック内のニックネームなどを検索することができます。入力はローマ字になりますが、漢字も読みで検索されます。  以下の場面で使うと便利です。 ・アドレスブックの検索 ・フォルダ一覧の検索 ・メール一覧の検索 ・<ニュースソースメニュー><ニュースカテゴリメニュー> ※ローマ字検索機能のインストール方法は「第3節 機器とソフトウェアの設定、キー操作」の「3 アプリケーションの設定と注意事項」の「1.VoicePopper」を参照。 ●検索方法 @アドレスブックのアドレス一覧やフォルダ選択などに移動。 A[ / ](スラッシュ)を入力 →  検索ダイアログ と点字ディスプレイに表示。 B検索キーワードをローマ字で入力して[Enter]。  → 検索キーワードがヒットすると結果一覧が表示される。 d)フォルダの操作  メニュー選択で覚えている盲ろう者は、既に受信メールを読むときに使用している機能ですが、さらに詳しい使い方を覚えます。 @メインメニューから<フォルダ選択>を選ぶ。 ※ショートカットは[ F ]。 A[上下矢印キーで]目的のフォルダを選択して[Enter]。 ※フォルダ名をローマ字で検索することもできます。 e)メールの削除 @メール一覧で削除したいメールに移動する。 A[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き<削除>で[Enter]。 ※ショートカットは[Del]。  間違って削除したメールは<ゴミ箱>フォルダに残るので、フォルダの操作を覚えれば復元することができます。 f)メールアドレスの登録(メール本文内から抽出) @本文中の差出人や宛先のメールアドレスにカーソルを合わせたら、[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き<このアドレスを登録>で[Enter]。  ※ショートカットは[Enter]を素早く2回。  → アドレスのところに名前が書かれていれば、それがニックネームとして登録される。 A名前の付いていないアドレスの場合はニックネームの入力画面になるので、ニックネームを入力して[Enter]。 ※自動で設定された名前(ニックネーム)はローマ字などで分かりにくいものもあるので、必要に応じて指導者が読みやすいものに変更することも必要です。 g)メールアドレスの登録(手動) @メインメニューの<アドレスブック>で[Enter]。 A[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き、<アドレス情報を追加>を選択。 B[Tab]で項目を移動しながら<ニックネーム>や<メールアドレス>を入力し<設定>ボタンで[Enter]。 h)添付ファイルの展開 @メール本文を開き、行数表示の後に 添付ファイルがあります と表示されていることで、添付ファイルの存在を確認する。 Aメール本文中の添付ファイルの表示にカーソルを合わせて[Enter]。 B[左右矢印キー]でフォルダの出入り、[上下矢印キー]でフォルダ内を移動して、保存場所を選択。 (6) ニュース関連の指導  ニュースを選んで読むまでの操作方法は、メールを読むときと同じです。 a)ニュースの閲覧 @メインメニューの<ニュース関連>で[Enter]。 A<ニュースフォルダ>で[Enter]。 ※ショートカットは[ N ]。 B受信登録されているニュースの種類の一覧から読みたい項目を選択。最初は一番上の項目  が表示されるので、[下矢印キー]で他のニュースに移動。 C表示された見出しの一覧から読みたいニュースを選択。最初は一番上の項目が表示される  ので、[下矢印キー]で他のニュースに移動。 D[Enter]で本文を読む。 b)スクラップブックの活用  ニュース一覧の記事はページが頻繁に更新され、過去の記事は次々に削除されます。後で読み返したい記事はスクラップブックに保存しておきます。 @ニュース記事を表示させた状態で[Alt](または[アプリケーション])でコンテキスト  メニューを開き<スクラップブックに追加>で[Enter]。 A保存した記事を読むには、メインメニューの<スクラップブック>を利用。 c)ニュース受信  <ニュース受信>を実行すると、受信登録されたニュースがいつでも最新のものに更新できます。  受信登録されたニュースは<ニュースフォルダ>に保存されます。  手動で受信を行う場合、ショートカットキー[ R ]の操作は、ニュース関連メニュー内で行ってください。(メインメニューなどでは、メール受信のためのショートカットとして働いてしまいます) ●参考  ニュースソースメニューにある<ニュース一覧>は、1番目の記事が最も新しく、下に向かって古い記事にさかのぼるように並びます。  一方、ニュースフォルダの<記事一覧>では、1番目の記事が最も古く、下に向かうほど新しい記事になります。 (7) ブラウザ関連の指導 a)URLの入力とアクセス @メインメニューの<ブラウザ関連>で[Enter]。 A<URL入力>で[Enter]。 ※ショートカットは[ U ]。 BURLを入力したら[Enter]。  → アクセスが成功しているときは「読み込み中」と表示されます。 b)ホームページの閲覧方法 ア.読み進めるときは点字ディスプレイのキーを使用。 イ.リンクの貼られている行は、リンクマークは行頭に<リンク>と表示される。 ウ.[Tab]キーを押すことで、リンクの項目だけをたどっていくことができる。  ([Shift]+[Tab]で、逆順に移動) c)リンク上のURLにアクセス リンクマークの行にカーソルを合わせて[Enter]。 d)ページをブックマークへ登録 ページを表示させた状態で[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き、<このページをブックマーク登録>で[Enter]。 ※ショートカットは[Enter]を素早く2回。 e)ブックマークを利用してアクセス <ブラウザ関連>の<ブックマーク>で[Enter]。 ※ショートカットは[ M ]。 f)Google検索 <ブラウザ関連>の<Google検索>で[Enter]。 ※ショートカットは[ Z ]。 ●参考 ア.簡易ブラウザなので、Javaのページが読めなかったり、フォーム入力ができない等の制約があります。 イ.Internet Explorerのお気に入りをVoicePopperのブックマークに取り込むことができます。メインメニュー → <ブラウザ関連> → <ブラウザ設定> → <ブックマークの統合化> → <IEのお気に入りと統合する>  ただし、ホームページの閲覧をVoicePopperのみで使用する場合は、初期設定の<統合しない>のままで使うことをお薦めします。 ウ.Googleの検索は、使いやすいサーチエイドで行うことをお薦めします。 2.サーチエイド  サーチエイドの基本操作は、本節の「1 VoicePopper」の「(1)基本操作」を参照ください。  なお、サーチエイドではローマ字検索を使用することはできません。 a)検索ブックマークから検索 @メインメニューの<検索ブックマーク>で[Enter]。 ※ショートカットは[ B ]。 A[下矢印キー]を押しながら検索したいグループに移動し[Enter]。 B検索したい項目に移動し[Enter]。 C検索内容に合わせて、各欄に検索語を入力。次の欄に移るには[Tab]。選択項目がある場  合は[上下矢印キー]で切り替え。 D入力を終えたら[Enter]。 E検索結果を示すインターネット上のページが表示されるので、点字ディスプレイのキーを  使って内容を確認。 b)ネット検索メニューの選択 メインメニューの<ネット検索>で[Enter]。 ※ショートカットは[ N ]。 ●参考 <ネット検索>から入ると30種類もの検索メニューが表示されます。目的の内容を探すのは困難ですが、そのいくつかにはファンクションキーによるショートカットが割り当てられています。<検索ブックマーク>に登録しなくても、これらのショートカットキーで簡単に目的の検索ページを呼び出すことができます。 c)スクラップブックの活用 @検索したページを追加するには、検索結果のページを表示した状態で[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き、<スクラップブックに追加>で[Enter]。 A保存したデータを読むには、メインメニューの<スクラップブック>で[Enter]。 ※ショートカットは[ F ]。 d)Google検索 ショートカットは[F5]。 ※Googleの検索は、VoicePopperよりサーチエイドの方が使いやすいです。 e)ページをブックマークに登録 ページを表示させた状態で[Alt](または[アプリケーション])でコンテキストメニューを開き<このページをブックマーク登録>で[Enter]。 ※ショートカットは[Shift]+[右矢印キー]。 f)ブックマークを利用してアクセス メインメニューの<ブックマーク>で[Enter]。 ※ショートカットは[ M ]。 ●参考 サーチエイドのブックマークとInternet Explorerのお気に入りとは共有しています。 VoicePopperで<ブックマークの統合化>の設定をすると、VoicePopperのブックマークとも共通になります。 3.MyMail (1) 基本操作  起動すると、ボックス選択のメニューが表示されます。 a)[下矢印キー]を一度押すと、一番上の<送受信>の項目に移動する b)各メニュー項目間の移動は[上下矢印キー]  ※一番上の項目で[上矢印キー]、一番下の項目で[下矢印キー]を押しても項目の移動は   行われません。   c)選択された項目を実行したいときは[Enter] d)一つ前の状態に戻るときには[Esc] e)[Esc]を2回早押しすると、必ずトップのボックス選択のメニューに戻る ●参考 ア.ボックス選択の項目はテンキーで移動することもできます。  ※例えば<送受信>が[テンキー1]。 イ.メニューの階層移動、項目の選択は[左右矢印キー]でも可能ですが、Windowsの標準的な操作には馴染まないものですし、メール作成画面などからは[左矢印キー]で出ることはできないなどの操作の不一致もあります。 (2) 終了方法 @ボックス選択のメニューに戻る。 A[Alt]で操作メニューを開き<マイメールの終了>で[Enter]。 ※ショートカットは[Alt]+[F4]。 (3) メールの受信と読み方 @ボックス選択の<送受信>で[Enter]。  → メールを受信すると自動的にボックス選択の<未開封メール>の項目に移動する。  ※メールが届いていなければ、ボックス選択の<送受信>のところが表示される。 A[Enter]を押して<未開封メール>のメール一覧を表示する。 B題名や差出人を確認する。次のメールに移りたいときには[下矢印キー]。 C読みたいメールのところで[Tab]を押して本文を表示する。 D点字ディスプレイのキーを使って、メールの本文を読む。 E[Esc]を押すと<未開封メール>のメール一覧に戻る。 F[上下矢印キー]を使って他のメールに移動。 ●参考 ア.メール一覧の点字表示では、メール番号の後に、未読メールには /+ (スラッシュとプラス) 、既読メールには /−(スラッシュとマイナス)が表示されます。  これらは情報処理用の点字の記号を用いているので、 + は3・4・6の点、 − は3・6の点が表示されますが、状況によっては + が2・6の点になることがあります。 イ.メール一覧で[Enter]や[右矢印キー]を押しても本文を表示できますが、開くと同時に音声での読み上げが始まり、点字ディスプレイ上の点字も、読み上げに合わせて流れていってしまいます。これを止めるには[Esc]を押さなければなりません。  [Tab]キーを使って本文を読むことをお薦めします。ただし[Tab]キーでメールを読む場合には本文のみしか参照できず、ヘッダー情報などを読むことはできません。メール一覧から確認してください。 (4) 受信ボックスの使い方  一度読んだメールは<未開封メール>の一覧に表示されなくなるので、<受信ボックス>を開いて読み返します。  ボックス選択のところで<受信ボックス>を開いた後は、<未開封メール>と同じ操作でメールが読めます。 (5) 返信メールの作成と送信 @メール本文を表示している状態で[Alt]を押し操作メニューを開く。 A[下矢印キー]で<返事を書く>に移動し[Enter]。 Bメールアドレスの選択画面が表示された場合は[Enter]を押す。 C文章を入力する。 D[Alt]で操作メニューを開き<直ちに送信>で[Enter]。 E送受信を実行するかの確認のメッセージが表示されるので[Enter]。 F新着メールが届いている場合、<未開封メール>が表示される。 (6) 差出人のメールアドレスをアドレス帳に登録する @メール本文を表示している状態で[Alt]を押し、操作メニューを開く。 A[下矢印キー]で<差出人をアドレス帳に追加>に移動し[Enter]。  ※ショートカットは[Ctrl]+[F2]。 Bアドレス帳の編集画面が開くので<よみがな>を入力。 C[Enter]を押してアドレス帳に登録。 → 登録完了後は本文に戻る。 ※点字ディスプレイ上には、<よみがな>のみが表示されるので、盲ろう者にとっては<名  前>の欄への入力は必須ではありません。 (7) 新規メールの作成と送信 @ボックス選択の<新規メール作成>で[Enter]。 → 本文の編集画面になる。 A文章を入力する。 B[Tab]で<宛先>に移動する。 C[Alt]で操作メニューを開き<アドレス帳から入力>で[Enter]。  ※ショートカットは[F2]。 D表示を確認しながら[下矢印キー]で宛先人を探す。 E宛先人が見つかったら[Enter]。 F[Tab]で<題名>に移動し題名を入力。 G[Alt]で操作メニューを開き<直ちに送信>で[Enter]。 H送受信を実行するかの確認のメッセージが表示されるので[Enter]。  → メールの送受信が行われる。 ●参考  宛先の入力は、アドレス帳を開く代わりに<宛先>の欄によみがなを入力して[Enter]を押すという手順で検索できます。入力後は<題名>の欄に移動します。  アドレス帳に登録されている名前があれば アドレスを変換しました と表示されます。(なければ表示されません)複数のアドレスが該当する場合には、登録の最も早いアドレスが選ばれます。 (8) メールの削除 @メールの本文を表示している状態で[Alt]を押し、操作メニューを開き<このメールを削除>を選択。  ※ショートカットは[Del] A削除して良いかどうかのメッセージが表示されるので[Enter]。  → 次のメールの本文が表示される。 ※削除したくないときは[Esc]を押して、メール本文に戻る。 (9) 添付ファイルの保存 @メール一覧中の未読・既読の記号の横に 添付 と表示されていることで、添付ファイルの存在を確認。 Aメール本文を表示している状態で[Alt]を押し、操作メニューを開く。 B<添付ファイルの保存>で[Enter]。 ※ショートカットは[Ctrl]+[ T ]。 Cファイル名が表示されるので確認したら[Enter]。 D保存先が表示されるので、[左右矢印キー]でフォルダの出入り、[上下矢印キー]で保  存したいフォルダのところに移動。 E[Tab]で<設定>ボタンに移動し[Enter]。 → メール本文に戻る。 4.MyNews (1) 基本的な操作方法  起動するとニュースの読み込みが行われます。その後トップのチャンネル選択のメニューが現れ、上の<目次>の項目が表示されます。  操作はMyMailと同じ要領です。  たった2項目ですが、チャンネル選択のメニュー内でのテンキー移動も可能で、上の<目次>は[テンキー0]、<ニュース検索>が[テンキー1]になっています。 (2) 終了方法 [Alt]で操作メニューを開き<マイニュースの終了>で[Enter]。 ※ショートカットは[Alt]+[F4]。 (3) 目次から検索 @チャンネル選択の<目次>で[Enter]。 → 目次内の一番上の項目に移動する。 A大項目から小項目へ。  <全国紙> → <朝日> → <社会>  のように項目を一つずつ[Enter]で選択する。  → 小目次が現れるたびに、 目次1 → 目次2 のように行頭に表示される。 B一番小さい項目まで選択すると 一覧 と表示される。読みたい記事まで移動したら[Tab]。 C点字ディスプレイのキーを使って本文を読む。 ※表示送りのキーだけでは行は替わらないので、行末まで読んだら、点字ディスプレイの上下方向キーを使用して次の行に移動します。 ●参考 ア.一番上の記事が最新のものになっています。 イ.一度読んだ記事には、件名の前に開封マークが追加されます。 ウ.新聞記事の一覧などでは、一覧の途中に(本文のない)日付の区切りが入ります。 (4) キーワードで検索 @チャンネル選択の<ニュース検索>で[Enter]。 A検索したい語を入力。 B通常は、記事の件名に含まれる語のみが検索対象となっている。検索条件を設定したい場合は[Tab]で移動し[スペース]でチェック状態を切り替える。 C[Enter]を押してしばらく待つと結果一覧が表示される。 ※一件も見つからなかった場合は、チャンネル選択の<ニュース検索>に戻る。 (5) 保存ボックスの作成 @[Alt]で<操作>メニューを開き<保存ボックス>で[Enter]。 A<新規作成>を[Enter]。 Bボックスの名前を入力して[Enter]。 Cチャンネル選択の一番下に、作成したボックスが表示される。 (6) 記事の保存 @本文表示中に[Alt]で操作メニューを開く。 A<保存ボックスへコピー>で[Enter]。 B保存ボックス名を確認する。 ※他のボックスを選びたいときには[下矢印キー]。 C[Enter]で保存完了。 5.MyBook (1) 基本的な操作方法  起動すると、本の種類を選ぶトップのメニューが現れ、一番上の<デイジーCD>の項目が表示されます。操作はMyMailと同じ要領です。  トップメニュー内でのテンキー移動も可能で、一番上の<デイジーCD>は[テンキー0]で、<オーディオブックCD>が[テンキー1]になっています。 (2) 終了方法 [Alt]でファイルメニューを開き<マイブックの終了>で[Enter]。 ※ショートカットは[Alt]+[F4]。 (3) サピエ図書館から点字図書を読む a)人気のある順から点字図書を開く @トップメニューの<サピエ図書館>で[Enter]。 A<点字図書>で[Enter]。 B<人気のある順>で[Enter]。 → しばらくするとランキングが表示される。 C[下矢印キー]で移動しながら読みたい本のタイトルを探す。  ※まだ読んでいないタイトルには 未読 と表示される。 D読みたい本が見つかったら[Enter]。  → しばらくすると 始めから または 前の続きから と表示される。 E[Tab]を押す。 → 点字図書の本文が表示される。 F点字ディスプレイのキーを使って本文を読む。 ※表示送りのキーだけでは行は替わらないので、行末まで読んだら、点字ディスプレイの上下方向キーを使用して次の行に移動してください。 G他の巻を読みたい場合は[Esc]で一覧に戻り、[下矢印キー]で移動する。 H他のタイトルを読みたいときは、さらにもう一度[Esc]を押す。 → タイトル一覧が表示される。 ●参考 ア. 始めから とは初めて読む点字図書の場合で、一度読んだことがある点字図書を再び開く場合は 前の続きから となり、前回読み終えた箇所から表示されます。 イ.サピエなどの点字データを読む場合には[Tab]で本文を表示する方法で問題ありませんが、将来テキストデータなどを読みたいときには、[Enter]で本文を表示させないと最後まで文章が表示されません。ただし[Enter]を押して本文を表示させると自動的に読み上げが行われ、音声に合わせて点字表示も変わってしまいます。[Esc]で読み上げを停止させる必要があります。 b)タイトル・著者名から点字図書を検索 @<点字図書>の画面で<タイトル・著者名検索>まで移動し[Enter]。  → <検索するタイトル>の入力状態になる。 A著者名で検索したい場合には[Tab]で<検索する著者名>の欄に移動。 B検索語を入力したら[Enter]。 ※ひらがなで入力が可能。  → しばらく待つと検索結果が表示される。 C検索結果が多い場合は 1ページ のように表示されるので[Enter]を押す。 Dタイトル一覧が表示されるので、[下矢印キー]で次の項目に移動しながら読みたいタイトルで[Enter]。 E以下はa)と同様。 ※複数ページの一覧で一番下までいっても読みたい本が見つからなかった場合、[Esc]でベージ選択の画面に戻り、[下矢印キー]を押してから[Enter]を押して、次のページを表示します。 c)本棚を作る  点字図書データなどを<本棚>に保存することができます。  データや図書の種類ごとに本棚を作ると、読みたい本をすぐに探すことができます。 @[Alt]でファイルメニューを開く。 A<本棚の新規作成>で[Enter]。 B<本棚の名前>の入力状態になるので、好きな名前を入力して[Enter]。  ※「新しい本棚」と書き込まれているが、文字の入力と同時に消えるので気にしなくてよい。 C新規の本棚がトップメニューの一番下に追加される。 d)本棚に図書を保存する @保存したい本のタイトルに移動する。 A[Alt]でファイルメニューを開き<本棚に保存>で[Enter]。 B本棚の名前が表示される。他の本棚に保存したいときは[下矢印キー]で移動。 C[Enter]を押してしばらくすると保存が終了し、タイトル一覧の表示に戻る。 e)本棚に保存した図書を読む @トップメニューの、図書データが保存されている本棚の名前のところで[Enter]。 A[下矢印キー]を押すと、タイトル一覧の一番上の項目が表示される。 B別のタイトルに移動するには、さらに[下矢印キー]で移動しながら読みたい本を選択。 C 始めから または 前の続きから と表示される。 D[Tab]を押す。 → 点字図書の本文が表示される。 E他のタイトルを読みたい場合は[Esc]を押し、一覧に戻る。 ●参考 点字図書のタイトル一覧では、保存(ダウンロード)した日付順にタイトルが並んでいます。下にいくほど保存された日付が古くなります。 f)本棚に保存した図書を削除する @本棚内のタイトル一覧で、削除したいタイトルに移動する。 A[Alt]でファイルメニューを開く。 B<削除>で[Enter]。 ※ショートカットは[Del]。  → 削除して良いかどうかのメッセージが表示される。 C削除したくなければ[Esc]を押す。 D[Enter]を押せば削除が実行される。 6.ALTAIR for Windows  ALTAIRはエディターを基本とするソフトウェアなので、メインメニューのようなものはありません。起動すると編集画面が現れるので、すぐに文字を入力することができます。この画面のままファンクションキーなどを押すことで、各機能を呼び出します。  各機能の多くはメニューバーから呼び出すこともできますが、ここではファンクションキーなどを使った操作を紹介します。 a)モードの切り替え [Ctrl]+[Del]を押すたびに<ブラウザ><メーラー><エディタ>と、モードが切り替わります。 b)操作方法  ファンクションキーを押すと、各コマンドの機能が点字で案内されます。確認後[Enter]を押すと実行されます。 メーラーモードではファンクションキーよりもショートカットキーを用いた方が操作しやすいようです。 c)ファイルの読み込み  エディタモードでは様々な種類のファイルをテキストに変換して読み込むことができます。Word、Excel、PowerPoint、一太郎でつくられた各ファイル、および、PDF形式、RTF形式、各種の点字ファイルに対応しています(対応していないバージョンもあります)。  ファイルを開くときは[F1]を押します。 d)電子辞書の検索  文書編集をしながら電子辞書の検索ができます。電子辞書は主にEPWING規格のCD-ROMに対応しています。詳細はALTAIRに付属のマニュアルをご参照ください。 e)ホームページの閲覧 @ブラウザモードに切り替える。 AURLの先頭またはリンクにカーソルを合わせて[F1]を押す。  → <ゲット>と表示される B[Enter]を押すとアクセスが開始され、該当ページが読み込まれる。 Cエディタの編集画面と同じ要領で、点字ディスプレイのキーを使ってページの内容を読む。 ※[Ctrl]+[上下矢印キー]でリンク項目だけを移動できます。 ●参考  行の多いページでは、読みたい記事付近のキーワードを検索することで、素早く移動できます。  ページを読み込んだ後でエディタモードに切り替え(画面表示はそのまま残ります)、[F3]の<サーチ>を選択して、検索キーワードを入力してください。 第4章 画面ユーザーに対する指導法 第1節 画面ユーザーとは 1 画面ユーザーの範囲 (1) 対象となる盲ろう者の範囲  盲ろう者を障害の程度で分類すると「全盲ろう」、「全盲難聴」、「弱視ろう」、「弱視難聴」に分けることができます。この内、第4章で対象とする盲ろう者は、「弱視ろう」、「弱視難聴」です。 −−−−−− 指導対象盲ろう者 弱視ろう(弱視+全ろう) 弱視難聴(弱視+難聴) −−−−−−  なお、この章では「弱視」を「ロービジョン(LV:Low Vision)」と表現しています。ロービジョンとは、眼鏡やコンタクトレンズ等で矯正してもなお、学習・日常生活に支障が生じる状態です。「弱視ろう」、「弱視難聴」を「ロービジョンの盲ろう者」と記述しています。   (2) パソコン操作におけるロービジョンの範囲  パソコン操作において、画面を使った操作「GUI(Graphical User Interface)」を活用できるロービジョンの範囲について考察します。下の表は身体障害者手帳の等級表における1〜3級までを抜粋したものです。   −−−−−− 身体障害者手帳における視覚障害の等級表 ・視力(矯正視力) ・視能率 = 8方向の視野角の合計 / 560  視能率の損失 = 100 − 視能率 1級 両眼の視力の和が0.01以下のもの 2級 1.両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの    2.両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの 3級 1.両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの    2.両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの −−−−−−  2級の判定基準に注目してください。視力による規定と、視能率による規定からなっているのが分かります。  視力による規定では両眼の視力の和が0.02〜0.04です。これは眼鏡やコンタクトなどで矯正された状態での視力です。視能率による規定では、視能率の損失率が95%以上となっています。視能率とは、8方向の視野角の合計が、正常者ではおよそ560度になりますので、それに対してその方の視野角の合計が正常者の何%になるかを表した数値です。  視力に関して考えていきますと、仮に左右の視力がそれぞれ0.01だとすると、視力の和は0.02となり、2級に該当する最も低い視力と言えます。視力0.01における視認可能な視角は1度40分です。これは、30cmの距離からディスプレイを見た場合、切れ目幅約8.7mm、直径約43.5mm、のランドルト環を判別できる視力です。中根[※1  中根 芳一( 印刷文字の見易さ及び適正照度に関する研究,日本建築学会論文報告集 111-120, 192,1975)]の研究によると、文字を読むために識別が要求される細部の寸法は、8画の漢字で文字寸法の1/14とされていますから、視力0.01の者に対して122mmのサイズの文字を提示すれば、文字の判読ができることになります。これは、 24インチのディスプレイを用いて横に4文字を表示することが可能です。視距離10cmなら12文字を表示できますね。すなわち、視力が0.01であれば、何とかGUIを使って、コンピューターの操作ができるのではないか、と期待できるわけです。  視能率の損失の点から考えていきます。視能率は、8方向の視野の合計により算出されますから、視能率の損失95%は、一方向 3.5度の状態であり、直径7度の円形の視野を残している状態は、2級に該当します。下図のように7度の視野があれば、残存視野で文字を判別できますので、視能率の損失95%においても、GUIを使ってパソコンを操作できることが期待されます。  渡辺[※2 渡辺 哲也、宮城 愛美、南谷 和範、長岡 英司:視覚障害者のパソコン利用状況調査2007電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 108:7-12,2008]が2007年に視覚障害者412名に対して調査を行っています。視覚障害の等級とパソコンを操作する際の文字について、1級では10.5%の人が、2級では67.4%の人が墨字を使っていることから、墨字を使ってパソコンを操作するのは概ね2〜6級の方だろうと考えられます。これは視覚障害者で言えば、全体の約63%です。 (3) 盲ろう者の約60%でGUI活用の可能性  盲ろう者においても、平成16、17年度に行われた生活実態調査で、60.4%の盲ろう者が画面を使ってパソコンの操作をしていると回答していますから、盲ろう者の半分以上の方は画面を活用している、あるいは活用できると考えられます。一方、同調査ではインターネットで情報を収集している盲ろう者は15%でしたから、盲ろう者はまだまだ、パソコンやインターネットを充分に活用できていないだろうと思われます。 (4) GUIを活用した操作方法習得のメリット  パソコンの操作習得の難易度について考えます。全盲者ではキーボードのみで操作し、スクリーンリーダーや点字ディスプレイを使ってパソコンからの出力を受け取りますが、そうしたGUIを使わない操作方法の習得は難易度が高いだろうということは想像できると思います。これに対して、画面を見ながら、マウスを使って操作する方法は、習得のためのハードルが低いでしょう。ですから、GUIを最適化するなどして、ロービジョンの盲ろう者がGUIを活用したパソコン操作ができるようになるのであれば、GUIの活用にチャレンジする価値があると思います。 −−−−−− PC操作方法による操作習得の難易度 ユーザーインターフェースとPC操作の難易度 操作方法:全盲操作方法 発信(コマンド):キーボードのみ 受信:スクリーンリーダ−、点字ディスプレイ  難易度:難 操作方法:LV 操作方法 発信(コマンド):マウス、キーボード 受信:GUI(画面を見る) 難易度:易 ・GUIを使わない操作方法は、難易度が高く、習得のハードルが高い。 ・可能であるならば、GUIを最適化して、マウスを使ったPC操作の習得にチャレンジ。 −−−−−− 2 「見えにくさ」の理解 (1) 見える仕組みの理解  見えにくさを理解するために、見える仕組みを理解する必要があります。視覚の経路を簡単に図示します。視刺激は眼球の表面から、角膜、虹彩(瞳孔)、水晶体、硝子体を通過し、網膜に投影されます。網膜には視細胞があり、ここで光刺激は神経の興奮に変換されて、視神経によって大脳の後頭葉に送られます。後頭葉に投影された情報は、さらに周囲の皮質などにより認識されることで初めて「ものが見えた」ということになります。  このように「ものが見える」ためには長い経路をたどっているので、そのどこかでトラブルが発生すると、見えない、見えにくいということが起こります。しかも、その程度や見えにくさは様々です。 (2) 「白濁」という見えにくさ  代表的な見えにくさを説明していきます。「白濁(はくだく)」と「羞明(しゅうめい)」です。白濁とは、白く濁ることですが、例えば、白内障という病気があります。これは眼球の中のレンズに相当する水晶体が、白く濁ってしまう病気です。晴眼者でも年齢とともに白く濁ってきます。これは老人性白内障と呼ばれて、水晶体の周囲から濁ってくることが多いようです。これに対して、症候性の白内障では、中心部から濁ってくる場合が多く、この場合は早期から、見えにくさを訴えることになります。水晶体が濁ると、まぶしさを感じます。普通の人でまぶしさを感じないような明るさで、まぶしいと感じる症状を「羞明」といいます。 −−−−−− 「白濁(はくだく)」と「羞明(しゅうめい)」 水晶体:透明でレンズの役割をする  正常:濁りのない水晶体  老人性白内障は周囲から濁りが出てくる  症候性の白内障は中心部より濁りが出てくることが多い −−−−−− (3) 「屈折異常」という見えにくさ  「屈折異常」とは、水晶体の欠損や異常、水晶体を調節する毛様体筋の異常、眼球の前後径の異常などにより、網膜で結像しないため、ピントが合わない、すなわち、ぼやけて見えにくい状態です。 (4) 「中心暗点」という見えにくさ  「中心暗点」とは、視野の中心には黄斑部と呼ばれる最も視力が良い部分があり、この部分に障害が起こった結果、著しく視力が低下する状態を言います。この場合、視野の周辺部で対象物を見ようとするため、対象物から視線をそらす仕草が目立つようになります。 (5) 視野狭窄という見えにくさ  「視野狭窄(しやきょうさく)」とは、見える範囲(視野)が狭くなっている状態です。正常な人の視野は下図のように上側60度、下側70度、鼻側60度、耳側100度ですが、視野狭窄の人は中央部の限られた範囲しか見えません。  視野狭窄は、網膜色素変性症や緑内障などで網膜が損傷した場合にしばしば起こります。 3 指導上の留意点 (1) ロービジョンの見え方は千差万別  前述したように代表的な見えにくさをご紹介しましたが、実際のロービジョンの盲ろう者の見え方は、それらの見えにくさをいくつも併せもっていたり、その程度も様々です。つまり、ロービジョンの盲ろう者は一人ひとりが全く異なる見え方をしているということを前提に指導法を考えていく必要があります。 (2) 購入したばかりのパソコンでは使えない  通常、購入したばかりのパソコンは、次のような配色、文字の大きさ、標準のマウスカーソルになっています。このままの画面表示設定ではロービジョンの盲ろう者はパソコンを使うことが難しいので、これらの設定をその盲ろう者が見やすいように設定する必要があります。 (3) パソコンの環境を最適化する  ロービジョンの盲ろう者のパソコン環境を最適化するには、まず、盲ろう者の視覚特性を評価します。次に視覚特性に応じて、画面デザインのカスタマイズ、ツールの処方、使い方のトレーニングをします。続いて調整をすることになります。 @LVの見え方を評価 A見え方に応じて  ・画面デザインのカスタマイズ  ・ツールの処方  ・使い方を練習 B調整 (4) GUI最適化項目  GUI最適化項目としては、およそこれらのものが挙げられます。 a)画面デザイン  ア.画面の配色  イ.文字サイズ  ウ.書体  エ.ウィンドウ境界線幅  オ.アイコンサイズ b)マウスポインター c)拡大表示ツール (5) その他の指導上の留意事項  部屋の照度は明るすぎても、暗すぎても操作に支障をきたします。窓からの光は逆光になったり、画面に映り込みをおこさないように注意する必要があります。  盲ろう者がパソコンを操作できるようになるためには、タッチタイピングあるいは点字入力のスキルは必須です。本人も指導者も、その重要性を理解して、焦らずじっくりと練習に励むことが大事です。  盲ろう者に対してパソコンの指導を行う上で、最も重要なことの一つとして「待つこと」が挙げられます。指導者は、盲ろう者のペースに応じて指導しなくてはなりません。盲ろう者が学習事項を理解し、獲得するために「待つこと」は欠かせません。 第2節 指導の実際 1 Windowsにおける設定 1.配色の設定  配色を盲ろう者の見え方に応じて設定するメリットは、「コントラストポラリティ効果」、「空間周波数とコントラスト感度」によって説明することができます。   (1) コントラストポラリティ効果  黒文字白背景配色と白文字黒背景配色では、どちらが速く読めたり、より小さな文字サイズで読みとれるでしょうか。3文字のひらがなを用いて計測をしてみると、晴眼者の多くでは、両者に大きな差は見られません。ロービジョン者では、前者の方が速く読める、より小さな文字サイズまで読めるという人や、その逆の人もいます。このように黒文字白背景と白文字黒背景のどちらの配色を選択するかで、パフォーマンスが向上する効果を「コントラストポラリティ効果」とよんでいます。ここで大事なことは、盲ろう者の見え方に応じて配色を決定するという視点です。 −−−−−− コントラストポラリティ効果を活用した支援 @B/W(黒文字白背景)とAW/B(白文字黒背景)では、どちらが速く読めるか?快適に読める範囲が広いか?を計測 晴眼者…B/WでもW/Bでもどちらでも良い。(図は省略) LV者の1例…B/Wの方が速く読める。(図は省略) LV者の1例…W/Bの方が速く読める。→「黒地に白」を用いる。(図は省略) −−−−−− (2) 空間周波数とコントラスト感度  「コントラスト」は輝度の高い部分と低い部分との差を示しています。マイケルソンコントラストがしばしば用いられます。コントラストが強いとはっきりとして見え、読み取りは容易になります。逆にコントラストが弱いとうっすらとしか見えず、読み取りが困難になります。「空間周波数」とは、「細かさ」を言います。コントラストが弱くなると、より高い空間周波数(より細かい)のオブジェクトが読み取り困難になることが知られています。  ロービジョンの盲ろう者では、コントラストを弱めていくと、晴眼者よりも早い段階で、読み取りが困難になることが多いです。従って、ロービジョンの盲ろう者に対しては、「ハイコントラスト黒」や「ハイコントラスト白」のようなコントラストの強い配色を選択することが、しばしば有効です。 (3) ハイコントラスト配色の設定方法 a)[Ctrl]+[Alt]+[PrtScr]を使う方法 @Windowsが起動している状態で[Ctrl]と[Alt]の両方を押した状態で[PrtScr]をぽんと押す。(以下[Ctrl]+[Alt]+[PrtScr]と記載)  ※すると画面には下のようなダイアログボックスが表示される。 Aここで<はい>のボタンを押すと、画面表示は「ハイコントラスト画面」になる。 b)<コンピューターの簡単操作センター>を使う方法 「ハイコントラスト黒」にする方法として最も手っ取り早いのはa)の方法ですが、[Ctrl]+[Alt]+[PrtScr]が無効になっていたり、もっと詳細な設定をしたい場合は<コンピューターの簡単操作センター>を使うと良いでしょう。 <コンピューターの簡単操作センター>の開き方は次の二つがあります。 @<スタートメニュー> A<すべてのプログラム> B<アクセサリ> C<コンピューターの簡単操作> D<コンピューターの簡単操作センター> または @<スタートメニュー> A<コントロールパネル> B<コンピューターの簡単操作センター> すると次のようなダイアログが表示されます。 −−−−−− ウィンドウズ7の設定画面 →図は省略。 −−−−−− <ハイコントラストのセットアップをします>をクリックします。 <ハイコントラストのテーマを選択します>をクリックします。  続いて、ハイコントラストの設定をします。配色のリストから<ハイコントラスト黒>を選択すると次のような表示になります。 −−−−−− ウィンドウズ7の設定画面 →図は省略。 −−−−−−  多くのテーマが並んでいる中から、<ベーシックテーマとハイコントラストテーマ>の群に含まれている中から、見やすいハイコントラストのテーマを選択してください。  クリックするごとに新しいテーマが適用されますので、最も見やすいテーマを選択して、そのウィンドウを閉じてください。  テーマを選ぶことで、あらかじめ設定されたデスクトップの背景、ウィンドウの色、サウンド、スクリーンセーバーにまとめて設定が変更されます。 c)デスクトップの<個人設定>を設定する方法  デスクトップを右クリックするとショートカットメニューが表示され、その中から<個人設定>を選択してください。すると上記のテーマの選択場面になりますので同様に最も見やすいテーマを選択してください。 2.文字サイズの設定 (1) 文字サイズ決定の視点  文字の大きさについては、「大きければ大きいほど見やすい」というように誤解されていることが多いと思います。実際には、そうではなく、「ちょうど良い大きさ」に設定する必要があります。では、ちょうど良い文字の大きさとはどのような大きさでしょうか。  ちょうど良い文字の大きさを考えるとき、MNREAD-Jが参考になります。MNREAD-Jでは、10文字×3行の文章を音読させ、読み上げるまでにかかる時間を計測し、読書速度を求めます。文字の大きさを徐々に小さくしていったときの読書速度の変化を分析して、最適な文字の大きさを推測する手法です。  晴眼者、ロービジョン者で計測した例を下に示します。左のグラフは晴眼者の読書曲線です。ある値より大きな文字であれば、文字の大きさにかかわらず、読書速度は変わりません。中のグラフは視力低下型ロービジョン者の読書曲線です。文字サイズ大きければ大きいほど、高い読書速度が得られます。全体的に読書速度は低いです。右のグラフは視野狭窄型ロービジョン者の読書曲線です。文字サイズが大きすぎても、小さすぎても読書速度が低下しています。良好な読書速度が得られる文字サイズの範囲が狭いです。このタイプの盲ろう者では、文字サイズが大きいとかえってパフォーマンスを落としてしまうということに注意しなくてはなりません。 −−−−−− 晴眼者、視力低下型LV、視野狭窄型LVの文字サイズと読字速度のグラフ →図は省略。 −−−−−− (2) 文字フォントの選択  文字サイズを決定する前に、文字フォントを選択する必要があります。下図は、異なる文字フォントを同じ文字サイズで表示していますが、ずいぶん印象が異なると思います。おおざっぱにですが、晴眼者では明朝体や教科書体といった細いフォントが、比較的視力の保たれる視野狭窄型ロービジョン者ではMSゴシック体が、視力低下型ロービジョン者ではHG創英角ゴシックなどの太いフォントが好まれる傾向があるようです。太いフォントでは画数の多い文字において、文字がつぶれて見えてしまうという欠点があります。  文字サイズを決定する前に、最適な文字フォントを選択しておくことが必要です。 (3) 文字サイズの設定方法  Windowsにおける表示文字サイズの設定は次の手順によります。あらかじめ適正な視距離を決めておき、その視距離で最も見やすい文字サイズを、各オブジェクトごとにサンプルを確認しながら、設定すると良いでしょう。 @デスクトップを右クリック。 Aショートカットメニューから<個人設定>をクリック。 B最下部の<ウィンドウの色>をクリック。 Cサンプルの該当部分をクリックするか、<指定する部分>で選択。 Dフォントサイズを設定する。 3.ウィンドウ境界線幅の設定  以下の手順でウィンドウ境界線幅を充分に視認できる太さに設定します。 @デスクトップを右クリック。 Aショートカットメニューから<個人設定>をクリック。 B最下部の<ウィンドウの色>をクリック。 C<指定する部分>で<ウィンドウの境界の間隔>を選択する。 Dサイズや色を設定する。 E<非アクティブウィンドウの境界>を選択する。 Fサイズや色を設定する。 4.アイコンサイズの設定  以下の手順でアイコンサイズを充分に視認できる太さに設定します。 @デスクトップを右クリック。 Aショートカットメニューから<個人設定>をクリック。 B最下部の<ウィンドウの色>をクリック。 C<指定する部分>で<アイコン>を選択する。 Dサイズを設定する。 5.マウスポインターの設定 (1) マウスポインターの視認性を向上する方法  マウスポインターの視認性を向上させる方法として、  a)マウスのプロパティを設定する方法  b)あんだーまうす君  c)でかポインタ  d)tarzanMouse(ターザンマウス) などが挙げられます、ここではa)についてのみ解説します。  ただし、a)による方法は、比較的視機能が良好に保たれている盲ろう者には有効ですが、それでは不充分な場合も少なくありません。その場合は、b)からd)を試してください。これらは後述の3.あんだーまうす君、4.でかポインタ、5.tarzanMouseで解説します。 (2) マウスのプロパティを設定する方法 @<コントロールパネル>の<マウス>でマウスの設定のダイアログを開く。 Aマウスポインターを<Windowsスタンダード特大フォント>として大きなマウスポインターに変更。 Bポインターオプションで  <ポインターを自動的に規定のボタン上に移動する>  <ポインターの軌跡を表示する>  <Ctrlキーを押すとポインターの位置を表示する>などにチェックを入れる。 C<OK>ボタンでダイアログを閉じる。 Dマウスを見つけるときは、画面の左上隅に集めて見つけるようにする。 2 画面の視認性向上に役立つソフト 1.拡大鏡  Windows 7には標準で拡大鏡という画面拡大ソフトがインストールされています。拡大鏡は次のa)またはb)のように起動できます. (1) <コンピューターの簡単操作センター>で設定する方法 @<コンピューターの簡単操作センター>を開く。  ※本節の「1 Windowsにおける設定」の「1.配色の設定」を参照。 A<拡大鏡を使う>のチェックボックスにチェックを入れる。 これで拡大鏡が使用できるようになります。 (2) 直接コマンド入力によって拡大鏡を起動する方法 @スタートボタンをクリック ※または[ウィンドウズ]を押す。 A「magnify」と入力する。 B[Enter]を押す。  拡大鏡が起動したら、見え方にあわせ、倍率を設定します。  その他、<マウスポインターの動きを追う>のチェックボックスにチェックを入れて、マウスカーソルのある部分を拡大するようにします。  さらに<キーボードフォーカスを拡大する>と<テキスト挿入位置に拡大鏡を合わせる>のチェックボックスにチェックを入れ、文字入力部分が自動的に拡大されるように設定すると良いでしょう。  <色反転を有効にする>チェックボックスにチェックを入れると、拡大表示部分が反転し、他の部分との区別がしやすくなりますが、まぶしさを感じる場合もありますので、実際に試しながら調整をしてください。 2.老眼マウス  「老眼マウス」というフリーソフトを使って拡大表示させる方法について説明します。  「老眼マウス」をあらかじめダウンロードしてインストールしておきます。起動すると、マウスカーソルのある部分が拡大表示されます。タスクトレイにある「老眼マウス」のアイコンをクリックすると、設定ダイアログが表示されますので、ロービジョンの盲ろう者の見え方に合わせてカスタマイズしてください。   (1) ダウンロード  下のホームページよりダウンロードします。  【製作】ゆきやまネット  【URL】http://yukiyama.net/rougan/    (2) 老眼マウスの起動 @あらかじめインストールしておく。 A老眼マウスのアイコン(<RouganMouse.exe>)をダブルクリック、  またはスタートアップに登録しておく。 (3) 各種設定 a)一時的なオン/オフ  画面に応じて一時的に使用を休止することができます。操作はマウスでもキーボードでもできるよう選択することができます。  ※初期設定では[Ctrl]を2回たたくとオン/オフの切り替えができます。 @タスクトレイにある老眼マウスのアイコンを右クリックし設定画面を開く。 A<消したままにしたり、必要なときに戻したりできます>で操作を選択する。 b)レンズの大きさ、倍率  倍率は2倍から10倍を選択でき、レンズは縦横の大きさを変更することができます。 @設定画面の<レンズの大きさ、動き、倍率、表示方法>で変更する。 c)その他  その他の設定も比較的簡単にできるので、盲ろう者もしくは指導者で試してみてください。 (4) 老眼マウスの終了 @タスクトレイのアイコンをクリックし設定画面を表示させる。 A<アプリの終了>をクリック。 3.でかポインタ  「でかポインタ」はフリーソフトです。あらかじめダウンロードしておきます。  実行すると、巨大なマウスポインターが表示されます。大きさは3種類あるので、最も適した大きさをダウンロードすると良いです。  主に視力低下型ロービジョンの盲ろう者に適しています。 (1) ダウンロード  下記のホームページよりダウンロードします。   【製作】筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 准教授 小林 真   【URL】http://www.cs.k.tsukuba-tech.ac.jp/labo/koba/software/dpointer.php (2) でかポインタの起動 @あらかじめインストールしておく。 Aでかポインタのアイコンをダブルクリック、またはスタートアップに登録しておく。 (3) でかポインタの終了方法 @タスクバー上のタスク<でかポインタ>をクリック。  ※[Alt]+[Tab]でタスクを切り替えることもできる。 A[Esc]を押す。 (4) 便利な機能 一時消去 [ウィンドウズ]+[Ctrl] 再描画 [ウィンドウズ]+[Alt] 画面中央にマウスポインターが移動 [ウィンドウズ]+[Shift] 4.あんだーまうす君  「あんだーまうす君」はフリーソフトです。あらかじめダウンロードしておきます。  起動するとマウスカーソルに縦横の線が表示されます。線色は数種類あり、常に起動しておきたい場合は「タスクトレイ版」、色や太さを変更できる「多機能版」もありますので、適したものをダウンロードすると良いでしょう。  主に視野狭窄型のロービジョンの盲ろう者に対してマウスカーソルを見つけやすくする効果があります。 (1) ダウンロード  下記のホームページよりダウンロードします。  【製作】筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 准教授 小林 真  【URL】http://www.cs.k.tsukuba-tech.ac.jp/labo/koba/software/umous.php (2) あんだーまうす君の起動 @あらかじめインストールしておく。  ※線色は背景を考慮して決める。 Aアイコンをダブルクリック、またはスタートアップに登録しておく。 (3) あんだーまうす君の終了方法 @タスクバー上のタスク<あんだーまうす君>をクリック。  ※[Alt]+[Tab]でタスクを切り替えることもできる。 A[Esc]を押す。 (4) 便利な機能 一時消去 [ウィンドウズ]+[Ctrl] 再描画 [ウィンドウズ]+[Alt] 画面中央にマウスポインターが移動 [ウィンドウズ]+[Shift] 5.tarzanMouse(ターザンマウス)  「tarzanMouse」は著者が開発したマウスポインターです。マウスポインターを動かしているときだけ、マウスに縦横の線、マウス位置に三角形のマーカーが表示されます。マウスポインターが停止しているときには、これらの線やマーカーは表示されません。マウス操作が必要なときだけ表示され、それ以外のときには邪魔にならないように表示されないというメリットがあります。   (1) ダウンロード  下記のURLをアドレスバーに入力しダウンロードします。  【製作】愛媛県立松山盲学校 教諭 高橋 信行  【URL】http://www.db-tarzan.no-ip.info/library/tarzanMouse/tarzanMouse20101120.exe (2) tarzanMouseの起動 @あらかじめインストールしておく。 Aアイコンをクリックして起動するかスタートアップに登録しておく。 ※マウスカーソルを動かしたときだけ、補助機能が働く。 (3) tarzanMouseの終了方法 @[Alt]+[Tab]でタスクを切り替える。 A[Alt]+[F4]で終了。 6.ZoomText Magnifier(ズームテキスト マグニファイア)  ZoomText Magnifier(以下ZoomText)は製品です。  ロービジョン者がパソコンの画面を使って操作するための様々な機能をもっています。詳細については、ホームページをご覧ください。体験版をダウンロードして試用することもできます。  ここでは、ZoomTextの機能の内、いくつかを紹介します。  【発売元】日本電気株式会社  【URL】http://121ware.com/product/software/zoomtext/index2.html  【価格】62,790円(税込)   ※価格は2012年2月現在 (1) 色の設定  ZoomTextを使うと簡単に画面表示配色を設定することができます。  あらかじめ用意されている「輝度反転」、「色の反転」、「黒に黄色」、「青系」、「白黒」、「白黒反転」、「灰色を抜く」の設定の他、カスタム設定として細かな設定ができます。 (2) 拡大表示設定  Windowsの表示画面を1倍から36倍まで拡大して表示できます。また、拡大した画面は全画面で表示したり、任意の大きさで部分表示し標準画面と同時に表示することができます。 (3) マウスポインターを見つけやすくする  代表例としての<十字と黄色のポインタ><円と赤いポインタ><大きな緑のポインタ><Ctrlキーで照準><移動時に円><大きな黄色のポインタ>から選択できる他、自由にカスタマイズすることもできます。 (4) カーソルを見つけやすくする  ZoomTextを使うと、文字カーソルを見つけやすくすることができます。代表例として用意されている<青いくさび><緑の円><赤い枠><マゼンタの細い枠>の他、カスタマイズして使うこともできます。 (5) 画面から文字などを検索する  ロービジョンの盲ろう者では、表示画面からその文字が表示されている箇所を探し出すことが困難な場合が少なくありません。そのようなとき、ZoomTextを使うと、デスクトップやウィンドウから文字が表示されている箇所を検索して見つけることができます。 3 各アプリケーションにおける視認性向上のための設定 1.VoicePopper  VoicePopperの詳しい使い方は第3章で詳しく記述してあります。ここではロービジョンの盲ろう者がVoice Popperを使う際の、フォント、フォントサイズ、配色の設定について紹介します。  各メニューでクリックするか[Enter]または[右矢印キー]を押してください。 (1) フォント選択 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<表示の設定> C<フォント種類> (2) フォントサイズ設定 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<表示の設定> C<フォントサイズ設定> (3) 画面配色選択  <Windows標準の配色><弱視者むけの配色><晴眼者むけの配色><オリジナル配色>から選ぶことができます。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<表示の設定> C<画面配色選択> (4) オリジナル配色  文字色、背景色、カーソル文字色、カーソル背景色をそれぞれ指定することができ、一度設定した配色は<画面配色選択>の<オリジナル配色>に登録されます。 @<メインメニュー> A<オプション設定> B<表示の設定> C<オリジナル配色設定> D<文字色設定> <背景色設定> <カーソル文字色設定> <カーソル背景色設定>のそれぞれの色を設定する。 2.MyMail(マイメール)  MyMailについては第3章で詳しく解説されているので、ここでは画面設定の変更について記載します。 (1) 文字サイズの変更  [F6]を押すごとに、文字サイズが大きく表示されるようになります。設定可能な最大サイズの次に、最小サイズに戻りますので、[F6]を何度も押しながら最も見やすいサイズを簡単に設定することができます。 (2) メニューとダイアログの拡大率  メニューバーやダイアログの表示を2段階まで拡大できます。 @メニューバーの<表示>をクリック。 A<メニューのダイアログの拡大率>をクリック。 B拡大率を選択する。 (3) 表示オプション  その他に文字色や背景色も設定できます。 @メニューバーの<環境>をクリック。 A<表示オプション>をクリック。 B各項目で設定変更する。 3.Internet Explorer  盲ろう者の生活実態調査の結果から、盲ろう者のパソコン習得の動機として最も高いのは、メールの活用と、ホームページの閲覧です。ですから、Internet Explorerの表示をロービジョンの盲ろう者にとって見やすいように設定することは重要です。設定方法を解説します。   (1) 表示色の設定 @メニューバーの<ツール>をクリック。 A<インターネットオプション>をクリック。 B<全般>タブをクリック。 C<色>ボタンをクリックし設定ダイアログを開く。 D<Windowsの色を使用する>のチェックを外し、<文字列><背景><未表示>  <表示済><ポイント時の色>の色を設定する。  ※「ハイコントラスト黒」の配色が適している盲ろう者であれば、<背景>を<黒>などの暗い色に、その他の部分は高輝度の色を選択すると良い。 (2) フォントの設定 @<インターネットオプション>の<全般>タブで<フォント>ボタンをクリックし、設定ダイアログを開く。 A見やすいフォントを選択する。  「MSゴシック」などのフォントを選択すると良い。 (3) ユーザー補助機能の利用  ウェブサイト側で、背景色や文字色を指定している場合は、上記の設定が反映されないので、Internet Explorerのユーザー補助機能において、ウェブサイト側で指定したフォントサイズや色などを使わない設定にする必要があります。 @<インターネットオプション>の<全般>タブで<ユーザー補助>ボタンをクリックし設定ダイアログを開く。 A<Webページで指定された色を使わない><Webページで指定されたフォントスタイルを使わない><Webページで指定されたフォントサイズを使わない>の各チェックボックスにチェックを入れる。 (4) ユーザースタイルシートを使う方法  さらに高度な支援方法として、ユーザースタイルシートを使う方法があります。ロービジョンの盲ろう者の見え方に合わせ作成したユーザースタイルシートを使い、すべてのウェブサイトを個々の盲ろう者に適したスタイルで表示させ、ウェブサイトの視認性向上を図ります。ユーザースタイルシートを作成するには、FlashCSSなどのフリーソフトがいくつかあるので試してみてください。 @<インターネットオプション>の<全般>タブで<ユーザー補助>ボタンをクリックし、設定ダイアログを開く。 A<自分のスタイルシートでドキュメントの書式を設定する>にチェックを入れる。 Bmy.cssを作成してそれを指定する。 4.Firefox(ファイヤーフォックス)  Internet Explorer以外にも、ロービジョンの盲ろう者に使いやすいブラウザがあります。Firefoxはその一つです。[Ctrl]+マウスホイールで拡大率を上げても、画面から横幅がはみ出ずレイアウトが維持されやすい印象があります。色々なブラウザを使い比べてみて最も適したブラウザを使うと良いでしょう。  ここではFirefoxの設定を紹介します。 (1) 画面の色とフォントの設定 @<ツール> A<オプション>でダイアログを表示。 B<コンテンツ>をクリック。 C<フォントと配色>の欄で<規定のフォント>を「MSゴシック」などに設定し、文字サイズも見やすいサイズにする。 D<配色設定>のボタンをクリックし、<テキスト> <背景> <未訪問リンク> <訪問済リンク>の色をそれぞれ見やすい色に設定。  ※<ハイコントラスト黒>の配色が適している盲ろう者であれば、<背景>に黒、その他の部分には高輝度の色を選択すると良い。 E<Webページが指定した配色を優先する>チェックボックスはチェックを外しておく。  ※これにより、ウェブページ側で背景を白色に指定していても上記の設定が優先される。 (2) 表示倍率のリアルタイム調節  表示サイズを拡大または縮小することができ、マウスでもキーボードでも操作が可能です。 ア.[Ctrl]を押しながらマウスのホイールを回すことで拡大や縮小。 イ.[Ctrl]+[+](拡大)  [Ctrl]+[−](縮小) 5.Microsoft Word(マイクロソフト ワード)  Microsoft Wordでは、[Ctrl]+マウスホイールで表示倍率をリアルタイムに調節できます。全体を閲覧するときは縮小して、細部を見るときは拡大率を上げるということが、簡単にできます。ロービジョンの盲ろう者には必須の操作テクニックになります。  拡大率を上げたときに、表示部が画面からはみ出して、横スクロールが必要になります。このことはパフォーマンスを著しく低下させるので、オプション設定で、アウトライン表示における横スクロールを発生させない設定をすることが重要です。 (1) 横スクロールを生じさせない設定 @オフィスボタンをクリック。 A<Wordオプション>をクリック。 B<詳細設定>をクリック。 C<構成内容の表示>で<文書ウィンドウの幅に合わせて文字列を折り返す>のチェックボックスにチェックを入れる。 (2) 表示倍率のリアルタイム調節  [Ctrl]+マウスホイール (3) アウトライン表示への切り替え  [Ctrl]+[Alt]+[ O ] 6.Microsoft Excel(マイクロソフト エクセル)  Microsoft Excelにおいても、[Ctrl]+マウスホイールの操作で、表示倍率をリアルタイムに調節することができます。 第5章 ブレイルセンス 1 ブレイルセンスの紹介 1.概要  ブレイルセンスは、いつでもどこでも、電子メールやインターネット等ができるWindows CE搭載のPDA(携帯情報端末)です。  本体には点字入力キーボード、点字ディスプレイ(点字出力装置)、音声出力機能が装備されているため、盲ろう者のモバイル用の情報ツールとして活用することができます。 例えば、外出途中に相手と連絡を取りたいとき、電子メールを活用したり、インターネットを利用して電車の時刻表を調べることができます。  その他に、アクセサリとして時計やタイマーなど、日常生活においても便利に使える機能が豊富に用意されています。 2.対象となる盲ろう者  ブレイルセンスは (1) 自宅・外出先等利用する場所を選ばないこと。 (2) ソフトや周辺機器の購入の手間が省けること。 (3) 点字入力を中心としたキー配置のため操作が簡便なこと。 が大きなメリットです。  そのため、点字を利用する盲ろう者において (1) 外出先でメールやインターネットを利用したい人。 (2) メール・ニュース閲覧・読書等、基本的な機能に限定して使う人。 (3) 多くのキー操作を覚えるのが苦手な人。 等に利用しやすい機器と言えます。 3.主な機能 (1) ファイル管理  フォルダの作成や移動、ファイルの削除等ができます。また、ファイル管理からブレイルセンスがサポートしているファイルを読み込むことができます。 (2) ワードプロセッサー  文書を日本語変換で作成することができ、テキストファイルとして保存することができます。また、点字入力キーが装備されているため、点字タイプライターのようにキーを叩いて日本語入力ができます。読み込み可能なファイルはtxt、brl、bes、hbl、docフォーマット等です。 (3) 電子メール  無線LAN等で電子メールの送受信を行うことができます。また、複数アカウントにも対応しています。 (4) GPSナビ  オプションのGPSレシーバーと地図データを利用すると、現在位置や目的地までの行き方などを検索することができます。 (5) プログラム  インターネットを通じて様々な情報を調べたり閲覧できるRSSリーダーや、乗り換え検索、簡単スケジューラ、サピエ図書館などが使えます。 (6) ソーシャルネットワーキング  インターネットを利用してツイッターやMSNメッセンジャーなどのツールが利用できます。 (7) ウェブブラウザ ホームページの閲覧や検索サイトを利用した情報収集ができます。 (8) アドレス帳  氏名や住所、電話番号、メールアドレス等を管理します。電子メールでメールアドレスを入力するときにこのアドレス帳を利用します。 4.ブレイルセンスプラスとブレイルセンスオンハンドの主な違い  現在ブレイルセンスシリーズはブレイルセンスプラス(以下、センスプラス)とブレイルセンスオンハンド(以下、オンハンド)の2種類が発売されています。 (1) 点字ディスプレイ  点字表示部のマス数がセンスプラスは32マス、オンハンドは18マスです。 (2) 画面表示  センスプラスには液晶ディスプレイが内蔵されているため、目の見える人のサポートが受けられます。しかしオンハンドには液晶ディスプレイが内蔵されておらず、目の見える人のサポートを受けるには専用の外付け液晶ディスプレイを購入する必要があります。 (3) ネットワーク  センスプラスは有線LANに対応していますが、オンハンドは有線LANに対応していません。従って、オンハンドの場合は主に無線LANでの接続になります。 (4) 大きさや重量  センスプラスは比較的大きく約1kgと重いですが、オンハンドは弁当箱ほどの大きさで425gと軽く携帯に適しています。 (5) 電源スイッチやキーロックスイッチ  電源スイッチのオン/オフの切り替え方法やキーロックスイッチの配置が異なっています。 (6) メモリ拡張機能  センスプラスはCFカードやSDカード、USBなどでメモリの拡張ができます。  一方、オンハンドはCFカードは使えずSDカードとUSBのみの拡張となります。また、USBメモリを利用するには、オンハンドのパッケージに同梱されている専用のUSB変換ケーブルが必要です。  なお、電源を入れてからの操作方法は共通です。 5.主な仕様と価格(価格は2012年2月現在) (1) ブレイルセンスプラス サイズ:横25cm、奥行12.8cm、高さ3.9cm 重さ:924g キーボード:パーキンス入力方式の点字キー 点字表示部:32マス 内蔵メモリ:8GB ネットワーク: 有線LAN、無線LAN、Bluetooth インターフェース:SDスロット、CFスロット、USBマスター、USB OTG、LANポート、 シリアルポート ビデオ出力:超小型液晶ディスプレイ(5cm×1cm)、VGA サウンド:内蔵ステレオスピーカー、ヘッドホンジャック 音声録音:内蔵マイク、外付けマイクジャック バッテリー:リチウムイオン(着脱式)、バックアップバッテリー内蔵 連続使用時間:約15時間 個人価格:580,000円(非課税) (2) ブレイルセンスオンハンド サイズ:横17.2cm 奥行9.0cm、高さ2.7cm 重さ:425g キーボード:パーキンス入力方式の点字キー 点字表示部:18マス 内蔵メモリ:4GB ネットワーク: 無線LAN、Bluetooth インターフェース:USB OTG、SDスロット(SDHC対応) サウンド:内蔵ステレオスピーカー、イヤホンジャック 音声録音:内蔵マイク、外付けマイクジャック ナビゲーション:内蔵GPSレシーバー、内蔵電子コンパス ※別売の地図データ等が必要。 バッテリー:リチウムイオン(着脱式)、スペアバッテリー有り 連続使用時間:約6時間 個人価格:383,500円(非課税) (3) 発売元  有限会社エクストラ  【URL】http://www.extra.co.jp/ 2 ブレイルセンスの基本操作 1.キーと電源スイッチについて (1) キーの配列  操作キーの配列はセンスプラスとオンハンド共通です。 [スペース] … 中央にある横長のキー。 [点字キー] … [スペース]の上部に左右3個ずつある縦長のキー。 [エンター] … 一番右の縦長のキー。 [バックスペース] … 一番左の縦長のキー。 [ファンクション] … [スペース]をはさんで左右2個ずつある横長のキー。左から[F1][F2][F3][F4]。 [スクロール] … 点字ディスプレイの左右に2個ずつあるキー。上が[上スクロール]、下が[下スクロール]。 [タッチカーソル] … 点字表示部の上にある小さなキー。点字の各マスの上にあるので、ブレイルセンスプラスは32個、ブレイルセンスオンハンドは18個ある。 (2) 点字キーについて  ブレイルセンスはパーキンス方式で入力します。 左手 … 人差し指が[ 1 ]の点、中指が[ 2 ]の点、薬指が[ 3 ]の点 右手 … 人差し指が[ 4 ]の点、中指が[ 5 ]の点、薬指が[ 6 ]の点 (3) ファンクションキーの役割 [F1] … スタートボタン(スタートメニューが開きます。[F1]を押したときの表示は<ファイル管理>となります) [F2] … Alt(メニューを表示させるときに押します) [F3] … Tab(ダイアログ内での項目間を移動するときに押します) [F4] … Esc(現在の操作を取り消したいときに押します) (4) 電源スイッチとキーロックスイッチ  センスプラスとオンハンドでは電源スイッチの入れ方やキーロックスイッチの配置が異なっています。 a)センスプラス  電源スイッチは本体の前面の一番右にあります。電源スイッチを右方向に引っ張ってはなすと、電源がオンになります。電源スイッチを左方向に引っ張ってはなすと、電源がオフになります。  キーロックスイッチは本体の前面の一番左にあり、3段階で切り替えることができます。一番左がキーロック、真ん中がオーディオボタンのみ、一番右がキーロック解除です。キーロックはカバンの中で間違って電源スイッチが押されるというようなことを防ぎます。 b)オンハンド  電源スイッチは本体の前面の一番右にあります。電源スイッチを右方向に引っ張ってはなすたびに、電源をオン/オフに切り替えることができます。  キーロックスイッチは本体の左側面の手前にあり、3段階で切り替えることができます。一番手前がキーロック解除、真ん中がオーディオボタンのみ、一番奥がキーロックです。 (5) リセットボタン  リセットボタンを押すことでブレイルセンスを強制的に再起動させることができます。 a)センスプラス  センスプラスのリセットボタンは、背面の一番左側にあります。(写真は後ろから撮っているので右側になっています) b)オンハンド  オンハンドのリセットボタンは背面の少し右寄りにあります。(写真は後ろから撮っているので左寄りです) 2.基本操作 (1) スタートメニューと各プログラムの起動  ブレイルセンスの初期設定では電源を入れると<ファイル管理>と表示されます。これはスタートメニューの一番上のプログラムになります。   a)プログラムを選んで起動  点字ディスプレイの左右にある[下スクロール]を押すと<電子メール>などのプログラム名が表示されます。このように上下スクロールボタンを使ってプログラムを選択します。プログラムを起動するには[エンター]を押します。 b)ショートカットキーで起動  スタートメニューからそれぞれのプログラム名の最後に割り当てられているアルファベットを入力することで起動することもできます。 ●例  プログラム名が 電子メール e の場合、[ e(1・5)]を押す。  ※[ e ]の前に外字符(5・6)を打つ必要はありません。 (2) 各プログラムの終了  電子メールやウェブブラウザを終了させたいときは[スペース]を押しながら[ z(1・3・5・6)]をぽんと押します。 (3) ホットキー  ブレイルセンスには様々なホットキー(メールの受信やファイルの保存など)が割り当てられています。  例えば、デリートはDeleteの頭文字[ d(1・4・5)]と[スペース]を組み合わせて使います。文章を編集しているときに、削除したい文字のところにカーソルを合わせて[スペース]と[ d(1・4・5)]を上記の要領で押すと、その文字を削除することができます。  ※これ以降は、[スペース]+[d(1・4・5)]と表記します。 (4) 文字入力  入力モードを日本語変換と半角英数に切り替えることができます。なお、基本は日本語変換入力モードになっています。 a)日本語変換と半角英数の切り替え  [F1]+[F3]を同時に押すことで日本語変換と英語を交互に切り替えることができます。   b)日本語変換入力  日本語変換での入力は、[点字キー]でかなを入力し[スペース]を押すと漢字などの変換候補が表示されます。[スペース]を何度か押し、目的の漢字を見つけたら[エンター]を押し確定させます。 (5) 操作のキャンセル  現在行っている操作を取り消したいときは[F4]を押すと前の状態に戻ります。 (6) 点字表示のスクロール  ワードプロセッサーやメールの本文など文章を読むときは、[上下スクロール]を使います。[上スクロール]で現在位置より前の文を、[下スクロール]で現在位置より後ろの文を読むことができます。  なお、[上下スクロール]は左右にありますが、初期設定ではどちらも機能は同じです。左手で点字を読む人は右の[上下スクロール]を、右手で点字を読む人は左の[上下スクロール]を使います。 (7) 矢印キーの機能  パソコンの矢印キーと同等の機能を以下の操作ですることができます。 上矢印キー … [スペース]+[ 1 ] 下矢印キー … [スペース]+[ 4 ] 左矢印キー … [スペース]+[ 3 ] 右矢印キー … [スペース]+[ 6 ] トップ(文頭)への移動 … [スペース]+[ 1・2・3 ] エンド(文末)への移動 … [スペース]+[ 4・5・6 ] (8) リストボックスやコンボボックス内の選択 上方向へ移動 … [スペース]+[ 1 ] 下方向へ移動 … [スペース]+[ 4 ] (9) ダイアログの項目間の移動 次の項目に移動するとき … [F3] 前の項目に移動するとき … [スペース]+[F3] (10) タッチカーソルを利用した編集  ワードプロセッサーやメール本文で文章を編集する際、[スペース]+[ 3 ]や[スペース]+[ 6 ]でカーソル位置を一つずつ移動させることができます。  また、カーソルを移動させたい点字のすぐ上にある[タッチカーソル]を押すことで、カーソルを即座に移動させることもできます。 (11) 問い合わせメッセージの選択  プログラム終了時にファイル保存等の問い合わせメッセージが表示されることがあります。そのときは[上スクロール]または[下スクロール]を押して<はい><いいえ>(ファイル保存の有無)を選択し[エンター]を押してください。 (12) 覚えておきたいホットキー バッテリー残量の確認 … [スペース]+[ 1・6 ] 現在時刻の確認 … [スペース]+[ t(2・3・4・5)] ※タイムの「 t 」 ネットワーク状態の確認 … [スペース]+[ n(1・3・4・5)] ※ネットワークの「 n 」 ※いずれも[F4]を押すと各表示が消えて元の画面に戻ります。 (13) 電源のオン/オフ  電源スイッチをオンにしたとき、電源をオフにする前の状態に復帰します。  例えば、電子メールの受信メール一覧で電源スイッチをオフにすると、次に電源スイッチをオンにしたとき、起動後に電子メールの受信メール一覧が表示されます。 3 ブレイルセンスの設定  ここでは盲ろう者がブレイルセンスを快適に使えるよう、あらかじめ設定しておいた方が良い機能を紹介します。 1.オプション設定  スタートメニューの<オプション設定>では、音声や点字、液晶ディスプレイ(センスプラスのみ)の出力設定ができます。また、無線LANやプリンター関係など各デバイスの設定も行うことができます。  初期設定の状態では使いづらいので、点字の触読能力や聞こえ方に応じて最初にオプション設定で必要箇所の設定変更を行ってください。 (1) オプション設定の基本操作 @電源スイッチをオンにしスタートメニューを表示させる。  ※起動したときの表示が<ファイル管理>ではない場合は[F1]を押す。 A[下スクロール]を押し<オプション設定>に移動する。 B[エンター]を押す。 C[スペース]+[ 1 ]または[スペース]+[ 4 ]を押し各項目に移動する。 D 設定を変更したい項目で[スペース]を押し、設定を変更する。 E操作手順のBとCを繰り返し他の設定の変更を行う。 F[エンター]を押す。 G<オプション設定完了>と表示され、スタートメニューの<オプション設定>に戻る。 (2) 設定のポイント  ここでは初心者を想定し、初期設定の状態から設定変更した方が良いと思われる項目を列挙しました。 a)点字カーソル  カーソル(7・8の点)の表示をオン/オフに変更できます。点字の触読に慣れていない場合は<オフ>にしてください。 b)メッセージ表示時間  <データをバックアップ中><メールがありません。>など作業状況や状態を表すメッセージを何秒表示させるか設定ができます。0秒〜10秒の間で選択できますので、点字の触読に慣れていない場合は長く設定してください。 c)音声  音声出力のオン/オフが設定できます。音声ガイドを必要としない場合は<オフ>にしてください。   d)内蔵ディスプレイ  液晶ディスプレイに点字ディスプレイと同じ内容を表示させることができます。液晶ディスプレイを使用する場合は<オン>にしてください。  ※センスプラスだけの設定です。 e)LCDディスプレイの切り替え  ディスプレイ表示を天地逆に変更することができます。これは向かい合わせに座っている相手がディスプレイの文字を読みやすいようにするためです。天地逆に表示させる場合は<オン>にしてください。  ※センスプラスだけの設定です。   f)警告音  操作のエラーがあったときに鳴ります。警告音を鳴らしたくない場合は<オフ>にしてください。   g)起動サウンド  ブレイルセンスの起動と終了時に音楽が流れます。起動・終了音を鳴らしたくない場合は<オフ>にしてください。   h)コントロール情報  現在どのような項目にいるかをガイドするステータス情報の表示に関する設定です。例えば、エディットボックスにいるのかリストビューにいるのかといった情報の表示/非表示などが選択できます。点字の触読に慣れていない場合は<オフ>にしてください。   i)ショートカットキー情報  プログラムやメニューの名前の後ろに表示されるショートカットキー情報を非表示にできます。余計な点字を読みたくないという場合は<オフ>にしてください。 j)節電モード  指定した時間が経過すると自動的に電源が切れる機能です。この機能を必要としない場合は<オフ>にしてください。   k)今日の予定確認  ブレイルセンスの電源を入れたときにその日の予定を表示する機能です。予定帳を使わない方は<オフ>にしてください。   l)無線LAN  無線LANでネット接続する場合は<オン>にしてください。 m)GPS  内蔵のGPSレシーバーを使わない場合は<オフ>にしてください。 盲ろう者のニーズや使用するデバイスに合わせてその他の機能もカスタマイズしてください。 (3) オプション設定のバックアップ  バッテリーが切れた後そのまま放置するとオプション設定が初期設定に戻ってしまいます。 特にオンハンドの場合はバッテリーが切れた後1分以上放置すると初期設定に戻ってしまうので注意が必要です。  従って、オプション設定はバックアップをとるようにしてください。オプション設定をバックアップしておけば、初期設定に戻ってしまってもすぐに復旧することができます。  次のステップ1、ステップ2の順でバックアップを行ってください。 ステップ1:<backup>フォルダの作成 @[F1]を押してスタートメニューの<ファイル管理>に移動する。 A[エンター]を押す。→ <flashdisk>と表示される。 B[エンター]を押す。 C[エンター]+[ f(1・2・4)]を押す。 → <新しいフォルダ名>と表示される。 D[F1]+[F3]を押して入力モードを<英語>に切り替える。 E「backup」と入力する。(注1) F[F1]+[F3]を押して入力モードを<日本語変換>に戻す。 G[エンター]を押す。→ 「backup」フォルダが作成される。 H[エンター]+[ z(1・3・5・6)]を2回押してスタートメニューに戻る。 (注1)日本語で「イアウナハネ」と入力すれば「backup」という英語点字になります。 ステップ2:バックアップ @スタートメニューで[下スクロール]を押して<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B<バックアップ/復旧 オプション>のショートカット[ k(1・3)]を押す。  → <オプション 1/11 SCHB>(注1)と表示される。 C[F3]を2回押す。 → <バックアップ enter-u>と表示される。 D[エンター]を2回押す。 → <backup 1/10>(注2)と表示される。 E[スペース]を1回押す。 → <※ backup>(注3)と表示される。 F[エンター]を押す。 → しばらくすると<バックアップ/復旧 オプション>と表示される。 G[スペース][ z(1・3・5・6)]を押す。 → <ユーティリティ>に戻る。 (注1)「SCHB」はチェックボックスにチェックが入っている状態のことを表しています。チェックが入っていない状態では「UCHB」と表示されます。 (注2)<1/10>の数字は変動します。 (注3)液晶ディスプレイには<選択backupフォルダ 1/10>と表示されます。 ●補足  電子メールオプションやアドレス帳オプションなどの設定もバックアップすることができます。  ステップ2の操作手順Bの後、[スペース]+[ 4 ]を押すと<アドレスマネージャーオプション>や<電子メールオプション>が出てきますので、各項目で[スペース]を押し、<UCHB>を<SCHB>に変更し、操作手順Cへ進みます。 2.ネットワークの設定 (1) 無線LANの設定  無線LANでの接続設定をする場合は、初期設定では<オプション設定>の<無線LAN>が<オフ>になっていますので<オン>にしてからインターネット設定を行ってください。  あるいは[バックスペース]+[ 1・4・5・6 ]を押すことで無線LANのオン/オフの切り替えができます。 @スタートメニューの<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B[スペース]+[ 4 ]で<インターネット設定>に移動する。 C[エンター]を押す。 → <LAN 1/6>と表示される。 D[スペース]+[ 4 ]で<無線LAN 2/6>を選ぶ。 E[エンター]を押す。  → <アクセスポイント (検出されたアクセスポイント名)>と表示される。 F[スペース]+[ 4 ]で接続したいアクセスポイントを選択する。  ※ここでは<アクセスポイント dbit>を選択するとする。 G[エンター]を押す。 → <ネットワークキー>と表示される。 H選択したアクセスポイントのネットワークキーを入力する。 I[エンター]を押す。  → <プロファイル設定完了 dbitに接続中>と表示され、続けて<アクセスポイントdbit,暗号化:WEP,信号強度:非常に強い。接続。>と表示される。 ※上記の表示が出れば接続は完了。ただし、<プロファイル設定完了 dbitに接続中>の表示が消えず、その後<dbitへの接続失敗>と一瞬表示され、さらに<アクセスポイントdbit,暗号化:WEP,信号強度:非常に強い。>のように、最後に<接続。>が表示されていない場合は、接続ができていないので、さらに次の「(2)無線LANの設定をやり直す」の操作を行う。 (2) 無線LANの設定をやり直す @ (1)のIの状態で[F3]を押す。 → <詳細>と表示される。 A[エンター]を押す。 → <profile:dbit>と表示される。  ※もし複数のprofileがある場合は、<profile:(他のアクセスポイント名)>と表示される場合があるので、そのときは[スペース]+[ 4 ]で<profile:dbit>を選択する。 B[F3]を3回押す → <削除>と表示される。 C[エンター]を押す。  → <削除完了>と表示され、続けて<profile:項目無し 0/0>と表示される。  ※他のprofileがある場合は<profile:(他のアクセスポイント名>と表示される。 D[F3]を押す。  → <アクセスポイント (検出されたアクセスポイント名)>と表示され(1)のEの状態になる。 Eネットワーク名(SSID)やネットワークキーをよく確認のうえ、(1)のF〜Iの操作を再度実行する。 (3) 有線LANの設定 ※センスプラスだけの設定です @スタートメニューの<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B[スペース]+[ 4 ]で<インターネット設定>に移動する。 C[エンター]を押す。 → <LAN 1/6>と表示される。 D[エンター]を押す。 → <IP設定:自動>と表示される。 E[エンター]を押す。 →<設定完了>と表示されて、<インターネット設定>に戻る。 F[スペース][ z(1・3・5・6)]を押す。  → スタートメニューの<ユーティリティ>に戻る (4) ネットワーク状態の確認  設定完了後、次の方法でネットワーク状態の確認ができます。 @スタートメニューを開いている状態にする。 A[スペース]+[ n(1・3・4・5)]を押す。 Bネット接続ができていれば<オンライン>と表示され、接続できていない場合は<オフライン>と表示される。 3.電子メールのアカウント設定 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<電子メール>に移動する。 A[エンター]を押す。 → 受信メールのタイトル一覧が表示される。 B[エンター]と[ m(1・3・4)]を同時に押す。  → <サービス名: リスト無し 0/0>と表示される。 C[F3]を2回押す。 → <登録>と表示される。 D[エンター]を押す。 → <サービス名?>と表示される。 Eアカウント名を入力する。   ※プロバイダー名などを入力すると分かりやすい。ここでは「gmail」を例とする。 F[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <ユーザ名?>と表示される。 G自分の名前を入力する。  ※差出人アドレスに表示される名前なので、なるべく分かりやすい名前を入力する。ここでは「山田 太郎」を例とする。 H[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <ユーザID?>と表示される。 Iプロバイダーから提供されるユーザーID(ユーザーアカウントと呼ばれる場合もある)を入力する。  ※(例)yamada.taro@gmail.com J[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <パスワード?>と表示される。 Kプロバイダーから提供されるメールのパスワードを入力する。 L[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <電子メールアドレス?>と表示される。 Mプロバイダーから提供されるメールアドレスを入力する。 ※(例)yamada.taro@gmail.com N[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <pop3サーバー?>と表示される。 Oプロバイダーから提供されるpopサーバーアドレス(受信メールサーバーアドレスともいう)を入力する。 ※(例)pop.gmail.com P[スペース]+[ 4 ]を押す。 → <smtpサーバー?>と表示される。 Qプロバイダーから提供されるsmtpサーバーアドレス(送信メールサーバーアドレスともいう)を入力する。 ※(例)smtp.gmail.com R[F3]を押す。 → <詳細設定>と表示される。 S[エンター]を押す。 → <受信にsslを使う UCHB>と表示される。(注1)  ※受信にSSLが必要な場合は[スペース]を1回押す。(注2)  → <UCHB>の表示が<SCHB>の表示に変更される。 白丸21 [スペース]+[ 4 ]を押す。  → <pop3ポート番号?995>と表示される。(注3) 白丸22 [スペース]+[ 4 ]を押す。 → <smtp暗号化方式?:ない>と表示される。  ※もし送信時にSSLなどの暗号化が必要な場合は、[スペース]を1回押す。  → <SSL>に変更される。 白丸23 [スペース]+[ 4 ]を押す。 → <smtpポート番号?25>と表示される。 白丸24 「バックスペース」で消して<465>と入力する。(注4) 白丸25 [スペース]+[ 4 ]を押す。 → <smtpID?>と表示される。  ※IのユーザーIDと異なるものが指定されている場合にはsmtpIDを入力。 白丸26 [スペース]+[ 4 ]を押す。 → <smtpパスワード?>と表示される。  ※Kのメールのパスワードと異なるものが指定されている場合にはsmtpパスワードを入力。 白丸27 [スペース]+[ 4 ]を押す。  → <常にこのsmtpを使って送信 UCHB>と表示される。 白丸28 「スペース」を押す。 → <UCHB>が<SCHB>に変更される。  ※最近のほとんどのプロバイダーはこの機能を使うため<SCHB>にする必要がある。 白丸29 [スペース]+[ 4 ]を押す。  → <サーバーにメールのコピーを残しますか UCHB>と表示される。  ※サーバーにメールを残す場合は[スペース]で<SCHB>に変更する。 白丸30 [スペース]+[ 4 ]を押す。  → <sentフォルダーに送信済みメールを保存する SCHB>と表示される。  ※送信済みフォルダにメールを保存しない場合は[スペース]で<SCHB>を<UCHB>に変更する。 白丸31 [F3]を3回押す。 → <確認>と表示される。 白丸32 [エンター]を押す。 → <詳細設定>に戻る。 白丸33 [F3]を1回押す。 → <確認>と表示される。 白丸34 [エンター]を押す。 → <サービス名:(先ほど設定したアカウント名)>と表示される。 白丸35 [スペース]+[ z(1・3・5・6)]を押す。  → 設定画面が終了しタイトル一覧に戻る。 (注1)「UCHB」とはチェックボックスにチェックが入っていない状態を表しています。「SCHB」とはチェックボックスにチェックが入っている状態を表しています。 (注2)gmailなど一部のメールアカウントはSSLを使いますが、ほとんどのプロバイダーは使いません。 (注3)受信SSLでチェックを入れていない場合は、pop3ポート番号は自動的に「110」と入力されます。 (注4)契約しているプロバイダーの指示に従ってSMTPポート番号を書き直してください。 4.スタートメニューのカスタマイズ  ブレイルセンスには様々なプログラムが用意されていますが、すべてのプログラムを利用するわけではありません。利用するプログラムだけスタートメニューに表示し、利用しないプログラムを非表示にするとより使いやすくなります。 @スタートメニューで[下スクロール]を押して<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 Bメニュー管理のショートカット[ m(1・3・4)]を押す。  → <ファイル管理 1/76>と表示される。 C[スペース]+[ 4 ]を押して、非表示にしたいプログラムに移動する。 D[スペース]を押す。 → <オフ>に変更される。  ※他に非表示にしたいプログラムがあればCとDを繰り返す。 E[エンター]を押す。 → <メニュー管理>が表示される。 F[リセットボタン]を押す。 → 再起動し<ファイル管理>が表示される。 G変更されたスタートメニューの表示を確認する。 ※なお、<メニュー管理>で<オフ>にしたプログラムは削除されるわけではありません。同じ手順で<メニュー管理>を開き、各プログラムを<オン>に変更し再起動すれば再び表示されるようになります。 4 ブレイルセンスの指導法 1.ニーズに合ったプログラムの選択  盲ろう者がブレイルセンスで何をやりたいのかをよく聞き、盲ろう者のニーズに合わせて指導するプログラムを決めます。 a)メールをやりたい → 電子メール b)電車の時刻表を調べてみたい → 乗り換え検索 c)新聞や天気予報などの情報を読んでみたい → RSSリーダー d)インターネットを楽しみたい → クイックブラウザ e)スケジュール管理をしたい → 簡単スケジューラ f)点字図書データをダウンロードして読書をしたい → サピエ g)言葉の意味を調べたい → 電子辞書(注1) h)様々なファイルの読み込みや墨字印刷をしたい → ワードプロセッサー i)現在位置の場所や目的地までの行き方を調べたい → GPSナビ(注2) (注1)別途、ブレイルセンスに対応したEPWING規格のCD-ROM辞書が必要です。 (注2)別途、GPSレシーバーと地図データのセット39,800円を購入する必要があります。 2.指導上の留意点 (1) サウンド関係  全く聞こえない盲ろう者の場合、起動サウンドや警告音、音声に気づかないことがありますので、ブレイルセンスから音が出ていることを説明し、必要に応じて音を止める設定をします。  また、[バックスペース]+[F2]で音声出力のオン/オフの切り替えができます。 (2) 点字表示の仕組み  点字ディスプレイの1マスは8個の点からなっており、上の6個の点が通常の点字で、一番下の2個の点はカーソル位置を表す点字です。そのことを盲ろう者に理解してもらった上で点字を読んでもらいます。 (3) 行末を示す点字  各行の最後にカーソルを移動すると<\p(1・2・4・6)(1・2・3・4)>と点字で表示されます。カーソルが行末にない場合はこの<\p>の点字が表示されません。 (4) 漢字変換の入力  漢字変換は単語単位あるいは人の名前等は1文字単位で変換して入力するよう指導します。 (5) 入力文字と点字表示の不一致  点字には助詞の「は」を「わ」、「へ」を「え」と書くルールがありますが、ブレイルセンスでは墨字のルールに従って「は」や「へ」と入力します。  しかし、「は」や「へ」と入力しても、点字ディスプレイには「わ」や「え」と表示されてしまいますので、そのことを指導します。 (6) ホットキーの指導法  ブレイルセンスの各ホットキーは[スペース]や[エンター]や[バックスペース]と英語のコマンド名の頭文字との組み合わせで覚えます。しかし、英語や英語点字が分からない盲ろう者には日本語点字で暗記してもらいます。  例えば、メールの受信のホットキーは[エンター]+[ n(1・3・4・5)]ですが、これを[エンター]+[ツ]と覚えてもらいます。 3.トラブルへの対処法  よく起きるトラブルとその対処法です。指導者が行ってもいいですし、対処法を盲ろう者に覚えてもらっても良いでしょう。 (1) バッテリー切れによるトラブル  特にオンハンドの場合、使用時間が約6時間と短いので気づかない内にバッテリーがなくなっていることがあります。バッテリーが切れてから1分以上放置すると、オプション設定が初期化されてしまいます。  保存しておいたオプション設定を復旧させるには次のように行ってください。 @スタートメニューで[下スクロール]を押して<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B[ k(1・3)]を押す。 → <オプション 1/11 SCHB>(注1)と表示される。 C[F3]を3回押す。 → <復旧>と表示される。 D[エンター]を2回押す。 → <backup 1/10>(注2)と表示される。 E[スペース]を1回押す。→ <※ backup>(注3)と表示される。 F[エンター]を押す。 → しばらくすると<バックアップ/復旧 オプション>と表示される。 G[スペース]+[ z(1・3・5・6)]を押す。 → <ユーティリティ>に戻る。 (注1)「SCHB」とはチェックボックスにチェックが入っている状態のこと表しています。 (注2)液晶ディスプレイには<backupフォルダ 1/10>と表示されます。<1/10>の数字は変動します。 (注3)液晶ディスプレイには<選択backupフォルダ 1/10>と表示されます。 (2) インターネットに接続できない  特に無線LANの場合、周囲の環境によってブレイルセンスとルーターの電源を入れただけでは接続できないことがあります。その場合、次のステップ1、ステップ2を行い接続を試します。 ステップ1 ブレイルセンスのリセットボタンを押してみる。 それでも接続できない場合は次のステップに進んでください。 ステップ2 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B[ i(2・4)]を押す。 → <無線LAN 1/3>と表示される。(注1) C[エンター]を押す。 → <アクセスポイント>と表示されて、30秒ほど待つとオンラインになる。 D[スペース]+[ z(1・3・5・6)]を3回押す。 → <ユーティリティ>に戻る。 E[スペース]+[ n(1・3・4・5)]を押してネットワーク状態を確認する。  → <状態:オンライン>と表示されればインターネットに接続したことになる。 ※この表示を消すときは[F4]を押す。 (注1)センスプラスの場合は<LAN 1/6>と表示されますので、[スペース]+[ 4 ]を押して<無線LAN 2/6>を選択してください。 (3) 時計を合わせる  時計がずれたとき、インターネットを通じて時計サーバーと同期することで修正することができます。 ※インターネットに接続されている状態で操作してください。 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<ユーティリティ>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <電卓>と表示される。 B[下スクロール]を押して<時計設定>に移動する。 C[エンター]を押す。 → <タイムゾーン:大阪・札幌・東京>と表示される。 D[F3]を4回押す。 → <時計サーバと同期>と表示される。 E[エンター]を押す。 → しばらくすると<同期成功>と表示され、続いて現在時刻が表示される。 F[エンター]を押す。 → <設定完了>と表示され、続いて<時計設定>と表示される。 G[スペース]+[ z(1・3・5・6)]を押す。  → スタートメニューの<ユーティリティ>に戻る。 (4) キー操作が効かなくなったとき  ブレイルセンスが固まって動作しなくなったときは、方法1または方法2で試してください。 方法1:通常のリセット  本体後ろのリセットボタンを押します。リセットボタンを押すと、再起動してスタートメニューの<ファイル管理>が表示されます。 方法2:ハードリセット  本体前面の右三角の形をした[次のトラックボタン]を押しながら本体後ろのリセットボタンを押します。[次のトラックボタン]は再起動するまで離さないでください。再起動するとスタートメニューの<ファイル管理>が表示されます。 ※なお、ハードリセットの場合はオプション設定等の設定情報が初期化されてしまいますので注意が必要です。 5 盲ろう者向けマニュアル(ブレイルセンスプラス)  ここでは、盲ろう者への指導を想定して作成したブレイルセンスプラスのマニュアルを紹介します。指導の参考にしてください。 1.基本操作 (1) 起動 @キーロックスイッチを一番右にし、キーロックを解除。 A電源スイッチを右にスライドさせ電源を入れる。  → 点字ディスプレイに点字が表示される。 (2) 終了 @電源スイッチを左にスライドさせ電源を切る。  → 点字ディスプレイの点字表示が消える。 Aキーロックスイッチを一番左にし、キーロックする。 (3) プログラムの選択と起動 @ブレイルセンスの電源を入れる。  → 点字ディスプレイにプログラムの名前が表示される。 A[上スクロール]または[下スクロール]でプログラムを選ぶ。 B[エンター]を押す。 ●補足  スタートメニューの一番上が<ファイル管理>、一番下が<ヘルプ>です。<ファイル管理>で[上スクロール]を何回押しても<ファイル管理>のまま表示は変わりません。同じように、<ヘルプ>で[下スクロール]を何回押しても<ヘルプ>のまま表示は変わりません。 (4) プログラムの終了 @プログラムの中にいる状態で、[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を同時に押す。  → プログラムが終了し、スタートメニューのプログラム名に表示が戻る。 Aブレイルセンスの電源を切る。 (5) 入力モードの切り替え @[F1]と[F3]を同時に押すと<英語>か<日本語変換>どちらかが表示される。 A[F1]と[F3]を同時に何度か押し<日本語変換>が表示されたら、そのまま数秒待つ。  → 元の表示に戻る。 (6) 日本語変換の入力について  点字キーでかな点字を入力し[エンター]を押すとひらがなで確定されます。  点字キーでかな点字を入力し[スペース]を押すと漢字変換候補が表示されます。さらに[スペース]を押すと次の漢字変換候補が表示されますので、正しい漢字を選択します。[エンター]を押すと選択された漢字で確定されます。 (7) 英語入力について  入力モードを<英語>に切り替えてください。英語点字(外字符や外国語引用符は不要)で入力できます。  日本語変換で入力したいときは、入力モードを<日本語変換>に切り替える必要があります。 (8) バッテリー残量の確認  10%以下になったら充電するようにしてください。 @[スペース]と[カ(1・6)]を同時に押す。 A[F3]を押す。 → 元の表示に戻る。 (9) 時計の表示 時計を表示する方法 [スペース]と[ト(2・3・4・5)]を同時に押す。 時計表示を消す方法 [F4] (10) インターネット接続の状態を確認する @モバイルルーター(EMOBILEなど)を使う場合はモバイルルーターの電源を入れる。 Aスタートメニューを表示した状態で、[スペース]と[ツ(1・3・4・5)]を同時に押しネットワーク状態を確認する。  → <状態:オンライン>と表示されれば通信ができている状態。 B[F4]を押してスタートメニューに戻る。 2.電子メール (1) メールの受信 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<電子メール>に移動する。 A[エンター]を押す。 → 受信メールのタイトル一覧が表示される。 B[エンター]と[ツ(1・3・4・5)]を同時に押す。  → <サービス名? 受信 1/1>と表示される。(注) C[エンター]を押す。 Dメールが受信されると自動的にタイトル一覧に戻る。  → <未読 タイトル:(タイトル)>と表示される。  ※受信メールがないときは<サービス名? 受信 1/1>に戻る。  → タイトル一覧に戻るには[F4]を押す。 (注)<サービス名? 受信 1/1>の<受信>のところはメール設定によって変わるので注意。 (2) タイトル一覧の操作  ここでは5通のメールを受信した場合で説明します。 a)タイトル一覧の表示  <タイトル:(件名)2/5>のように表示されます。<2/5>とは全部で5通のメールがあり、その内2番目のメールのタイトルを表示しているという意味です。  未読の場合、点字ディスプレイの1マス目に3・6の点が表示されますが、これは未読マークです。  タイトルに未読マークがない場合は、そのメールはすでに読んだことを意味します。 b)古いメールへ移動  [スペース]と[ア(1)]を同時に押すと、送信日時が古いメールへ一つずつ移動します。メール番号<1/5>が最も古いメールです。   c)新しいメールへ移動  [スペース]と[ 4 ]を同時に押すと、送信日時が新しいメールへ一つずつ移動します。メール番号<5/5>が最も新しいメールです。 (3) 本文を読む @読みたいメールのタイトルに移動。 A[エンター]を押す。 → <本文:(文章)>と表示される。 B[下スクロール]を押して文章を読む。文章を読み返すときは[上スクロール]を押す。 C[F4]でタイトル一覧に戻る。 (4) 送信日時を確認する  タイトル一覧で[F3]を1回押すと<日付:2011年…>と表示され、送信日時が確認できます。  点字ディスプレイに表示しきれない部分は、[下スクロール]を押して続きを読むことができます。  送信日時は<年・月・日・曜日・時間・2/5>(注)の順番で表示されます。  注)「2/5」の数字はその都度変わります。 (5) 差出人を確認する  タイトル一覧から[F3]を2回押すと<差出人:(差出人名)>と表示され、差出人が確認できます。  点字ディスプレイに表示しきれない部分は、[下スクロール]を押して続きを読むことができます。  差出人には相手の名前やメールアドレスが表示されます。 (6) メールに返信する @タイトル一覧で返信したいメールに移動する。 A[エンター]を押し本文の内容を確認する。 B[エンター]と[チ(1・2・3・5)]を同時に押す。 → <本文:>と表示される。 C文章を入力する。 D[エンター]と[ノ(2・3・4)]を同時に押す。  → メールが送信されてタイトル一覧に戻る。 (7) 差出人のアドレスを登録する @タイトル一覧でアドレス登録したいメールに移動する。  タイトルだけでは誰のメールか分からない場合は[エンター]を押して本文の内容を確認する。確認したら[F4]を押してタイトル一覧に戻る。 A[F3]を2回押して「差出人:(差出人名)」を表示させる。 B差出人名が32マスの点字ディスプレイに表示しきれない場合は[下スクロール]を押し名前やメールアドレスを確認する。 C[エンター]と[オ(2・4)]を同時に押す。  → <名前:(差出人名やアドレス)>と表示される。 D名前やメールアドレスがすでに書き込まれているので[バックスペース]で削除し、表示を空欄にする。 Eひらがなで名前を入力する。 F[エンター]を押す。 → <アドレス保存完了>と表示され、差出人の表示に戻る。 G[エンター]を押す。 → <本文:(文章)>と表示される。 H[F4]を押す。 → タイトル一覧に戻る。 (8) アドレス帳の登録 @スタートメニューの<アドレス帳>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <姓>と表示される。 B[エンター]と[オ(2・4)]を同時に押す。  → 一瞬だけ<アドレス追加>と表示され、続いて<姓>と表示される。 C名前を入力する。 D[スペース]と[ 4 ]を同時に何度か押し<自宅・電子メール>に移動する。 Eメールアドレスを入力する。 F[F3]を2回押す。 → <確認>と表示される。 G[エンター]を押す。  → 一瞬だけ<アドレス保存完了>と表示され、続いて<姓>と表示される。 H[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を同時に押す。  → <バックアップを変更しますか。はい>と表示される。 I[エンター]を押す。  → <データをバックアップ中><バックアップ完了>と表示された後、最後に<アドレス帳>と表示される。 (9) 新規メールの作成と送信 @タイトル一覧で[エンター]と[ソ(2・4・5・6)]を同時に押す。  → <宛先:>と表示される。 A[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 B相手の名前を入力する。 C[エンター]を3回押す。 → <宛先:(メールアドレス)>と表示される。 D[F3]を3回押す。 → <タイトル:>と表示される。 Eタイトルを入力する。 F[F3]を1回押す。 → <本文:>と表示される。 G文章を入力する。 H[エンター]と[ノ(2・3・4)]を同時に押す。  → メールが送信されてタイトル一覧に戻る。 (10) 複数送信 a)同時送信 @タイトル一覧で返信したいメールに移動する。 A[エンター]と[ソ(2・4・5・6)]を同時に押す。 → <宛先:>と表示される。 B[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 C一人目の名前を入力する。 D[エンター]を3回押す。 → <宛先:(メールアドレス)>と表示される。 E二人目を選びたい場合、また[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 F二人目の名前を入力する。 G[エンター]を3回押す。 → <宛先:(メールアドレス)>と表示される。  三人目以降は、操作手順D〜Fを繰り返す。 H[F3]を3回押す。 → <タイトル:>と表示される。 Iタイトルを入力する。 J[F3]を1回押す。 → <本文:>と表示される。 K文章を入力する。 L[エンター]と[ノ(2・3・4)]を同時に押す。  → メールが送信されタイトル一覧に戻る。 b)BCC @タイトル一覧で[エンター]と[ソ(2・4・5・6)]を同時に押す。  → <宛先:>と表示される。 A[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 B自分の名前を入力する。 C[エンター]を3回押す。 → <宛先:(自分のメールアドレス)>と表示される。 D[F3]を2回押す。 → <宛先(Bcc):>と表示される。(注) E[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 F一人目の名前を入力する。 G[エンター]を3回押す。 → <宛先:(メールアドレス)>と表示される。 H二人目を選びたい場合、また[エンター]と[ニ(1・2・3)]を同時に押す。  → <アドレスリストキーワード:>と表示される。 I二人目の名前を入力する。 J[エンター]を3回押す。 → <宛先:(メールアドレス)>と表示される。  三人目以降は、操作手順H〜Jを繰り返す。 K[F3]を1回押す。 → <タイトル:>と表示される。 Lタイトルを入力する。 M[F3]を1回押す。 → <本文:>と表示される。 Nメッセージを入力する。 O[エンター]と[ノ(2・3・4)]を同時に押す。  → メールが送信されタイトル一覧に戻る。 (注)Dで[F3]を1回押すと<宛先(Cc):>になります。 (11) メールが送信できたかどうかを確認する @タイトル一覧で[F3]を4回押す。 → <Mail box:Inbox 1/3>と表示される。 A[スペース]と[ 4 ]を同時に2回押す。  → <Mail box:Storagebox 3/3>と表示される。 B[F3]を押す。 → 送信済みメールのタイトル一覧が表示される。  ここで<リストなし 0/0>と表示されていれば送信できたことになる。 ●補足 <Mail Box>には<Inbox><Sent><Storagebox>の3個のフォルダがあります。 (12) メールの削除 a)1件だけ削除する @タイトル一覧で削除したいメールに移動する。 A[スペース]と[ル(1・4・5)]を同時に押す。  → 点字ディスプレイに<メールを削除しますか?はい>と表示される。 B[エンター]を押す。  削除を中止する場合は[下スクロール]を1回押し、<いいえ>が表示されたら[エンター]を押す。 b)すべてのメールを削除する @タイトル一覧で[エンター]と[ア(1)]を同時に押す。  → すべてのメールが選択される。 A[スペース]と[ル(1・4・5)]を同時に押す。  → <5メールを削除しますか?はい>(注)と表示される。 B[エンター]を押す。  削除を中止する場合は[下スクロール]を1回押し、<いいえ>が表示されたら[エンター]を押す。  (注)<5メールを削除しますか?はい>の<5>は選択されたメールの数です。 3.乗り換え検索 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<プログラム>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <RSSリーダ>と表示される。 B[下スクロール]を押し<乗り換え検索>に移動する。 C[エンター]を押す。 → ネットワークに接続し<出発地>と表示される。 D乗車する駅名を入力する。   ※基本的にひらがなで入力しますが、ごくたまに漢字にした方が良い場合もあります。 E[F3]を押す。 → <到着地>と表示される。 F降車する駅名を入力する。 G[F3]を押す。 → <経由地>と表示される ※ここは省略しても良い。 H[F3]を押す。 → <年2011>と表示される。 I[F3]を押す。 → <月11>と表示される ※[スペース]と[ 4 ]で変更する。 J[F3]を押す → <日 12>と表示される。  ※1〜31の数字が選択できるので、[スペース]と[ア(1)]または[スペース]と[ 4 ]を同時に押し変更する。 K[F3]を押す。 → <時 12>と表示される。  ※0〜23の数字が選択できるので、[スペース]と[ア(1)]または[スペース]と[ 4 ]を同時に押し変更する。 L[F3]を押す。 → <分40>と表示される。  ※0〜59の数字が選択できるので、[スペース]と[ア(1)]または[スペース]と[ 4 ]を同時に押し変更する。 M[F3]を押す。 → <検索方法 出発時刻1/2>と表示される。  ※指定した日時に到着する電車を調べるときは「到着時刻」、指定した日時に出発する電車を調べるときは「出発時刻」を選択できるので、[スペース]と[ア(1)]または[スペース]と[ 4 ]を同時に押し変更する。 N[F3]を押す。 → <検索 sp-s>(注1)と表示される。 O[エンター]を押す。 → 検索が開始され<検索結果 第1経路(経路の概略)>と表示される。  ※ただし、駅名の候補が複数あった場合は選択する必要がある。(注2) P1経路の概略を読む。 ※[下スクロール]で読み進める。 Q[スペース]と[ 4 ]で第2経路に移動し、概略を読む。  ※検索結果は第1経路から第3経路まで一覧になっているのでP〜Qの手順で第3経路まで確認する。 R希望の経路があったら[エンター]を押す。  → 経路の詳細が表示されるので[下スクロール]で読み進める。 S他の経路を読むときは[F4]を押す。 → 検索結果一覧に戻る。  ※Q〜Sの手順で他の経路の詳細を読む。 白丸21 最初から検索するときは[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を押す。  → <出発地>と表示されるのでDから行う。 白丸22 乗り換え検索を終了するときは<出発地>で[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を押す。  → <乗り換え検索>に戻る。 (注1)液晶ディスプレイには<検索 space-s>と表示される。 (注2)駅名の候補が複数あった場合、<候補駅が複数あります 対象の駅名を選択してください>と表示され、<出発地 (駅名)1/1>と表示される。[F3]を押し<到着地><経由地>を確認し、例えば<到着地 京橋(東京) 1/2>の<1/2>に見られるような候補が複数ある表示を見つけたら、[スペース]と[ア(1)]で次候補を選ぶことができる。最後に[エンター]を押すと再度検索を行う。 4.簡単スケジューラ (1) 簡単スケジューラの起動 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<プログラム>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <RSSリーダ>と表示される。 B[スペース]と[ 4 ]を同時に何回か押し、<簡単スケジューラ>に移動する。 C[エンター]を押す。 → <今日の予定:予定無し>(注)と表示される。 (注)すでに予定が書いてあればその内容が表示される。文章が長い場合は[下スクロール]で読む。 (2) 日付の選択 1日後へ移動 … [スペース]と[ 4 ] 1日前へ移動 … [スペース]と[ア(1)] 1週間後へ移動 … [ソ(2・4・5・6)] 1週間前へ移動 … [バックスペース]と[ソ(2・4・5・6)] 1ヶ月後へ移動 … [ヌ(1・3・4)] 1ヶ月前へ移動 … [バックスペース]と[ヌ(1・3・4)] (3) 日付の点字表示  <11月23日 水曜日:予定無し>と液晶ディスプレイに表示されている場合、  点字では  1 1 − 2 3  スイ :  ヨ テ イ ナ シ  と表示される。 (4) 予定を書く @予定のある日付に移動する。 ※ここでは<2011年11月23日>を例とする。 A[エンター]を押す。 → <予定の編集>と表示される。 B文章を入力する。 ※ここでは「パソコン研修会 第一日目」と入力する。 C[エンター]を押す。  → <め2011年11月23日 水曜日:パソコン研修会 第一日目>(注)と表示される。 D文章が長いので[下スクロール]で入力した内容を確認する。 E確認後[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を同時に押す。  → <変更を保存しますか? はい>と表示される。 F[エンター]を押す。 → <保存しました>と表示され<簡単スケジューラ>に戻る。 G[スペース]と[マ(1・3・5・6)]を同時に押す。 → <プログラム>に戻る。 (注)<め2011年11月23日 水曜日:パソコン研修会 第一日目>の<め>は液晶ディスプレイには<*>と表示される。これは予定が記入されていることを意味する。 (5) 予定を確認する @確認したい日付に移動する。 A[F3]を押す。 → 予定が表示される。 ※文章が長い場合は[下スクロール]で読む。 B[F3]を押す。 → 日付の表示に戻る。 (6) <カレンダー表示>と<予定のみ表示>  (1)から(5)は<カレンダー表示>といってカレンダーより日付を選ぶ方法ですが、予定が記入されている日付のみを一覧にする<予定のみ表示>に表示を切り替え確認することもできます。 @スタートメニューで[下スクロール]を押し<プログラム>に移動する。 A[エンター]を押す。 → <RSSリーダ>と表示される。 B[スペース]と[ 4 ]を同時に何回か押し<簡単スケジューラ>に移動する。 C[エンター]を押す。 → <今日の予定:予定無し>と表示される。 D[スペース]と[ヒ(1・2・3・6)]を同時に押す。  → <ビュー切り替え:予定のみ表示>と表示され、予定の一覧が表示される。 E[スペース]と[ア(1)]か[スペース]と[ 4 ]で一覧を移動する。 F文章が長い場合は[下スクロール]で読む。 G[スペース]と[ヒ(1・2・3・6)]を同時に押す。  → <ビュー切り替え:カレンダー表示>と表示され、カレンダー表示に戻る。 第6章 インターネット環境の構築 1 盲ろう者を取り巻くインターネット環境の現況  盲ろう者がパソコンやブレイルセンスを利用する上で、インターネット環境の構築は必須です。しかしながら、多様なサービスや複雑な料金プランがあり、またブレイルセンスなどでは一部利用できないサービスや接続機器などもあることから、導入に際してはいくつか注意が必要です。  盲ろう者も、一般ユーザーと同様インターネット環境を構築する場合は、自宅での固定環境と、外出先などでのモバイル環境の二つを考える必要があります。自宅でパソコンのみを利用するという盲ろう者の場合は固定環境を優先して整備する必要がある一方で、近年盲ろう者の間で普及が進んでいるブレイルセンスなどを利用する盲ろう者の場合は、自宅の固定環境に加えて外出先でのモバイル環境の整備も必要となります。そのため、最新のサービスの動向を見極めつつ、盲ろう者の利用状況や費用対効果なども鑑みながら、サービスを選択する必要があります。 2 固定環境におけるインターネット構築  自宅でパソコンのみを利用する盲ろう者の場合は、固定環境でのインターネット構築を行う必要があります。  固定環境でインターネットを構築する場合、主に次の三つの方式から選択することになります。 (1) 光 (2) ADSL (3) ケーブルテレビ(CATV)  サポートしている盲ろう者がどのような目的でパソコンを利用するかにもよりますが、初心者の盲ろう者がインターネットを始める場合は、おそらくメールの送受信とホームページの閲覧が中心になると思われますので、一番安価で手軽なADSLを導入するのが現実的です。  また、ADSLにも次のような種類があり、高速になるほど料金が上がります。 (1) 高速の50Mbps (2) 中速の12Mbps (3) 低速の8Mbps 等  初心者の盲ろう者の場合は、ほとんど低速の8Mbpsのプランで問題ありませんが、ただ電話会社の局舎と自宅との距離が3キロメートル以上ある場合など、低速回線では開通が難しい場合もあります。さらに、条件によっては高速のADSL回線と光回線の料金がほとんど変わらない場合や、そもそも局舎との距離が離れ過ぎていてADSL自体が導入できない場合などもあります。そのときは、光回線などを選択せざるを得ません。従って、契約を行う場合は、料金や使用環境などを総合的に判断しつつ、サポートする盲ろう者やご家族などになるべく分かりやすく説明をしながら、サービスを選択する必要があります。  そもそも、こうしたインターネットサービスの営業では、高速の光回線やCATV回線を薦めることが多いので、「とにかく文字の送受信しかしないので低速でもかまわないこと」「従って高額のプランは費用に見合う効果がないこと」を伝えて、盲ろう者の使用環境を営業の担当者に理解していただくことも、契約をスムーズに進める一つの方法です。  とにかく、極力料金を抑えつつ、安定的なインターネット環境を構築するという視点に立って、サービスを選択していただければと思います。 ●参考 ※固定環境における各方式のおおよその月額料金です。詳細は各事業者にてご確認ください。 (1) CATV … 8,000円程度(インターネット、電話、ケーブルテレビの料金を含む) (2) 光 … 6,000円程度(インターネット、電話の料金を含む) (3) ADSL(50Mbps) … 5,000円程度 (4) ADSL(12Mbps) … 4,000円程度 (5) ADSL(8Mbps) … 3,000円程度 3 モバイル環境におけるインターネット構築  ブレイルセンス等の点字情報端末の普及により、外出先でもメールやインターネットを利用する盲ろう者が増えています。そのため、固定環境に加えて、モバイル環境におけるインターネット構築についても年々ニーズが高まってきています。  周知のとおり、モバイルインターネットのサービスは、各携帯電話会社が次々と参入しており、サービス内容や料金プランが複雑化しています。しかし、基本的には「文字の送受信が多い」「極力低料金を目指す」「ブレイルセンスで利用できる」という観点で考えれば、選択肢は必然的に絞り込まれてきます。  現在ブレイルセンスで利用可能なモバイルインターネットサービスの方式は次のように大別できます。 (1) 携帯電話ネットワークを使った「モバイルWiFi 」 (2) PHSのネットワークを使った「ダイヤルアップ」  また、料金プランとしては、 (1) 月額料金を支払う「契約制」 (2) 事前に一定期間の料金を支払う「前払い制」(継続手続きが必要) に集約されます。それぞれのサービスには、高速(40〜70MB程度)と低速(0.1〜0.3MB程度)のサービスがあり、高速になるほど料金が高額になります。また広いサービスエリアをカバーする事業者ほど料金が高めになる傾向があります。  ブレイルセンスでは、これまでPHSのネットワークを使った「ダイヤルアップ」サービスが使われてきましたが、PHSのサービスが縮小傾向にあることと、ブレイルセンスで利用できるデータカードの入手が困難になってきたことから、現在はモバイルWiFiが主流になってきました。モバイルWiFiは、ブレイルセンスの無線LANの機能を使って接続するため、基本的にどの事業者の端末でも接続が可能です。  そのことを踏まえると、現在現実的な選択肢としては、低速の「モバイルWiFi」サービスあるいは高速でもエリアが比較的狭く安価な「モバイルWiFi」サービスということになります。また契約制か前払い制の選択については、自力で継続手続きや追加料金の支払いができる、あるいはそうした支援が受けられる場合は料金が安い前払い制を、そうした手続きが難しい、あるいは面倒だという場合は契約制のプランを選択することになります。前払い制は全体的には安価ですが、契約時に端末を別途購入する必要があり、ある程度の初期投資が必要なことと、端末自体の設定を自分でやらなければいけないという特徴があります。契約制は、全体的には高めですが、携帯電話と同様に月額料金に端末代等が入っているため、3,000円程度の事務手数料以外は、それほど初期投資は必要ありません。また、端末の設定等も、ショップでやってもらえます。ただし、一部の安価な契約制のサービスについては、自分で端末設定をしなければならないものもあるので注意が必要です。  とにかく、モバイルインターネットについても固定同様、様々な方式やプランが存在していますので、料金・使い勝手・設定のしやすさ・アフターケア等総合的に判断して選択する必要があります。 ●参考 ※各モバイルWiFiのサービスです。詳細は各事業者にてご確認ください。 (1) 契約制(月額料金) a)NTTドコモ  低速プラン 3,500円程度(0.3Mbps)  高速プラン 7,000円程度(40〜75Mbps)  ※一番エリアが広い。 b)EMOBILE  高速プランのみ 5,000円程度(40〜75Mbps)  ※ドコモほどではないが全国をカバー。 c)UQ WiMAX  高速プランのみ 4,000円程度(40Mbps)  ※都市部が中心。 d)b-mobile SIM(イオン専用)  プランA 1,000円程度(0.1Mbps)  プランB 3,000円程度(0.4Mbps)  プランC 5,000円程度(1Mbps以上)  ※端末を別途購入する必要あり。  ※ドコモのネットワークを利用するためエリアは広い。 (2) 前払い制 a)b-mobile SIM U300  1年  30,000円程度  6ヶ月 15,000円程度  1ヶ月 3,000円程度(いずれも0.3Mbps)  ※端末を別途購入する必要あり。  ※ドコモのネットワークを利用するためエリアは広い。 第7章 アフターケア 1 アフターケアとは  ここで言うアフターケアとは、指導期間中に教えられなかったことを補足的に指導するといった意味から、中・長期的なパソコンサポートまでの幅広い範囲を指します。  パソコン指導をひととおり終えても、その盲ろう者が本当の意味でパソコンを使いこなせるようになるには指導後のサポートが大切です。パソコンを日々使いながら感じる疑問に丁寧に答えたり、思わぬトラブルに対応する必要があります。また、長期的には、ソフトウェアのアップデートや機器のファームウェアの更新等のサポートや、新しいソフトウェアの習得にチャレンジするなどステップアップを目指すこともアフターケアの重要な役割となります。 (1) 指導後のサポート  パソコンの操作ができるようになっても、日常の中で使いこなせるようになるには少し時間がかかります。例えばメールに関して、実際に次のような質問が盲ろう者よりありました。 ・「1時間も前にメールしたのに返信がない。どうしてすぐに返事が来ないんだろう?」 ・署名を読んで「本文の最後に英語がたくさん書いてある。ウィルスか?」 ・携帯電話から送られてきたメールで件名にも本文にも送信者の名前がなく「誰か分からないから教えてほしい。」  こうしたことは、パソコンの操作に直接的に関わらなくても、メールを使う中で知っておいた方が良い知識です。本来は指導の中で教えるべきなのでしょうが、時間がなかったり、優先順位が低かったりして、できないことも多いです。  メールの基本的なルールや、携帯電話からのメールは差出人名が表示されないことを説明し、今後の対策を一緒に考えることで、日々の利用に繋げます。 (2) トラブルに対応する  パソコンや機器の故障といったトラブルにはもちろん即座に対応しなくてはいけませんが、盲ろう者が故障だと勘違いしてしまうこともあります。 ・「点字ディスプレイが壊れた」と連絡があり駆けつけたら、操作中に間違えて点字表示をオフにしてしまっただけだった。 ・「パソコンの電源がなかなか切れない。故障したらしい。」と連絡があり確認しに行ったら、Windowsの自動更新がありインストールに時間がかかっていただけだった。 ・「メールが送受信できない」とのことで行ってみたらモデムのコンセントが抜けていた。  実際に行ってみたら故障ではなかったという事例は多くあります。しかし盲ろう者が物理的に使えない、または不安で使えないという状況にはできるだけ迅速に対応したいものです。  また、指導していない項目に迷い込んでしまったり、キーを押し間違えてしまったり、設定を変えてしまったりといったトラブルも多くあります。そういったときも、なるべく早い段階で盲ろう者のところへ訪問するようにしましょう。そして、指導者が勝手に直してしまうのではなく、原因と解決法を盲ろう者と共有し、今後の対策を相談するようにしてください。 (3) パソコン環境のメンテナンス  ソフトウェアのアップデートは、今まであった不具合が改善されたり、より使いやすい機能が追加されたりします。例えば「点字で読みやすいよう新しい機能が追加された」「画面の配色の選択肢が増えた」等がありますので、こまめに更新情報をホームページで確認するようにしてください。また機器もファームウェアを更新することで、より安定して使えるようになることもありますので、こちらも更新情報に注意しましょう。  理想は盲ろう者が独力でこれらの作業を行えることですが、それが難しい場合は指導者が行うか、ご家族や通訳・介助員にお願いするのも良いでしょう。また、追加された機能を使うために新しい操作を覚えなくてはいけない場合もありますので、その際は指導が必要です。   (4) ステップアップを目指す  盲ろう者がパソコンの操作に慣れてきたら、新しい操作方法や手順を少しずつ指導していくよう心がけましょう。例えば、メールの送受信しかできなかった盲ろう者にメールアドレスの登録方法を指導したり、ブラウザの指導を始めるのも良いでしょう。  そのときの盲ろう者のレベルに合わせて相談しながら進めます。 2 パソコンサポートのネットワーク  以上、アフターケアについて簡単にまとめましたが、指導からアフターケアを一人で引き受けるのは非常に大変です。従って、ご家族に協力を求めるのも良いでしょう。また、指導に関することは指導者が、日常的なサポートは通訳・介助員にお願いするという方法もあります。その場合は頻繁に起こるトラブルについてマニュアル化しておくと連携が取りやすくなります。  このようにして、一人ですべてを抱えるのではなく、サポート体制を作り数人で支援していくことが理想的です。盲ろう者にとってパソコンは独力で情報を入手できる唯一の手段であり、一度パソコンを始めた盲ろう者は、おそらくずっとパソコンを使い続けることになるでしょう。しかし、多くの盲ろう者はサポートなしにパソコンを使い続けることは困難です。よって、サポートができなくなったときは、必ず引き継ぎを行い、サポートが途切れないようにしてください。 第8章 ブレイルメモの紹介 1 ブレイルメモの概要  ブレイルメモは、いつでもどこでも点字の読み書きができる点字電子手帳として開発されたものです。それまでパソコンを使わないと取り扱うことができなかった、点字の電子データが、このブレイルメモが登場したことで、場所や時間を選ばず、様々な場面で活用することができるようになりました。外出先で紙を使わなくても点字のメモが取れるようになったり、また点字データで作られた点訳本を自由に読むことがでます。これは、点字を利用する人たちにとって大変画期的なことです。従って、近年では多くの点字使用者に愛用され、次々に新製品が登場しています。 2 ブレイルメモの仕組み  ブレイルメモは、主に点字電子手帳・点字読書機・点字ディスプレイの三つの役割をもちます。そのため、点字表示部に加えて点字入力キーおよびそれに関連したキーが搭載されています。キー配置はパソコンとは異なり、点字入力のしやすさが考慮されています。またコンパクトな設計になっており、バッテリーで10〜20時間駆動することから、持ち運びが可能です。さらに、パソコンとの連携を考慮し、USB、シリアル、Bluetooth等複数の接続方式が採用されています。 3 ブレイルメモの種類  2001年の発売より、次の5種類が利用されています。(一部生産・販売が終了したものがあります)   (1) ブレイルメモ16(BM16)  ブレイルメモの初期型で16マスの点字表示部を搭載しています。パソコンとはシリアルで接続します。 (2) ブレイルメモ24(BM24)  24マスの点字表示部を搭載したモデルです。キーの配列を左右対称に配置し、左右どちらの手で点字を読んでも使いやすいように設計されています。またパソコンとの接続には、シリアルに加えてUSBとBluetoothが新たに採用されました。さらに、点字ディスプレイとしての機能も併せもつことから、パソコンにつないで簡易的な点字ディスプレイとしても利用することが可能です。 (3) ブレイルメモ46(BM46)  46マスの点字表示部を搭載したモデルです。機能はブレイルメモ24と全く同じで、シリアル、USB、Bluetooth等の接続環境も充実しています。46マスと、パソコンに接続して利用する点字ディスプレイと同様のマス数をもつため、自宅では点字ディスプレイ、外出先では電子手帳といった使い方が可能です。ただし、端末が大きいため、携帯性にはあまり優れていません。※現在生産・販売を終了しています。 (4) ブレイルメモポケット(BMPK)  16マスの点字表示部を搭載しながら、およそ300グラムという軽量化・小型化を実現させた超小型のモデルです。機能は、ブレイルメモ24/46とほぼ同様ですが、シリアル接続が省略され、USB、Bluetoothにてパソコンに接続します。また、小型化に伴い、キーの数も2割ほど削減されました。従って、従来のブレイルメモシリーズとは若干キーの配置や操作性が異なります。 (5) ブレイルメモ32(BM32)  32マスの点字表示部を搭載した最新のモデルです。シリアル、USB、Bluetoothと、パソコンとの接続環境は充実しており、また新たにUSBメモリ(4GB程度が最適)が扱えるようになったことから、パソコンを使わずに大量の点字データを扱うことが可能になりました。さらに32マスの点字表示部をもつことから、自宅では点字ディスプレイ、外出先では電子手帳といった使い方が可能で、しかもBM46より小型になったことから、持ち運びも容易になっています。 4 盲ろう者に利用できる機能  ブレイルメモの特徴は、点字情報機器であることから、ほぼすべての機能が触覚のみで操作できるところにあります。これは、当初視覚障害者向けに開発されたものですが、ビープ音・放置音等を除けば、すべて触覚のみで操作することができるため、盲ろう者もほぼフルに利用することが可能です。以下、盲ろう者が利用可能と思われる主なブレイルメモの機能をご紹介します。 (1) 文書機能  点字文書を読み書きすることができます。パソコンの点字エディターと同様、あるいはそれ以上の機能を有しており、電子手帳に加えて点字の読書機としても利用が広がっています。 (2) 点字印刷  点字プリンターと接続し、点字の文書を印刷することができます。国内で入手できるほとんどの点字プリンターに対応しており、ブレイルメモで点字データを持ち運び、図書館や学校等で点字印刷するといった活用方法が可能です。 (3) 時計  点字のデジタル時計の機能が搭載されています。これはあまり知られていませんが、数少ない触覚の24時間時計です。触読式腕時計は12時間時計なので、実は午前・午後の区別が触覚ではできません。テレビやラジオ等の手段が利用しにくい盲ろう者にとって、24時間時計は生活のリズムをつかむ上で非常に重要な役割を果たします。 (4) 電卓  点字の計算式を入力することで、触覚で電卓を利用することができます。一般的な計算は、すべてできるため、日常生活において様々なシーンで活用が可能です。 (5) カレンダー・スケジュール帳  触覚でカレンダーを利用することも可能です。さらに、そのカレンダーに予定を書き込むこともできることから、スケジュール管理が独力で行えます。 (6) チャット  ブレイルメモ同士あるいはブレイルメモとパソコンを接続し、点字あるいはかな文字によるチャットができます。まだそれほど利用されていませんが、点字通訳等の活用方法が複数の盲ろう者から提案されています。 5 主な仕様(価格は2012年2月現在) (1) ブレイルメモ16(BM16)  点字表示部:8点ピン突出方式 16マス  入力キー:点字入力キー、編集キー、矢印キー、タッチカーソルキーなど合計37個  内蔵メモリ:2MB(電源オフ時のバックアップあり)  通信ポート:シリアルポート(RS-232C、9ピン、オス)1個  電源:ACアダプター/内蔵バッテリー(約30時間使用可能)  外形寸法:240W×160D×40H[mm](突起物を除く)  重量:約1.0kg  価格:176,000円(非課税) (2) ブレイルメモ24(BM24)  点字表示部:8点ピン突出方式 24マス  入力キー:点字入力キー、編集キー、カーソルキー 28個  各表示マスに対応 24個  メモリ:6MB 最大256件の文書を保存可能  インターフェース:Bluetooth×1 (Ver1.1) USB×1(Ver1.1)  シリアル:×1(D-SUB 9ピン オス)  電源:AC100-240V(ACアダプター使用)  バッテリー:内蔵バッテリー 使用時間約20時間  外形寸法:216W×164D×41H [mm]  重量:約1.0kg  価格:250,000円(非課税) (3) ブレイルメモ32(BM32)  点字表示部:8点ピン突出方式 32マス  入力キー:点字入力キー、編集キー、カーソルキー 30個  各表示マスに対応 32個  メモリ:8MB(ユーザーエリア6.5MB)  インターフェース:Bluetooth×1 (Ver2.0) USB×1(Ver2.0)  外付けUSBメモリ用ポート×1  シリアル:×1(D-SUB 9ピン オス)  電源:AC100-240V(ACアダプター使用)  バッテリー:内蔵バッテリー 使用時間最大17時間  外形寸法:226W×129D×40H [mm]  重量:約1.0kg  価格:357,000円(非課税) (4) ブレイルメモポケット(BMPK)  点字表示部:8点ピン突出方式 16マス  操作キー:17キー  内蔵メモリ:4MB(ユーザーエリア3.5MB)  インターフェース:内蔵ブルートゥース Bluetooth×1 (Ver1.2)  USB mini Bタイプ×1(Ver1.1)  電源:着脱式リチウムイオン・バッテリー  連続使用時間:約8時間  USB使用時は、パソコンから電源供給  バッテリー充電器  (ACアダプター) 充電時間約3時間  電源:AC100-240V  本体よりバッテリーを取り外して充電を行います。  外形寸法:168W×80D×20H[mm]  重量:約300g  価格:249,000円(非課税) 6 発売元・問い合わせ先  ケージーエス株式会社  【URL】http://www.kgs-jpn.co.jp あとがき  盲ろう者が、パソコン等情報機器を活用できるようになる意味合いは大きい。通訳・介助員の支援を受ける以外に方法がなかった他者との連絡・情報入手が、独力で可能となる意義は計り知れず、日常生活においてどれだけの利便性をもたらすことであろうか。しかし、一方、パソコン等情報機器を活用できるようになるためには、もちろん個人差はあるものの、ある一定期間の訓練が必要になってくることも事実である。  本マニュアルが、情報機器を活用したいと願う盲ろう者、そしてその願いを叶えるために、実際に盲ろう者に対し指導を行っている方、サポートをしている方、またこれから盲ろう者への指導を志す方、これらの方々の一助になれば幸いである。そして、一人でも多くの盲ろう者がこのパソコン等情報機器によってもたらされる新しい可能性を享受できることを切に願う。  本マニュアル作成にあたり、執筆・編集に際して、「盲ろう者コミュニケーション訓練促進事業」企画委員である、 大河内直之氏(国立大学法人東京大学先端科学技術研究センター) 白井康晴氏(NPO法人東京盲ろう者友の会) 高橋信行氏(愛媛県立松山盲学校) 村岡寿幸氏(NPO法人東京盲ろう者友の会) 森下摩利氏(NPO法人東京盲ろう者友の会) 渡井秀匡氏(NPO法人東京盲ろう者友の会) 各位の多大なるご尽力に心から感謝の意を表する。 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 橋間 信市 書名:平成23年度版 盲ろう者向けパソコン指導マニュアル〜Windows 7編〜 発行:2012年3月15日 発行・編集:〜日本のヘレン・ケラーを支援する会 〜 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町67番地 早稲田クローバービル3階 TEL 03-5287-1140  FAX 03-5287-1141