理事長ご挨拶      

2012年8月

 空前の大震災から早くも一年が経過しました。昨年の今頃は、先行きの展望が開けないまま、当協会も、2013年に予定していたヘレン・ケラー世界会議の開催を中止することとしたり、20年間、欠かすことなく開いてきた盲ろう者の全国大会を取り止めたりと、2011年度は不安一杯のスタートでした。今もなお被災地での復旧・復興や被災された方々への支援に向けた課題は山積しているのでしょうが、日本の社会全体を眺めると、当初に予想されたよりは速やかに元気を回復しつつあるように思います。当協会も、結果的には、2011年度にも当初の予算を上回る寄附金や賛助会費をいただくことができ、盲ろう者の全国大会を除けば、予定をした事業を滞りなく実施することができました。協会を財政面で支えてくださる皆様に感謝申し上げますとともに、通訳・介助者ら全国各地で盲ろう者の活動を支援してくださっている皆様のご尽力に改めて厚く御礼申し上げます。

 昨年末のニュースレターでご報告申し上げたように、昨秋、天皇・皇后両陛下に、わが国の盲ろう者、そして当協会の活動を中心とした盲ろう者福祉について、ご進講をさせていただく機会を賜りました。両陛下は、1時間余りも、私どもの説明に耳を傾けてくださいましたが、特に皇后陛下には、ご幼少の頃に、来日したヘレン・ケラー女史の話を聞かれたこともあるとのことで、様々なご下問を賜りました。障がい者に思いを寄せてくださる両陛下のお優しく、暖かいお人柄に強く打たれた次第です。
 このご進講は、協会にとってとても名誉なことであることはいうまでもありませんが、それにも増して、協会が発足するまでは、ほとんど知る人もいなかった盲とろうの重複障がい、そして盲ろう者の存在が、昔流にいえば「天聴に達する」までに至ったことに深い感慨を覚えます。知ってもらうこと、これが福祉の第一歩ですし、福祉を充実させていくために欠かせない前提です。『コミュニカ』などの広報誌の配布や盲ろう者の大会の全国各地での開催は、盲ろう者のいわば知名度を上げることを大きな目的としてきましたが、こうした活動が、着実に実を結びつつあることは、大変うれしいことです。

 盲ろう者は、1人での移動が至難であるだけでなく、他の人の手を借りないと対話ができないという、他の障がい者にはない大きなハンデを背負っていますが、協会としては、これまでの協会の活動を踏み台にして、これからは、盲ろう者も、他の障がい者と同じように、協会などの第三者が企画し、実施する事業に参加するだけではなく、自分たちのイニシアティブで積極的に活動を展開していくことを期待しています。協会は、こうした盲ろう者の主体的活動の中核を担う人材を確保するため、「全国盲ろう者団体ニューリーダー育成研修会」などを実施してきましたが、これからも、事業の実施に際しては、できるだけ幅広く盲ろう者の意見を聴取するなど、盲ろう当事者の視点を大切にしていきたいと考えています。夏の全国大会が、今年度から、各ブロックが輪番で開催されることになったのも、当事者団体の連絡協議会の意向を踏まえたものです。今年の中国・四国地区(松山)に次いで、来年は関東(千葉)、再来年は近畿(神戸)で開かれることになっています。

 最近では知る人が少なくなってきましたが、協会の設立当初は、事務局職員も1人しか雇用できず、時にはその職員が辞めてしまって誰もいないという有様でした。そんな中で、多忙な学校の仕事の合間を縫って、様々な申請書類の作成など、実務を支えてこられたのが、筑波盲学校におられた塩谷先生です。8年前に盲学校を退職された後は、協会の常務理事・事務局長として、友の会が設立されていない県での組織づくりや道府県の通訳・介助者派遣事業の予算の確保のために全国を飛び回るなど、盲ろう者福祉の充実に心血を注いでこられました。協会の20年間は、塩谷事務局長あってこそのものといっても過言ではありません。その塩谷事務局長が病に襲われ、現在厳しい闘病生活を続けておられます。塩谷事務局長が早期に回復されるよう、全国の盲ろう者とともに祈りたいと思います。また、厚生労働省や友の会の方々など、関係の皆様には何かとご迷惑をおかけすることがあろうかと思いますが、協会職員が、皆で力を合わせて、この大きな空白を埋めるべく努力を続けてまいりますので、なにとぞお許しくださいますようお願い申し上げます。

(協会だより第23号より抜粋)